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2012年3月6日火曜日

2011年度・教員採用試験の競争率

文部科学省より,2011年度の教員採用試験(2010年夏実施)の競争率が公表されています。競争率とは,受験者数を採用者数で除した値です。小学校では,受験者が57,817人,採用者が12,883人ですから,競争率は4.5倍と算出されます。4.5人に1人が採用された,ということです。

 私が学部4年だった年(1998年)の夏に実施された,小学校試験の競争率は12倍でした。団塊世代教員の大量退職という事情もあってか,競争率はずいぶん下がったものです。しかし,難関であることに変わりありますまい。合格された皆さまの尋常ならざるご努力に,敬意を表します。

 しかるに,これは全国の数字です。当然,自治体によって試験の競争率は大きく異なるでしょう。昨年の2月1日の記事では,2009年度試験の都道府県別の競争率を出したのですが,2011年度試験の地域別の結果はどうだったのでしょうか。また,この記事では,公立学校全体の競争率しか明らかにしませんでしたが,学校種ごとの競争率を県別に計算するとどうでしょう。

 私は,小学校,中学校,高等学校,および特別支援学校の4学校種について,2011年度試験の競争率を都道府県別に明らかにしました。計算に使った,受験者数と採用者数は,下記の文科省サイトの表2から採取しました。PDFファイルでアップされている表です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1314470.htm

 下表は,その一覧です。指定都市の分は,当該市がある県の分に含めています。たとえば札幌市の受験者数,採用者数は,北海道の計算の分に組み入れています。千葉,東京,富山,そして石川の4都県は,中学校と高校の間に区分を設けていないそうです。福井に至っては,学校種による区分そのものを設けていないそうです。

 あと一点,特別支援学校の競争率がペンディングになっている6県は,特別支援学校の試験を小・中・高と合同で実施している県であることを申し添えます。


 さて,競争率の一覧表をみてみましょう。黄色は全県の最大値,青色は最小値です。まず小学校をみると,岩手の32.4倍から富山の2.6倍まで,非常に大きな地域差があります。前者では32人に1人,後者では3人に1人です。

 岩手の小学校試験は超難関ですね。具体的な数を示すと,受験者511人のうち,採用の栄冠を勝ち取ったのはたったの16人です。

 次に,中高の欄をみると,小学校よりも全般的に競争率が高いようです。2ケタの数字もちらほらみられます。2月6日の記事で紹介しましたが,私の卒論ゼミの教え子が,東京の中高社会の試験を突破しました。東京の中高の競争率は8.3倍。社会の場合,もっと激戦だったことでしょう。彼もがんばったのだなあ。おめでとう!

 特別支援学校の競争率は,ほとんどの県で,他の学校種よりも低いようです。穴場といわれたりしますが,障害のある子どもを教育する学校であるので,通常学校とは違った困難な条件もあると思われます。精神疾患による教員の休職率が,特別支援学校で最も高いことは,2月19日の記事でみた通りです。こういうことも影響しているのかしらん。

 最後に,受験者数,採用者数とも最も多い,小学校試験の競争率を地図化しておきましょう。下図は,2.0の区分を設けて,各県を塗り分けたものです。黒色は,競争率が10倍を超える地域です。


 競争率が高い,黒色や赤色の地域は,北東北と南九州に多く分布しています。大雑把にいうと,中央から遠ざかるほど,色が濃くなる傾向があります。地方では,教員採用試験は激戦なのですね。

 一方,東京や大阪のような大都市県は,白色です。東京の小学校試験の競争率は3.7倍。優秀な人材を獲得できないという危機感からか,東京都教育委員会は,地方の学生を呼び寄せるバスツアーを毎年企画している模様です。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr111107.htm

 競争率が高い地域では,それだけ優秀な人材が集まり,教員のパフォーマンスもよいのでしょうか。また,離職率も低いのでしょうか。競争率が低く,比較的簡単に教員になれる県では,その逆なのでしょうか。

 間もなく,2010年の文科省『学校教員統計調査』の結果が公表されると思います。この資料から,若年教員の離職率を県別に出すことが可能です。この指標と,採用試験の競争率がどういう相関関係にあるのかが興味深いです。手がけてみたい分析課題です。