2016年7月23日土曜日

教員の労働生産性?の国際比較

 日本は経済大国といわれますが,その由来は,GDP(国内総生産)が多いことです。最近では,世界第3位でしたっけね。

 しかし,就業者数や労働時間数で除した「労働生産性」という点でみると,あまり芳しくはありません。国際的にみて,中の下あたりです。就業者が多く,長く働いているから当然だろうと。
https://twitter.com/tmaita77/status/756340387443200000

 これを,教員に当てはめてみるとどうでしょう。日本の教員は世界的にみて長時間働いていますが,それに見合うアウトプットが出ているか。そのアウトプットの指標としてよく使われるのは,子どもの学力です。教育の使命は,社会生活に必要な学力をつけさせることですから,こういう見方もあながち間違いではありますまい。

 国際学力調査では,日本の生徒の平均点は常に上位にありますが,教員の授業時間を勘案するとどうか。

 私は,一つの試算をしてみました。各国の生徒の数学平均点を,教員の平均授業時間で除してみました。前者は,「PISA 2012」で明らかにされている,15歳生徒の数学的リテラシーの平均点です。後者は,「TALIS 2013」による,中学校教員の週間の平均授業時間(h)です。自宅等での授業準備も含みます。

 日本は,平均授業時間が26.4h,数学平均点が536点ですから,上記の意味での労働生産性?スコアは20.31となります。この値を,国ごとに比べようというわけです。

 下表は,両者が分かる34か国のデータの一覧です。


 日本のスコア(20.31)は,34か国の中では8位となっています。数学の平均点そのものは,シンガポールと韓国に次いで3位ですが,授業に費やしている時間を勘案すると,順位がやや落ちます。

 トップはオランダですね。短い授業時間で,高いアウトプットを出している。

 上表のデータをグラフにしましょう。割り算の結果だけでなく,それを出すのに使った分子・分母の値も表現します。横軸に授業時間,縦軸に平均点をとった座標上に34か国を配置し,座標上の位置に依拠して,スコアの値を読み取る図にしてみました。


 日本は20.31ですので,20~22のゾーンにあります。オランダ,ノルウェー,シンガポールの上位3位は,22を超えている。

 日韓,英仏,北米,そして南米になるにつれ,生産性のスコアは下がってきますが,近隣に位置している社会の地理的ロケーションが近いことも興味深い。

 日本のパフォーマンスはそこそこです。教員がもっと授業に集中できる環境を整えれば,授業の密度も濃くなり,さらなる飛躍も望めるのではないでしょうか。事務作業や部活指導など,それを妨げる条件を取っ払うことです。このたび現場に導入されることになった「チーム学校」という外部人材組織は,そのための方策に他なりません。

 今回の試算は,某小学校の先生のツイッターから着眼を得たものです。記して,感謝を申します。
https://twitter.com/highfatmilk15/status/756733892464291845