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2012年8月18日土曜日

都道府県別の職種別・公務員給与

 3月27日の記事では,公立学校の教員給与を都道府県別に明らかにしたのですが,公務員の他の職種の給与はどうか,という関心もあるでしょう。今回は,教育公務員に加えて,一般行政職と警察職の平均給与水準もご覧にいれようと存じます。

 資料は,総務省の『平成22年・地方公務員給与の実態』です。この資料から,一般行政職,小・中学校教育職,高等学校教育職,および警察職の平均給与月額を,都道府県別に知ることができます。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/h22_kyuuyo_1.html

 ここでみるのは,都道府県の公務員の給与です。小・中学校の多くは市町村立ですが,そこで働く教員の任命権者は都道府県であり,彼らの給与を払うのも都道府県です。市町村立の義務教育学校の教職員は,給与を県が負担するので,「県費負担教職員」と呼ばれます。

 なお,給与を比較するに際しては,年齢や学歴といった条件を揃える必要があります。私は,大卒で経験年数が「10年以上15年未満」という公務員の給与を調べました。年齢別の給与を県別に知ることはできないので,「経験年数」という指標によって代理します。上記の経験年数を年齢に直すと,大よそ30代というところでしょう。私と同年齢層です。

 あと一点,公務員の職種間の給与比較だけではつまらないので,民間労働者との比較も交えることにしました。比較の対象は,大卒30代の民間事業所勤務者(全産業)の給与です。出所は,2010年の厚労省『賃金構造基本統計調査』です。

 厚労省の調査に掲載されている,県別の民間労働者給与は,全学歴のものです。そこで,全国統計でみた学歴差を,各県の全学歴の民間平均給与額(①)に適用して,大卒の民間平均給与額(②)を推し量りました。全国的傾向でいうと,30代の大卒民間労働者の給与は,同年齢の全学歴の1.17倍です。この数値を各県の①に乗じて,②を割り出した次第です。

 前置きが長くなりました。では,データをみていただきましょう。下表は,大卒30代の公務員の各職種,ならびに同年齢・同学歴の民間労働者の平均給与月額の都道府県別一覧です。


 まず最下段の全国統計をみると,最も高いのは民間労働者で,最も低いのは一般行政職となっています。ほう。30代の大卒でみると,公務員給与は,職種を問わず民間より低いのですね。公務員の中でみると,専門性の高い教育公務員が優遇されているようですが,それとて,民間の平均水準には及んでいません。

 では,県ごとの傾向をみてみましょう。全県中の最大値には黄色,最小値には青色のマークをしました。当然ですが,給与の地域差は,公務員よりも民間で大きくなっています。最高の東京と最低の沖縄では,14万円もの開きがあります。公務員では,どの職種においても,ここまで大きな差はありません。

 その結果,全国的傾向と同様,「民間>公務員」の県もあれば,その逆のケースも見受けられます。民間の給与が高い,東京や大阪のような都市部は前者であるようです。一方,民間給与が低い東北や九州では,その逆のケースが多いようです。

 それぞれの県において,民間と比した場合の,公務員の各職種の給与水準が分かりやすくなるような工夫をしましょう。上表のローデータを,民間を1.00とした場合の指数に換算します。つまり,公務員の各職種の給与が民間の何倍か,ということです。1.00を上回る場合は民間よりも高いことを意味し,1.00を下回る場合はその反対です。


 1.00超は赤色,1.20超はゴチの赤色にしています。どうでしょう。多くの県において,教育公務員の給与は民間より高くなっています。東京や大阪などの都市地域は別ですが。

 しかし,一般行政職はそうではないようです。この職種の給与が民間を凌駕しているのは7県に限られます。私の郷里は鹿児島ですが,民間の給与が低いこの県においても,一般公務員の給与はそれよりも低いのです。へえ。これは発見でした。

 警察職は,一般行政職と教育公務員の中間というところです。九州や東北では,警察職の給与が民間を上回る県が多くなっています。

 指数が1.20を超えるゴチの赤字に注意すると,ほとんどが教育公務員の箇所に分布しています。教育基本法第9条2項は,「教員については,その使命と職責の重要性にかんがみ,その身分は尊重され,待遇の適正が期せられ」なければならないと規定しています。まあ,給与の面では,「待遇の適正」が図られているといえなくもないです。

 しかるに,今回のデータは,男女込みのものです。民間では女性の給与水準が低いことから,女性を交えると,公務員給与の相対水準が高く出る傾向にあります。男性だけのデータに限定すれば,上表とは違った傾向が出てくるかもしれません。

 願うべきは,性別,年齢,および学歴という3つの条件を軒並み統制した比較を行うことですが,これがなかなか難しい。今回使った総務省『地方公務員給与実態調査』では,性別データを得ることができません。文科省の『学校教員統計』では,年齢別のデータが得られません。どの調査資料も,一短を持っています。

 それはさておき,今回のデータでみる限り,全国一の「公務員天国」は秋田でしょうか。この県では,一般行政職の給与も民間を凌駕しています。教育公務員に至っては1.3倍。学力テスト全国1位という偉業の要因は,教員の待遇のよさにあったりして・・・。

 長くなりましたので,これくらいで止めにします。今回は大卒30代のデータを使いましたが,もっと上の年齢層で比較をすると,結果はまた違ったものになるでしょう。40代や50代になると,公務員優位が強まってくるのではないでしょうか。それは,またの機会ということで。