もう少し,大学関連の話をいたしましょう。1月3日の記事の続きです。今回は,各大学の入試方法のあり方と,退学率との相関関係を調べたいと思います。
大学入試というと,学力検査を受けて入る一般入試を想定する方が多いと思いますが,それ以外にも,AO入試や指定校推薦など,多様な形態があります。学力だけでは測れない,多様な個性を持った学生を入れようという意図を持っていますが,学力検査を課すと学生が集まらないのでという,「お客さん集め」的な側面があることも否めません。
私は,統計学の授業で,百分率(%)の概念を知らないという学生に出会い,いささか驚嘆したことがあります。話を聞くと,指定校推薦で入ってきたので,数学はまるっきりやらなかったとのこと。入試形態のオプションを広げるのはよいですが,それだけではいけないと感じました。入学後,学生が不適応を起こさないためにもです。
1月3日の記事で退学率を分析した415私立大学のうち,371大学について,2010年春の入学者の内訳を知ることができます(読売新聞教育取材班『大学の実力2011』中央公論新社,2010年)。私は,この371私立大学の入学者のうち,一般入試を経ていない者がどれほどいるかを計算しました。私が非常勤講師として勤務する武蔵野大学の場合,入学者総数は1,435人,うち一般入試経由者は536人ですから,一般入試を経ていない者の比率は,(1,435-536)/1,435=62.6%となります。371大学の平均値(60.1%)とほぼ同程度です。しかし,一番高い大学になると,98.8%にもなります。
では,この371大学の一般入試非経由率と退学率の相関図を描いてみましょう。退学率とは,2006年春入学者のうち,2010年3月までの退学者・除籍者がどれほどいるかを表したものです。簡単にいうと,在学期間中に辞めた者の比率です(資料は上記と同じ)。
データの数が371と多いので,はっきりとした傾向ではありませんが,うっすらとした正の相関が見受けられます。相関係数は0.563,1%水準で有意です。一般入試以外の方法で学生を多く入れいている大学ほど,中退率が高い傾向は看取されます。
このデータを突き付けて,もっと厳格な入試をしろなどと,お説教めいたことを言うつもりはございません。ただ,多様な方法で学生を入れる以上,その後のケアのようなものが必要であるかと思います。図をよくみると,一般入試非経由率がほぼ100%に近い大学でも,退学率が大きく異なっています。33%の大学もあれば,0%の大学もあるのです。この違いが何に由来するかも,興味深い課題ではないかと存じます。