tag:blogger.com,1999:blog-64552271343991181772024-03-17T18:16:34.168+09:00データえっせい舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comBlogger1727125tag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-67763749492208861382024-01-19T21:26:00.003+09:002024-01-20T20:07:22.653+09:00大腸内視鏡検査の体験記<p> 本日,<b>大腸内視鏡検査</b>を受けてきました。そのいきさつの記録です。</p><p> 私は毎年,横須賀市の成人特定健康診断を受けています。会社員なら強制的に健診は受けさせられますが,私のような在野人は,自分で手配しないといけません。まあ市から送られてくる受診券を持って,近くのかかりつけ医に行くだけですが。</p><p> 有料のオプションとして,胸部検査や<b>大腸がん検診</b>もついています。後者については躊躇する人も多いでしょうが,私は毎年受けることにしています。お肉をバクバク食べますのでね。</p><p> 昨年の11月半ば,渡された検査キットを使って,自宅にて便を採取しました。正確さを期すため2回行うのですが,2回目は,お尻を拭いたトイレットペーパーに血がついていました。排便の時に,肛門が切れるような感覚があり,おそらく痔だなと思いました。しかし便に血が混ざってしまった可能性が高く,これは陽性と出るな,と覚悟を決めました。</p><p> 1か月経った12月半ば,検査結果を聞きにいったら,案の定,「大腸がん検診が陽性と出ています」と,ドクターから通告されました。「陽性と出た人には,精密検査を受けてもらうことになっています」と言われ,検査をやってくれる医院を紹介されました。</p><p> 私は翌日,紹介状をもって,当該の医院に出向きました。ドクターと面会し,「大腸内視鏡検査を受けていただきます」と言われ,詳しい説明を受けました。肛門から内視鏡を挿入し,大腸内をくまなく観察し,がんが潜んでないかを調べる検査です。そして,検査に必要とのことで,血液を採取しました。</p><p> その後,受付の人と日程を調整し,年明けの1月19日に検査することになりました。検査前日の食事制限について説明した資料と,検査当日に飲む下剤を受け取り,家路につきました。</p><p>********************</p><p> 年が明け,石川の能登大地震の惨状に心を痛める日を経て,検査前日の18日がやってきました。ツイッターにも書きましたが,この日は食事制限です。消化されにくく,腸内に残ってしまうような食べ物はNG。具体的には,繊維が多いキノコ類や海藻類,野菜もです。</p><p> 消化されやすいメニューを少量食べてほしい,とのこと。病院から渡された「おすすめメニュー」に従い,次のようにしました。朝は食パン1枚と目玉焼き,昼は素うどん1杯,夜はおかゆです。当然,空腹でお腹がグーグー鳴りましたが,キャンディーをなめて空腹感をまぎらわせました。夜の9時に,指定された下剤をのみ,早めに就寝しました。</p><p> さて検査当日。この日は朝から絶食で,腸内をカラにするための強力な下剤を飲みます。私が飲むように指示されたのは,マグコロール1.8リットルです。粉が入った容器に水を入れ,よく混ぜて完成。これを10分間隔でコップ1杯ずつ,時間をかけて飲み干していきます。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgaAbso8477Isq80Y1SAXo9g3bG6Qrc4ULF603MZ-c47157jRzdCQu6FR8Wqh9TAYPWr3mwzD9OLreyR3jyFX0DsILVLylL3zigTHwAjzfGRIgyWgInzxP4fHZT7RmSFehuColetMlEdnIwEgI_YQ0B6lOhyphenhyphen0fA_yWd3ee50ryV1Mo5EbJyVTY3sjzYFsiu/s911/IMG_20240119_070841680.jpg" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="911" data-original-width="683" height="400" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgaAbso8477Isq80Y1SAXo9g3bG6Qrc4ULF603MZ-c47157jRzdCQu6FR8Wqh9TAYPWr3mwzD9OLreyR3jyFX0DsILVLylL3zigTHwAjzfGRIgyWgInzxP4fHZT7RmSFehuColetMlEdnIwEgI_YQ0B6lOhyphenhyphen0fA_yWd3ee50ryV1Mo5EbJyVTY3sjzYFsiu/w300-h400/IMG_20240119_070841680.jpg" width="300" /></a></div><p> 大腸内視鏡検査で一番辛いのは,大量の下剤を飲まされることだ,という体験談がネット上に溢れかえっていますが,私は嫌な感じはしませんでしたね。味はポカリそのもので,まずくも何ともない。</p><p> 飲み始めてから30分ほどで,強烈な便意が襲ってきました。お腹をキューと締め付けられるような感じです。トイレに座ったら,出るわ出るわ。その後もおよそ15分間隔でトイレに行き,6回くらい排便したら,粒一つない完全な水便になりました。</p><p> これで前処置は完了。指定された14:15に医院に行き,血圧を測定して待合室でちょっと待ちました。検査室に呼ばれ,検査(手術)への同意書を提出。体調や病歴について問診を受けた後,検査服に着替えました。下は,お尻の部分に穴が開いている半パンです。</p><p> さあ,いよいよ検査開始。検査台に横向きに寝ころび,左手をさしだして,鎮静剤を注入するための針をさしてもらいます。それからドクターによって鎮静剤が注入されると,意識が朦朧とします。「眠いでしょ。寝ちゃっていいよ」というドクターの声は覚えていますが,それからの記憶はなし。「終わりましたよ」と,看護師さんに肩を揺さぶられて目覚めました。</p><p> その後,30分ほど休み,フラフラとした足取りで脱衣所に移動し,検査服を脱ぎました。着替えて待合室でちょっと待ち,診察室に呼ばれてドクターから結果の説明。開口一番,「異常はありませんでした」とのこと。安堵しました。腸内の写真をいただきましたが,ポリープ1つも見つからなかったそうです。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh57DCLpEkz6rxaWDfaJgALDVQF5X4wYNa0q3jOk7Z6SzgjX2DyYyabcH1nITVhgUN8ozIBjbbO9JBrU8k7Ll0v1D4l5yisLuuFwBNUnfHdeNvNGOUm9ueDSp8NPF_jbdeIHxlmtWr63WJarE_TKcTkKTGdu2k7ANPstVYZJzMhAKoxKBhFpRTVAvb1XQoV/s911/IMG_20240119_174354842.jpg" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="911" data-original-width="683" height="400" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh57DCLpEkz6rxaWDfaJgALDVQF5X4wYNa0q3jOk7Z6SzgjX2DyYyabcH1nITVhgUN8ozIBjbbO9JBrU8k7Ll0v1D4l5yisLuuFwBNUnfHdeNvNGOUm9ueDSp8NPF_jbdeIHxlmtWr63WJarE_TKcTkKTGdu2k7ANPstVYZJzMhAKoxKBhFpRTVAvb1XQoV/w300-h400/IMG_20240119_174354842.jpg" width="300" /></a></div><div><br /></div> どうやら,便潜血検査で陽性と出たのは「痔」のためだったようです。「今後3年間は,便潜血検査で陽性と出ても,精密検査を受ける必要はない」と言われました。すなわち,便潜血検査を受ける必要はないと。また3年後の2027年1月に,大腸内視鏡検査を受けることとしましょう。<div> </div><div> <b>毎年,ちまちまと便潜血検査を受けるより,3年に1回,内視鏡検査を受けるほうがいいかもしれませんね</b>。こちらのほうがずっと精度は高いですし。ちなみに費用は保険診療なんで6000円ほどでした。ポリープ切除の場合はもっと高くなりますが,異常なしの場合はこんなものです。</div><div><br /></div><div> 大腸内視鏡検査というと躊躇する人が多いと聞きます。医者から受けるように進言されても受けないままで,がんが進行し,人工肛門になってしまう人もいます。</div><div><br /></div><div> しかしやってみると,何のことはありません。がん年齢と言われる40歳を過ぎたら,一度,受けてみるといいと思います。日本人の半分が生涯のうちにがんを患うという統計があり,部位別にみると大腸がんは上位に挙がっています(女性では首位)。食生活の洋風化(肉食化)が進んでいるのもあるでしょう。</div><div><br /></div><div> 便潜血検査で陽性反応が出て,内視鏡検査を受けるよう通告され,あたかも死刑宣告を受けたかのように不安におののいている人もいるかと思いますが,私の体験記が不安低減に役立てば幸いです。</div><div><br /></div><div> 便潜血検査で陽性となるのは6%,そのうち内視鏡検査で大腸がんが見つかるのは5%。こういう数字も,頭の片隅におきましょう。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-38879501290582283402023-12-20T22:35:00.001+09:002023-12-21T07:03:54.617+09:00都道府県別の大学進学率(2023年春)<p> 今年の『学校基本調査』の<a href="http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528" target="_blank">確報結果</a>が出ました。例年同様,<b>都道府県別の大学進学率</b>を計算することといたしましょう。毎年のことですので,計算の方法の説明と,出てきた数値を淡々と報告します。</p><p> 大学進学率とは,18歳人口ベースの浪人込みの進学率をいいます。分子には,当該年春の大学入学者数を充てます。2023年春でいうと,63万2902人です。この中には,より上の世代(浪人経由者)も含まれますが,今年春の18歳人口からも,浪人経由で大学に入る人が同数出ると仮定します。</p><p> 分母には,今年春の推定18歳人口を使います。3年前の『学校基本調査』に出ている,①中卒者数,②中等教育学校前期課程卒業者数,および③義務教育学校卒業者数を合算します。3年前(2020年春)の①は108万7468人,②は5430人,③は4518人で,これらを足すと109万7416人。これが,今年(2023年)春の推定18歳人口です。</p><p> これで分子と分母が得られましたので,2023年春の大学進学率は,63万2902人/109万7416人=<b>57.7%</b>となる次第です。元資料(<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011528&cycle=0&tclass1=000001021812&tclass2val=0" target="_blank">このページ</a>の図表9)で報告されている数値と一致します。</p><p> 同世代の何%が4年制大学に進学するかですが,6割のラインに近づいてきましたね。</p><p>**********</p><p> さて,本題はここからです。57.7%というのは全国の数値であり,地域別にみると著しい違いがあります。これは<b>高等教育機会の地域格差</b>の表現であって,私は毎年,これを明らかにしているわけです。便宜上,地域を都道府県単位で捉えています。</p><p> 県別の大学進学率は,『学校基本調査』の結果レポートには載っていません。上記の方法にのっとって,私が独自に計算します。県別の場合,大学進学率の分子には,<b>当該県の高校出身の大学入学者数</b>を充てます。私の郷里の鹿児島県だと,本県の高校出身者で,今年春に全国のどこかの大学に入学したのは6373人(<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011528&cycle=0&tclass1=000001212520&tclass2=000001212545&tclass3=000001212546&tclass4=000001212548&tclass5val=0" target="_blank">このページ</a>の表16)。</p><p> 分母には推定18歳人口を使いますが,3年前(2020年春)の中卒者,中等教育前期課程卒業者,義務教育学校卒業者の合算は1万5086人。よって,今年春の鹿児島県の大学進学率は42.2%となります。先ほどみた全国値(57.7%)よりだいぶ低いですね。</p><p> 私はこのやり方で,47都道府県の大学進学率を計算しました。各県の分子,分母の数値は男女別にも得られますので,男子と女子に分けた進学率も出しました。以下の表は,結果の一覧です。縦長の表で,スクショを1枚に収められませんでしたので,上下2枚に分割していることをお許しください。</p><p> 繰り返しになりますが,この県別・性別のデータは,文科省の『学校基本調査』のデータをもとに,私が独自に計算したものであることを申し添えます。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg3AP4ytp7TYpKWiZQsfDO0VE5ZtTGTeCDQtvu9GHPoX-Ts7al2Ihvjk2XYF6F7LOuL3nc8GwciSJw9XNxKjOR-6pUcStP-t80FfTbQbW-0GU8Eoagdbv62ys4HBHXGkU5SgEGATx64RLFlV_U3k-6VX51mj8uZn8kK2xfI-E9p9gsXvduH7UTLoPDoZWIP/s446/A.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="446" data-original-width="316" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg3AP4ytp7TYpKWiZQsfDO0VE5ZtTGTeCDQtvu9GHPoX-Ts7al2Ihvjk2XYF6F7LOuL3nc8GwciSJw9XNxKjOR-6pUcStP-t80FfTbQbW-0GU8Eoagdbv62ys4HBHXGkU5SgEGATx64RLFlV_U3k-6VX51mj8uZn8kK2xfI-E9p9gsXvduH7UTLoPDoZWIP/s16000/A.png" /></a></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgj7gZUNu8vP0T9DRx6P-Xw9iSB2TyCLc1K_jFpaGtTboLMU6DyLq6Hw_xp2wehZ9VQXGPUWxYRje1mLg0ImZG-ss1HK9Jd8QkW3lq_Mz7rmXi6aKMUk1u7HI36LZxgXPhuFNyLKPAV2N3-LZHFZRStBx_8kv97YNgs2PX9h4AdVlG0Ci-ZtxL4fa1fK9nd/s457/B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="457" data-original-width="315" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgj7gZUNu8vP0T9DRx6P-Xw9iSB2TyCLc1K_jFpaGtTboLMU6DyLq6Hw_xp2wehZ9VQXGPUWxYRje1mLg0ImZG-ss1HK9Jd8QkW3lq_Mz7rmXi6aKMUk1u7HI36LZxgXPhuFNyLKPAV2N3-LZHFZRStBx_8kv97YNgs2PX9h4AdVlG0Ci-ZtxL4fa1fK9nd/s16000/B.png" /></a></div><p> 47都道府県中の最高値には黄色マーク,最低値には青色のマークをしました。左端の男女計でみると,最高は東京の77.6%,最低は宮崎の40.1%。倍近くの差で,同じ国内かと思う得るほどの格差です。毎年のことで,私はあまり驚かなくなりましたが。</p><p> 各県の大学進学率を男女別に出すと,これも毎年のことですが,「男子>女子」の県が大半です。鹿児島では,男子が46.1%であるのに対し,女子は38.1%,8ポイントの差です。一方,東京は性差が1.4ポイントと小さくなっています。自宅から通える大学が多いためでしょう。</p><p> 私はかれこれ,10年ほど前から毎年,県別の大学進学率を出してきてますが,各県の位置にも変化があります。たとえば沖縄県で,以前とは異なり,近年の全県での順位は「中の上」です。本県独自の子どもの貧困対策や,国の高等教育無償化政策の効果もあるかと思われます。</p><p> ここで明らかにした大学進学率の都道府県差が,各県の生徒の自発的な進路選択の結果などと考える,おめでたい人はいないでしょう。何よりの反証材料は,子どもの学力首位の秋田が,大学進学率では最低水準であることです。各県の男女差などは,「ジェンダー」の反映ともとれます。(1人しか行かせられないなら男子優先,女子は自宅通学のみ可…)。</p><p> 大学進学率の地域差がどういう問題か,どういう要因でもたらされているかについて,私が思うところは,本ブログで何度も書きましたので,ここで繰り返しません。毎年,「都道府県別の大学進学率(**年春)」という記事をアップしています。各県の所得や親世代の大卒率との相関をとったグラフを掲載した記事もあります。</p><p> 興味ある方は,左上の検索窓に「都道府県 大学進学率」と打って,呼び出してみてください。</p>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-53191097351609409952023-11-18T10:53:00.000+09:002023-11-18T10:53:28.404+09:00失業と自殺の相関の国際比較<p> 先日ツイッターで出したグラフについて,「元データがどういうものか,イメージしにくい」という声がありますので,ここで詳細を書いておきます。</p><p> <a href="https://twitter.com/tmaita77/status/1725432213309960621" target="_blank">当該のグラフ</a>は,男性の失業率と自殺率の時系列データから算出した相関係数を,国ごとに棒グラフにしたものです。日本は+0.9を超えていて,主要国では断トツ。米国は+0.073で無相関,フランスやスペインに至ってはマイナスです。</p><p> 失業率は,15歳以上の労働力人口に占める完全失業者の割合です。働く意欲のある人のうち,職に就いておらず,せっせと職探しをしている人が何パーセントかです。出所は,<a href="https://www.ilo.org/shinyapps/bulkexplorer6/" target="_blank">ILOの統計データベース</a>で,「Unemployment rate sex and age (%) - annual」という表にて,各国の男性の失業率の長期推移を,国別に呼び出せます。</p><p> 自殺率は,人口10万人あたりの年間自殺者数です。ソースは,WHOの<a href="https://platform.who.int/mortality/themes/theme-details/topics/indicator-groups/indicator-group-details/MDB/self-inflicted-injuries" target="_blank">「Mortality Database」</a>で,「<a data-id="CG1570" href="https://platform.who.int/mortality/themes/theme-details/topics/indicator-groups/indicator-group-details/MDB/self-inflicted-injuries" style="box-sizing: border-box !important; font-family: Arial; outline: 0px; text-decoration-line: none;"><span style="color: black;">Self-inflicted injuries</span></a>」という死因による死亡者数が,10万人あたりの人数に換算された数値が出ています。</p><p> 私はこの2つの資料から,男性の失業率と自殺率の推移を,国別に明らかにしました。観察期間は,1990~2020年の30年間です。日本とスペインについて,採取したデータを漏れなく示すと以下のようになります。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEi1EzU2AKoalei2P-fB99Jjc873igOlmeUyw8WevE1Q0qJKfGVqMa4hTIILLYQVzU9WfDIRyiBzUrk4KoV4AvAFKJIlGOb6Sg332-O0sEKZKTnfrJIPJBdJNb0fw9be7guD5c96gevrR7KAZGzRykiweTnhv3iWAG_ZDx13dP5R-VP-F9-md_2m6PHnhJJ7/s618/A.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="618" data-original-width="356" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEi1EzU2AKoalei2P-fB99Jjc873igOlmeUyw8WevE1Q0qJKfGVqMa4hTIILLYQVzU9WfDIRyiBzUrk4KoV4AvAFKJIlGOb6Sg332-O0sEKZKTnfrJIPJBdJNb0fw9be7guD5c96gevrR7KAZGzRykiweTnhv3iWAG_ZDx13dP5R-VP-F9-md_2m6PHnhJJ7/s16000/A.png" /></a></div><div><br /></div> 黄色マークは観察期間中の最大値,青色は最小値です。日本の失業率は低く,30年間であまり動いていませんが,自殺率は変化の幅が大きくなっています(20.4~36.5)。対してスペインは,失業率は大きく揺れ動いているものの,自殺率はほぼフラットです。<div><br /></div><div> しかしスペインは失業率がメチャ高で,2桁はデフォルト。それでも自殺率は日本よりだいぶ低し。2つの国のコントラストが浮き出ています。</div><div><br /></div><div> 上記の30年間のデータをもとに,男性の失業率と自殺率の相関関係をみてみます。下図は横軸に失業率,縦軸に自殺率をとった座標上に,各年のドットをプロットした散布図です。赤色は日本,青色はスペインです。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhkob0RXGHOhYnCEtK3WNxMb4Z1VIy4eFmHnfgjEcwOo7NWWprhN8PXuIKcf2QWGwnT9ZH3R5ZTG_nkYZFTGzvQi0OG2nYRIC7gB2FXDoDf9oeJtoo49yt0ncDykIE4K_IFwzwjA3puXiMePcM97zZjnjf-vd8s46CblANv9Qto_bH6OsE6Mw1T9NuF5b0u/s514/B.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="514" data-original-width="390" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhkob0RXGHOhYnCEtK3WNxMb4Z1VIy4eFmHnfgjEcwOo7NWWprhN8PXuIKcf2QWGwnT9ZH3R5ZTG_nkYZFTGzvQi0OG2nYRIC7gB2FXDoDf9oeJtoo49yt0ncDykIE4K_IFwzwjA3puXiMePcM97zZjnjf-vd8s46CblANv9Qto_bH6OsE6Mw1T9NuF5b0u/s16000/B.png" /></a></div><div><br /></div> 日本は,失業率が高い年ほど自殺率も高いという,明瞭なプラスの相関関係がみられます。対してスペインは無相関。失業率は大きく揺れ動いているにもかかわらず,自殺率はほぼフラットです。<div><br /></div><div> 両軸が因果の関係にあるとは限りませんが,「失業⇒生活苦⇒自殺」という経路を想定するのは容易いでしょう。日本は,それが非常に強い社会のようです。</div><div><br /></div><div> 上記は2つの国の比較ですが,分析対象の国をもう少し増やしてみましょう。欧米主要国について,最初の表と同じようなデータをそろえ,相関係数を算出しました。8か国の相関係数を棒グラフにすると,以下のようになります。ツイッターで発信したグラフはこれです。</div><div><br /></div><div> 瑞典はスウェーデン,西はスペインです。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj4Xwl6ZwyJ_CtDiFwJML04lnchLNcvJjLkzYxmN9cFYZhslenweSYySI03uYv0Grf2rgvq8JMlFc7kkMTngjL7OteQXnsX5oazQF8N1EkP77QBsmUA_MF-bD1E01pJK6mHWfAAZfL92GZ2DAT96B-cftvTcf2WNh9wNZU54pZVRpatkI11iQwaOMWZDO7-/s429/C.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="429" data-original-width="379" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj4Xwl6ZwyJ_CtDiFwJML04lnchLNcvJjLkzYxmN9cFYZhslenweSYySI03uYv0Grf2rgvq8JMlFc7kkMTngjL7OteQXnsX5oazQF8N1EkP77QBsmUA_MF-bD1E01pJK6mHWfAAZfL92GZ2DAT96B-cftvTcf2WNh9wNZU54pZVRpatkI11iQwaOMWZDO7-/s16000/C.png" /></a></div><div><br /></div> 主要国の比較ですが,どうでしょうか。失業と自殺が強く関連する社会もあれば,そうでない社会もある。数としては後者が多く,<b>日本の特異性</b>が際立ちます。全世界でみても,失業が最も重くのしかかる社会ではないでしょうか。<div><br /></div><div> 背景として,大きく3つが考えられるでしょう。一つは,日本男性の生活が仕事一辺倒になっていること。自我の拠り所にもなっていて,それを失うことのダメージは計り知れない。日ごろから家庭や地域での暮らしをないがしろにしているので,職場に代わる,自我を安定させるための集団も見いだせない。</div><div><br /></div><div> 2つ目は,社会保障が不備であること。中高年男性が失職した場合,再就職が容易でなく,貯金がない,頼れる親族がいないという場合でも,生活保護を受けるのも難しい。上のグラフをみると,フランスでは相関係数がマイナスにふれていて,失業率が高い時期ほど自殺率が低い,という傾向すらあります。失業保険が手厚く,若者もガンガン生活保護を受けると聞きますが,そういう要因でしょうか。</div><div><br /></div><div> 最後は,性役割分業です。日本は「男は仕事,女は家庭」という性役割分業が強く,女性に家事や育児・介護等の負荷がかかる一方で,男性には「一家の稼ぎ手」という役割が強く期待されます。