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2011年11月26日土曜日

児童相談(全般)

11月3日の記事では,全国の児童相談所に寄せられた相談の件数が,子どもの年齢別にみてどう違うかを明らかにしました。今回は,その時代変化をみてみようと思います。

 時代変化をみる場合,子どもの数(ベース)の変化を考慮しなければなりませんので,相談件数をベースで除した比率を出す必要があります。手始めに,1965年度と最新の2009年度の統計を比較してみましょう。出所は,厚労省『社会福祉行政業務報告』です。


 相談件数の概数は,27万件から37万件に増えています。年齢別にみると,3歳の子どもに関連する相談が最も多い構造は,変わっていないようです。

 少子化により,子どもの数が減っているにもかかわらず,相談件数は増加しています。よって,子どもの数あたりの比率は大きく伸びています。表の右欄は,相談件数を児童千人あたりの比率に直したものです。まず合計をみると,7.5件から16.0件へと,倍以上になっています。

 この比率は,どの年齢でも上昇しています。3倍以上になっているのは,2歳,16歳,17歳,および18歳以上です。18歳以上(18,19歳)では,相談件数の比率が0.7から10.2へと大きく伸びています。昔は,この年齢になると親から自立する者も多かったのですが,今日では,そうではなくなっています。年長少年に関する相談件数の増加は,親への依存期間の延長によるのではないか,と思われます。

 この期間中の変化をもっと仔細に表現してみましょう。私は,1965年以降の2~3年刻みで,年齢ごとの相談件数比率を計算し,結果を等高線グラフで表してみました。このブログを長くご覧頂いている方は,お分かりかと存じます。私の恩師の松本良夫先生が考案された,「社会地図」という図法です。これによると,各年齢の率の時代変化を,上から俯瞰することができます。


 青色は,該当年齢の児童千人あたりの相談件数が,5件以上10件未満であることを意味します。黒色は,25件を超える,ということです。

 図をみると,時代を問わず,3歳児に関連する相談が最も多いようです。その多くは,養護相談,障害相談,ならびに育児相談であることは,11月3日の記事で示しました。90年代の初頭あたりから,この年齢の箇所が黒く染まっています。前世紀の末からは,20件以上のゾーン(紫色)が,4~5歳の部分まで垂れてきています。近年,この年齢層の危機状況が強まっています。

 また,2009年度では,13~14歳の部分も紫になっています。11月3日の記事でみた,「2コブ」型は,最近になって生じたもののようです。この年齢の主な相談事由は,非行,性格行動,および不登校などです。思春期の危機の表れといえましょう。

 しかし,図を大局的に眺めると,1998年頃から,基調色が青色から赤色(緑色)に変化します。全体的に,相談件数の比率が伸びたことを示唆します。1998年といえば,自殺者が3万人の大台に突入した年です。子どもの危機というのは,社会全体の危機を正直に反映するのだな,と思います。

 上図を右に延ばしたら,どうなるのでしょうか。3~5歳と13~14歳の膿が,じわじわと広がっていくのでしょうか。

 今回みたのは,相談件数全体の比率ですが,事由ごとにみると,興味深いことが分かるかもしれません。非行,不登校,いじめ,性格行動など,主な事由の相談件数の比率についても,上記のような社会地図で表現してみようと思います。次回以降,作品を展示いたします。