2013年11月21日木曜日

自殺のジェネレーショングラム

 社会は,育った時代状況を異にする「異世代」の人々からなりますが,それぞれの世代の軌跡は,年齢と時代(年)のマトリクス上に引いた斜線でもって表されます。

 8月6日の記事では,ジェネレーショングラムという図法を紹介しました。私の恩師の松本良夫先生が,電車のダイヤグラムをヒントに考案されたものです。

 この図にいろいろな情報を書き込むことで,各世代の軌跡を詳細かつ視覚的に眺めることができます。先日,この図を研究で使いたいという方からメールをいただきました。元教員の方で,学習指導要領改訂の歴史を書き入れた図にしたいとのことです。

 なるほど。妙案だと思います。私は,1977年版の学習指導要領で教えられましたが,今教えている学生さん(≒20歳)は,98年版の指導要領で育ってきた,いわゆる「ゆとり世代」です。

 逆に,60年代後半生まれの世代は,教育内容の「現代化」を掲げ,内容をびっちり詰め込んだ68年版の指導要領で締め付けられた世代。そのせいか分かりませんが,この世代は,10代の間に非行者を多数輩出した「業績」を持っています。非行の第3のピークは80年代の前半ですが,いみじくも当該世代が10代の頃ですよね。

 学習指導要領改訂史を盛り込んだジェネレーショングラムは,各世代の人間形成の理解を深めるためのツールとなることでしょう。教育学の講義の教材にも使えそう。完成したら,どうか見せてくださいまし。

 さて私のほうは,自殺率の色をつけたジェネグラをつくってみました。自殺率とは,自殺者数を人口で除した値です。分子の自殺者数は,戦前期は内閣府の『大日本帝国人口動態統計』,戦後は厚労省『人口動態統計』から得ました。分母の人口は,総務省統計局ホームページの長期統計系列から得ています。

 5歳刻みの年齢層ごとの自殺率を5年間隔で出し,それを使って,ジェネグラの座標上に色をつけたというわけです。そしてこの上に,4つの世代の軌跡線を引いてみました。

 この図から,各世代の「生きづらさ」の軌跡をたどることができます。「われわれの世代は大変だった・・・」。ちょっとカッコつけて,誰もがこういうことを口にしたくなるものですが,客観的にみるとどうなのか。とりあえず,ブツをみていただきましょう。自殺のジェネレーショングラムをとくとご覧ください。


 図には,4世代の軌跡線が描かれています。①1921~25年生まれ,②31~35年生まれ,③46~50年生まれ,④71~75年生まれ,です。①は私の小学校時代の恩師・橋本美智子先生,②は学問の師・松本良夫先生,③は団塊の世代,④は私の世代です。*私は76年生まれなので正確には違いますが,まあよしということで。

 図中の白色の数値は,自殺率(10万人あたり)の区切りを意味します。たとえば紫色のゾーンは,自殺率15以上20未満であることを示唆します。黒色は,自殺率が40を越えるヤバい箇所です。

 俯瞰的にみてどうでしょう。「パッと見」の印象は,松本先生の世代(青色)は大変だったのだなあ,ということです。20代前半の青年期に,黒色の山を通過しています。時は1955(昭和30)年。戦後10年,社会の激変期だった頃です。新旧の価値観に引き裂かれ,生きる方針を見失った青年も多かったことでしょう。当時の自殺原因の多くが「厭世」であったことはよく知られています。

 次に,量的に多い団塊世代(黄色)ですが,この世代は,50代になって危機にぶつかっていますね。平成不況の盛り。多くが,リストラ等を苦にした中高年男性の自殺であると思われます。

 私の世代(緑色)はというと,2010年時点の30代後半までしか分かりませんが,加齢ともに自殺率が段階的に上がっていくタイプです。これは他の3世代とは異なる傾向なり。今後,40代,50代になるにつれて,自殺率はもっとアップしていくのでしょうか。

 参考までに,4世代の各年齢時点での自殺率をつないだ折れ線を提示しておきましょう。各世代の自殺の軌跡が分かるかと思います。


 松本先生世代の青年期の山はスゴイ。当該世代の20代前半期の自殺率は,実に65.4にもなります。典型的な青年期突出型。団塊の世代は,50代で痛い目に遭っている中高年期危機型。

 私の世代は,加齢とともに自殺率が一貫して上昇している一貫上昇型です。他の3世代のように,青年期の山がいったんおさまるというような傾向にあらず。このあたりに,何やら不吉なものを感じます。今後,どうなるやら,ロスジェネといわれる私の世代ですが,非正規雇用,単身未婚ニートなど,不安因子を多く抱えているといわれます。図の点線のような推移にならないことを願いたいです。

 あまり楽しい作業ではありませんが,みなさんも,上記の図に自分の世代の軌跡線を引いてみてはどうでしょう。あるいは,「この人は何でこうなんだろう」という人の軌跡を書き込んでみるのもいいかも。個々人の体験をオミットした「世代群」としてのマクロな生活史になりますが,人間理解(異世代理解)のツールになるかもしれません。

 酒場の壁に,この図を拡大して貼ったら,酒の話題として大いに盛り上がるんじゃないかなあ。「みてみろ,俺の頃は・・・」みたいな。売り込んでみようかな。

 次回は,非行のジェネレーショングラムをお見せしようと思います。各世代の10代の非行の軌跡図です。お楽しみに。*私は気まぐれなので,予定変更の場合あり。

0 件のコメント:

コメントを投稿