それを遂行できないと,一家が直ちに生活苦に陥り,周囲からの目線も厳しく,当人も自責の念にかられ,最悪の結果になってしまう。</div><div><br /></div><div> 簡単に言えば,生活(役割)の偏り,社会保障の不備,ということです。これには国ごとの濃淡がありますが,日本は際立って「濃」であることが,失業と自殺の相関関係から知られます。</div><div><br /></div><div> 日本社会の「病」。治療の余地は大ありです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-79148937217696985522023-07-24T14:23:00.000+09:002023-07-24T14:23:01.604+09:00フリーランスの時給分布<p> 2022年の『就業構造基本調査』の結果が出ました。</p><p> 働く人の稼ぎを知るならコレです。厚労省の『賃金構造基本統計』や,国税庁の『民間給与実態調査』は,一定規模以上の会社に勤める雇用労働者に限定されますが,『就業構造基本調査』では,自営等も含む全ての労働者の稼ぎを知れます。</p><p> 5年に1回実施される調査で,集計の仕方も年々改善されてきています。2022年調査では,従業地位のカテゴリーとして「<b>フリーランス</b>」が新設されています。フリーランスの働き方をしている人が増えているためでしょう。</p><p> 従業地位と年収のクロス表により,フリーランスの稼ぎをみてみると,まあ低いこと。かといって,労働時間が短いわけではありません。経験者は分かるかと思いますが,フリーランスの場合,仕事時間に際限がなくなりがちです。</p><p> <b>時間給</b>にすると,まあ悲惨なデータが出てくるだろうと前々から思っていましたが,2022年の『就業構造基本調査』のデータが出たのを機に,数値化をしてみようと思います。使うのは,<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004008153" target="_blank">「年間就業日数 × 週間就業時間 × 年収」</a>の3重クロス表です。</p><p> 3つの変数のカテゴリーは,以下のようになっています。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiRt4hCagXcI0b8gS0TwbTqHU8sQIWUVT8SNlmPcufg3iwAXm-mPtNARkbrclJVhGBu1xsmMWEGvX09d6fez9BZG8d7NpabCyvfBgVF1bUc_R7AzUqJFSU1PdsUt0kvYkz5G80sFJ_BkKNbzgA3hjfnaIp28SYEI2LZGsVn2dlFq8Xe2of4YxLn25lYDT8O/s451/%E6%99%82%E7%B5%A6A.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="451" data-original-width="358" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiRt4hCagXcI0b8gS0TwbTqHU8sQIWUVT8SNlmPcufg3iwAXm-mPtNARkbrclJVhGBu1xsmMWEGvX09d6fez9BZG8d7NpabCyvfBgVF1bUc_R7AzUqJFSU1PdsUt0kvYkz5G80sFJ_BkKNbzgA3hjfnaIp28SYEI2LZGsVn2dlFq8Xe2of4YxLn25lYDT8O/s16000/%E6%99%82%E7%B5%A6A.png" /></a></div><div><br /></div> 年間就業日数は3カテゴリー,週間就業時間は14カテゴリー,年収は16のカテゴリーとなっています。よって3つの変数のクロス表は,3×14×16=672のセルからなります。<div><br /></div><div> 年間260日・週42時間就業,年収630万円の普通のサラリーマンは,上記の赤字をかけ合わせたセルに入ることになります。このセルに入る人たちの時間給を,<b>階級値</b>(真ん中の値)を使って計算します。年間就業日数は275日,週の就業時間は42.5時間,年収は650万円と一律にみなすわけです。</div><div><br /></div><div> この仮定をおくと,1日あたりの就業時間は,週の就業時間(42.5時間)を5日で割って8.5時間。年間の就業時間は,8.5時間×275日=2337.5時間となります。年収650万円をこれで割って,<b>時間給は2781円</b>となる次第です。まあ,まともな会社の正社員ならこんなものでしょうね。</div><div><br /></div><div> 他のセルについても,同じやり方で時間給を算出し,672のセルを全部埋めた時給表をつくります。それを参照し,各セルに入っている労働者の数を,時給の度数分布表に割振って時間給の分布を出す,という段取りです。</div><div><br /></div><div> いささか乱暴ではありますが,私はこの方法にて,正規職員,非正規職員,フリーランスの時給分布を出しました。年間200日以上の規則的就業をしている者で,時給を出せたのは正規職員が3261万人,非正規職員が1049万人,フリーランスが115万人です。</div><div><br /></div><div> 完成した分布表は以下になります。昨日,ツイッターで発信したものです。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjvTDD2UKbkKLvomhbd4fudhj9rqUDBuF4q8wAA9xqA1CVcwWaKGcRA8tzXaJKrV7fg_MmFl3IaLezrizxB5Txq88mKP5mObLVWdaO1PA7oVJmZIvlpyjVQ_Fo0QwHE5HLBroGBrgBKoSM3j-Nsl6HByw1pWjBCfk84JofJWT19CSjCTngGMyIaDisMEt5Q/s437/%E6%99%82%E7%B5%A6B.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="437" data-original-width="391" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjvTDD2UKbkKLvomhbd4fudhj9rqUDBuF4q8wAA9xqA1CVcwWaKGcRA8tzXaJKrV7fg_MmFl3IaLezrizxB5Txq88mKP5mObLVWdaO1PA7oVJmZIvlpyjVQ_Fo0QwHE5HLBroGBrgBKoSM3j-Nsl6HByw1pWjBCfk84JofJWT19CSjCTngGMyIaDisMEt5Q/s16000/%E6%99%82%E7%B5%A6B.png" /></a></div><br /><div> 3つのグループでは,分布がかなり異なっています。非正規とフリーランスは,低い方のボリュームが多く,時給1000円未満の率は,正規が10.5%であるのに対し,非正規は41.6%,フリーランスは38.8%です。</div><div><br /></div><div> フリーランスでは,最も低い500円未満が18.8%と最も多くなっています。ほぼ5人に1人が,超悲惨な働き方をしていると。仕事時間が際限なく長くなりがちな一方で,もらえる対価が少ないためです。</div><div><br /></div><div> なお,性別のデータも出せます。予想通り,男性より女性の分布が下に偏しているのですが,フリーランスにあってはそれが顕著です。男性フリーランス89万人,女性フリーランス26万人の時給分布を出し,グラフにすると,以下のようになります。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiWlmqAo4iprr9nZkIsh5wPc8v80mwHA-3cYSrmN8dDvllqrzByskiV6q7YpO7KPuhxRJqQBmHQ60ybDaOtDB75xebc3Nxbf3HTNsdFm88Y41ET9mEc7-2TdwBgQUco-30oVSaajucLXkgrjvQ0lLgqoh61IN4HPF-pizosAS9QhVFAQfgIwDW5IL-uOX04/s486/%E6%99%82%E7%B5%A6C.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="486" data-original-width="403" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiWlmqAo4iprr9nZkIsh5wPc8v80mwHA-3cYSrmN8dDvllqrzByskiV6q7YpO7KPuhxRJqQBmHQ60ybDaOtDB75xebc3Nxbf3HTNsdFm88Y41ET9mEc7-2TdwBgQUco-30oVSaajucLXkgrjvQ0lLgqoh61IN4HPF-pizosAS9QhVFAQfgIwDW5IL-uOX04/s16000/%E6%99%82%E7%B5%A6C.png" /></a></div><div><br /></div> フリーランスの時給ピラミッドですが,いかがでしょうか。分布の棒を男女で塗り分けると,女性フリーランスにあっては,時給の最下層が多いことが分かります。全体の33.8%,<b>3人に1人が時給500円未満</b>です。<div><br /></div><div> 報酬の不当な減額,さらには不払いなんてのもあるでしょう。時給500円未満が最多,まったくもって目も当てられません。</div><div><br /></div><div> その一方で高収入の人もいて,フリーランスでは「上」と「下」に割れている度合いが高いのも特徴といえます。</div><div><br /></div><div> これからは,組織に属さない「個」の働き方が増えてくる,今のままではいけないと,フリーランス保護法なるものもできていますが,2022年の実態はこうです。文書での発注義務,一方的な報酬減額禁止など,法律の遵守を国としても徹底させないといけません。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-90357421816402635852022-12-21T22:36:00.001+09:002022-12-21T22:36:18.358+09:00都道府県別の大学進学率(2022年春)<p> 久々のブログ更新になります。今年の『学校基本調査』の確報結果が出ましたので,今年春の都道府県別の大学進学率を計算してみようと思います。</p><p> 文科省『学校基本調査』の年次統計をみると,今年春の大学進学率は<b>56.6%</b>と報告されています(<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011528&cycle=0&tclass1=000001021812&tclass2val=0" target="_blank">コチラ</a>の表9)。おそらく,この数字の意味を正しく理解している人はごくわずかでしょう。大学進学率とは,同世代の中で大学に進学した人が何%かです。単純なようですが,計算の仕方はちょっと混み入っています。分子,分母を順に説明します。</p><p> まず分子には,今年春の4年制大学入学者数を充てます(以下,4年制大学を大学と言います)。今年春の大学入学者は63万5156人(A)。</p><p> 分母は,今年春の推定18歳人口を使います。高校卒業者としたいところですが,同世代の中には高校に行かない人もいますので,これはNG。そこで3年前の①中学校卒業者,②中等教育前期課程卒業者,③義務教育学校卒業者の合算を使います。3年経った今年春の推定18歳人口と見立てるわけです。</p><p> 3年前(2019年)の『学校基本調査』によると,①は111万2083人,②は5346人,③は3856人。これらを合算し,今年春の18歳人口は112万1285人(B)と見積もられます。</p><p> これで分子のA,分母のBが得られましたので,2022年春の18歳人口ベースの大学進学率は割り算をして,56.6%となる次第です。文科省の報告書に出ている56.6%と合致しますね。分子には過年度卒業生(浪人経由の大学入学者)も含みますが,今年春の現役世代からも,浪人を経由して大学に入る人が同じくらい出ると仮定し,両者が相殺するとみなします。</p><p> 以上が,公的に採用されている同世代ベースの大学進学率の計算方法です。今の日本では同世代の56.6%,2人に1人が大学に行く。メディアでよく言われていることですよね。</p><p>********************</p><p> さて,本題はここからです。上記の56.6%は全国の数値ですが,地域別にみると大きな開きがあるであろうことは容易に推測されます。『学校基本調査』の結果概要には大学進学率の全国値しか出てませんが,<b>都道府県別</b>に同じ数値を算出する方法があります。今年春の都道府県別の大学進学率を独自に計算してみましょう。</p><p> 私の郷里の鹿児島県を例にします。本日公開された『学校基本調査』(高等教育機関編)に,大学入学者の数を,出身高校の所在地別に知れる統計表が出ています(<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011528&cycle=0&tclass1=000001172319&tclass2=000001172426&tclass3=000001172427&tclass4=000001172429&tclass5val=0" target="_blank">コチラ</a>の表16)。これによると,今年春の大学入学者のうち,鹿児島県の高校出身者は6521人(過年度卒業生含む)。これが分子です。</p><p> 分母には,今年春の同県の推定18歳人口を充てるわけですが,3年前(2019年)の鹿児島県の中学校卒業者,中等教育前期課程卒業者,義務教育学校卒業者の合計は1万5445人。これが分母です。</p><p> よって,今年春の鹿児島県の18歳人口ベースの大学進学率は,6521/1万5445=42.2%となります。先ほどみた全国値(56.6%)よりだいぶ低いですね。</p><p> このやり方で,今年春の47都道府県の大学進学率を計算してみました。ジェンダー差もみたいので,男子と女子に分けた進学率も出しました。以下に掲げるのは,結果の一覧です。このデータは文科省の資料に出ているものではなく,私が独自に計算したものであることを申し添えます。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjlDxyEmVl_hbBxVxuQYiOa19dYD_eK9fY9DaCoqpmqePPJatzFpV1nNQD8x_egMWxgRelP-CMvTWkLUNBJaCSZtGwaWNhTZ0mACKjFslI7aon9r3wQGUWU4NqXiMF1I23O-d5157AUlgT-K6VFQKIcwzPS6W_X4HQeW3-lOja9TvucgcRpQDyMqwJsuA/s893/%E5%A4%A7%E5%AD%A6A.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="893" data-original-width="313" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjlDxyEmVl_hbBxVxuQYiOa19dYD_eK9fY9DaCoqpmqePPJatzFpV1nNQD8x_egMWxgRelP-CMvTWkLUNBJaCSZtGwaWNhTZ0mACKjFslI7aon9r3wQGUWU4NqXiMF1I23O-d5157AUlgT-K6VFQKIcwzPS6W_X4HQeW3-lOja9TvucgcRpQDyMqwJsuA/s16000/%E5%A4%A7%E5%AD%A6A.png" /></a></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><span style="text-align: left;"><br /></span></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: justify;"><span style="text-align: left;"> 黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。最高は東京の76.8%,最低は秋田の39.6%となっています。40ポイント近い開きです。</span></div><p> 全国値は56.6%,「今では,同世代の2人に1人が大学に行く」なんて言われますが,50%を超えるのは24県,全都道府県の半分です。大学進学率が8割近い東京にいると,中学の同級生のほとんどが大学に行くなんて思いがちですが,地域別にみると,そうではない県のほうが多し。これが意味するところは,大学進学チャンスには大きな地域格差がある,ということです。<br /></p><p> 「大学進学率の都道府県差は,各県の生徒の自発的な進路選択の結果だ」などと考える,おめでたい人はいないでしょう。一番低い秋田は,子どもの学力上位常連県ですよね。同じく学テ上位常連の北陸3県の大学進学率も高い方ではありません。大学進学率が低い県が,表の上と下,東北や九州に多いのも気になる。</p><p> 家庭の所得水準が低い,自宅から通える大学が少ない…。能力や意向とは違う,各県の社会経済要因に由来するであろうことは容易に推測できます。たとえば県民所得と絡めてみると,右上がりの傾向がみられます。所得が高い県ほど,大学進学率が高い傾向です。大学の学費は高額ですので,こうした費用負担の要因が関与するというのは道理です。</p><p> 親年代の大卒率とは,もっと強く相関しています。2020年の『国勢調査』から,45~54歳の大学・大学院卒率を都道府県別に出すと,東京は42.1%,秋田は15.5%(<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003450581" target="_blank">コチラ</a>より算出)。18歳生徒の親御さん年代の大卒率ですが,違いますね。</p><p> 全県のデータによる相関図は以下のようになります。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgwpuLvA5rxXRoD8I6cnB8s5w93WdVcUnmFv0y271qws9BGOk_brgZTFvwuWLWCZlSN9mXyHYX4fmdSKsPy-uozZKnI6V4yLTHMiHKZDeKzPDdDT7Db3reKPWkxl06n8iJZg2Zi147mrfzM2VHsIMeuW3q0oYd0d8Swo-YpAHhQXbf-jRvv92crdyLzvA/s556/%E5%A4%A7%E5%AD%A6B.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="556" data-original-width="431" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgwpuLvA5rxXRoD8I6cnB8s5w93WdVcUnmFv0y271qws9BGOk_brgZTFvwuWLWCZlSN9mXyHYX4fmdSKsPy-uozZKnI6V4yLTHMiHKZDeKzPDdDT7Db3reKPWkxl06n8iJZg2Zi147mrfzM2VHsIMeuW3q0oYd0d8Swo-YpAHhQXbf-jRvv92crdyLzvA/s16000/%E5%A4%A7%E5%AD%A6B.png" /></a></div><div><br /></div> 明瞭なプラスの相関関係です。相関係数は+0.8を越えます。大卒の親は子どもの進学を肯定的にとらえやすい,というのもあるでしょう。ホワイトカラー職に就いている人が多く,大卒学歴の価値を認識している度合いが高いともいえます。<div><br /></div><div> 非大卒の親は,子が「大学に行きたい」と言っても,「高い金出して行かなくても…」と止めてしまいがち。近くに大学がなく,下宿費まで出さないといけないとなったら,なおさらです。</div><div><div><br /></div><div> 所得のような費用負担能力だけでなく,こうした文化的要因もあり得る。だいぶ前,東工大が,非大卒の親をもった学生向けの給付奨学金制度を創設すると発表し,注目を集めました。これなどは,保護者のモチベーション格差を埋める手立てと考えられます。</div><div><br /></div><div> あと大きいのは,地方では自宅から通える大学が少なく,都市部に出る下宿費もプラスで負担しなければならないことです。バカ高の学費に加え,仕送りの負担も加わる。所得水準が低い地方の家庭にとって,これは重い。東大は女子学生の家賃補助をしていますが,こういう支援も求められるところです。</div><div><br /></div><div> 他にもいろいろ要因はありますが,ここで出した大学進学率の都道府県差は,社会経済要因の影響を強く被った「格差」としての性格を持つ。この点を押さえていただきたいと思います。本ブログでは,県別の大学進学率を毎年出していて,私が考えるところは述べています。読んでみたいという人は,左上の検索窓で「都道府県 大学進学率」という言葉を入れ,記事を探してみてください。</div><div><br /></div><div> 最後に1点。最初の表を見てほしいのですが,沖縄県の大学進学率が50%となっています。昨年の43%と比して,かなり伸びています(2021年春の県別大学進学率は<a href="http://tmaita77.blogspot.com/2021/12/2021.html" target="_blank">コチラ</a>)。消費税の増税分を財源とした,高等教育無償化や給付奨学金制度の効果でしょうか。沖縄県の大学生の給付奨学金利用率は,47都道府県の中で最も高し。</div><div><br /></div><div> 本日の<a href="https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/post-100415.php" target="_blank">ニューズウィーク記事</a>で書きましたが,奨学金は教育の機会均等に寄与しているのは事実です。問題は貸与型の比重が未だに高いことで,真の機会均等実現の助けとなる,給付型の比重を高めてほしいと願います。</div></div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-84037833972778914962022-09-12T13:56:00.001+09:002022-09-12T13:56:47.716+09:00未婚者と有配偶者の死亡率比較(死因別)<p> 新居に引っ越して,今日で2か月です。1ルームですが,家具の配置を工夫してどうにかしています。狭いだけにエアコンの効きはよく,ガスは都市ガス,そして無料wi-fiの部屋ですので,基礎経費は前居と比して安くなり,助かっています。</p><p> 駅チカで,横須賀中央まで15~20分ほどで出れるようになったのもいい。横須賀の名景として知られる馬堀海岸も近くで,毎日,海風に吹かれながら,ここをウォーキングしています。</p><div style="text-align: left;"> このように生活環境はかなり変わりましたが,独り身の自宅仕事は相変わらずで,生活に「他律」というものがなく,気の向くままに暮らしています。食事も「孤食」はもちろん,「固食」にもなりがちで,茶色いメニューが並んだ食卓に向かっては,「いかんなあ」と漏らすこともしばしばです。家族持ちなら,こういうことはないでしょうけどね。</div><p> 厚労省の『人口動態統計』をみてみると,私くらいの中年男性の死亡率は,既婚者より未婚者で高くなっています。未婚男子は不健康な食生活になりやすいからでしょうが,細かい死因別の死亡統計を比較してみると,この推測が確からしく思えてきます。</p><p> 『人口動態統計』から,主要死因の年間死亡者数を配偶関係別に知ることができます。2020年だと,<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450011&tstat=000001028897&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000001053058&tclass2=000001053061&tclass3=000001053065&result_back=1&tclass4val=0" target="_blank">コチラのサイト</a>の下巻表7です。45~64歳の男女について,未婚者と有配偶者に分けて,主要死因の死亡者数を取り出すと以下のようになります。未婚者とは,一度も結婚したことがない人です。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgWm1vOk4DK-iJbVjTmPQH_ok81BA5Q-UBMX_BfVZu1jPMc_Ir9s9gdQsRX2Xv8UAOqwdZt2qRnAh7lMThPItBgLspYDRONUkESl3wv0UVy-Y0a7MvY1tfm9TaFxEkS6YWXeNmmEAXbjDartWXnbLzZgnMbf5qnYUPjJ0qZ7OtrK3jaIe7dZ7S6vjTWjw/s421/%E6%AD%BB%E5%9B%A0A.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="403" data-original-width="421" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgWm1vOk4DK-iJbVjTmPQH_ok81BA5Q-UBMX_BfVZu1jPMc_Ir9s9gdQsRX2Xv8UAOqwdZt2qRnAh7lMThPItBgLspYDRONUkESl3wv0UVy-Y0a7MvY1tfm9TaFxEkS6YWXeNmmEAXbjDartWXnbLzZgnMbf5qnYUPjJ0qZ7OtrK3jaIe7dZ7S6vjTWjw/s16000/%E6%AD%BB%E5%9B%A0A.png" /></a></div><div><br /></div> 男性をみると,死亡者総数は未婚者が2万4624人,有配偶者が2万8258人となっています。後者の方がベース人口の上で多数なのですから,当然といえばそうです。<div><br /></div><div> しかし死因別にみると,「未婚者 > 有配偶者」のものが多くなっています。肺炎の死亡者は未婚者が750人,有配偶者が288人です。糖尿病や高血圧疾患による死亡者数も,未婚者は有配偶者の場合以上です。ベース人口の差を考慮すると,これらの病で命を落とす確率は,未婚者が有配偶者よりもだいぶ高いことになります。</div><div><br /></div><div> 女性はこのような差はなく,全ての死因で「未婚者 < 有配偶者」となっています。ベース人口の差を反映しています。どうやら,懸念される「未婚者 > 有配偶者」の差は,とりわけ男性で顕著であるようです。ベース人口で割った死亡率にして,差を浮き彫りにしてみましょう。</div><div><br /></div><div> 2020年の『国勢調査』によると,同年10月時点の45~64歳男性(日本人)の未婚者は347万3234人,有配偶者は1103万8376人となっています(<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003445236" target="_blank">コチラの統計表</a>)。したがって,トータルの死亡率は以下のようになります。ベース10万人あたりの死亡者数です。</div><div><br /></div><div> 未婚者=2万4624人/347万3234人=709.0人</div><div> 有配偶者=2万8258人/1103万8376人=256.0人</div><div><br /></div><div> 同じ中高年男性でも,未婚者の死亡率は有配偶者の2.8倍ということになりますね。まあ分かり切ったことですが,死因別にみると,倍率が大きいのが出てきます。上表の各死因の死亡者数を,ベース人口で割った死亡率に換算し,「未婚者/有配偶者」の倍率が高い順に配列すると以下のごとし。