今日は,1限の「社会数学」の授業を終えて,もう帰ってきました。お昼ごはんを食べたところですが,うーん,眠いなあ。正月以来,昼夜逆転の生活だったのが,今日は朝一で出かけたので。でも,ここで昼寝したらいけません。目覚ましに,ブログでも書こうと思います。
今日の社会数学では,「現代日本社会の健康診断」という課題を出しました。社会がどれほど病んでいるかを測る指標を各人で8個考え,それらの長期的な推移に基づいて,現代日本社会の健康診断を行っていただこう,というものです。
個人の病気を測る指標としては,体温や血糖値などがありますが,相手が社会の場合,どういったものを思いつきますか。犯罪率,自殺率,失業率,離婚率,災害死亡率,1人あたりの有害物質排出量,政府の歳入額に占める公債比率・・・。いろいろあります。
学生さんには,自分が考えた指標の計算に必要な数字を,総務省統計局HPの「長期統計系列」から採取し,エクセルで計算する作業を課しました。犯罪率の場合,犯罪認知件数(分子)と人口(分母)の時系列データをハントし,前者を後者で除す,という具合です。
http://www.stat.go.jp/data/chouki/index.htm
ある学生さんは,1950年以降の自殺者数のデータをハントしました。「ああ,それを人口で割って,自殺率を出すのだな」と思って後ろから眺めていたのですが,当人が分母として採取したのは,死亡者数です。つまり,自殺という死因が全死因に対して占める比重を出すのを意図していたようです。
さあ,どういう結果が出たものかとディスプレイをのぞいてみると,1950年が1.8%,1980年が2.8%,最新の2010年が2.5%,です。ほんのわずか。時系列的に変化なし。
「先生,あまり変わりませんね。自殺が増えているから,死因に占める自殺の割合も上がっているのかと思ったんですけど」
「じゃあ,若者に限定して出してみれば。最近,シューカツで失敗して自殺する大学生が増えてるっていうぜ」
20代前半の自殺者数と死亡者数をエクセルにコピペし,後者に占める前者の比率を出してもらいました。下表のような結果が出ました。5年刻みの数字を示します。
当該の学生さんが驚いたのは当然ですが,私も思わず「おー」という歓声を上げました(不謹慎!)。衛生状態や医療技術の向上により,若者の死亡者数は減少の一途をたどっていますが,自殺者数は1990年代半ば以降増えています。結果,全死因に占める自殺のウェイトが高まっています。2010年では49.8%,20代前半の死因の半分が自殺です。
このことは,昨年の12月13日の記事で紹介した,年齢別の死因の組成図からも分かることです。しかし,それが今日的な特徴であることは,私にとっても発見でした。
では,他の年齢層ではどうでしょう。私は,5歳刻みの各年齢層について,自殺者が全死亡者に占める比率を計算しました。1950年以降の5年刻みの数字を明らかにしました。例の社会地図方式によって,結果を上から俯瞰してみます。分子の自殺者数の出所は,厚労省の『人口動態統計』です。
ご覧ください。今世紀以降,20代の若者の箇所に黒色の膿(うみ)が広がっています。黒色は,死因全体に占める自殺の比率が40%を超える,ということです。死因に占める自殺の比重は,どの年齢層でも高まっているようであり,高率ゾーンが下に垂れてきていることも注目されます。
自殺者数をベースの人口で除した自殺率の社会地図を描くと,高齢層の部分が濃くなりますが,死因に占める自殺のウェイトという点でみると,違った側面がみえてきます。
いやあ,今回は学生さんに教えられました。「教えること=学ぶこと」とは,こういうのをいうんだろうなあ。多謝。