「5人以上の常用労働者を雇用する民営,公営及び国営の事業所」を対象とする,厚労省の『雇用動向調査』によると,2009年中に離職した労働者の数は,およそ686万人です(定年は除く)。この数は,1991年では544万人ほどでした。90年代以降,定年以外の理由による離職者が増えていることが知られます。
はて,どのような理由による離職が増加しているのでしょうか。おそらく,経営不振による人員削減や,有期雇用による任期満了といった理由での離職が増えているものと思われます。1991年から2009年までの期間における,離職者の推移を理由別にみてみましょう。下図は,1993年の数字を100とした指数の推移です。「介護」という理由が1993年からカウントされていますので,同年の値を基準としています。
増加の傾向が著しいのは,「契約期間満了」,「経営上の都合(リストラ)」,そして「介護」という理由による離職です。前二者は,2008年のリーマンショック以降,急増しています。2009年の指数値は200を超えています。
2009年のデータでは,定年を含む離職者全体の離職理由のうち,「契約期間満了」が14.6%,「経営上の都合」が12.1%を占めています。合算すると26.7%です。1991年では,これら2つの理由のシェアは12.6%でした。
「契約期間満了」と「経営上の都合」という理由による離職は,数の上でもシェアの上でも増えているようです。ところで,これらの理由の比重は,業種によって異なるでしょう。2009年の40産業について,これらの理由が離職理由全体に占める比率をとってみました。パートタイム労働者を除く一般労働者の数字であることを申し添えます。
下図は,横軸に「契約期間満了」の比率,縦軸に「経営上の都合」の比率をとった座標上に,40の産業をプロットしたものです。点線は,40産業の平均値を意味します。
電子部品製造業では,全体の6割が,「経営上の理由(リストラ)」という理由で占められています。製造業では,リストラという理由の比重が高いようです。なお,非鉄金属製造業では,双方の理由の比重が高く,全体の71.7%がこれら2つで占められています。
次に,「契約期間満了」という理由の比重が高い,図の右下に目を移すと,教育・学習支援業がこのゾーンに位置しています。この業種では,リストラの比重は低いのですが,「契約期間満了」という理由の比重は高いようです。離職理由に占める比率は33.5%で,平均水準を大きく上回ります。40産業の中で4位です。
少子化に苦しむ教育産業では,教員を有期雇用で雇うケースが増えています。大学などは,その典型です。専任教員を雇うにしても,3~5年の任期をつけるのはザラです。京都精華大学では,非正規雇用の教員は3年以上雇わないというルールがあるようで,組合側がこれに激しく反発している模様です。
http://d.hatena.ne.jp/soco-soco/
モノではなく,生身の人間を相手にする教育産業において,有期雇用がはびこっている度合いが高いのですねえ。生徒や学生との長期的な人間関係を築けたものではありません。終身雇用制ないしは長期雇用を盲目的に支持するのではありませんが,心境複雑です。