2017年5月3日水曜日

年収と離婚の相関

 妻が離婚を考える夫の職業,という主題を扱った記事を見かけました。
https://news.careerconnection.jp/?p=34935

 「夫の仕事が原因で離婚したい」という妻の割合を,夫の職業別にみると,①娯楽業(18.2%),②運輸・不動産(15.4%),③飲食・宿泊(14.8%),④医療・福祉(12.1%),という順だそうです。

 運輸は2位ですか。ネット通販社会において重要性を増している職業ですが,現段階では需要と供給の均衡が崩れていて,超激務の仕事になってしまっています。3位と飲食と4位の医療も同じです。

 社会的に重要な役割(職業)にもかかわらず,家庭生活との両立がままならない。社会的に意義のある役割を引き受けているのに,家庭崩壊という罰ゲームを課される。何とも皮肉なことです。

 それと,大っぴらには言えませんが,薄給という事情もあるでしょう。上記の記事によると,夫の年収に不満を持っている妻の割合は,当然ながら夫の年収が低い群ほど高くなっています。

 このブログでは,年収と未婚の相関は繰り返し明らかにしましたが,年収と離婚の相関はまだでした。総務省『就業構造基本調査』の配偶関係カテゴリーは,「未婚」と「その他」という粗い2区分なので,個人単位のデータにて,年収と離婚の関連を明らかにすることはできません。

 しかるに,有業者の産業や職業というユニットデータを使って,両者の相関をみることはできます。産業(職業)ごとの離別者率と平均年収を出し,散布図に落として傾向を見るというやり方です。

 基幹統計の『国勢調査』から,男性有業者の離別・死別者率を産業・職業別に出せます。配偶者との離別・死別を経験し,現在独身でいる者が何%かです。35~44歳の働き盛りのアラフォー年代に絞りましょう。この年代だと死別はほとんどいないので,妻と離婚した者の割合と解釈しても差し支えありません。先日公表された,最新の2015年調査のデータを使います。

 平均年収のほうは,2012年の『就業構造基本調査』から得ることができます。35~44歳の男性有業者の年収分布をもとに,平均年収を産業別・職業別に計算しました。

 下表は結果の一覧です。離・死別者率の計算に際しては,配偶関係不詳の者は分母から除外したことを申し添えます。


 同じアラフォー男性でも,配偶者との離別を経験した人の割合は,産業や職業によって違っています。黄色は最高値,青色は最低値ですが,産業別では2.1%~7.5%,職業別では2.3%~7.3%のレインヂが観察されます。

 赤色は5%を超える産業(職業)ですが,産業カテゴリーの運輸・郵便業は5.9%で,職業別の輸送・機械運転業は7.3%で,こちらはマックスです。宅配やバス運転手などですが,この職業の離婚率が最も高いことがうかがわれる…。

 ちなみに年収も低いですね。輸送・機械運転業の年収は396.4万円で,全職業の479.6万円をかなり下回っています。

 上表のざっと眺めても,年収と離婚率の間にはマイナスの相関関係がありそうな気がする。では,各産業・職業の年収と離・死別率を散布図に落として,ビジュアルにしてみましょう。


 産業別でみても職業別でみても,年収と離別・死別者率の間にはマイナスの相関関係が見受けられます。

 「カネの切れ目が縁の切れ目」とか「離婚率の高い職業は**」とかいう週刊誌的な言い回しはさておき,労働の条件如何が家族解体の原因になる。それが子どもの発達にも影響することになる。上記は年収との相関ですが,労働時間との相関もあるのでは。

 教育学を学ぶ学徒の端くれとして,目下進行中の「働き方改革」と合わせて,こういうことを言いたいと思います。