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhpiiQxg1P90DtBLYzY3ceUI2fU7a4TCiPJaRsUCJk4iHnxOroNyimBsVnSjuNVQTSGIERtTk_S2Iw-g-iVu8A-2qfRF3w-miuK5eGrTAolKZy_U46wLObx5-9LSH6LdOYntoBquy8w7MeijYh-kbV0QymSx7j4YlmiLcrXQXIX6AgNUIbkjCdoT3Aeng/s411/%E6%AD%BB%E5%9B%A0B.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="411" data-original-width="382" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhpiiQxg1P90DtBLYzY3ceUI2fU7a4TCiPJaRsUCJk4iHnxOroNyimBsVnSjuNVQTSGIERtTk_S2Iw-g-iVu8A-2qfRF3w-miuK5eGrTAolKZy_U46wLObx5-9LSH6LdOYntoBquy8w7MeijYh-kbV0QymSx7j4YlmiLcrXQXIX6AgNUIbkjCdoT3Aeng/s16000/%E6%AD%BB%E5%9B%A0B.png" /></a></div><div><br /></div> 肺炎による死亡率は未婚者が21.6,有配偶者が2.6。前者は後者の<b>8.3倍</b>です。糖尿病は7.5倍,高血圧は6.8倍,腎不全は6.4倍の開きが出ています。<div><br /></div><div> 肺炎はタバコ,糖尿病は甘いもの,高血圧や腎不全は塩分の摂り過ぎが原因とみられますが,こういう習癖になりやすいのは,食を「他律」されることの少ない未婚者でしょう。とりわけ独り身の男性ではそうです。</div><div><br /></div><div> 46歳の単身未婚男性の私は,まさに「懸念層」なんですが,思い当たる節は大有りですね。</div><div><br /></div><div> ちなみに死亡者(50歳以上)の年齢の中央値を計算してみると,男性の未婚者は69.95歳,有配偶者は81.79歳です。未婚者は既婚者より,12年ほど早死にです。女性では傾向が反対です。上記の死因別のデータをみると,さもありなんですね。</div><div><a href="https://twitter.com/tmaita77/status/1568820600323604483" target="_blank">https://twitter.com/tmaita77/status/1568820600323604483</a><br /></div><div><div><br /></div><div> うーん,年金の恩恵にあまりあずかれそうにないので,保険料を払いたくないなあ。</div><div><br /></div><div> 命というのは,生活習慣と関連している。逆に言えば,きちんと自分を律することができれば好ましい方向に向くということでもあります。これから「食欲の秋」ですが,頭の片隅に置いておきたいことです。</div></div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-75776224563535279882022-08-27T14:07:00.002+09:002022-09-02T21:34:44.099+09:00奨学金利用率の地域差<p> 米国では,奨学金返済に苦しんでいる人を救うべく,1人あたり1万ドル,借入額をチャラにするそうです。日本円にして120万円くらいでしょうか。私も現在返済中ですが,これをやってくれたらどんなに有難いことかと思います。</p><p> 昔に比して大学進学率が上昇し,高等教育の機会が幅広い階層に開かれたといいますが,奨学金という名の借金を負わせることで,それが進められてきたのも事実です。よくないことに,有利子の比重も増しています。</p><p> 私の頃は,大学生の奨学金利用率は1割ほどで,ほとんどが無利子だったのですが,今では利用者数が膨れ上がり,無利子より有利子の枠が多くなっています。返済義務のない給付型も創設されましたが,利用者数では貸与型が大半を占めています。</p><p> 今の大学生は,どれほど奨学金を利用しているのでしょう。日本学生支援機構のHPに当たってみると,この点の情報は公開されています(<a href="https://www.jasso.go.jp/shogakukin/chihoshien/sosei/zisseki.html" target="_blank">コチラ</a>です)。2020年度の大学学部学生の給付人員は,給付型が20万2030人,第一種貸与型(無利子)が34万6508人,第二種貸与型(有利子)が53万8880人です。同年5月時点の大学学部学生数は262万3572人(文科省『学校基本調査』)。</p><p> これらの情報を表に整理すると以下のごとし。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhlEgpGczHeWkc8yh6PxkJfidNhL1O3gC9GmsOyCuxrBwhmcSJaeeSq24Noi1sclUHUhKzmMZ7mVuSd_VDUo7uI5qa3J5d73zHeifpn6ywVsbN0ZSWkxaiO4z8KbejRJ-ZyN1ZDiOf7sgRmDyll12w93Ue9B17rbrwhzqObfdm0ANnYtqE81Y7tZtM4ow/s328/%E5%A5%A8%E5%AD%A6%E9%87%91A.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="265" data-original-width="328" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhlEgpGczHeWkc8yh6PxkJfidNhL1O3gC9GmsOyCuxrBwhmcSJaeeSq24Noi1sclUHUhKzmMZ7mVuSd_VDUo7uI5qa3J5d73zHeifpn6ywVsbN0ZSWkxaiO4z8KbejRJ-ZyN1ZDiOf7sgRmDyll12w93Ue9B17rbrwhzqObfdm0ANnYtqE81Y7tZtM4ow/s16000/%E5%A5%A8%E5%AD%A6%E9%87%91A.png" /></a></div><div><br /></div> 奨学金を利用している大学生は,給付,無利子貸与,有利子貸与の合算でみて108万7418人。複数のタイプを重複利用する学生もいますので,<b>延べ数</b>であることに留意してください。まあ,そういう学生は少数でしょうから,奨学金を使っている学生の頭数の近似数とみてもよいでしょう。<div><br /></div><div> 全学生に占める割合は,<b>41.4%</b>となります。最近では,大学生の4割(5人に2人)が奨学金を使っているのですね。そのうちの半分は,有利子の貸与です。奨学金と呼べた代物ではなく,まぎれもなく「ローン」です。<br /><p> 学生支援機構のHPでは,47都道府県別の給付人員も公表されています(集計方法は,学校の所在地による)。分母となる全学生数は,『学校基本調査』をみれば分かります。</p><p> 私はこれらの情報をもとに,大学学部学生の奨学金利用者率を都道府県別に計算してみました。奨学金を利用している学生(給付,無利子貸与,有利子貸与の合算)が,全学生の何%かです。以下の表は,47都道府県の数値を高い順に並べたものです。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh6wfTxpgNwvF0CanPLlSNdfVKlV8L4Oq43T2BN3HEBfuB8S7G79kte6aTiJv79cJ6zdtApqCJpCdibOiPh_LixZSa5flzvhBq1jmnRD2VADCNenbQnmqm9ozY3f_d53zU4IULSyNGwsGqtEXlhec0FqUHR-1fEnpMyuldQj0K-1ooL_iU6QN6F-8_XTQ/s550/%E5%A5%A8%E5%AD%A6%E9%87%91B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="550" data-original-width="304" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh6wfTxpgNwvF0CanPLlSNdfVKlV8L4Oq43T2BN3HEBfuB8S7G79kte6aTiJv79cJ6zdtApqCJpCdibOiPh_LixZSa5flzvhBq1jmnRD2VADCNenbQnmqm9ozY3f_d53zU4IULSyNGwsGqtEXlhec0FqUHR-1fEnpMyuldQj0K-1ooL_iU6QN6F-8_XTQ/s16000/%E5%A5%A8%E5%AD%A6%E9%87%91B.png" /></a></div><div><br /></div> 大学学部学生のうち,奨学金を使っている人が何%かですが,地域差がありますね。最高は沖縄の66.1%,最低は滋賀の17.9%です。滋賀では,自宅から京都の大学に通う学生が多いのでしょうか。</div><div><br /></div><div> 首都圏でも,奨学金を使っている学生は比較的少なくなっています。自宅から通うことが容易であることもあるでしょう。</div><div><br /></div><div> その一方で,奨学金の利用者率が50%を超える県が20あります。私の郷里の鹿児島は53.2%で,沖縄,青森,宮崎は6割超えです。所得水準が低いので,奨学金を借りないと進学が叶いにくいのでしょう。都市部の大学に出た場合は,下宿費用も加算されますしね。</div><div><br /></div><div> 上表のランキングを眺めていると,各県の所得水準と相関しているように思えますが,どうなのでしょう。2017年の総務省『就業構造基本調査』から,45~54歳(大学生の親年代)の男性有業者の所得分布を県別に出せます(<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003222823" target="_blank">コチラの統計表</a>)。これをもとに中央値を計算すると,東京は633万円ですが,沖縄は332万円。倍近くの差です。</div><div><br /></div><div> こういう経済条件の差が,学生の奨学金利用に投影されていないか。横軸に親年代の所得中央値,縦軸に大学生の奨学金利用者率(上表)をとった座標上に,47都道府県のドットを配置すると以下のようになります。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgW1EIg9zFGatZWVr70cuTT0TsvkKFzh7Yymvep2HpkrXuHPC1jRPvu3Im05jDOJ2VC6S1bINTNZ6zHgj8Cp5wgFltcXesUERnFwSUD_R65SShyzJPQ6_i0SmreUGIrtDrqBRj-3NWojVSzzP3skWW8KHTlenPOPRVtrmKlZ50G5kVUKvewD9sueIndsg/s522/%E5%A5%A8%E5%AD%A6%E9%87%91C.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="522" data-original-width="427" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgW1EIg9zFGatZWVr70cuTT0TsvkKFzh7Yymvep2HpkrXuHPC1jRPvu3Im05jDOJ2VC6S1bINTNZ6zHgj8Cp5wgFltcXesUERnFwSUD_R65SShyzJPQ6_i0SmreUGIrtDrqBRj-3NWojVSzzP3skWW8KHTlenPOPRVtrmKlZ50G5kVUKvewD9sueIndsg/s16000/%E5%A5%A8%E5%AD%A6%E9%87%91C.png" /></a></div><div><br /></div> 右下がりの負の相関関係が観察されます。父親年代の所得が低い県ほど,奨学金の利用率が高い傾向です。相関係数は,<b>マイナス0.71861</b>にもなります。<div><br /></div><div> 地方(出身)の学生の奨学金利用率が高い事情は,上に述べたようなことだと思いますが,借金を負わせて(無理をして)進学させてるんだな,という思いを禁じ得ません。</div><div><br /></div><div> 大学進学率50%超,高等教育のユニバーサル段階に達している日本ですが,(田舎の)学生に借金を負わせることで成り立っていると。地方は所得水準も低いので,卒業後に返していくのも大変です。数百万の借金を背負っていることは,結婚の足かせにもなるでしょう。前から申していますが,奨学金の利用増加は,未婚化・少子化にもつながっていると思うのです。</div><div><br /></div><div> 高等教育の機会を若者に開くのはいいですが,家計(私費)依存の形でそれを推し進めると,国にとっても個人にとってもよからぬことになる。私費依存の教育拡張の病理です。高等教育への公的支出の対GDP比は,日本は諸外国と比して低いのはよく知られています。真のスカラシップ(給付型)を拡張する余地は大有りです。</div><div><br /></div><div> 並行して,貸与型の奨学金は「学生ローン」と名称変更すべきです。これだけでも,安易な借り入れを防止することができます。奨学金という美名で釣って借金を負わせるなど,国のすることではありません。実際に勘違いする人もいて,(下の)私大で教えていた時,「奨学金って返すんですか?」と,真顔で驚く学生に会ったことがあります。</div><div><br /></div><div> 今回は,地域別の大学生の奨学金利用者率を試算してみました。県によっては,大学生の5割,6割が数百万の借金を背負って社会に出ていく事態になっていると。若者が借金漬けになっているような地域では,希望も未来もあったものではありません。</div><div><br /></div><div> 米国のような奨学金の一部チャラ政策をしてみるのもいい。それで足かせが外れ,婚姻率の上昇にもなればしめたものです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-37805114061878722782022-06-21T16:34:00.000+09:002022-06-21T16:34:12.545+09:00小学校卒の人数<p> 2020年の『国勢調査』の学歴集計が公表されました。5年間隔で実施される基幹統計調査ですが,西暦の下一桁がゼロの年は学歴も調査されます。</p><p> 2020年調査では,小学校卒と大学院卒というカテゴリーが新設されています。時代と共に精緻化されているのは,好ましいことです。メディアでは前者の数が注目され,「小学校卒80万人」という見出しが,大手媒体の記事に踊っています。</p><p> これについて「甘いな」と思うところがありますので,ここにて書かせていただこうと思います。</p><p> まずは原資料から,15歳以上の学校卒業者の学歴回答分布を拾ってみましょう。<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003450581" target="_blank">コチラの統計表</a>で呼び出せます。それによると,小学校卒が80万4293人,中学校卒が1126万41239人,高校・旧中卒が3784万5056人,短大・高専卒が1389万514人,大学卒が1983万9068人,大学院卒が206万874人,不詳が1505万9305人です(合計1億76万3239人)。</p><p> なるほど,小学校卒は確かに80万人ほどです。しかし学歴不詳者も約1506万と,かなりいます。全体の15%ほどです。この中にも,小学校卒の人がいるでしょう。<b>学歴は不詳(回答拒否等)が多い</b>ので,この部分をオミットするわけにはいきますまい。</p><p> では,学歴不詳者の中に小学校卒は何人いるか。この点を推し量り,上記の80万4293人に加算する必要があります。いわゆる,不詳補完推計というものです。以下の表をもとに,手順を説明します。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiSdSeu2JTsyevobRQMksfgkMn3A1VfYX9mQxW56-SDPZ9DCa4GOJeCsMM4fxYRsbhFYwOxVRTJmHY-bJkfhVjbhyfRp5OLirYtk40jayU-B0BPi_eaEAZxCF9GLcqBGVLkChFPlv38hz-s9wToP6n2qIh06H8H4FCOx3VOH5WNoqBDY0kIXJY0Lm-ppQ/s436/%E5%B0%8F%E5%8D%92A.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="327" data-original-width="436" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiSdSeu2JTsyevobRQMksfgkMn3A1VfYX9mQxW56-SDPZ9DCa4GOJeCsMM4fxYRsbhFYwOxVRTJmHY-bJkfhVjbhyfRp5OLirYtk40jayU-B0BPi_eaEAZxCF9GLcqBGVLkChFPlv38hz-s9wToP6n2qIh06H8H4FCOx3VOH5WNoqBDY0kIXJY0Lm-ppQ/s16000/%E5%B0%8F%E5%8D%92A.png" /></a></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><br /></div><div> まずは,学歴回答者(小学校卒~大学院卒の合算)の中で,各学歴カテゴリーの人が何%かを出します。表のb欄がそれで,小学校卒は0.938%です。この割合を学歴不詳者にかけると14万1325人。この数が,学歴不詳者の中での小学校卒と推測されます。</div><div><br /></div><div> 要するに,学歴回答者の中での割合でもって,学歴不詳者を各学歴カテゴリーに割り振る(<b>按分する</b>)わけです。その数は,表のc欄に示されています。</div><div><br /></div><div> よって,統計表で分かっている小学校卒80万4293人に,この割振り分(14万1325人)を足して,最終学歴が小学校卒の人の数は<b>94万5618人</b>と見積もられます。不詳補完推計による,より精緻化した数です。</div><div><br /></div><div> 統計で分かる小学校卒は約80万人ですが,不詳者の割振り分を足すと95万人ほど。メディアでは「小学校卒80万人」という見出しが出ていますが,「<b>小学校卒およそ100万人</b>」としてもよいかと思います。結構な数ですね。多くは義務教育を終えられなかった高齢者や外国人等ですが,彼らが学ぶ夜間中学の整備が求められる所以です。</div><div><br /></div><div> そうした教育機会の整備は,地域レベルでなされるものですので,参考までに都道府県別の数値もお見せしましょう。学歴不詳者の割振り分も足した,不詳補完推計値です。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEivfBbB7voFqadfysdN6-owBgi3vU7O6bCxo8hAtAIZMTRVyvheeSn3uMGiZt4uQcHn8SDcN--R5exZ67zm_rs14IHoRkFa5hBPnxFnOHw7AEo6sBRAqXe_Ahll4D2Hvtx-U2YAEQdal2jBAmtEhrDo45wk89u4uW1U4LgXrrIbhjJc8Dl2U8i4GsTlpw/s508/%E5%B0%8F%E5%8D%92B.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="508" data-original-width="302" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEivfBbB7voFqadfysdN6-owBgi3vU7O6bCxo8hAtAIZMTRVyvheeSn3uMGiZt4uQcHn8SDcN--R5exZ67zm_rs14IHoRkFa5hBPnxFnOHw7AEo6sBRAqXe_Ahll4D2Hvtx-U2YAEQdal2jBAmtEhrDo45wk89u4uW1U4LgXrrIbhjJc8Dl2U8i4GsTlpw/s16000/%E5%B0%8F%E5%8D%92B.png" /></a></div><br /><div> 多い順に並べていますが,最も多いのは北海道で6万3278人となっています。おおよそ人口規模と比例していますが,新潟,静岡,青森,岩手,沖縄といった県も上位であり,地域性のようなものも見受けられます。</div><div><br /></div><div> 教育機会を欲している人の数です。各自治体は,こうした情報を把握し,学校の設置の参考にしてほしいと思います。<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003450543" target="_blank">コチラの統計表</a>では,もっと細かく区市町村レベルの数も出せます。</div><div><br /></div><div> なお中学校卒も加えると,数はうんと膨れ上がります。最初の表によると,中学校卒(不詳補完推計値)は1324万3384人。東京都の人口より多いですね。今でこそ高校進学率は100%近いですが,昔はさにあらず。1960年代前半,団塊世代が15歳だった頃も6割ほどでした(地方では半分未満)。働きながら定時制高校に通う勤労青年もいましたが,卒業にこぎつけるのは容易ではありませんでした。</div><div><br /></div><div> 「今からでも高校に…」。こういう思いの人もいるはずです。事実,孫世代の生徒と机を並べる高齢者のニュースはよく見ます。高校に,入学年齢の制限なんてありません。各地で高校統廃合が進んでいますが,教育機会を求めているのは10代の生徒だけにあらず。</div><div><br /></div><div> 逆ピラミッドの年齢構成の社会では,上の世代も含めた教育計画の立案が求められるところです。それは,ここで出した小・中卒人口のマグニチュード(量)を一瞥するだけで分かります。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-54275658212757679132022-04-26T17:25:00.003+09:002022-04-26T17:29:52.104+09:00内面を生きる時期こそ読書を<p> 教員採用試験の勉強中の方はご存知かと思いますが,4月23日は,子ども読書の日でした。この日から5月12日までは,子ども読書週間で,子どもの読書を促す取組が各地で実施されます。</p><p> ちょうど連休で時間もとれますので,書店や図書館に足を運び,本を手にとってほしいと思います。</p><p> 今の子どもは,どれくらい本を読んでいるか。調査データは無数にありますが,最近の信頼できる公的機関の調査データを見てみましょう。国立青少年教育振興機構が2019年に実施した,『青少年の体験活動等に関する意識調査』です。<a href="http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/154/" target="_blank">こちらのページ</a>で報告書と単純集計表を閲覧でき,必要とあらば,個票データも申請できます。</p><p> 調査対象は小4~6年の児童と,中2と高2の生徒です。1か月に読む本の冊数を尋ねた結果を,学年別にグラフにすると以下のようになります。選択された回答の分布です。漫画や雑誌は含みません。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhkHm1vuk_mR1uhSCSrahRMjCiYpy81-0AHEUdywYirI9UTftAIa72Q0SMIQT996CUqLgonXubycALPXTkZmRhuzvsX0qWvwVSIgzGiZEn1HxKH5VNnSS-a3RS4EeivJXcoYI-uCamDiDeC4vKsO0sVcwOrS7II4clZNd3R4H6gMxEJvQP-Z7_qxHa3yw/s480/%E5%86%85%E9%9D%A2A.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="480" data-original-width="402" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhkHm1vuk_mR1uhSCSrahRMjCiYpy81-0AHEUdywYirI9UTftAIa72Q0SMIQT996CUqLgonXubycALPXTkZmRhuzvsX0qWvwVSIgzGiZEn1HxKH5VNnSS-a3RS4EeivJXcoYI-uCamDiDeC4vKsO0sVcwOrS7II4clZNd3R4H6gMxEJvQP-Z7_qxHa3yw/s16000/%E5%86%85%E9%9D%A2A.png" /></a></div><div><br /></div> 小学校4年生では回答が割れていますが,学年を上がるにつれ,「ほとんど読まない」の比重が増してきます。パーセンテージをみると,小4では18.5%でしたが,中2では29.5%となり,高2では<b>58.8%</b>まで跳ね上がります。中学生の3割,高校生の6割近くが本を読まないと。<div><br /></div><div> 言わずもがな,これは受験のためでしょう。</div><div><br /></div><div> しかし残念な気もします。自我が芽生え,人生とは何か,自分はどう生きるかに思いをはせる,すなわち<b>「内面」</b>を生きる時期こそ,書物に多く触れることが望ましい。大よそ中高生の頃ですが,日本の現実をみると,本を読まない時期になってしまっています。ウチにこもりたいが,現実はそれを許さず,こうした葛藤が非行等の問題行動につながることもあるでしょう。</div><div><br /></div><div> ここで,1995年のジブリ「耳をすませば」が思い出されます。私が大学に入った年に公開された,中3生徒の恋物語です。池袋の映画館まで,1人で観に行った覚えがあります。館内はカップルが多く,居づらい思いをしましたがね…。</div><div><br /></div><div> 主人公の月島雫は,天沢聖司に魅かれます。天沢少年は,高校には行かず,バイオリン職人になるための修行をすると決め,夢に向かって着々と進んでいく。それに触発され,雫は物語を書こうと決めます。受験勉強はそっちのけ,成績は急降下し家族に心配されますが,粗削りながら一つの作品を仕上げるに至ります。</div><div><br /></div><div> その結果,自分の不勉強を自覚し,「これではだめだ,高校に行ってもっと勉強せねば」と,勉学への<b>内発的な動機付け</b>が得られることになりました。無謀な試しですが,15歳の少女にとって非常に意義あるものだったのです。</div><div><br /></div><div> 多感な思春期にいろいろな本に触れ,志あるならば<b>「試し」</b>をやってみる時間があればいいのにな,と思うのは私だけではありますまい。しかし日本では受験がありますので,なかなかそうはいかない。中高生が手にとる書物は,教科書か受験参考書だけ。</div><div><br /></div><div> ちなみに学力による高校受験というのは,どの国にもある普遍的なものではありません。OECDの国際学力調査「PISA 2018」では,15歳生徒が在籍する高校の校長に,入学者の決定に際して,学力を考慮するかと尋ねています。日本を含む主要国の回答分布は以下のごとし。