前回は,非行の質的な変化をとらえるべく,非行の悪質平均点という指標の時代推移をみました。今回は,その値が,少年の年齢別にみてどう違うかをみてみようと思います。悪質平均点の出し方については,前回の記事をご参照ください。
手始めに,人口あたりの非行少年の量がピークであった1981年と,最新の2009年の統計を比べてみましょう。10代少年全体の悪質平均点は,1981年が3.85点,2009年が3.36点です。はて,年齢別では?
上図によると,年長少年における点数の低下が目立っています。19歳では,1981年の4.84点から2009年の3.30点まで減っています。ですが,低年齢の児童の点数は,昔と同じかそれ以上になっています。今日では,低年齢の悪質点が高く,高年齢のそれが低いという,やや特異な構造ができています。巷でいわれる「非行の低年齢化」とは,こういうことをいうのでしょうか。
上記は,2つの年次の観察結果ですが,他の年ではどうでしょうか。1979年から2009年までの年齢別の平均点を,例の社会地図で俯瞰してみましょう。
1980年代までは,年長少年の部分に4.0点以上のゾーンが広がっていましたが,最近では,それがなくなっています。最近では,13~19歳の部分は,青色の安全色に染まっています。ですが,こうした年長の少年よりも,10~12歳のような年少の少年の値が高いという,特異な構造になっていることが気がかりです。
2007年の少年法改正により,少年院への送致可能年齢の下限が,「14歳以上」から「おおむね12歳以上」という形に引き下げられました。「おおむね」とありますので,場合によっては,10歳や11歳の少年も少年院に送致できる,ということです。こういう厳罰主義化は,上記のようなデータを認識してのことだったのでしょうか。
しかるに,非行の悪質性というのは,もっといろいろな側面から把握する必要があるでしょう。今回のデータは,その一面を切り取ったものにすぎません。多面的な角度からデータを収集して,証拠に依拠した政策立案(evidence based policy)がなされることが重要であると存じます。