2014年12月7日日曜日

都道府県別の高校生のバイト率

 昨日,「奨学高校生の36%がバイト経験 あしなが育英会調査」という記事を見かけました。共同通信社の配信記事です。
http://www.47news.jp/CN/201412/CN2014120601001444.html

 奨学金を借りている高校生の36%がバイト経験ありで,そのうちの4割以上が,稼いだお金を交通費や学費に充てているとのこと。この結果から,「奨学生の経済状態は予想以上に厳しい」と指摘されています(樽川准教授)。

 この率が高いかどうかは,一般の高校生のデータがないので判断できないとされていますが,官庁統計から高校生全体のバイト率を出すことができます。私も,高校生のバイト率がどれほどかには関心を持っていたところです。「家が苦しかったんで,高校の頃からバイトしてました」という学生さんにもよく会いますし。ここにて,試算の結果をご覧いただきましょう。

 資料は,2012年度の総務省『就業構造基本調査』です。これによると,同年10月時点の15~19歳の高校在学者(高校生)は374万人であり,このうち仕事を持っている有業者は21万人となっています。後者の大半は,パートないしはバイトとみてよいでしょう。よって,高校生のバイト率は5.5%と算出されます。18人に1人です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 奨学高校生のバイト率36%は,一般の高校生徒比べると格段に高いですね。奨学生の経済状態は厳しいという指摘は,的を射ています。

 5.5%という数字は全国の高校生のバイト率ですが,ジェンダーの差も気になります。また,地域による違いも知りたいところです。私は同じやり方にて,47都道府県の高校生男女のバイト率を計算してみました。下表は,全国と東京の計算表です。


 やはりといいますか,大都市の東京のほうが,高校生のバイト率は高くなっています。九州からこっちに出てきたとき,高校生がマックやコンビニでバイトしているのを見て驚いた記憶があるなあ。

 ジェンダーの差をみると,全国でも東京でも,バイトする生徒は男子よりも女子で多いようです。私としては,これは意外です。昨日,このデータをツイッターで発信したところ,「男子は部活をする者が多いから」「女子は服飾費や交際費にお金がかかるから」というコメントが寄せられましたが,そういうことでしょうか。

 さて,計算の過程についてイメージを持っていただいたところで,全県の高校生男女のバイト率を見ていただきましょう。下表はその一覧表であり,最高値には黄色,最低値には青色のマークをしました。上位5位の数値は赤色にしています。


 マックスは東京ではなく,神奈川の9.4%です。この県では,高校生の11人に1人がバイトしています。埼玉も高いですね。総じて,高校生のバイト率は都市部で高いようですが,南北両端の北海道と沖縄も上位にランクインしています。この道県では,学費稼ぎのバイトも少なくないのでは・・・。男子のバイト率の1位は北海道です。

 郷里の鹿児島は,率が低いなあ。高校生は原則バイト禁止という,お達しが出ていたとは記憶していますが。

 なお,ほとんどの県で「男子<女子」の傾向です。トップの神奈川は,男子が6.3%,女子が12.9%と,倍以上のジェンダー差です。表には載せていませんが,横浜市に限るとこの差はもっと大きくなります(男子6.7%,女子15.5%)。交際費や遊興費稼ぎか,学費稼ぎか・・・。事情に詳しい方がおられたら,お教えいただけるとありがたいです。

 最後に,男女計のバイト率を地図にしておきましょう。毎度のことですが,こういう「シメ」をしないと気分が悪いのです。4つの階級を設けて,47都道府県を塗り分けてみました。


 読みとれる傾向は,高校生のバイトは都市部で多い,ということです。首都圏や大阪が濃い色で染まっています。北海道で率が高いのは,自営の家事手伝いが多いためか,それとも学費稼ぎのバイトが多いのか・・・。北海道をフィールドにした,子どもの貧困の本が出ていたけど,何ていう本だったかなあ。

 上記の県別のバイト率は,都市性と貧困の要因が相殺しますので,貧困指標との相関は出ないでしょうが,北海道内の市町村別,東京都内の区市別でみれば,何らかの関連がみられるかもしれません。

 こういうデータが,子どもや青年の教育権・学習権を保障する政策のエビデンスになります。それを,誰もが利用できる既存統計から浮かび上がらせることは,重要な仕事であるといえるでしょう。