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhFDkIXP8xjxWvi1EP5W_9IdiGSiLZjTTYw_AxicnChEUBFB9dEa4r8zVxyYgmP_pBj6o9FSOkxGDQGYbkknb91hbIQWaW8E479EA0wDrTUUjXVy4r-OjAcuoP-z1wEZqb_HU7s9gJK72gpTU6TiRbEn1ngl4ezRJ55skvOkYeisl4uvguh9xMbWo7R9Q/s442/%E5%86%85%E9%9D%A2B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="442" data-original-width="399" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhFDkIXP8xjxWvi1EP5W_9IdiGSiLZjTTYw_AxicnChEUBFB9dEa4r8zVxyYgmP_pBj6o9FSOkxGDQGYbkknb91hbIQWaW8E479EA0wDrTUUjXVy4r-OjAcuoP-z1wEZqb_HU7s9gJK72gpTU6TiRbEn1ngl4ezRJ55skvOkYeisl4uvguh9xMbWo7R9Q/s16000/%E5%86%85%E9%9D%A2B.png" /></a></div><div><br /></div> 日本の回答は予想通りです。「常に考慮する」,つまり入試で学力考査を実施する高校が大半ということです。<div><br /></div><div> しかし他国はそうではなく,アメリカは55%,イギリスは77%の高校が「全く考慮しない」と答えています。入試で学力テストを実施しない高校の率と読み替えていいでしょう。居住地域や,自校の教育方針に当該の生徒や親が賛同するかどうかなどで,入学者を選ぶわけです。</div><div><br /></div><div> 高校受験の圧力は,国によって違います。日本の状況を普遍的なこと,致し方ないことと割り切る必然性はどこにもありません。思春期の生徒が奔放な「試し」ができるよう,できることはあるのではないか。入試の廃止は現実的でないですが,<b>学力一辺倒のやり方は変える</b>ことができるように思います。</div><div><br /></div><div> そうですねえ。月島少女が背伸びして書き上げた物語を評価する,というのはどうでしょう。すなわち,「試し」の成果を評価要素に入れるのです。そうすることで,<b>思春期の感性を存分に生かした「試し」</b>が促され,結果として,勉学への内発的な動機づけが得られるきっかけを供することになるかもしれません。</div><div><br /></div><div> 月島少女の頃(90年代半ば)と違って,今は「試し」の成果を発信するツールもたくさんあるわけでしてね。ブログ,SNS,ユーチューブとか。フィードバックを得るのも容易です。</div><div><br /></div><div> 昭和型の受験勉強を強いることを,(惰性で)いつまでも続けていていいものか。型にはまった労働力を大量生産するにはいいやり方ですが,個性や創造力を育むことには不向きです。昭和と時代背景が異なる令和では,入試のやり方を考え直す余地はあるでしょう。</div><div><br /></div><div> 読書の話から逸れてきましたが,中高生が書物を手に取れる「ゆとり」が得られるようにすべきです。朝の10分間読書でよし,としてはならないのです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-72810873744578265692022-03-28T20:22:00.001+09:002022-03-29T19:23:38.364+09:00医学部入学チャンスの性差の変化<p> 毎年公表されるジェンダーギャップ指数で無様な位置にある日本ですが,とくに酷いのは政治分野です。2021年のデータだと,156か国中147位。国会議員の女性比率が低いことを思うとさもありなんです。今年は参院選ですが,こうした歪みが正されることを切に願います。</p><p> 女性比率が低いのは政治家だけではありません。高度専門職も然り。たとえば医師の女性比率をみると,2019年の日本の数値は21.8%です(OECD<a href="https://www.oecd.org/health/health-at-a-glance/" target="_blank">「Health at a Glance 2021」</a>)。</p><p> われわれ日本人の感覚からすれば「そんなもんだろう」かもしれません。しかし国際的にみると全然普遍的ではなく,先進国の数値を拾うとアメリカは37.0%,イギリスは48.6%,スウェーデンは49.6%と,男女ほぼ半々です。OECD加盟の37か国について,医師の性別構成を比較すると以下のようになります。女性比率が高い順に並べています。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhOd6y0XGBwzBHAcdPS67w0XWt3AlzEXrIdXH9uiIhzDejslYhBuFRE-3JYm-UDz3G7IGjVPxzPgYpZ8Esu_WH1QpSPWcXF2xhTXRa2au4u0rb1gxus9oxvGNKetylxDNnA3hhkvglDlJR12kUHCX7mFQMtbGwgCUmUOIRsC3I_bBwLqyqxf1a_oLQAHw/s586/%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8A.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="586" data-original-width="402" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhOd6y0XGBwzBHAcdPS67w0XWt3AlzEXrIdXH9uiIhzDejslYhBuFRE-3JYm-UDz3G7IGjVPxzPgYpZ8Esu_WH1QpSPWcXF2xhTXRa2au4u0rb1gxus9oxvGNKetylxDNnA3hhkvglDlJR12kUHCX7mFQMtbGwgCUmUOIRsC3I_bBwLqyqxf1a_oLQAHw/s16000/%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8A.png" /></a></div><div><br /></div> 37か国中14か国において,医師の女性比率が50%を超えています。<b>女性医師のほうが多い</b>,ということです。「医師といえば,まあ男性」。われわれ日本人が抱いている,こんなイメージが覆されますね。<br /><p> 日本はといえば,見事に最下位です。自分たちが日ごろ目にしている光景は普遍的でも何でもない,むしろ特異である。このことを胸に刻みましょう。</p><p> この惨状がなぜかについては,女子が医師などを志すを表明すると周囲から「止めろ」と言われる,理系の進路に進もうとすると変わり者扱いされる,そもそも女性医師のモデルに接する機会が乏しい…。こんなことがよく言われますが,こうした社会の風潮とは別の可能性も見えてきています。<b>医学部入試での不正</b>です。</p><p> 2018年,某私立大学医学部入試で女子の点数を操作していた不正が発覚しました。女性医師は職場の定着率が低い,できるだけ男子をとりたい・・・。こんな思惑でしょうが,医師を志す女子をあざ笑うもので断じて許し難し。</p><p> 今朝の<a href="https://digital.asahi.com/articles/ASQ3T56QZQ3KUTIL01Y.html" target="_blank">朝日新聞ウェブ</a>に,近年の医学部合格率の性差が出ていました。不正が発覚した2018年以降,女子の医学部合格率が男子を上回るようになったとのこと。フェア?な競争にしたら,やっぱりこうなると。</p><p> こういう傾向は官庁統計にも出ています。文科省の『学校基本調査』に,大学の医学専攻の入学志願者(延べ数)と,実際の入学者の数が出ています。後者を前者で割れば,合格率の相似値になるでしょう。データがとれる2015年から2021年までの推移を跡付けると以下のごとし。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhfBNSSK-pTnZ588MaSUsyNIM9Oksa_blfqo18EAWRfDkiWYIe6T23jSPydnfeMjgGOkSVtLdA4iyLFbjtvTDDcROpWeORxJRi7WDTNTJDfxtDwxMXOExBDZsweNl3TOTjeS1YcNDwleniZ_sMRlWL32Ab0qROO2TFZzHj7lsPp0ieUfJtVTZXSMjAcEg/s481/%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="481" data-original-width="325" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhfBNSSK-pTnZ588MaSUsyNIM9Oksa_blfqo18EAWRfDkiWYIe6T23jSPydnfeMjgGOkSVtLdA4iyLFbjtvTDDcROpWeORxJRi7WDTNTJDfxtDwxMXOExBDZsweNl3TOTjeS1YcNDwleniZ_sMRlWL32Ab0qROO2TFZzHj7lsPp0ieUfJtVTZXSMjAcEg/s16000/%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8B.png" /></a></div><div><br /></div> 注目は,一番下の入学者率です。ご覧あれ,不正が発覚する2018年までは「男子>女子」でしたが,翌年から現在まで見事に反転しています。統計は正直です。<div><br /></div><div> データの提示は省きますが,国公立大学の医学専攻はこうした傾向はありません。2015年からずっと,男子と女子の入試突破率は近似しています。2018年以降,ガラッと変わったのは私立独特の傾向です。</div><div><br /></div><div> 某マンモス私大の理事長の脱税が明るみになり,裁判になっています。私大のガバナンスの在り方について問われていますが,一族経営の私学もあるあけで,こういう所では独裁体制もしかれやすい。日本では,公教育に占める私学の比重が高いわけで(とくに高等教育),そこでの経営の歪みは次代を担う青年教育の破壊に直結します。国として,きちんと監督はすべきです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-77103493148988892002022-02-11T11:38:00.001+09:002022-02-11T11:38:12.269+09:00ロスジェネを教員に<p> 教員不足が言われています。佐賀県は,小学校教員採用試験を春・秋と,<b>年2回</b>実施するのだそうです(<a href="https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20220210-OYT1T50258/" target="_blank">昨日の読売新聞</a>)。夏に受験できなかった人,ないしは他の自治体で不合格になった人を,秋試験で受け入れられますね。</p><p> 2021年度の公立小学校教員採用試験(2020年夏実施)の受験者は4万3448人,採用者は1万6440人。競争率は前者を後者で割って2.64倍です。後で述べますが,私の頃と比してだいぶ下がっています。当然,自治体による差もあります。地域差はあまり報じられませんので,私が計算したデータをご覧に入れましょう。</p><p> 下の表は,2021年度の小学校試験の競争率を都道府県別に算出し,高い順に並べたものです。政令市は,所在する県の分に含めています。たとえば横浜市の受験者,採用者は神奈川県に含めています。資料は,文科省<a href="https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1416039_00005.html" target="_blank">『公立学校教員採用選考試験の実施状況』</a>です。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEjz6sIY0H1UqKDR_mBhIpACvYzRlbyw814ZvaGxxCbTradfR0QQDIuVf8SFgt2srMZ2RpfxV77_Wk5Wdkbib39udwMiv7qo65GhBnMnF551bDc5sW814amvJ0RAgEAsS67-dEQ2sGgRDeLum2ZfP9D7-F8EEukJbZen2S-2FTcghEDT8a0Ag5_kYbWbPw=s529" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="529" data-original-width="303" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEjz6sIY0H1UqKDR_mBhIpACvYzRlbyw814ZvaGxxCbTradfR0QQDIuVf8SFgt2srMZ2RpfxV77_Wk5Wdkbib39udwMiv7qo65GhBnMnF551bDc5sW814amvJ0RAgEAsS67-dEQ2sGgRDeLum2ZfP9D7-F8EEukJbZen2S-2FTcghEDT8a0Ag5_kYbWbPw=s16000" /></a></div><div><br /></div> 全国値は2.64倍ですが,県による違いがあります。今でも5倍越えの県は3県,マックスは高知の6.85倍です(受験者918人,採用者134人)。<div><br /></div><div> その一方で13の県で2倍を割っており,最低の佐賀では1.42倍です(受験者280人,採用者197人)。逆の角度で言うと合格率は70%,受験者の7割が通ると。受験者にすれば有難いですが,採用側の心中は穏やかではないでしょう。新規採用者の質の担保も難しいと,頭を抱えているかと思います。それで夏・秋の年2回,採用試験を行うことにしたと。</div><div><br /></div><div> リクルートの裾野を広げる上で妙案だと思いますが,上の世代にも目を向けてほしいと思います。われわれ<b>ロスジェネ</b>です。大学卒業時が不況のどん底で,教員採用試験の競争率がものすごく高く,優秀であっても夢破れて教員になれなかった人が多くいます。2000年度の公立小学校採用試験(1999年夏実施)の競争率は12.53倍でした。県別にみると,もっと凄まじい値が出てきます。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEg9MtF5oC9oJ2wx7GUWG1IOLs_Il0oFpcUqKfAjA7BWqdJC8vO34wVXqoDs4LlBRgMKtBvfD5GIj3XTLtgyFxkIFvNUdAVMCwG0m06MH_L6qz6JhLZQewHeu9wnbWAUVwhkHixHNI8CATfMkIufEhwS7a4NLjZ8NFoRahqqa55bF3lF-Ot6dGf4Z4Em4A=s531" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="531" data-original-width="304" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEg9MtF5oC9oJ2wx7GUWG1IOLs_Il0oFpcUqKfAjA7BWqdJC8vO34wVXqoDs4LlBRgMKtBvfD5GIj3XTLtgyFxkIFvNUdAVMCwG0m06MH_L6qz6JhLZQewHeu9wnbWAUVwhkHixHNI8CATfMkIufEhwS7a4NLjZ8NFoRahqqa55bF3lF-Ot6dGf4Z4Em4A=s16000" /></a></div><div><br /></div> 私の頃のデータですが,多くの県で10倍を超えています。20倍を超えるのは11県。マックスの和歌山は54.17倍にもなっていて,何かの間違いではないかと,原資料を何度も確認しましたが,受験者325人,採用者6人という数字がバッチリ記録されています。<div><br /></div><div> 現在,競争率が1.42倍と最も低い佐賀県も,当時は20倍超えでした。現在40代半ばになっていますが,優秀でありながらも,夢破れて教壇に立てなかった人が多くいるかと思われます。</div><div><br /></div><div> 私の世代では,教員免許状を持ちつつもそれを活用していない,つまり教員になってない人は数で見てどれほどいるのでしょう。私は1999年春に大学を出ましたが,同年春の小学校教員普通免許状授与数は2万205件(文科省『教員免許状授与件数等調査』)。この世代は2019年に43歳ですが,同年の43歳の小学校本務教員は7437人(文科省『学校教員統計』)。単純に考えると,この世代の小学校教員免許活用率は36.8%です。残りの63.2%,実数で見て1万2768人は,いわゆるペーパーティーチャーであると。私もそのうちの一人です。</div><div><br /></div><div> 小学校教員免許状を持ちつつも,それを使っていない。ロスジェネには,こういうペーパーティーチャーが,上記の数を5倍して<b>6万人</b>はいるのではないでしょうか。採用試験がものすごく厳しかった世代ですので,優秀な人も多く含まれているはずです。最近,地方公務員や国家公務員採用試験で,ロスジェネ限定試験が実施されるケースが増えていますが,教員採用試験でもやってみたらどうでしょう。「夢よもう一度」と,優秀な人材が押し寄せるかもしれません。</div><div><br /></div><div> そのためには制度改正も必要で,この世代が有している,失効した教員免許状を回復させる措置が必要です。教員免許更新制の廃止は決まりましたが,失効した教員免許状の回復措置がないならば,幅広い世代からの応募は叶いません。現在,なり手が不足している産休代替教員を募る上でも欠かせません。</div><div><br /></div><div> 2019年春に,朝日新聞から「ロスジェネ救済策」について取材を受けましたが,今だったら,教員をはじめとした「公」の仕事への吸収促進を,と答えていたでしょう。</div><div><a href="https://tmaita77.blogspot.com/2019/05/blog-post_15.html" target="_blank">https://tmaita77.blogspot.com/2019/05/blog-post_15.html</a><br /></div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-27547345441427299352022-01-08T14:07:00.001+09:002022-03-02T21:41:49.553+09:00失業と自殺の相関の性差<p> コロナ禍が少し和らいだかと思いきや,今度はオミクロン株の台頭で,人々の暮らしが再び脅かされています。政府はまん延防止措置を適用する方針で,経済活動はまたも制限され,失職し生活に困る人が出てくるのではと懸念されています。公的扶助も不十分で,助けてももらえず,悲観して自らを殺めてしまうこことも…。</p><p> 自己責任の風潮が強い日本では,こういう事態がしばしばあることは,よく知られています。データでも「見える化」できます。<b>失業と自殺の時系列相関</b>でです。とくに男性では強く相関するのが常です。働いて稼ぎを得るという役割期待が,ものすごく大きいためでしょう。</p><p> しかし,コロナ禍になって以降のデータを観察すると「?」という傾向が出てきます。こここ10年余りのデータ照らしても特異であることが判明しましたので,ここにてデータを提示し,議論の喚起に与せたらと思います。コロナ禍が始まったのは2020年春ですので,観察するのは<b>月単位</b>のデータです。以下は,2019年1月から2021年11月までの失業者数と自殺者数の推移です。前者は総務省<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000000110001&cycle=0&tclass1=000001040276&tclass2=000001011681&tclass3val=0" target="_blank">『労働力調査』</a>,後者は警察庁<a href="https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html" target="_blank">『自殺の概要』</a>から得ました。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgzE77-sP6IsvYMf3uu6fwL8YeY35LWIgE1igUvxE1dTCeJJAuGWlJ_iBBOxJuREQSYZaFUopA1JQbzsMndocAHJ-Or5chBjSsxUXCMHJR6EVij7FuAeF5beJoaQdlEX-RUhpFACnF3J65Q2GHj_eajaOLiWiFm1QnGYubWYY-CLIt9wN_iN7gtDXA_zA=s668" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="668" data-original-width="371" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgzE77-sP6IsvYMf3uu6fwL8YeY35LWIgE1igUvxE1dTCeJJAuGWlJ_iBBOxJuREQSYZaFUopA1JQbzsMndocAHJ-Or5chBjSsxUXCMHJR6EVij7FuAeF5beJoaQdlEX-RUhpFACnF3J65Q2GHj_eajaOLiWiFm1QnGYubWYY-CLIt9wN_iN7gtDXA_zA=s16000" /></a></div><div><br /></div> どうでしょう。男女とも,コロナ禍になってから失業者数が増えています。男性は100万人,女性は70万人を超える水準が続いています。この35か月間の失業者数の分布幅は,男性は91~131万人,女性は62~88万人です。<div><br /></div><div> 一方,自殺者数の幅は,男性は1012~1341人,女性は433~889人と,女性のほうが大きくなっています。</div><div><br /></div><div> さて,ここでの関心事は上表の失業と自殺がどう相関しているかです。横軸に失業者数,縦軸に自殺者数をとった座標上に,男女の35か月のドットを位置付けてみます。下図は,結果を1枚の図に表現したものです。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEhOhm-BrLF4LPEfEXrJ9_U7aJa0GOdBCCuvXYdxT75EHoB9744lalqayIYrOJUrd-pDGLfjKG9iLkaEhOyMzB1ojgI6NwS-GXHp6BbmtAcZ-5FXHWC8uWFWupJ5lfqdOG3haRjKp2U5DpY2ZqPfIwaVfo0Hjtf6Y_0_ENAImFLk4oS_rZKEzdu8R2jhgw=s479" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="479" data-original-width="394" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEhOhm-BrLF4LPEfEXrJ9_U7aJa0GOdBCCuvXYdxT75EHoB9744lalqayIYrOJUrd-pDGLfjKG9iLkaEhOyMzB1ojgI6NwS-GXHp6BbmtAcZ-5FXHWC8uWFWupJ5lfqdOG3haRjKp2U5DpY2ZqPfIwaVfo0Hjtf6Y_0_ENAImFLk4oS_rZKEzdu8R2jhgw=s16000" /></a></div><div><br /></div> 失業者数,自殺者数ともに多い男性のドットは,図の右上のほうに位置します。しかし,失業と自殺の間に有意な相関関係は見受けられません。一方,女性の失業と自殺は+0.6841と,強いプラスの相関関係にあります。<div><br /></div><div> 上述のように,失業と自殺は男性で強く相関するのが常なんですが,コロナ禍の月単位のデータでは逆になっています。コロナで失職したのは,販売やサービス産業の非正規女性なんですが,生活に切羽詰まったシングルマザーなどが多かったのでしょうか。</div><div><br /></div><div> 他の時期ではどうなのか,という疑問もあるでしょう。2010年以降の3年間隔で,男女の失業と自殺の相関係数を算出すると以下のようになります。それぞれ,3年間(36か月)のデータから出した数値です。</div><div><br /></div><div>2010年1月~2012年12月</div><div> 男性=+0.5361 女性=+0.2079</div><div><br /></div><div>2013年1月~2015年12月</div><div> 男性=+0.6419 女性=+0.4772</div><div><br /></div><div>2016年1月~2018年12月</div><div> 男性=+0.3072 女性=+0.1983</div><div><br /></div><div>2019年1月~2021年11月</div><div> 男性=+0.1588 <b>女性=+0.6841</b></div><div><br /></div><div> どの時期でも男性のほうが高かったのが,コロナ禍を含む最近3年間では逆転しています。「失業→生活苦→自殺」という推定因果経路は,男性より女性で強くなっていると。コロナ禍では,失業した人の層が違います。先に述べたように,販売やサービスの非正規女性です。この中には,失職したら即生活破綻というギリギリの生活をしている人も含まれるでしょう。たとえばシングルマザーです。</div><div><br /></div><div> こういう人たちに公的扶助の手が差し伸べられたらいいのですが,日本の生活保護はあまり機能していません。ツイッターで何度か発信しましたが,コロナ禍になっても生活保護受給者数の棒グラフは真っ平です。母子世帯にあっては,減少の傾向すらあります(詳細は<a href="http://tmaita77.blogspot.com/2021/11/blog-post_26.html" target="_blank">コチラの記事</a>)。母子世帯をターゲットにして,生活保護削減が図られているのではないか,という疑いもあるくらいです。</div><div><br /></div><div> こういうことから,コロナ禍になって,女性の失業と自殺が強く相関するようになっていることも考えられますね。コロナ禍でダメージを受けているのは社会の弱い層で,公的支援の手も差し伸べられない…。こうした病理の表れではないか。</div><div><br /></div><div> コロナ禍で生活に困っている人(とくに女性)が増えているにもかかわらず,生活保護受給者は横ばいで,母子世帯に限ると減少傾向すらある。どう考えてもおかしい。生活保護の運用実態について,外部機関による厳格な検証が入るべきです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-50553261690989009172021-12-23T11:59:00.003+09:002022-02-13T08:10:26.054+09:00都道府県別の大学進学率(2021年春)<p> 今年の文科省『学校基本調査』の確報結果が公表されました。この資料が出たら,私はまず都道府県別の大学進学率を計算することにしています。リンクは<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001011528" target="_blank">コチラ</a>。</p><p> 大学進学率とは,同世代の何%が4年制大学(以下,大学)に入ったかという指標です。単純なようですが,算出はそう簡単ではありません。高卒者の進路統計に当たって,卒業者のうち大学に進学した生徒の率を出せばいいじゃん,と思われるかもしれませんが,同世代の中には高校に行っていない人もいますし,浪人経由で入る人がオミットされてしまいます。</p><p> 文科省で採用されている,公的な計算方法を説明しましょう。分母には,高卒者ではなく推定18歳人口を充てます。3年前の中学校,中等教育前期課程,義務教育学校の卒業者数です。今年(2021年)春の3年前だと,2018年春のデータを取ればいいことになります。『学校基本調査』のバックナンバーによると,2018年春の中学校卒業者は113万3016人,中等教育学校前期課程卒業者は5515人,義務教育学校卒業者は2609人,合わせて<b>114万1140人(a)</b>です。