2014年1月25日土曜日

一人親世帯の子どもの貧困率

 ある社会の中で,貧困状態にある者の量を測る指標として,貧困率というものがあります。所得が,全体の中央値の半分に満たない者がどれほどいるかです。通常,世帯を単位として計算されます。

 この貧困率を,一人親世帯の子どもについて出すと,わが国の特異性が見出されます。18歳未満の子どもがいる一人親世帯のうち,所得が上記の基準に満たない世帯がどれほど存在するかですが,以下では子どもの貧困率ということにします。

 私は,OECDの“Family Database”にあたって,2008年の国別数値を収集しました。下記サイトのCO2.2の表です。原資料では,親が働いていない世帯と働いている世帯に分けて貧困率が掲載されています。下表は,それを整理したものです。
http://www.oecd.org/social/soc/oecdfamilydatabase.htm


  最下段のOECD平均をみると,親が働いていない世帯では6割,働いている世帯では2割です。当然ですが,前者の貧困率のほうがうんと高くなっています。他国も然りです。

 アメリカでは,親が働いていない世帯の貧困率は9割を越えています。自己責任を強調するお国柄と聞きますが,この国では,公的扶助が受けづらいという事情もあるのではないでしょうか。

 ところで,こうした国際的傾向から外れている社会が一つあります。それは日本です。この東洋の島国では,親が働いている世帯の子どもの貧困率のほうが高いのです。18歳未満の子がいる一人親世帯に限ったデータですが,非就業世帯よりも就業世帯のほうが貧しいって一体・・・。

 上表のデータを視覚化してみましょう。横軸に非就業世帯(a),縦軸に就業世帯(b)の子どもの貧困率をとった座標上に,31の社会を位置づけてみました。


 日本でいうと,「a<b」という特異な傾向もさることながら,縦軸の上でかっ飛んだ位置にあることも注目されます。親が働いている世帯の子どもの貧困率はトップです。その割合は54.6%,半分以上です。

 上図のデータをみて,親が働いていない(働けない)世帯への公的援助を減らすべきなどと考えるのはあべこべです。働いても,公的基準が定める最低限の生活を営むに足る収入が得られない事態をこそ,問題視すべきでしょう。一人親世帯の場合,そうした歪みがより色濃い形で表われているものと思われます。

 図の右側にあるアメリカやギリシアのような社会は,子どもの貧困は,親が働けない世帯への公的援助がどうなっているのかという,福祉の問題として提起されますが,わが国の場合,そうした福祉の枠を越えた,雇用構造全体の問題としての性格を持っているようです。

 今回みたのは,一人親世帯の子どもの貧困率ですが,ここで見出されたわが国の特異性をして,一部のマイノリティーの問題と切って捨てることは誤りでしょう。