人口は,労働力人口と非労働力人口に大別されます。前者は,働く意欲のある者で,就業者と完全失業者から構成されます。対する後者は,働く意欲のない者で,主に学生と主婦(夫)から構成されます。
労働力人口がベースの人口に占める比率を年齢層別に出し,各々を結んだ曲線を,労働力人口率年齢曲線と呼びます。わが国の場合,女性についてこの曲線を描くと,30代のあたりが凹んだ型になります。いわゆる,M字曲線です。子育て期に,いったん仕事から離れる女性が多いためです。
今回と次回にかけて,世界の主な国について,この労働力人口率年齢曲線を描き,わが国の特徴を明らかにしてみようと存じます。ちょっとした世界旅行を楽しむ気分で,各国のグラフをご観覧ください。
総務省統計局『世界の統計2011』から,世界各国について,年齢層別の労働力人口率の近況を知ることができます。具体的な出所は,下記サイトの表12-1です。この資料では,労働力人口を「経済活動人口」といっています。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/12.htm
まずは,日本を含む,アジア6か国の曲線をご覧に入れましょう。年齢層の区分は5歳刻みにしています。最も高い年齢層は,「~以上」と読んでください。たとえば,わが国の場合,右端の「70~」とは「70歳以上」を意味します。横の目盛線は,20%刻みのものです。
国によって,曲線の型が違っています。女性のM字曲線は,わが国のほか,韓国にも見受けられます。就業→子育て期にいったんリタイア→再び就業,というパターンです。シンガポールでは,女性の労働人口率は,30代以降,下降の一途をたどります。結婚して子どもができたら,女性はひたすら子育てに励む,ということでしょうか。シンガポールの受験競争の激しさはよく知られています。
他に特記すべきは,イランにおいて,男女の差が大きいことです。同国では,女性の労働人口率は低く,最も高い20代後半でも23.6%です。イスラム国では,女性はあまり外には出ないといいます。ここには示しませんが,トルコも,イランと同じような図になっています。その一方で,ベトナムでは,男女の差が小さくなっています。この国では,女性も男性に劣らぬくらい働いています。
次に,北米と南米の6か国の曲線をみてみましょう。北米はアメリカ,カナダ,メキシコの3国,南米はチリ,アルゼンチン,ブラジルの3国です。
アメリカとカナダでは,女性の社会進出が進んでいるのか,男女の差が小さくなっています。日本や韓国のような,女性の子育て期の谷もありません。これに対し,中年米の4国では,労働人口率の男女差が大きいようです。
あと一点,注目すべき点を挙げると,メキシコでは,70歳以上の高齢男性のほぼ4割が労働力人口であることです。高齢期における,曲線の右下がりの傾斜がゆるくなっています。発展途上国では,高齢者も貴重な労働力ということでしょうか。次回でみるエチオピアなどは,こうした傾向がもっと顕著です。
次回は,ヨーロッパとアフリカ・オセアニア諸国の統計グラフをお見せいたします。