これが今年春の推定18歳人口で,大学進学率の分母に使う数値になります。</p><p> 分子には,今年春に大学に入った人の数を使います。昨日公表された確報値によると,2021年春の大学入学者数は<b>62万7040人(b)</b>です。この中には,過年度の高卒者(浪人経由者)も含まれますが,今年春の現役世代からも,同数の浪人経由の大学入学者が出ると仮定し,両者が相殺するとみなします。</p><p> これで分母と分子が得られましたので,2021年春の大学進学率は,bをaで割って<b>54.9%</b>となる次第です。文科省の公表数値と一致しています。今の日本の大学進学率は50%超,同世代の半分が大学に行くことの数値的な表現です。</p><p> このやり方で性別の大学進学率を出すと,男子が58.1%,女子が51.7%となります。男子が女子より6.4ポイント高くなっています。多くの人が肌身で感じている,大学進学チャンスのジェンダー差です。</p><p>********************</p><p> さて,本題はここからです。文科省の公表統計では,全国の大学進学率は出ていますが,47都道府県別の大学進学率は出ていません。上記の計算方法に沿って,都道府県別の大学進学率を独自に計算してみます。</p><p> 都道府県別の場合,分子には,当該県の高校出身の大学入学者数を充てます。私の郷里の鹿児島県を例にすると,今年の春,本県の高校出身の大学入学者は6126人で,推定18歳人口(3年前の中学校,中等教育前期課程,義務教育学校の卒業者数)は1万5625人。よって,2021年春の鹿児島県の大学進学率は39.2%となります。全国値よりだいぶ低いですね…。</p><p> 私はこのやり方で,今年春の47都道府県別の大学進学率を計算しました。性差にも興味があるので,各県の性別の数値も出しました。以下に,一覧表を掲げます。このデータは文科省の公表資料に出ているものではなく,舞田が独自に計算したものであることを申し添えておきます。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEiRszKfF421DxNTGzP7GN6e2NfidkHpe-fJmAejvxgd3bFzyspJlTCsPwjvyvENKWVcuJH1_frif65lXI4T-Euv26CX7N87aPMalcbR-riuQU3kS-YSAzBByw8pLaaTwNhlts2hZAzF1thsq6aDcTs4OuZKuhhA2ZHkv9KcAL8S30iVfMJ1g4vl6Jpx2w=s895" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="895" data-original-width="313" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEiRszKfF421DxNTGzP7GN6e2NfidkHpe-fJmAejvxgd3bFzyspJlTCsPwjvyvENKWVcuJH1_frif65lXI4T-Euv26CX7N87aPMalcbR-riuQU3kS-YSAzBByw8pLaaTwNhlts2hZAzF1thsq6aDcTs4OuZKuhhA2ZHkv9KcAL8S30iVfMJ1g4vl6Jpx2w=s16000" /></a></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><span style="text-align: left;"><br /></span></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><span style="text-align: left;"> 黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。男女計をみると,最高は東京の75.1%,最低は山口の38.5%です。同じ国内でも,18歳人口の大学進学率に倍以上の開き。毎年のことですので,データを継続的にウォッチしている私は驚きませんが,初めて目にする人は「!」でしょう。</span></div><div><br /></div><div> しかし東京はスゴイですね。4人に3人が大学に行くと。自宅から通える大学がたくさんあり,親年代の所得も高く,かつ大卒人口も多いので,幼少期から大学に行くのは当たり前という感覚で育つ。地方はその反対で,上表の大学進学率の地域格差は,地域間の社会経済格差の引き写しに他なりません。</div><div><br /></div><div> 大学進学率の地域格差の要因について,私が考えるところは,ブログの前の記事で書いてますので,ここで繰り返しません。以下の記事を参照ください。県別の平均年収や大卒人口率と大学進学率の相関図も掲げています。</div><div><br /></div><div> ・都道府県別の大学進学率(2019年春)</div><div> <a href="http://tmaita77.blogspot.com/2019/08/2019.html">http://tmaita77.blogspot.com/2019/08/2019.html</a></div><div><br /></div><div> ・都道府県別の大学進学率(2020年春)</div><div> <a href="http://tmaita77.blogspot.com/2020/12/2020.html">http://tmaita77.blogspot.com/2020/12/2020.html</a> </div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-69045673152543597112021-12-16T12:56:00.005+09:002021-12-17T07:40:36.368+09:00ツイッターのグラフについて<p> ツイッターで発信した,国別の大学院修了者率のグラフについて,疑問が寄せられてますので,算出の手続きを書いておきます。</p><p> データは,<a href="https://zacat.gesis.org/webview/index.jsp?object=http://zacat.gesis.org/obj/fCatalog/Catalog58" target="_blank">ISSP(国際社会調査プログラム)</a>が2018年に実施した「宗教に関する意識調査」のものです。メインの主題は年によって違い,2018年調査では宗教の設問に重点が置かれています。ISSP調査の概要は,NHKによる<a href="https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/20201101_5.html" target="_blank">コチラのページ</a>が分かりやすいです。</p><p> 私は「Religion Ⅳ-ISSP 2018」の個票データに当たって,各国の25~54歳のサンプルを取り出し,自身が持つ最高学歴(DEGREE)の設問への回答を分析しました。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEg8nNTpG-nDVKXVmpxSyHAHGWpilF-KLjXX9F1Z0D5YXDHmnpQ319xQRI2D6HehGGOAgu5qxOFJnVkU-DShVe-7quzAzqUIlP4YMReb3_d2jwHHn88C-HnDScV-tBWsjonoQ7BEt5Kweq5rzqRhqDhsGcrcBT5VBOD_vKglOULkCsaN-yTLfNWnZ1f0cg=s892" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="164" data-original-width="892" height="74" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEg8nNTpG-nDVKXVmpxSyHAHGWpilF-KLjXX9F1Z0D5YXDHmnpQ319xQRI2D6HehGGOAgu5qxOFJnVkU-DShVe-7quzAzqUIlP4YMReb3_d2jwHHn88C-HnDScV-tBWsjonoQ7BEt5Kweq5rzqRhqDhsGcrcBT5VBOD_vKglOULkCsaN-yTLfNWnZ1f0cg=w400-h74" width="400" /></a></div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEjUs-ldtk7Km6EfX50U0Xn5pxV7sJSU5Ux5DzPJiid1dLeHTjdJoQyWnAKvgkfyClCg8tbgYP9O8n63nReR57RRU9clGFvmDPO9HJcNr9k6tRH6j-9faLQuoMk5KXrdxD776LWaTatugE6OgxbpuZdth0QeZWrIxraSJsHv18hmhLY03Vrgkyjhqd5mfQ=s654" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="146" data-original-width="654" height="89" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEjUs-ldtk7Km6EfX50U0Xn5pxV7sJSU5Ux5DzPJiid1dLeHTjdJoQyWnAKvgkfyClCg8tbgYP9O8n63nReR57RRU9clGFvmDPO9HJcNr9k6tRH6j-9faLQuoMk5KXrdxD776LWaTatugE6OgxbpuZdth0QeZWrIxraSJsHv18hmhLY03Vrgkyjhqd5mfQ=w400-h89" width="400" /></a></div><br /><div> 私は,<b>6「Upper level tertiary(Master, Doctor)」</b>を選んだ者のパーセンテージを出しました。9の無回答は分母から除外しています。</div><div><br /></div><div> 各国の回答分布の表を掲げておきます。%にする前の人数の表です。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgChW_K760nrhSjcQ9ovj4fA_7poSv1Fj2KXUZ_LM0w08myK9f0T0HIvRJHC-IkjLN-uXpFpL5ADKTMGfRP9qfJ81xygEhhgOnM7o1UdSo13HPoiYRQw9Vv3Xg3oVOfrYF4Pe7jqVloqI_rqCRr3GpTX-Hh2kIhT6jURwI05pY4pnLD-UvhTBvqIguslA=s465" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="465" data-original-width="444" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgChW_K760nrhSjcQ9ovj4fA_7poSv1Fj2KXUZ_LM0w08myK9f0T0HIvRJHC-IkjLN-uXpFpL5ADKTMGfRP9qfJ81xygEhhgOnM7o1UdSo13HPoiYRQw9Vv3Xg3oVOfrYF4Pe7jqVloqI_rqCRr3GpTX-Hh2kIhT6jURwI05pY4pnLD-UvhTBvqIguslA=s16000" /></a></div><div><br /></div> 日本だと,6「Upper level tertiary(Master, Doctor)」を選んだ人は23人で,9の無回答を抜いたベースは636人です。よって大学院修了者率は,23/636=3.6%となる次第です。<div><br /></div><div> 「Upper level tertiary(Master, Doctor)」の定義は,国によって異なることもあり得るので,大学院修了者率というタイトルは不適切でした。当該グラフのツイートは削除します。記録として,スクショを以下に残しておきます。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgsR-VZAGfPF5ZnsB4owRXYOpg8UKeS41z87LNlBwdCOwfdOd7t-tZFtDC-npnF2r-w9_EPOn9UQP8TDoJEgQ0gYtiS9slErys_XIs8HLPQOBdKzAXTaMrwhoXtJMcIAckR_rZaPt5XHEqrQuckyHq4t8acwRDYcc5Tr9RL9zWoH6yzkuPFfK-sRn1nVw=s679" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="679" data-original-width="547" height="400" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgsR-VZAGfPF5ZnsB4owRXYOpg8UKeS41z87LNlBwdCOwfdOd7t-tZFtDC-npnF2r-w9_EPOn9UQP8TDoJEgQ0gYtiS9slErys_XIs8HLPQOBdKzAXTaMrwhoXtJMcIAckR_rZaPt5XHEqrQuckyHq4t8acwRDYcc5Tr9RL9zWoH6yzkuPFfK-sRn1nVw=w322-h400" width="322" /></a></div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-19060939006246908162021-12-04T19:32:00.002+09:002021-12-04T19:45:46.050+09:00社会科教員の女性比率<p> <b>ジェンダー平等</b>という言葉が,今年の流行語になりました。関心が高まっているのは,これまで不問にされていたこと,肌感覚のレベルで何となく認識されているだけのことが,客観的なデータで可視化されているからだと思います。</p><p> そのデータの最たるものは,国別のジェンダー平等指数です。日本の国際的な位置が無様なのは毎年のことで,分野別にみると政治分野がとくに酷い。国会議員など,政治家の女性比率が著しく低いことを思うとさもありなんです。最近知ったのですが,若者参画意欲にも性差があります。「政策決定に参画したいとは思わない」と考える20代の率は,男性では44%ですが,女性では63%なり(内閣府『我が国と諸外国の若者の意識調査』2018年)。他国では,ここまで大きな性差はありません。</p><p> これがなぜかについて,女子は頭を押さえつけられて育つとか,政治の話を女子がすると変な目で見られるとか,世間一般で言われることを強調しても,あまり生産的ではありません。井戸端談義ではなく,データで可視化でき,かつ政策で変えることができるような要因に注目することが望ましい。</p><p> ここでは,進路選択を控えた女子生徒が目にする職業モデルについて考えてみます。政治や経済について語る女性,具体的に言うと,学校で<b>社会科を教える女性教員</b>です。こういうロールモデルに多く接するならば,女子生徒の政治的関心も高くなるでしょう。はて,社会科教員の女性割合は,現状でどれほどなのでしょうか。おそらく低いと思われますが,具体的なパーセンテージはあまり目にしませんよね。</p><p> 文科省の『学校教員統計』に,各教科を担当している教員の割合が出ています。2019年の高校のデータを見ると,本務教員のうち,国語を担当している教員の割合は男性で9.0%,女性で19.2%となっています(<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400003&tstat=000001016172&cycle=0&tclass1=000001152450&tclass2=000001152451&tclass3=000001152453&tclass4=000001152459&tclass5val=0" target="_blank">こちらのサイト</a>の表55)。ベースの本務教員数は,男性が15万2446人,女性が7万1592人ですので,先ほどの比率をかけて実数にすると,国語担当教員は男性が1万3720人,女性が1万3746人と見積もられます。ほぼ半々ですね。</p><p> では,他の教科はどうか。同じやり方で,各教科の担当教員の実数を男女別に推計し,性別構成のグラフにすると以下のようになります。タテの点線は,全教員でみた女性割合です(32.0%)。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjjNdk-7Llq79MDJYO-4w_VSPxY-HGO2SoSMp4qqz6zgKA9XdIIPtzmEEJ2NLc9wjDg0HoRX0YoMDjaXbEId8Gd89Se5OXK3Ww27OU-SC44rA5nHss_LCDMUirJvSDlaTYBl3frk_AXfhQQ/s423/%25E6%2595%2599%25E7%25A7%2591A.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="423" data-original-width="403" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjjNdk-7Llq79MDJYO-4w_VSPxY-HGO2SoSMp4qqz6zgKA9XdIIPtzmEEJ2NLc9wjDg0HoRX0YoMDjaXbEId8Gd89Se5OXK3Ww27OU-SC44rA5nHss_LCDMUirJvSDlaTYBl3frk_AXfhQQ/s16000/%25E6%2595%2599%25E7%25A7%2591A.png" /></a></div><div><br /></div> 国語はちょうど半々ですが,教科によって違いますね。男性より女性が多い教科は,音楽,書道,家庭,福祉で,それ以外は男性が多し。よく知られれていることですが,数学や理科教員の女性比率は低くなっています。理系に進む女子を増やすにあたって,これをどうにかしないといけないことは,前から繰り返し申してきました。<div><br /></div><div> しかし,もっと女性比率が低い教科があります。何と何と,<b>公民</b>ではないですか。公民を教える高校教員のうち女性は14.0%で,どの教科よりも低くなっています。このデータをツイッターで発信したところ,「これは知らんかった」と驚かれましたが,私もそうです。政治や経済について説く女性のロールモデル,学校で女子生徒になかなか見せられない。こういう現実が,データで露わになりました。</div><div><br /></div><div> 日本よりジェンダー平等が進んでいる海外ではどうでしょう。国際比較は中学校段階でしかできませんが,アメリカの中学校の社会科担当教員に占める女性の割合は61.8%で,日本の26.1%よりだいぶ高くなっています(OECD「TALIS 2018」)。中学校教員全体の女性比率は,アメリカが65.8%,日本は42.2%。アメリカの社会科教員の女性比率は全教員と接近してますが,日本はさにあらず。全教員の女性比率は42.2%なのに,社会科教員だと26.1%でしかない。このズレに,<b>社会科教員に女性がなりにくい</b>ことが表れています。</div><div><br /></div><div> 以下は,主な7か国のデータです。個票データに当たらずとも,<a href="http://nces.ed.gov/surveys/international/ide/" target="_blank">こちらのサイト</a>のリモート集計で作れます。ドイツは,「TALIS 2018」には参加してません。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhmjyGKhJcb7o46nGh3K0smhiTTCbKTOoZdpxUUVZTmdjGzBV3RKRrGcChbqCNMOyYx5A5EqBzVaD6evspf-bG3lkWfQbuZND0S_sQNWgurqWOCXb4s7Pg1Z6Vly-o_r-sl5ufdQD6eHtJn/s364/%25E6%2595%2599%25E7%25A7%2591B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="265" data-original-width="364" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhmjyGKhJcb7o46nGh3K0smhiTTCbKTOoZdpxUUVZTmdjGzBV3RKRrGcChbqCNMOyYx5A5EqBzVaD6evspf-bG3lkWfQbuZND0S_sQNWgurqWOCXb4s7Pg1Z6Vly-o_r-sl5ufdQD6eHtJn/s16000/%25E6%2595%2599%25E7%25A7%2591B.png" /></a></div><div><br /></div> 全教員の女性比と,社会科教員の女性比がどれほどズレているかですが,日本以外の国では接近していますね。女性が社会科教員になりやすい度合いは,後者を前者で割った値で測られます。男女で均等ならば,表のaとbの値は等しくなり,よって1.000となるはずです。日本は0.618で,通常の期待値(1.000)をかなり下回っています。<div><br /></div><div> 7か国だけでは心もとないので,比較の対象をもっと増やしましょうか。以下に掲げるのは,データが得られる48か国について,女性教員輩出度(上記の表の右端)を算出したものです。社会科教員の女性比が,全教員の女性比の何倍か。高い順に並べています。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiSI2YUlmsUFC6dZ7aC-GqJKkU8-1NW59XhL4Gvx3Z6cFsm3gffsgzpWraEM_l6yrX5c0qYVwlHyqx_tFfXf9ntIs0H57o_npp5oiYrgNBqel5SqAdSb7IKcom9rui8ubxlpvHiHcHcp_gA/s509/%25E6%2595%2599%25E7%25A7%2591C.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="509" data-original-width="408" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiSI2YUlmsUFC6dZ7aC-GqJKkU8-1NW59XhL4Gvx3Z6cFsm3gffsgzpWraEM_l6yrX5c0qYVwlHyqx_tFfXf9ntIs0H57o_npp5oiYrgNBqel5SqAdSb7IKcom9rui8ubxlpvHiHcHcp_gA/s16000/%25E6%2595%2599%25E7%25A7%2591C.png" /></a></div><div><br /></div> 女性が,社会科教員にどれほどなりやすいかの指標(measure)です。20の国で1.0を超えていますね。男性よりも女性が,社会科教員になる傾向がある国。首位のニュージーランドは,全教員の女性比率は65.4%ですが,社会科担当教員のそれは72.7%です。<div><br /></div><div> その対極にあるのは日本で,算出された値は0.618と,48か国の中で最も低くなっています。女性が社会科教員になりにくい国,女子生徒に,<b>政治や経済について説く女性のモデルを見せられない国</b>です。そもそも社会科教員の女性比率が26.1%などというのも,国際標準からすれば異常で,上表の48か国のうち45か国で50%(半数)を越えています。</div><div><br /></div><div> こうなるともう,アファマーティブ・アクションの考えのもと,教員採用試験でも,社会科教員への女性の採用者数を意図的に増やす策も必要かもしれません。政治分野でのジェンダー平等を促進するというビジョンにおいてです。</div><div><br /></div><div> 中高では教科担任制なんですが,各教科について教壇で説く教員の性別構成は,生徒の職業志向に少なからず影響を及ぼす「隠れたカリキュラム」と言えます。最初のグラフで,高校の教科別の教員の性別構成を示しましたが,これが社会の職業構成ときっかり<b>対応</b>してるんですよね。高校生にとって,ロールモデルの影響は大きい。</div><div><br /></div><div> ジェンダー不平等の要因はたくさんあり,大きくは社会の文化といった抽象度の高い次元に還元されますが,まずは,政策で変えやすい次元にまで降りてみることです。学校の教員のジェンダーアンバランスはその最たるもので,まずはこの部分から人為的に変えるべきかと思うのですが,どうでしょうか。</div><div><br /></div><div> しかし何と言いますか,他国と比較すると,自国の状況が「自然なこと,仕方ないこと」と割り切ってはいけないことが分かりますね。これぞ国際比較の意義で,止めることはできません。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-45975923757001782312021-11-26T11:49:00.002+09:002021-12-09T08:19:46.376+09:00母子世帯の生活保護減少の謎<p> 生存権の最後の砦の生活保護ですが,時代と共に受給世帯は増えてきています。</p><p> <a href="https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/74-16.html" target="_blank">厚労省『被保護者調査』</a>によると,1995年度の受給世帯数(月平均)は約60万世帯でしたが,10年後の2005年度に100万世帯を超え,2014年度には160万世帯に達しました。平成の「失われた20年」にかけて,生活に困窮する世帯が増えたためです。</p><p> しかしそれ以降は横ばいです。コロナ禍の昨年は増えただろうと思われるかもしれませんが,2019年度は162万7724世帯,20年度は162万9522世帯で,ほんの微増にとどまっています。困り果てている人は間違いなく増えているはずですが,生活保護の受給世帯数はほとんど変わっていない。2019年7月から2021年7月までの受給世帯数のグラフ(月単位)を描くと,ほぼ真っ平です。最近の生活保護の機能不全については,先週の<a href="https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/11/post-97431.php" target="_blank">ニューズウィーク記事</a>で書きました。</p><p> ここで書くのは,その続きです。生活保護を受給している世帯は,類型別にみると,①高齢者世帯,②母子世帯,③障害者・疾病者世帯,④その他の世帯,に分かれます。この4つのタイプごとに保護受給世帯の推移をみると,近年において明らかに減少傾向の世帯があります。<b>母子世帯</b>です。</p><p> 1995年度の受給世帯数(月平均)を100とした指数のグラフを描くと,以下のようになります。生活保護受給世帯総数,そのうちの母子世帯のカーブです。母子世帯とは,母親と18歳未満の子からなる世帯をいいます。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgxT-FzOsDH5phAvI5SEeeCM9cgtvsf_VOuo7rua66O35YSiGuz90h-Kv93HbdoMNhbwLxBkR8iDOX7e65xZ2ziWzw2P77riSsA6hshRlw46wfu29SR-7KdcAfMxiWIY0PHu0urtpuJz1SX/s466/%25E6%25AF%258D%25E5%25AD%2590A.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="466" data-original-width="404" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgxT-FzOsDH5phAvI5SEeeCM9cgtvsf_VOuo7rua66O35YSiGuz90h-Kv93HbdoMNhbwLxBkR8iDOX7e65xZ2ziWzw2P77riSsA6hshRlw46wfu29SR-7KdcAfMxiWIY0PHu0urtpuJz1SX/s16000/%25E6%25AF%258D%25E5%25AD%2590A.png" /></a></div><div><br /></div> 2010年頃までは,ほぼ同じペースで増えていましたが,母子世帯の保護受給世帯は2012年をピークに減少傾向です。