教員関係の話ばかり続くので,少し話題を変えましょう。今回は,職場でのいじめについてです。子どもの世界でいじめが大きな問題になっていますが,当然,いじめは大人の社会にも存在します。前者は,後者の鏡であるといってもよいでしょう。
今日,多くの労働者は組織に雇われて働いていますが,個々の労働者と事業主の紛争の解決を円満に行う制度として,「個別労働紛争解決制度」というものがあります。2001年10月より導入されている制度です。
2011年5月25日の厚労省の発表によると,2010年度中に,各県の労働局などに寄せられた「民事上の個別労働紛争相談」の件数は24万6,907件であり,前年をやや下回ったそうです。もっとも,単純計算して,1日あたり676件もの相談が寄せられているのですから,絶対水準としては,非常に多いというべきでしょう。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001clbk.html
この相談件数は,制度が導入された翌年の2002年度では10万3,194件でした。2010年度の件数は,これの2.4倍にあたります。しかし,この伸び率は,相談の事由別にみるとかなり違っています。私は,主な事由の相談件数の推移を,2002年度の件数を100とした指数で表してみました。
先ほどみたように,相談件数全体の伸び率は,2.4倍です。しかし,雇止めやいじめに関連する相談の件数は,この期間中におよそ6倍にも増えています。2010年度の相談件数全体に占める比率は,雇止め関連は4.9%と少ないですが,いじめ関連は13.9%です。解雇関連の相談(21.2%)に次いで,大きなシェアを占めるに至っています。
先にも書きましたが,子ども社会は,大人社会の鏡です。インターネットなどの情報ツールが飛躍的に進化した今日,子どもの世界と大人の世界の境界(ボーダー)は,ほとんど無きに等しい状況です。大人社会の暗部(恥部)は,いとも簡単に子ども社会へと反映されてしまう,といってよいでしょう。
情報化,ボーダレス化が著しく進行した今日,大人が子どもにしっかりとした範を示すことの必要性が高まっていることと思います。それだけに,上図のような事態は,懸念されるところです。