昨年の大みそかの記事において,全国563大学の中途退学率を明らかにしました。今回は,それに続く作業として,退学率と関連が深い,大学の外的特性を探ってみたいと思います。設置主体(国立or公立or私立)の影響を除くため,大学の大半を占める私立大学に限定して分析をします。対象は,退学率が分かる415大学です。
私は,各大学の退学率は,設置時期と関連があるのではないか,という仮説を立てました。少子化傾向にもかかわらず,雨後のタケノコのごとく,大学が次々と新設されていますが,新設校は,よほどの特色を出さない限り,学生を引きつけることは難しいのではないかと思うからです。
さて,時期区分をどうするかですが,それを考えるため,大学の数の推移をみましょう。
文部科学省『文部科学統計要覧・平成22年版』より,4年制大学の数の推移を描くと,上図のようになります。曲線の型から,おおよそ3つのエポックに区切ることができそうです。まずは,1966年までの時期。戦前期から高度経済成長期の只中の時期です。次は,1967年から1985年までの時期。経済成長末期を経て,70年半ばから80年代半ば,大学設置抑制政策が敷かれた時期です。最後に,1986年から現在まで。抑制政策が緩和されて,大学が自由奔放に数多くつくられる時期です。順に,Ⅰ期,Ⅱ期,Ⅲ期,といたしましょう。
415大学を分類すると,Ⅰ期にできた大学が201校,Ⅱ期にできた大学が68校,Ⅲ期にできた大学が146校です。各大学の設置年は,退学率を得た資料と同じものから知りました。資料の詳細は,12月31日の記事をみてください。これらのグループごとに,退学率の平均値を出すと,順に,8.7%,10.6%,11.8%,となりました。やはり,新設群ほど,退学率が高い傾向にあります。
平均比較だけでは事を見誤る危険があるので,群ごとに,2%刻みの退学率分布をとると,上記のようになります。やや煩雑ですが,退学率10%の箇所で区切ると,傾向が明瞭です(赤線)。Ⅱ期以降の大学では,半分以上が,退学率10%以上の大学です。Ⅲ期にできた大学では,全体の1割以上が,退学率20%を超えていることも注目されます。
常識的にも見当がつくことではありますが,各大学の退学率は,設置時期と関連があることが分かりました。ほかにも,立地地域とか,どういう入試方法をメインに据えているかなど,いろいろな条件が関与していることでしょう。機会を改めて,これらの変数との関連も調べたいと思っています。