2012年度は11万4122世帯でしたが,2020年度は7万5646世帯と,3割以上減じています。2019年度は8万1015世帯だったので,コロナ禍であっても,6.7%減ったことになります。母子世帯だけね。<div><br /></div><div> コロナでダメージを被ったのは女性です。販売やサービス産業で非正規雇用女性の雇止めが激増し,困窮しているシングルマザーは増えているはず。常識的に考えれば,母子世帯の生活保護受給世帯は増えるはずですが,現実はそうでなく横ばいどころか減少です。減少ペースも,コロナ前と変わっていません。</div><div><br /></div><div> そもそも,この10年ほどで全体の傾向と乖離して,母子世帯の保護受給世帯だけが明らかに減少傾向であるのも不可解です。母子世帯をターゲットにして,生活保護の削減が図られているのではないか。京都府の亀岡市では,こういう疑いをもって,市民団体が調査に乗り出すとのことです(京都新聞,10月26日)。ぜひ,真相を明らかにしてほしいと思います。</div><div><a href="https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/664997" target="_blank">https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/664997</a><br /></div><div><br /></div><div> 母子世帯の生活保護受給世帯が減っている(減らされている?)ことと関連し,提示しておきたいデータがあります。子どもの貧困率が,2人親世帯と1人親世帯でどう違うかです。貧困率とは,年収が全世帯の中央値の半分に満たない世帯が何%かです。</div><div><br /></div><div> OECDの<a href="https://www.oecd.org/els/family/database.htm" target="_blank">「Family Database」</a>から,18歳未満の子がいる世帯の貧困率を,2人親世帯と1人親世帯に分けて知ることができます。以下の表は,日本を含む43の国を高い順に並べたものです。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhamR5MyzkcZwHEAGgdEUfQtGQuXHETXzV-Yoad5Pg-bg7txl4XAbHOxjq4LmMdjac-3Lmcd3X04WUOT-z3EfZdvEHfkL95ZGTr7CfG1snMmPMZHiZbFad4GG_k-VinuyM0HhP81puUIL8m/s780/%25E6%25AF%258D%25E5%25AD%2590B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="780" data-original-width="352" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhamR5MyzkcZwHEAGgdEUfQtGQuXHETXzV-Yoad5Pg-bg7txl4XAbHOxjq4LmMdjac-3Lmcd3X04WUOT-z3EfZdvEHfkL95ZGTr7CfG1snMmPMZHiZbFad4GG_k-VinuyM0HhP81puUIL8m/s16000/%25E6%25AF%258D%25E5%25AD%2590B.png" /></a></div><div><br /></div> 日本の子どもの貧困率は,2人親世帯は11.2%ですが,1人親世帯は48.3%と半分近くになります。その差は40ポイント近くで,日本は両者の差が大きい社会です。貧困が1人親世帯に集中する度合いが高い国と言っていいでしょう。<div><br /></div><div> 日本のシングルの親はフルタイム就業がしにくい,賃金が激安(とくに女性),養育費不払い…。1人親世帯の貧困率の高さは,こういう要因によると考えられていますが,知られざる別の可能性も見えてきました。これが,母子世帯への公的扶助を意図的に削減することでもたされているなら,それこそ大問題です。<b>子どもの貧困がつくられている</b>ことになります。</div><div><br /></div><div> 困り果てている人が増えているのに,我が国の生活保護の受給世帯総数は横ばいで(定員制?),母子世帯の限ると明らかな減少傾向がある(狙い撃ち?)。近年の生活保護の運用実態について,外部による厳格な検証が入るべきです。その先陣を切った,京都府亀岡市の市民団体には敬意を表します。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-5145452353772365462021-11-04T17:28:00.002+09:002021-11-06T15:58:00.719+09:00社会に不満だが,政治参画はしたくない<p> 衆院選が実施されました。投票率は55%で,戦後で3番目に低い低い水準だったそうです。年齢層別のデータはまだ公表されてませんが,前回(2017年)の結果から推測するに,20代は3割ほどでしょう。</p><p> 豊かな国・日本では,若者は社会への不満を持ってないのかというと,そんなことはありません。内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識調査』(2018年)によると,日本の20代で「自国の社会に不満がある」と答えたのは49.3%と,半分弱います。アメリカの33.5%やイギリスの39.5%よりも,だいぶ高し。</p><p> 年功序列の日本では,若者は能力に関係なく低い給与で働かされます。最近ではあまりに安くなっていて,実家を出ることもできぬほど。高齢化の進行で税金もガッポリ取られ,自分たちが高齢期に達した頃には,年金すらもらえない可能性もある。日本のユースが,社会に不満を持つのは道理です。</p><p> こうした状況を変える合法的な手段は政治参画ですが,日本の若者はその意欲も低い。上記の調査によると,日本の20代の53.7%が「主権者として,国の政策決定に参加したくはない」と答えています。アメリカ(23.6%)やイギリス(27.3%)よりも高し。</p><p> 社会の不満が高い一方で,政治参画への参加は忌避する。厄介なのは,この2つが重なってしまうことです。こういう若者が,全体の何%いるか。上記調査の個票データを使って,明らかにしてみましょう。個票データは,<a href="https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf-index.html" target="_blank">コチラのページ</a>から申請すれば送ってくれます。</p><p> 社会への満足度を問うた設問は問25,政策決定への参加希望を問うた設問は問24-2です。日本の20代サンプルを取り出し,この2つの設問への回答をクロスすると,以下のようになります。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhr6j9VBrN7yJbzahbmlGeyo-XvgbsHQ37eEM5asZl7ojpqZ4x_DdYdTRDKJy_QUDvL0JkzdPsuLpfVoyl3f913VnSdcD4nH3gWc82QEwkcZ1Di0TuhBoN1a4D3CQFSicXBbX14FW-7PizI/s439/%25E4%25B8%258D%25E6%25BA%2580A.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="310" data-original-width="439" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhr6j9VBrN7yJbzahbmlGeyo-XvgbsHQ37eEM5asZl7ojpqZ4x_DdYdTRDKJy_QUDvL0JkzdPsuLpfVoyl3f913VnSdcD4nH3gWc82QEwkcZ1Di0TuhBoN1a4D3CQFSicXBbX14FW-7PizI/s16000/%25E4%25B8%258D%25E6%25BA%2580A.png" /></a></div><div><br /></div> 合計680人の未加工データです。この表から,以下の3つの数値が得られます。<div><br /></div><div> 社会への不満がある者の率</div><div> =(208+127)/680=49.3%</div><div> 政策決定に参加したくない者の率</div><div> =(210+155)/680=53.7%</div><div> 両方に当てはまる者の率</div><div> =(87+44+24+39)/680=<b>28.5%</b></div><div><br /></div><div> 社会への不満があるが,政策決定には参加したくない。こういう人が,日本の20代では28.5%(4人に1人)ですか。思う所を書く前に,上記の3グループの量的規模が視覚的に分かるグラフを載せましょう。</div><div><br /></div><div> ツイッターでも発信した,正方形の面積図です。日本の特徴を知るため,アメリカの図との対比にします。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj1W6vff0EMbYp8sdE9nmHD1QIxnHwd0YWB6xuGC8vFyn8tuZ-KsVa-lJu66J1916rJnxADa_804DAFsJMFWYXMdJsjEQH6fM1jnntvKqFRbFlLE8H490LJbYnQDd68k9W1fGvlPW5kKbzW/s445/%25E4%25B8%258D%25E6%25BA%2580B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="326" data-original-width="445" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj1W6vff0EMbYp8sdE9nmHD1QIxnHwd0YWB6xuGC8vFyn8tuZ-KsVa-lJu66J1916rJnxADa_804DAFsJMFWYXMdJsjEQH6fM1jnntvKqFRbFlLE8H490LJbYnQDd68k9W1fGvlPW5kKbzW/s16000/%25E4%25B8%258D%25E6%25BA%2580B.png" /></a></div><div><br /></div> 青色が社会に不満,赤色が政治参加忌避の量的規模で,<b><span style="color: #38761d;">緑色</span></b>のゾーンが両者の重なりです。社会への不満があるが,政策決定には参加したくない。アメリカの20代では9.6%ですが,日本ではその3倍の28.5%であると。<div><br /></div><div> 内閣府調査の対象は7か国ですが,他国のパーセンテージも示しておきましょう。</div><div><br /></div><div> 日本=28.5%</div><div> 韓国=19.7%</div><div> アメリカ=9.6%</div><div> イギリス=14.6%</div><div> ドイツ=12.2%</div><div> フランス=18.5%</div><div> スウェーデン=17.2%</div><div><br /></div><div><div> 日本が最も高くなっています。社会への不満は持ちつつも,それを変える政策決定への参加は欲しない。日本の若者は厳しい状況に置かれていますが,ひたすら現状を耐え忍び,それが限度に達し,自らを殺めてしまう者もいる。日本の20代の死因首位は自殺で,こういう社会は他に類を見ません。</div><div><br /></div><div> さらに怖いのは,腹の底の不満(マグマ)が,非合法の方向を向いてしまうことです。暴動やテロなどですが,昨今続発している,若者による無差別刺傷事件をみると,その兆候が感じられます(小田急,京王線事件)。</div><div><br /></div><div> 図の緑色のゾーンが広まるのは,恐ろしいことだと思います。日本の若者は,なぜ政治参画を欲しないか。よく言われることですが,日本人は幼少期から「出しゃばるな」と,頭を押さえつけられながら育ちます。学校でも校則でがんじがらめで,変に異議を申し立てると碌なことがない。こういう状況が継続することで,「従っていたほうがまし,政は偉い人に任せよう」というメンタルが植え付けられます。</div><div><br /></div><div> 学校というのは実社会のミニチュアで,日本の学校では児童会・生徒会活動など,民主主義の主権者としての振る舞い方を学ぶカリキュラムも組まれています。こういう場において,校則について協議してもよいでしょう。よくない所は,話し合いで変える。大事なのは,こういう経験をさせることです。校則を,主権者教育の題材として使うことができればしめたもの。</div><div><br /></div><div> 教科である公民教育の役割も大きい。政治参画によって社会は変えられることを,具体的な事例でもって示す必要があります。政治参画の手段は投票だけでなく,陳情や署名なども含まれ,生徒が馴染んでいるSNSはそのツールとして機能します。SNSに書き込んだ思いが政治家の目にとまり,政策の実現につながった例もあり。案外,生徒はこういうことも知らぬものです。</div></div><div><br /></div><div> 社会への不満(思い)を,政治的関心に昇華させる。これができていないのが,日本の若者の特徴といえます。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-58883042118573981702021-10-07T18:27:00.002+09:002021-10-07T18:29:46.305+09:00教員給与の相対水準(2019年)<p> 戦前の教員養成は,<b>師範学校</b>で行われてました。学費は無償で,生活費も支給。勉強が好きでも,家が貧しくて,旧制中学等の上級学校に進学できない子どもの受け皿として機能していました。</p><p> その上,卒業後の教員就職率はほぼ100%。至れり尽くせりの感があります。</p><p> しかるに,それでも生徒の集まりはよくありませんでした。理由は,教員の待遇がものすごく悪かったからです。私は2012年頃,図書館通いをして,戦前の教員問題の新聞記事を収集していましたが,「食物さへ十分でない」「弁当はパン半巾」「結核死亡率高し」「一家離散」といったタイトルの記事がわんさと出てきました。教員になるのを強いられた青年が自殺する事件も起きていました。</p><p> 戦後になっても,本業の給与だけでは食えず,同僚や教え子に見つからぬかとビクビクしながら,靴磨きのバイトに精を出す教員もいました。高度経済成長期でも,民間と比した薄給は明らかで,「デモシカ教師」という言葉が流行ったのはよく知られています。</p><p> これではいけないと,70年代に教員の待遇を改善する法律ができ,状況は次第に改善されてきました。昔のように,絶対的貧困の状況に置かれる教員はいません。ですが,民間と比してどうなのかということは,データであまり明らかにされていません。目下,教員不足を解消するため,<b>教員を魅力ある職業にする</b>という方針が掲げられてますが,給与はどうかというのも無視できぬ要素です。</p><p> 教員の給与は,文科省の『学校教員統計』に出ています。最新は2019年ですね。<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400003&tstat=000001016172&cycle=0&tclass1=000001152450&tclass2=000001152451&tclass3=000001152453&tclass4=000001152456&tclass5val=0" target="_blank">このページ</a>の表26から,公立小学校本務教員の平均月収が分かります。諸手当は含まない本俸です。2019年6月の公立小学校男性教員の平均月収は34.9万円です。当然,全国一律ではなく自治体によって違います。元資料には,47都道府県別の数値が出ています。</p><div style="text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhLQAlcgRGtrYOM4B7PejHRvQaglAVJEVHYgKY8mK4I4n5o2azLrVtAsYTK2ZUh7Wd2COxe76kKNHq7DLgahNfeOasRY21rZemVXbBipq_xqEsdxFsUeivyzUDKYY6wM33hGujQuaPNJMDE/s549/%25E6%2595%2599%25E5%2593%25A1A.png"><img border="0" data-original-height="549" data-original-width="424" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhLQAlcgRGtrYOM4B7PejHRvQaglAVJEVHYgKY8mK4I4n5o2azLrVtAsYTK2ZUh7Wd2COxe76kKNHq7DLgahNfeOasRY21rZemVXbBipq_xqEsdxFsUeivyzUDKYY6wM33hGujQuaPNJMDE/s16000/%25E6%2595%2599%25E5%2593%25A1A.png" /></a></div><div><br /></div> 東京は33.1万円,私の郷里の鹿児島は37.0万円ですね。大都市より地方が高いことに疑問を持たれるかもしれませんが,これは年齢構成の違いによります。団塊世代の退職により,都市部では若い新採教員が増え,一気に若返っていますからね。平均年齢(見積もり)は,東京は35.9歳,鹿児島は43.5歳なり。<div><br /></div><div> これを,同年齢の大卒男性労働者の平均月収と比べます。同じく2019年の厚労省『賃金構造基本統計』のデータを使いましょう。公立小学校男性教員の平均月収は<b>34.9万円</b>で,平均年齢は39.7歳(上表)。<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001138086&tclass2=000001138089&tclass3=000001138090&tclass4val=0" target="_blank">こちらのページ</a>の表1によると,30代後半の大卒男性労働者の所定内月収は<b>37.7万円</b>。小学校教員の月収は,同条件の労働者全体をちょっと下回ります。<br /><p> これは全国値に基づく比較ですが,県ごとの比較もしたい。県別の男性労働者の給与は,全学歴のものしか得られません(<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001138086&tclass2=000001138089&tclass3=000001138097&tclass4val=0" target="_blank">このページ</a>の表1)。そこで,全国値の「大卒/全体」倍率を適用し,各県の大卒男性の給与を推し量ります。30代後半だと,全国の大卒男性の月収は37.7万円,全学歴の男性は32.8万円なんで,倍率は1.147となります。これを,各県の30代後半男性の月収にかけるわけです。</p><p> 以下の表は,このやり方で推計した,47都道府県の大卒男性労働者の平均月収です。 </p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhN13LNiK50WBjvGCG2vvjwA8m1n5j692blhZW6_gM0ETFFsPiXMS8gsJ19ZgK4ZiFY0eJKKYXlQxQr5oDzNcVGH6sC55UbuiCBGeal-cL8nkski2qwSCfST-vDjbHcoelOO_sqVor-dNtn/s881/%25E6%2595%2599%25E5%2593%25A1B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="881" data-original-width="349" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhN13LNiK50WBjvGCG2vvjwA8m1n5j692blhZW6_gM0ETFFsPiXMS8gsJ19ZgK4ZiFY0eJKKYXlQxQr5oDzNcVGH6sC55UbuiCBGeal-cL8nkski2qwSCfST-vDjbHcoelOO_sqVor-dNtn/s16000/%25E6%2595%2599%25E5%2593%25A1B.png" /></a></div><div><br /></div> 最初の表によると,東京の公立小学校男性教員の月収は33.1万円で,平均年齢は35.9歳。上記の表によると,東京の30代後半大卒男性の月収は46.3万円。うーん,東京の教員給与は,民間の7割ほどしかないのですね。</div><div><br /></div><div> 秋田だと,小学校男性教員の月収は39.1万円で,平均年齢は47.4歳(最初の表)。40代後半の大卒男性労働者の月収は36.8万円。秋田では,教員給与が同条件の労働者全体をやや上回ります。</div><div><br /></div><div> このやり方で,公立小学校の男性教員の月収を,同条件の労働者全体と比較しました。前者が後者の何倍かという倍率を出し,高い順に並べると以下のようになります。全国値だと,34.9万円/37.7万円=0.925です。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj3f9DuwkWokZ-Z-TP8o9-fJUuZTWswdqIWyTxnpLmGUcpFDn4WHXRJvMCjQ-U7uypZJRACP5nMsN2sklY3tvZWPS8-ZLgTS9n2EkTpTArDCMUX6zP9mhFpafcz9RAc0-1uMPEoNBqphmfr/s557/%25E6%2595%2599%25E5%2593%25A1C.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="557" data-original-width="315" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj3f9DuwkWokZ-Z-TP8o9-fJUuZTWswdqIWyTxnpLmGUcpFDn4WHXRJvMCjQ-U7uypZJRACP5nMsN2sklY3tvZWPS8-ZLgTS9n2EkTpTArDCMUX6zP9mhFpafcz9RAc0-1uMPEoNBqphmfr/s16000/%25E6%2595%2599%25E5%2593%25A1C.png" /></a></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><br /></div><div> どうでしょう。最高は岩手の1.16倍,最低は東京の0.715倍です。教員給与が民間を上回るのは倍率が1.0を超える県ですが,その数は13県です(赤色)。青色の14県では,教員給与が民間より10%以上低くなっています。</div><div><br /></div><div> ボーナスも含めた年収だと違うかもしれませんが,月収の比較だとこんな感じです。おおよそ,教員給与が民間より高いとは言えなそうですね。</div><div><br /></div><div> 教員の待遇改善を考えるデータにしていただけたらと思いますが,教員を「魅力ある職業」に映じさせるならば,教員になるための経済的障壁をなくすのも手です。教員養成大学の学費を無償にする,ないしは教員になったら奨学金の返済を免除するなどしたらどうでしょう。</div><div><br /></div><div> いずれも,過去において為されていたことです。冒頭で書いたように戦前の師範学校の学費は無償でしたし,90年代初頭までは,教育公務員になったら日本育英会(現・日本学生支援機構)の奨学金の返済は免除されていました。</div><div><br /></div><div> 全国一律でなくとも,こういう実験をする国立大学が出てきたら面白い。もしかしたら,優秀な学生がどっと押し寄せるかもしれません。わが母校,教員養成の老舗の東京学芸大学が先陣を切ってみたらどうでしょう。</div><div><br /></div><div> 前に,<a href="https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11650.php" target="_blank">ニューズウィーク記事</a>で書いたことありますが,日本は,優秀な学生を教員に引き寄せるのに成功しています。労働時間がメチャ長く,給与もさほど高くないのに,これは軌跡と言っていいかもしれません。教員という崇高な仕事への憧れでしょうか。しかし,こういう感情によりかかるやり方は綻びを見せつつあります。</div><div><br /></div><div> 優秀な若者を教員に引き寄せるにはどうしたらいか。経済的な困窮が広がっている今,行政がやってみるべきことは多そうです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-37262418602358838752021-09-28T12:03:00.003+09:002021-10-02T12:48:50.122+09:00性犯罪の何%が裁判になるか?<p> 性犯罪に関する法改正が議論されています。細かい内容は各紙の報道に譲りますが,基底的な問題意識は,性犯罪がきちんと裁かれていないのではないか,ということです。いわゆる「暗数」が非常に多いことも,よく知られています。</p><p> こういう現実を印象や肌感覚ではなく,データで可視化する(固める)のは意義あることでしょう。そこで,タイトルのような問いを立ててみます。性犯罪の何%が裁判になるか?</p><p> 犯人を法廷に立たせるには,①警察が被害届を受理して捜査に踏み切ること,②犯人が検挙されること,③検察が起訴すること,という3段階を経ないといけません。この3つの関門を通過する率を出し,かけ合わせることで,上記の問いへの答えが得られます。</p><p> まずは①です。2019年1~2月に法務省が実施した『<a href="https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00019.html" target="_blank">第5回犯罪被害実態(暗数)調査</a>』によると,16歳以上の女性1771人のうち,過去5年間に性犯罪(強制性交,強制わいせつ)の被害に遭ったという人は30人です。被害経験率は1.69%。</p><p> 総務省の『住民基本台帳人口』によると,2019年1月1日時点の16歳以上の女性人口は5701万451人。先ほどの比率をかけると,2014~18年の5年間において,性犯罪の被害に遭った女性は96万5733人と見積もられます。推定被害女性数です。</p><p> 警察庁の<a href="https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/year.html" target="_blank">『犯罪統計書』</a>によると,2014~18年の強制性交,強制わいせつの認知事件数は3万7314件。先ほどの推定被害女性数に占める割合は<span style="color: red;"><b>3.86%</b></span>です。低いですねえ。被害者の大半は警察に行かず泣き寝入り。勇気を出して訴え出ても,「よくあること,証拠がないので難しい」と突っぱねられることも。</p><p> 次に②です。警察が捜査に踏み切った事件のうち,どれほどが犯人検挙に至るか。警察庁の同資料によると,2014~18年の強制性交,強制わいせつの検挙件数は2万6645件です。上述の認知件数で割って,性犯罪の検挙率は<span style="color: red;"><b>71.41%</b></span>となります。</p><p> 最後に③です。検挙された犯人は検察に送られますが,このうちの何%が起訴されるか。