昨年の5月20日の記事では,高等教育機関(短大,高専,大学,大学院)の休学率の推移を明らかにしました。そこで分かったのは,どの機関でみても,1990年代以降,学生の休学率が上昇していることです。
この続きとして,今回みてみようと思うのは,学年別の休学率です。大学でいうと,第1学年から第4学年までの時期があります。休学率が高いのは,どの学年でしょう。この点を把握しておくことは,学生支援の上でも重要であると存じます。
2010年度の文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』によると,同年5月1日時点において,休学している大学1年生の数は1,703人です。同時点の大学1年生の数(ベース)は627,800人ですから,この年の大学1年生の休学率は,前者を後者で除して,2.7‰と算出されます。千人あたり2.7人という意味です。%にすると,0.27%です。約分すると,およそ370人に1人ということになります。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528
この休学率を,各高等教育機関の学年別に出してみましょう。1990年と2010年の数字を計算しました。この20年間の変化をご覧ください。なお,短大3年生,大学5・6年生,および大学院博士課程4年生は,学生数が少ないので,休学率の計算は控えました。*文科省の統計では,最低修業年限を超えた学生の分は,最終学年の数字の中に算入されていることを申し添えます。休学者数(分子),学生数(分母)ともです。
まず基本的な構造として,両年次とも,学年を上がるほど学生の休学率は高くなります。時代変化に注目すると,どの学年の休学率も上昇しています。この20年間で休学率が倍以上になったのは,大学3年,大学4年,大学院修士課程2年,そして大学院博士課程の全学年です。
2010年の大学4年生の休学率は24.1‰(=2.4%)です。学生の40人に1人が休学していることになります。シューカツに失敗し,自発的に留年することを決意した学生が,学費節約のために休学する,というケースも多いと思われます。この種の輩が,1990年代以降の不況によって増えているであろうことは,想像に難くありません。
大学院では,最低修業年限内に学位論文を出せなかった学生が,留年期間中の学費を節約するために休学することがよくあります。また休学期間は在学期間としてカウントされないので,学位論文作成の期間を延ばせるメリットもあるとか。そういえば,私の先輩にも,こういう戦略をとっている人がいたなあ。
上表によると,2010年の大学院博士課程3年生の休学率は160.9‰(16.1%)です。学生の6人に1人が休学している模様です。博士論文を3年で完成させるのは容易でないことを思うと,さもありなんです(とくに文系)。
次に,どういう属性で休学率が高いのかをみてみましょう。私は,大学の設置主体別,性別の休学率を学年別に計算しました。2010年のデータです。
休学率が最も高い属性の数字はゴチにしています。設置主体別にみると,私立よりも国公立で高いようです。後者のほうが,休学による学費節約戦略が容易であるためと思われます。休学中の学費割引率も,私立なら半額ほどでしょうが,国公立なら全額オフです。
次に,右欄の性別の数字をみると,興味深い傾向が看取されます。大学学部までは男子の休学率のほうが高いのですが,大学院になるや,それが逆転するのです。なぜでしょう。女子院生の場合,いろいろ難癖をつけられて学位論文がなかなか受理されない,ということがあるのでしょうか。それとも,セクハラ被害とか・・・
生活実態を丹念に追及すべきは,各機関の最終学年の学生,ならびに女子大学院生という層であるといえないでしょうか。