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2011年8月16日火曜日

戦争体験世代の減少

 8月15日は何の日でしょうか。いうまもなく,終戦記念日ですよね。1945年の8月15日,わが国がポツダム宣言を受託したことにより,多くの犠牲者を出した第2次世界大戦が終結しました。今年(2011年)の8月15日は,66回目の終戦記念日に相当します。全国の各地で,戦没者追悼式が開催された模様です。
http://www.asahi.com/national/update/0815/TKY201108150042.html

 ところで,冒頭の質問を,今の子どもたちに投げかけたら,正答率はどれくらいになるでしょうか。8月15日が終戦記念日だということを知らない子どもも,結構いるのではないでしょうか。今の小学生の保護者は,私と同世代くらいでしょうから,おおよそ1970年代生まれでしょう。その親世代は,団塊の世代をはじめとした,1940年代後半生まれの者が多いと思われます。

 戦争が終わったのは1945年(昭和20年)です。となると,今の小学生からすれば,親の代はもちろん,祖父母の代でも,戦争の怖さを肌身で知っている人間はそう多くないことになります。子どもが,悲惨な戦争体験を親近者の口から聞くことのできる機会は,時代とともに減ってきています。戦争体験の継承という点からすると,看過できることではありません。

 現在,戦争体験世代はどれほどいるのでしょうか。戦争体験世代の定義ですが,ひとまず,1940年以前の生まれの世代としましょう。これによると,最も下の1940年生まれ世代でも,終戦時には5歳になっているわけですから,物心はついていることになります。

 2010年では,この意味での戦争体験世代は70歳以上の方々です。同年の『国勢調査』の抽出速報結果によると,ぞの数は約2,112万人です。総人口の16.5%に該当します。2010年の時点でいうと,国民のおよそ6人に1人が戦争体験世代ということになります。

 戦争体験世代の比率の長期的な変化を観察してみましょう。下図は,1950年以降,4半世紀ごとの時点の数字をとったものです。戦争体験世代(1940年以前の生まれの世代)は,1950年では10歳以上,1975年では35歳以上,2000年では60歳以上,2025年では85歳以上,2050年では110歳以上の人々に相当します。


 1950年では,戦争体験世代が75%,つまり国民の4分の3を占めていました。終戦後5年しかたっていないのですから,当然といえば当然です。当時にあっては,どの家庭でも,親から子へと,戦争の恐ろしさ・悲惨さが生々しく語り継がれていたことでしょう。

 しかし,戦争体験世代の比重は,時の経過とともに減じていきます。私が生まれた頃の1975年では43%,世紀が変わった2000年では23%にまで減少します。この時点において,4人に1人以下です。

 今後どうなるかを,国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口でみると,2025年では人口の6.2%,2050年ではたったの0.1%になることが見込まれます。今から40年後には,戦争体験世代がわが国にはほとんど皆無になることが予想されます。

 このような状況であるだけに,学校における歴史教育の重要性が高まるといえます。また,戦争の悲惨さ・残酷さを告発した本を子どもたちに読ませる取組も必要かと思います。読書活動推進の重要性がいわれている時分でもありますので。

 ブログのプロフィール欄で述べていますが,私は,作家の西村滋さんの『お菓子放浪記』が大好きです。戦争孤児の物語ですが,戦争がいかに馬鹿げたことであるか,戦争がいかに子どもの心に癒えることのない傷を与えるか,ということが生き生きと叙述されています。戦争孤児が焼跡をたくましく生きるというような,美談モノではありません。

 この本は,正・続・完結の3部からなっています。1976年に刊行された正の本は,同年の全国青少年読書感想文コンクールの課題図書に選定されたのだそうです。それから35年ほど過ぎた現在の子どもたちにも,ぜひ読んでいただきたい書物です。