法務省の<a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250003&tstat=000001012929&cycle=7&month=0&cycle_facet=cycle&tclass1val=0" target="_blank">『検察統計』</a>を紐解くと,2014~18年の強制性交,強制わいせつの起訴人員は8861人,不起訴人員は1万3823人です。起訴率は,両者の合算に占める起訴人員の割合で<span style="color: red;"><b>39.06%</b></span>となります。</p><p> これは,他の罪種に比して低い部類です。性犯罪は物証が得にくいためでしょう。近年,(訳のわからない)無罪判決も相次いでいることから,検察も起訴をためらうようになっているのかもしれません。</p><p> これで,①~③の関門の通過率が得られました。太い赤の数字です。この3つをかけ合わせると,「性犯罪の何%が裁判になるか?」という問いへの答えは,<span style="color: red;"><b style="background-color: #fcff01;">1.08%</b></span>となります。実際に起きている推定事件数の1.08%,93件に1件しか裁判になっていないと。</p><p> この現実がどういうものかを,グラフで表すと以下のようになります。ちゃんと裁かれる事件はほんの一握り,いや一つまみということが,視覚的に分かりますね。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjWcF2vZwxRSCn8lAC_tRz4smrWgkCfMRP61t-WqCRATFCI_0ZcjpckmX3wlOfvRqnZODhvAoZ5xOzxH7sQ568seWxNQcTZFQlheFNyzNnEc_GBd34xzjGPurZ4q0zehobgnT8q9wkzOhQ9/s423/%25E4%25BA%258B%25E4%25BB%25B6.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="356" data-original-width="423" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjWcF2vZwxRSCn8lAC_tRz4smrWgkCfMRP61t-WqCRATFCI_0ZcjpckmX3wlOfvRqnZODhvAoZ5xOzxH7sQ568seWxNQcTZFQlheFNyzNnEc_GBd34xzjGPurZ4q0zehobgnT8q9wkzOhQ9/s16000/%25E4%25BA%258B%25E4%25BB%25B6.png" /></a></div><div><br /></div> これでは法治国家ではなく,放置国家です。法改正により,こうした酷い実態が変わることを切に願います。舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-55442428845042894942021-09-25T15:29:00.003+09:002021-09-25T21:04:18.291+09:00普通に働いて,これはない 秋らしく,少し涼しくなってきました。私は今日,近くの医院で2回目のワクチンを打ってきました。ひとまず,コンプリートです。ワクチン接種証明書ももらえ,地元の提携店で見せると割引を受けられるそうです。ありがたや。<div><br /></div><div> さて,ふと目にした<a href="https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210924/k10013273971000.html" target="_blank">NHKのニュース</a>によると,コロナ禍の影響で,フリーランスの働き方を選ぶ人が増えているとのこと。正社員として勤めていた先の仕事が減っているためでしょう。あるいは,自宅でPCを使った副業をしてみて,これは本業でいけるかもしれない,という展望を持った人もいるかもしれません。</div><div><br /></div><div> しかし,そうは甘くないのが現実。フリーランスのフリーは自由,ランスは兵隊という意味で,元々の意味は「自由兵」ですが,フリーとは「不利ー」で,何の保障もない「<b>不利兵</b>」と揶揄する言い方もあります。上記のNHK記事でも,フリーランスの保護するセーフティネットの整備が不可欠と指摘されています。</div><div><br /></div><div> 給与も悲惨をきわめています。データで示しましょう。</div><div><br /></div><div> 資料は,毎度使っている『就業構造基本調査』(2017年)です。<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003222454" target="_blank">コチラの統計表</a>から,有業者の年間所得分布を従業地位別に呼び出せます。正規雇用者,非正規雇用者,そしてフリーランスのデータを出してみます。フリーランスとは,従業地位が「雇人のいない業主」のことです。</div><div><br /></div><div> なお労働時間も入れられますので,<b>普通に働く人</b>だけを取り出してみましょう。年間の就業日数が250~299日,週の就業時間が43~48時間という人に限定します。月に22日,1日あたり8~9時間ほど働いている人達です。あと一つ,性別も組み込み,男性と女性に分けます。言わずもがな,稼ぎには大きな性差があるからです。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEibEnX2fHwiK-KmiMTqGEt6RiMaTR16P28KrlDc-Yi-Fw1ijhq-MuglTgBZWyEcGtzULRSY2-JIGbpctD1lG5SpIj_70yQbbpwX-9JaE5BMoJVvbfuWJeFDgjQ2sZtlMnHyFJoRgienSWXR/s447/%25E6%2599%25AE%25E9%2580%259AA.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="330" data-original-width="447" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEibEnX2fHwiK-KmiMTqGEt6RiMaTR16P28KrlDc-Yi-Fw1ijhq-MuglTgBZWyEcGtzULRSY2-JIGbpctD1lG5SpIj_70yQbbpwX-9JaE5BMoJVvbfuWJeFDgjQ2sZtlMnHyFJoRgienSWXR/s16000/%25E6%2599%25AE%25E9%2580%259AA.png" /></a></div><div><br /></div> 全体を100とした%値ですが,どうでしょう。<span style="color: red;">赤字</span>は最頻階級で,男性正規は300万円台,非正規・フリーは200万円台,女性正規は200万円台,非正規は100万円台,フリーは100万円未満です。<div><br /></div><div> これは,家計補助やお小遣い稼ぎの短時間労働は含んでいません。月22日,1日8~9時間ほど働いているフルタイム就業者のデータです。それでこの有様とは,少ないなあという印象です。最近よく言われる「安いニッポン」が数字で出ています。</div><div><br /></div><div> フリーランスをみると,男性の31.6%,女性の72.4%が200万円に達しないプア,<b>フルタイム・ワーキングプア</b>です。フリーランスは労働時間の際限がなくなりがちで,かつ給与の未払いなども横行しています。こういう搾取に遭いやすいのは,とりわけ女性のフリーランスです。</div><div><br /></div><div> 上記の分布から中央値(median)を計算してみましょうか。本ブログを長くご覧の方は,分布から中央値を出すやり方はご存知かと思いますが,久しぶりですので,算出方法を説明します。男性のフリーランスを例にします。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjg-ABGHFLivO6aGv18j4gax5fk6omNR0fGlfApGmXKGZLbVX0MqhLKoghn094Hx3qG4a8yqalgLmzQFKl5-G9YTZ0_8S0kN0ejls_n_RlYv7o8mM8aR7I9Nga8MwFoso9Gwu9N_Nn990Fv/s355/%25E6%2599%25AE%25E9%2580%259AB.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="342" data-original-width="355" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjg-ABGHFLivO6aGv18j4gax5fk6omNR0fGlfApGmXKGZLbVX0MqhLKoghn094Hx3qG4a8yqalgLmzQFKl5-G9YTZ0_8S0kN0ejls_n_RlYv7o8mM8aR7I9Nga8MwFoso9Gwu9N_Nn990Fv/s16000/%25E6%2599%25AE%25E9%2580%259AB.png" /></a></div><div><br /></div> 真ん中の%分布は,最初の表と同じです。右端はそれを累積したもので,中央値(累積%=50)は,所得200万円台の階級に含まれることが分かります。<b>按分比例</b>を使って,それを割り出します。以下の2ステップです。<div><br /></div><div> 按分比=(50.0-31.6)/(56.3-31.6)=0.7437</div><div> 中央値=200万円+(100万円×0.7437)=274.4万円</div><div><br /></div><div> フルタイムで働く男性フリーランスの所得中央値は,274万円と出ました。同じやり方で,他のグループの所得中央値を算出すると以下のようになります。</div><div><br /></div><div> 男性正規 = 420.3万円</div><div> 男性非正規 = 259.5万円</div><div> 男性フリーランス = 274.4万円</div><div><br /></div><div> 女性正規 = 297.1万円</div><div> 女性非正規 = 204.1万円</div><div> 女性フリーランス = 137.7万円<br /><div><br /><div> 日本において,普通に働く労働者の年間所得中央値です。「<b>1日8~9時間働いて,これはないやろ</b>」って感じです。</div><div><br /></div><div> 言い忘れましたが,『就業構造基本調査』の<a href="https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index2.html" target="_blank">用語解説</a>によると,年間所得は税引き前のだそうです。つまり手取りの額はこれよりもっと少ないことになります。開いた口がふさがりません。</div><div><br /></div><div> これでいて,税金や住居費(家賃)等の基礎生活費は増えているのですから,国民の生活は実に苦しい。私自身,何の後ろ盾もないフリーランスの働き方をしてますが,身をもって感じます。国保なんかは本当に重いです。会社員の方には分からんでしょうね。</div><div><br /></div><div> その一方で,企業の内部留保は過去最高と聞きます。某企業の社長さんが言われてますが,こういう時期こそ,内部留保を取り崩し,従業員に還元すべし。ここまで給与が安いと,国民の購買力が下がり,モノが売れなくなります。海外からも労働力が来なくなります。商品を売る,必要な労働力を確保する,この2つの面において,痛手を被ることになります。要するに,自分たちに返ってくるのです。</div><div><br /></div><div> 普通に働けば普通の暮らしができる社会を。もっと具体的に言えば,「1日8時間の労働で,普通の暮らしができる社会」が望まれます。選挙の公約でよく聞きますが,日本の現状は程遠く,時代と共に遠ざかってすらいます。</div><div><br /></div><div> この秋,衆院選が実施されますが,この基本がマニフェストに盛られているか。私が真っ先に注目するのはココです。</div></div></div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-83798378612835240432021-09-01T17:55:00.003+09:002021-09-02T10:31:49.262+09:00家庭の通信環境の不足<p> 久々の更新になります。9月になり,急に涼しくなりました。今後の週間予報をみても,30度を超える真夏日にバックすることはなさそうです(横須賀市)。初秋です。</p><p> 今年4月実施の『全国学力・学習状況調査』の結果が公表されました。去年はコロナの影響で中止でしたが,今年は実施されたようです。詳細な資料は,国立教育政策研究所の<a href="https://www.nier.go.jp/21chousakekkahoukoku/" target="_blank">ホームページ</a>で見れます。</p><p> 例年通り,新聞では平均正答率の都道府県順位に注目されてますが,私はあまり興味を持ちません。教科の学力調査の他に,児童生徒や学校を対象とした質問紙調査も実施されていて,こちらのほうに興味深い設問が盛られています。昨年4月以降,コロナ禍にどう対処したか,どういう教育活動を行ったかなどです。感染症拡大のような異常事態が起き,学校はどうなったか,どういう課題が浮き出てきたか。大事なのは,この経験データ(fact)をちゃんと総括することです。</p><p> 周知のとおり,昨年は全国の学校が<b>臨時休校</b>を迫られました。それに伴い,オンライン授業などが導入されたのですが,なかなか一筋縄ではいかなかったようです。円滑な実施を妨げたのは,十分な通信環境がない家庭が少なくないこと。これを受け,今年の質問紙調査(学校対象)では,2020年4月以降のコロナに伴う臨時休校中,家庭でのICT学習に際して,課題となったことを問うています。</p><p> ①家庭の端末(PC等)が不足,②家庭の周辺機器(ウェブカメラ等)が不足,③家庭の通信環境(無線LAN等)が不足,ということが,オンライン教育の足かせになった学校はどれほどか。小学校の回答分布を図示すると,以下のようになります。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiwhL8BDvI06Ne36juHoVIUQNJ1pk8O9xBWFtwEJZEhGziYMtJC7nIz5uEzHtcCuaMUe0mLcwP7hv_dqHy4ytLApH0yk7aJ0WAOsLzpfAADYfvkIqrST1A2ozBmyXwbaoxZBhXtfAztOVr2/s563/%25E6%25A0%25BC%25E5%25B7%25AEA.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="563" data-original-width="406" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiwhL8BDvI06Ne36juHoVIUQNJ1pk8O9xBWFtwEJZEhGziYMtJC7nIz5uEzHtcCuaMUe0mLcwP7hv_dqHy4ytLApH0yk7aJ0WAOsLzpfAADYfvkIqrST1A2ozBmyXwbaoxZBhXtfAztOVr2/s16000/%25E6%25A0%25BC%25E5%25B7%25AEA.png" /></a></div><div><br /></div> 公立,国立,私立に分けて分布を示しました。量的に圧倒的に多い公立をみると,支障として「当てはまる」と答えた学校の率(<span style="color: red;">赤色</span>)は,家庭の端末の不足が48.0%,家庭の周辺機器の不足が52.0%,家庭の通信環境の不足が41.5%,となっています。<div><br /></div><div> なるほど,メディアで報じられた通り,PCがない,ウェブカメラがない,Wi-fiがない家庭が多く,困り果てたという学校が多いようです。義務教育の公立小学校には,社会の全ての階層の子どもが通っていますが,赤色が半分近くまで垂れている様に,子どもの貧困の広がりが出ているようです。</div><div><br /></div><div> しかし,ごく限られた階層(約1%)の子弟が通う国私立小となると,様相は違っていて,家庭の端末・機器・通信環境の不足がネックになったという学校は,公立と比して少なくなっています。身もふたもないですが,通っている児童の階層構成の違いが出ていますね。ホンマもんの<b>ICT格差</b>です。とはいえ,私立といえど,「当てはまる」ないしは「やや当てはまる」と答えた学校の率は小さくはないですが。</div><div><br /></div><div> いわずもがな,小学生の99%は公立の児童ですので,深めたいのは公立校のデータです。上図は全国の結果ですが,地域による違いもあります。家庭の端末不足,機器不足,通信環境不足が支障になった学校のパーセンテージを,47都道府県別に出してみると,これがまた一様でない。以下に載せるのは,「当てはまる」と答えた公立小学校の割合の一覧です。高い順に並べています。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEizePeHWcruob0JB3bGklPBNVoCndG6h04xib-mWkWnOj4AE1GrEKaApfIoJnuA3g2pV0W-rYM03aincSiLNYPzE2OxeoMYr3VmeaHXocUmLcKkCRErGCMg9f_TzmH_Um3TKSuCqEppn4z3/s891/%25E6%25A0%25BC%25E5%25B7%25AEB.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="891" data-original-width="377" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEizePeHWcruob0JB3bGklPBNVoCndG6h04xib-mWkWnOj4AE1GrEKaApfIoJnuA3g2pV0W-rYM03aincSiLNYPzE2OxeoMYr3VmeaHXocUmLcKkCRErGCMg9f_TzmH_Um3TKSuCqEppn4z3/s16000/%25E6%25A0%25BC%25E5%25B7%25AEB.png" /></a></div><div><br /></div> どうでしょう。端末の不足がネックになった学校の率は66.3%~33.9%,機器の不足は70.8%~38.9%,通信環境の不足は65.8%~23.3%のレインヂがあります。<div><br /></div><div> 50%超の数字には色をつけましたが,情報機器の不足で困ったという学校が半分を超える県は35県にもなります。Webカメラとかは高価ですからね。これがないという家庭は少なくないでしょう。経済的に余裕のない家庭は,たやすく持てるものではありますまい。</div><div><br /></div><div> 児童の家庭のリソース不足がネックになった学校の率は,地方で高く,都市県で低い傾向もあります。3つの肯定率とも,各県の県民所得と有意なマイナスの相関係数が出ます。県単位のデータから演繹するのは難しいですが,子どもの貧困が影を落としている可能性もあるでしょう。東京都内の区別のデータが出せれば,もっとはっきりしたことが言えそうですが,私の手では叶いません。個票データが手元にあるお偉いさん,ぜひ分析してみてください。貧困世帯へのICT支援の必要性を支持する,揺るぎないエビデンスになります。</div><div><br /></div><div> 地方の郡部では,ウェブカメラ等の機器の普及率も低そうです。しかし,こうした機器を必要としているのは,田舎の子どもたちです。空間を越えた遠隔教育の行う上で必須のアイテムです。前から言ってますが,とくにへき地にあっては必須の学用品と捉え,用意できない家庭には,<b>就学援助</b>の範疇で支給ないしは貸与すべきかと思います。文科省も認識してきるようで,援助費目として「オンライン学習費」が加えられてはいますが。</div><div><a href="https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/017.htm" target="_blank">https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/017.htm</a><br /></div><div><br /></div><div> コロナ禍によって,教育の情報化を進める上での課題がくっきりと浮かび上がりました。家庭のリソース不足はその最たるもの。「1人1台端末」のGIGAスクール構想など手は打たれていますが,令和の時代の学校教育を国際水準にキャッチアップさせていくには,人為的な支テコ入れをもっとしないとなりますまい。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-65423104308845278632021-07-27T20:15:00.003+09:002021-07-27T21:03:31.277+09:00悩みを相談しない<p> 夏も本場,学校も夏休みに入ったみたいで,登下校の小学生とすれ違うこともなくなりました。</p><p> 夏休みといえば「宿題」ですが,私も,ここ毎日「宿題」をやっている感覚です。社会科の教員採用試験の要点整理集の改訂で,あとちょっとで世界史が終わるところです。カレンダーに予定を書き込んで,そのペースに沿ってやっています。私は,物事を計画的に仕上げていくのは性に合っています。</p><p> 朝から夕刻まで,この宿題の日々で,ツイッターやブログの更新が少なくなってますが,ツイッターに上げた図表のネタを書いておきましょう。タイトルのごとく,悩みを相談しない日本の若者についてです</p><p> コロナ禍で辛い日々が続いてますが,困りごとや悩みは<b>相談</b>することが大切。自分で抱え込み,先行きを勝手にシュミレートして,自分と対話しても碌な答えは出てきません。客観的(楽観的)な見方ができる他人に,きちんと言語化してはき出すこと。これに尽きます。</p><p> ところがデータで見ると,日本の子ども・若者には,これをしない人が多い。2018年の<a href="https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf-index.html" target="_blank">内閣府の国際意識調査</a>で,13~29歳の子ども・若者に対し,「悩みがあっても,誰にも相談しない」という項目に,当てはまるか否かを問うています。「はい」と答えた人の率をグラフにすると以下のごとし。男性と女性に分け,年齢層ごとのパーセンテージをつないだものです。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEirJ3tWkqRDtx-umYsHJlVK11u1yFWKQftF2aW5iC9TKvK3jwMq9LNAR3tNzWSMvJiNWCKt0V0KaK9DYGdeHMXs86XEBu0j8M-9qSlss6IzCZ1O8BytEz1ByjW63limTPXOUronHfyijQCy/s495/%25E7%259B%25B8%25E8%25AB%2587A.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="495" data-original-width="407" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEirJ3tWkqRDtx-umYsHJlVK11u1yFWKQftF2aW5iC9TKvK3jwMq9LNAR3tNzWSMvJiNWCKt0V0KaK9DYGdeHMXs86XEBu0j8M-9qSlss6IzCZ1O8BytEz1ByjW63limTPXOUronHfyijQCy/s16000/%25E7%259B%25B8%25E8%25AB%2587A.png" /></a></div><div><br /></div> 日本の折れ線(赤色)は,他国より高い位置にあります。とくに男性は顕著です。悩みがあっても,人に相談しない人の率が高くなっています。20代後半の男性は33%,女性は21%です。<div><br /></div><div> 前にデータを出しましたが,「人に迷惑をかけるな」と言い聞かされて育ってますからね。とくに男子は,「弱音を吐くべからず」という有形・無形の圧力を感じ取っているのでしょう。</div><div><br /></div><div> こういう国民性を意識してか,政府の『自殺対策白書』では,学校において「<b>SOSの出し方教育</b>」を行うことを推奨しています。困った時は遠慮せずSOSを出しなさい,一人で抱え込んではいけません,ということです。</div><div><br /></div><div> 自己責任論や根性論にとらわれて,SOSを出せない子どものメンタルもほぐさないといけませんが,同時に,「SOSの受け止め方」も問わねばなりますまい。当の子どもは,相談したところで説教をされるだけ,事態がかえって悪化するだけと思っているのかもしれません。</div><div><br /></div><div> 子どもの場合,悩みの相談相手としては,親や教師が想起されますが,日本の10代に「悩みを誰に相談するか」を問うと,これらを選ぶ子の率は低くなっています。代わりに高いのは…? 以下のグラフを見てください。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiYZsGB_2wKiAsUrytTGZtLLl0-QVU5jJwwVS61s79FIfchDiMSzVfZC1O2-Li1WQMENyyRS8nFR15XLqg8pBDhyphenhyphenaPq98NUB9I1NZpszwEnyMl_u6oPRsCLtWzhaTVoiZzOLIAPUius_Piz/s480/%25E7%259B%25B8%25E8%25AB%2587B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="480" data-original-width="378" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiYZsGB_2wKiAsUrytTGZtLLl0-QVU5jJwwVS61s79FIfchDiMSzVfZC1O2-Li1WQMENyyRS8nFR15XLqg8pBDhyphenhyphenaPq98NUB9I1NZpszwEnyMl_u6oPRsCLtWzhaTVoiZzOLIAPUius_Piz/s16000/%25E7%259B%25B8%25E8%25AB%2587B.png" /></a></div><div><br /></div><div> 日本の子は,友人に相談するという回答の率が他国と比して高くなっています。言い方がキツイですが,親や教師はあまり頼りにされていないのかもしれません。「親や先生に相談したって…」と思っているのかもしれないですね。</div><div><br /></div><div> 文科省の自殺対策の手引では,悩みの相談相手として友人が多きな位置を占めることを認識し,悩みをしっかり受け止める「<b>傾聴」</b>の仕方を生徒に教えるべき,と指摘しています。結構なことですが,教師や親にも手ほどきが要るのではないでしょうか。子どもが相談してきた時,話を決して遮ったりせず,まずはじっくりと聞くことです。</div><div><br /></div><div> 来年度から成年年齢が<b>18歳</b>に下げられることに伴い,消費者被害の増加も懸念されます。今以上に,ためらうことなく悩みを相談できる環境をつくらないといけません。責任,自由に加えて支援の3点を。</div><div><br /></div><div> 「悩み上がっても,誰にも相談しない」。こういう傾向を,国民性や文化(これとても,上の世代が下の世代に植え付けているのですが)のせいだけにせず,子どもを取り巻く周囲の「SOSの受け止め方,気付き方」の問題ともみるべきでしょう。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-86584619745056986452021-07-16T18:59:00.002+09:002021-07-16T19:06:50.175+09:00県庁所在地の基礎生活費<p> 日経新聞WEB版に「<a href="https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD071NU0X00C21A7000000/" target="_blank">地方移住,こんなはずでは,増える支出に落とし穴</a>」という記事が出ています。内容は推して知るべし。生活費が安くなるからと移住したもの,光熱・水道費や自動車関連費がかさんで,かえって支出が増えてしまった,という体験談です。</p><p> そうですねえ。東京からの移住の場合,住居費は確実に安くなるでしょうが,光熱・水道費は上がりそうです。田舎はプロパンガスが多いですが,都市ガスより高いですからね。水道も,維持費の関係で田舎では割高です。自動車の費用は言うまでもません。公共交通網が発達している東京と違って,地方では車は必須です。維持費がバカになりません。</p><p> データで総決算の比較をすると,どうなるでしょう。『家計調査』に,2人以上世帯の年間支出額平均が47都道府県の<b>県庁所在地別</b>に出ています。2020年のデータは,<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003348239" target="_blank">コチラの統計表</a>です。私は,①住居費,②光熱・水道費,③鉄道・バス費,④自動車関連費の4つを,各県の県庁所在地別に呼び出しました。③を入れたのは,都市部では自動車は要らずとも,公共痛交通機関の費用が要ると考えるからです。</p><p> 手始めに,東京23区と,私の郷里の鹿児島市を比べてみましょうか。背比べの積み上げグラフにすると以下のごとし。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgCikDPrYteuJAE5kRngcc5H7-p2U_ZqVbqPWK9yBOukF1CPsz4XCUL6xmN0lPu5vZHEpwtyU3ulCt_RoPGLEeFhQadmAe5ZKK-wPJwvLt8jfcxf6ibOq-NuEUevuU_6lj_-Zqeu6bdIc3t/s461/%25E8%25B2%25BB%25E7%2594%25A8C.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="461" data-original-width="391" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgCikDPrYteuJAE5kRngcc5H7-p2U_ZqVbqPWK9yBOukF1CPsz4XCUL6xmN0lPu5vZHEpwtyU3ulCt_RoPGLEeFhQadmAe5ZKK-wPJwvLt8jfcxf6ibOq-NuEUevuU_6lj_-Zqeu6bdIc3t/s16000/%25E8%25B2%25BB%25E7%2594%25A8C.png" /></a></div><div><br /></div> 住居費は鹿児島市が安いですが,自動車関連費用がかかります。しかしトータルでみると,鹿児島市の方が安いですね。上記は2人以上世帯の年間支出額ですが,平均世帯人員は東京23区が2.97人,鹿児島市が2.92人ですので,家族サイズを考慮しても鹿児島市のほうが割安です。<div><br /></div><div> 郷里をひいきするのではないですが,きたれ,鹿児島へ。生活費が安いのに加え,食べ物も美味い!</div><div><br /></div><div> しかし47都道府県の県庁所在地のデータを眺めると,東京区部より割高なエリアも見受けられます。以下は一覧表です。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjuXvbw35HyBItfYV2Yi2J2JuT7m5tPqx6n0vjCsI96nX4Hej-Y4xJ8WBVlCoVHde1OOuOe0db8LmlRla2l4SGoDPSPrsiaQ-atNY-JIgnG_7A-N9_07jyxAUBpjlBJCpUNI5tL3U0rI1-N/s879/%25E8%25B2%25BB%25E7%2594%25A8A.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="879" data-original-width="397" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjuXvbw35HyBItfYV2Yi2J2JuT7m5tPqx6n0vjCsI96nX4Hej-Y4xJ8WBVlCoVHde1OOuOe0db8LmlRla2l4SGoDPSPrsiaQ-atNY-JIgnG_7A-N9_07jyxAUBpjlBJCpUNI5tL3U0rI1-N/s16000/%25E8%25B2%25BB%25E7%2594%25A8A.png" /></a></div><div><br /></div> 黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。住居費は東京がマックスですね。光熱・水道費は寒い北国で高くなっています。鉄道・バス費は都市部で高く,自動車関連費はその逆です。<div><br /></div><div> 47都道府県の県庁所在地の基礎生活費は,<b>4つの費目の合算を平均世帯人員で割った値</b>で測れます。東京区部は,4つの費目の合算は81.25万円で,世帯人員は2.97人ですので,1人あたりの基礎生活費は27.36万円となります。鹿児島市は24.62万円です。</div><div><br /></div><div> 47都道府県の県庁所在地の数値を,高い順に並べると以下のようになります。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj7LiHGE7MPBI0gVZuAcQ6s5nBLOZiQmK67zlfGU8qvNufGVVSWvmehRAWkm0k2Mar-lSmf7scBc4UKfL9C_WfbFKUGifIejcw81hu4keXiJcHLV2qFUMyZa5qFeVkEhzBVbflqlFJs1U81/s556/%25E8%25B2%25BB%25E7%2594%25A8B.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="556" data-original-width="309" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj7LiHGE7MPBI0gVZuAcQ6s5nBLOZiQmK67zlfGU8qvNufGVVSWvmehRAWkm0k2Mar-lSmf7scBc4UKfL9C_WfbFKUGifIejcw81hu4keXiJcHLV2qFUMyZa5qFeVkEhzBVbflqlFJs1U81/s16000/%25E8%25B2%25BB%25E7%2594%25A8B.png" /></a></div><div><br /></div> 東京がマックスではないですね。上位というのでもなく,中よりちょっと上という位置です。首位は住居費と自動車費がともに高い福岡市で,その次は鳥取市です。鳥取市では車関連の支出が多い(年額55.8万円)。<div><br /></div><div> 右下をみると,関西圏では基礎生活費が安上がりですね。京都市は19.14万円で,福岡市の半分くらいです。学生の街ですが,これは2人以上世帯のデータに基づく数値なんで,単身学生は除外されています。</div><div><br /></div><div> 冒頭の日経新聞でも言われてますが,移住しようとしているエリアのデータを調べてみるのもいいでしょう。</div><div><br /></div><div> 地方の郡部では,光熱・水道費や自動車費がもっと高くなると思われます。随所で言われていますが,移住はまず地方都市からで,それを経てから郡部に移るという2ステップを踏んだほうがよさそうです。郡部には「濃すぎる人間関係」という,別のコストもありそうですしね。</div><div><br /></div><div> 『家計調査』からササっとこしらえたデータですが,生活費が「都市>地方」とは単純には言えないようです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-63640471444333079852021-07-09T18:57:00.002+09:002021-07-09T18:58:35.341+09:00洋服への支出減少<p> コロナが渦巻いて久しいですが,それが社会にどういう影響を与えたか,可視化できるデータが溜まってきています。</p><p> 私はこれまで,社会病理学を専攻する立場から自殺者数に注目してきました。コロナ前の2019年と2020年を比較すると自殺者は増えています。性別にみると,男性では微減ですが,女性では増加です。さらに年齢も加えると,若い女性で増加率が高くなってます。女子高生では1.8倍です。データと背景の考察は<a href="https://tmaita77.blogspot.com/2021/03/blog-post_22.html" target="_blank">コチラの記事</a>で。</p><p> なお,総務省の『家計調査』も使えます。お金をどれほど使っているか,どういう品目に使っているかです。コロナになってから外出自粛が要請されるようになり,経済停止により家計も厳しくなっているとみられます。こういう条件が出てくると,家計はどう変わるか。</p><p> まずは使うお金の額です。上記の資料によると,2人以上世帯の消費支出額(年間平均)は,2019年は352万547円,2020年は333万5114円となっています。コロナ禍になってから減ってますね。しかし観察のスパンをもっと広げると,今世紀初頭の2000年では380万7937円です。平成不況で収入が減っているためか,消費に使うお金も長いスパンでみて減ってきています。世帯の高齢化の要因もあるでしょうが。</p><p> 中学の社会科で習うレベルですが,生活が苦しくなると必須度の高い品目への支出は維持ないしは増える一方で,そうではない品目(奢侈品)への支出は減ります。前者の代表格は食費で,後者としては,たとえば<b>洋服</b>なんかはどうでしょう。</p><p> トータルの消費支出額,食費,および洋服の支出額の変化をグラフにしてみます。2人以上世帯の年額平均で,始点の2000年を100とした指数にしています。<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003348239" target="_blank">コチラの統計表</a>からデータを作成しました。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjVz897hAR9CI5cHngNMYWQB8omjiZRLoPFXHHuL2C37cTZH9QjARSOIuTMVkHTx0FH7XuB76cVo3Yl_M9qZ5azZt0YgHLbgfTZCETur82RP3wbMh4uB77UUfB_53SBdaDA3YxzvFdubxOU/s446/%25E6%25B4%258B%25E6%259C%258DA.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="446" data-original-width="412" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjVz897hAR9CI5cHngNMYWQB8omjiZRLoPFXHHuL2C37cTZH9QjARSOIuTMVkHTx0FH7XuB76cVo3Yl_M9qZ5azZt0YgHLbgfTZCETur82RP3wbMh4uB77UUfB_53SBdaDA3YxzvFdubxOU/s16000/%25E6%25B4%258B%25E6%259C%258DA.png" /></a></div><p> 今世紀になって,新自由主義政策の影響もあってか国民の生活は苦しくなり,それゆえ消費支出額は減っています。2019年から2020年の減り幅が大きく,コロナの影響も出ています。具体的な額は上述の通りです。</p><p> 食費はというと,こちらは増えていますね。消費支出全体に占める割合(エンゲル係数)もアップしており,消費が必須品に偏るようになっている,すなわち生活が苦しくなっていることが,この点からも汲み取れます。</p><p> さてあと一つの洋服への支出額ですが,こちらは消費支出全体よりも速いスピードで減少しており,コロナの影響もよりハッキリ出ています。2000年では8万243円でしたが,2019年は5万9473円,2020年は4万3886円です。</p><p> 洋服は,外界の温度変化(暑さ,寒さ)への適応という機能もありますが,おしゃれや見栄のツールとしての機能もあり,時代につれてこちらが強くなってきています。収入が減り,かつコロナで人と会えなくなっているとなったら,この財への支出が減るというのは道理です。</p><p> 生活が苦しくなったらどうなるか? この20年間の変化ですが,教科書セオリーがはっきり可視化されるものですね。中学の社会科の資料集にでも載せていただきたいグラフです。</p><p> 洋服への支出額ですが,47都道府県別の変化も見ておきましょう。県別のデータは2007年からとれます。2007年と2020年の県別データを高い順に並べ,左右に並べてみます。県別のデータも,上記リンク先の統計表で得られます。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgury1Rg8szUk9-xk5Vl6LtsODVru7nEK0P_QbLWGKmIpZa6evl1sYeDPx6ZqPQI5bQrMbdDCulDjrkwiuH2xsZMgjmdA-jKSmgGsI1dlkTDr4uMffKWgl_4YdJljzv1uJIAoGAfwJ_0YX-/s858/%25E6%25B4%258B%25E6%259C%258DB.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="858" data-original-width="322" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgury1Rg8szUk9-xk5Vl6LtsODVru7nEK0P_QbLWGKmIpZa6evl1sYeDPx6ZqPQI5bQrMbdDCulDjrkwiuH2xsZMgjmdA-jKSmgGsI1dlkTDr4uMffKWgl_4YdJljzv1uJIAoGAfwJ_0YX-/s16000/%25E6%25B4%258B%25E6%259C%258DB.png" /></a></div><div><br /></div> 若者が多い都市部で高い傾向かなと思いますが,最低値は両年とも沖縄ですね。年中暖かく,軽装だからでしょうか。<div><br /></div><div> ご自分の県の値をみていただければと思いますが,注目いただきたいのは表の色つき範囲です(薄い色は5万円台,濃い色は6万円以上)。2007年ではほとんどの県が5万円以上で,36の県で6万円を超えていました。それが2020年では,5万以上が11県,6万以上は3県しかありません。</div><div><br /></div><div> 上記のデータは地図化して<a href="https://twitter.com/tmaita77/status/1412022161565306880" target="_blank">ツイッター</a>にあげています。コメントにもありますが,こういうマップも,国全体が貧しくなっていることの可視化です。洋服を買う量が減っているのか,それとも安いやつで済ませているのか,そこまでは判別できません。</div><div><br /></div><div> あと一つのデータを示しましょう。洋服といってもいろいろありますが,中でも減り幅が大きいのは,スーツ関連です。背広,ワイシャツ,ネクタイへの年間支出額はどう変わったか。最初のグラフと同じく,2000年の値を100とした指数のグラフにします。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgYnM4CTzugCeF5u6ipqTJoB7TxE7UdecLzffX-z6iqeb9wBwjXAX4nimDTiWwYu2qxYaQHjdx-ptrZRZnbXAV-wuq1uhIMC2170VB7YdO44eAZUPpBJf16BXJkP1whl975kzxyhDtvm3kH/s444/%25E6%25B4%258B%25E6%259C%258DC.png" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="444" data-original-width="416" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgYnM4CTzugCeF5u6ipqTJoB7TxE7UdecLzffX-z6iqeb9wBwjXAX4nimDTiWwYu2qxYaQHjdx-ptrZRZnbXAV-wuq1uhIMC2170VB7YdO44eAZUPpBJf16BXJkP1whl975kzxyhDtvm3kH/s16000/%25E6%25B4%258B%25E6%259C%258DC.png" /></a></div><div><br /></div><div> すごい減りっぷりですね。ネクタイに至っては,この20年間で8割の減少です(1595円→307円)。クールビズとやらで,夏場,ネクタイをする頻度が減っているのもあるでしょう。</div><div><br /></div><div> 収入の減少で,以前は老舗で高級品を買っていたのが,最近は安いやつで済ませるようになっているのもあるでしょうが,<b>働き方の変化</b>も大きいでしょう。今はオフィスでもカジュアル化が進んでますし,雇用労働自体が減ってきています。</div><div><br /></div><div> お金の使い方の変化にも,時代の変化がハッキリ表れるものです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-6455227134399118177.post-19350772932615245212021-07-06T18:49:00.001+09:002021-07-06T18:49:27.070+09:00非正規公務員の悲惨<p> 今年は梅雨入りが遅く,7月になっても雨の日が続いています。蒸しますが,いかがお過ごしでしょうか。</p><p> 昨日,「<a href="https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210705/k10013120621000.html" target="_blank">非正規公務員の過半数が年収200万未満</a>」という記事(NHKサイト)を見かけました。ある団体による大規模調査の結果です(1252人が回答)。それによると,661人(52.8%)が年収200万未満と回答したとのこと。働く貧困層,それも「官」の世界で働く,いわゆる<b>官製ワーキングプア</b>です。</p><p> 今や「官」の世界も非正規化が進んでおり,非正規の比重は小さくありません。生活苦や正規との格差への不満を訴える声が看過できなくなり,大規模調査に踏み切った,ということでしょうか。改革を促す貴重なデータであると思います。</p><p> なお公務員の収入は,官庁統計でも分かります。毎度使っている『就業構造基本調査』です。有業者の年間所得分布を,産業分類別に知ることができます。<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003222824" target="_blank">コチラの統計表</a>です(2017年)。</p><p> 「公務」というカテゴリーの有業者を取り出し,正規雇用と非正規雇用に分けて,年間所得の分布をとってみます。ジェンダー差もみるため,性別も入れましょう。母数は男性正規が154万人,女性正規が42万人,男性非正規が11万人,女性非正規が27万人です。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEi5hqElbhNH4XoMe4AE3ZwKNOPD0XbpVJDzI0H1_5bOx1x41OW-qHtix-O6U129J3zPuvxKVOcbfFIC6GKOn-ink90ojVA2sEINdWWU-G9B15OrRKr2H76TxIUl53rrGuetftMQyk8inQcI/s428/%25E5%2585%25AC%25E5%258B%2599A.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="428" data-original-width="413" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEi5hqElbhNH4XoMe4AE3ZwKNOPD0XbpVJDzI0H1_5bOx1x41OW-qHtix-O6U129J3zPuvxKVOcbfFIC6GKOn-ink90ojVA2sEINdWWU-G9B15OrRKr2H76TxIUl53rrGuetftMQyk8inQcI/s16000/%25E5%2585%25AC%25E5%258B%2599A.png" /></a></div><div><br /></div> 左は正規,右は非正規ですが,分布の違いが明瞭です。正規では所得200万未満はほんのわずかですが,非正規では大半です。男性では56.0%,女性では76.7%です。上記の団体の調査で男女込みで52.8%とのことですが,官庁統計の数値はそれよりも高くなっています。<div><br /></div><div> 上表の公務員とは産業分類が「公務」の人で,教員,警察官,図書館司書,児童福祉士などは入っていません。多くが役所の職員かと思いますが,こういうフツーの公務員に限ると,非正規のプア化の状況がハッキリと出ます。</div><div><br /></div><div> 上記の分布から中央値(median)を計算すると,男性正規が588万円,女性正規が467万円,<b>男性非正規が186万円,女性非正規が137万円</b>となります。ちょうど真ん中の人たちですが,非正規は男女とも200万円に届きません。</div><div><br /></div><div> 地域別にみると,もっと悲惨な値も出てきます。上記でリンクをはった統計表では,「地域」という変数もあります。これを入れれば,<b>47都道府県別</b>に,非正規公務員の所得分布を呼び出せます。それをもとに,各県の非正規公務員の所得中央値を算出してみました。</div><div><br /></div><div> 県別にバラすと人数が少なくなるので,男女込みにしています。まあ非正規公務員では女性が多いので,ほぼ女性の傾向を反映していると読んでいいかと思います。下表は,高い順に並べたものです。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgLbQodqZ9UmmKuW9bC-MPgozBQz76j64fidLre_OH9wHGw6-wy7cL8uXYqsFlX2zQWQbO5LA4qc152F0GIpWfcsPQkQQoPiHAPKB5PdtsuHTx3mgZNb1PL8OLBq5rVJX2AE8uSdAJL4DaN/s526/%25E5%2585%25AC%25E5%258B%2599B.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="526" data-original-width="303" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgLbQodqZ9UmmKuW9bC-MPgozBQz76j64fidLre_OH9wHGw6-wy7cL8uXYqsFlX2zQWQbO5LA4qc152F0GIpWfcsPQkQQoPiHAPKB5PdtsuHTx3mgZNb1PL8OLBq5rVJX2AE8uSdAJL4DaN/s16000/%25E5%2585%25AC%25E5%258B%2599B.png" /></a></div><div><br /></div><div> どの県も200万円に及びません。それどころか,150万円にも届かない県が多数です(色付き)。全国値は149万円。濃い色は140万円未満で,最下位の鹿児島では114.8万円です。私の郷里ですが,生活が成り立つレベルではないですね。</div><div><br /></div><div> 上の表から,全国どこにおいても,非正規公務員はプアであることが分かります。</div><div><br /></div><div> 非正規公務員は女性が多く,夫の扶養内で就業調整してる人がたくさんいるんじゃないの,という疑問もあるでしょうか。<a href="https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003222456" target="_blank">別の統計表</a>にて,公務員の週間就業時間の分布をとってみると,そうでもないようです。</div><div><br /></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEit60Z9cHOcWIKAghZut1uHS-pDQJOCadpxGerzoZk2zkjTon_pSR98AadCOQrYXIgbekwBIMuM3vdcl0la4EMmwEa7uKRByOCTfgq72AAs7IOFuet3bqvvWnQGJ0F4S3JANTSWz111H2J6/s416/%25E5%2585%25AC%25E5%258B%2599C.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="351" data-original-width="416" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEit60Z9cHOcWIKAghZut1uHS-pDQJOCadpxGerzoZk2zkjTon_pSR98AadCOQrYXIgbekwBIMuM3vdcl0la4EMmwEa7uKRByOCTfgq72AAs7IOFuet3bqvvWnQGJ0F4S3JANTSWz111H2J6/s16000/%25E5%2585%25AC%25E5%258B%2599C.png" /></a></div><div><br /></div> 就業時間が分かる公務員のデータですが,正規も非正規も,最頻階級は35~42時間ですね。非正規も,フルタイム就業の人が最も多くなっています。35時間以上のフルタイム就業の割合は全体の35.6%,<b>3人に1人</b>です。<div><br /></div><div> お店のパートとは違い,公務員となると,非正規もそこそこ労働時間が長いことが知られます。専門的な業務も多く,無給の残業をしている非正規の人もいるのではないでしょうか。にもかかわらず,年間所得は先ほどみたように200万,地域によっては150万にも達しません。ブラック労働撲滅の旗振りをする「官」の世界でこうであるとは,開いた口がふさがりません。</div><div><br /></div><div> 冒頭のNHK記事によると,役所の非正規職員は,今では会計年度任用職員というみたいです。ボーナスも支給されるなど待遇改善もされているようですが,まだまだ不十分であることは政府も認めています。</div><div><br /></div><div> フレキシブルな働き方が求められる中,非正規雇用者の待遇改善は急務。いや,そもそも「正規・非正規」なんていう区分が他国に例を見ないおかしなものであって,職務内容や労働時間に依拠して給与が決まる,<b>素直</b>なシステムに変革すべきです。それと最も隔たってるのが「官」の世界であるとは,何とも皮肉なこと。</div><div><br /></div><div> 改革が必要なのは,データでも明らかです。</div>舞田敏彦http://www.blogger.com/profile/00580943255606498710noreply@blogger.com