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2012年10月3日水曜日

国語の授業スタイルの国際比較(続)

 今日は肌寒い日となっています。いかがお過ごしでしょうか。

 さて,9月29日の記事では,高校国語の授業スタイルの国際比較を手掛けたのですが,この記事をみてくださる方が多いようです。使った資料は,PISA2009の生徒質問紙調査のローデータです。下記サイトより,回答結果が入力された段階のローデータをDLできます。
http://pisa2009.acer.edu.au/downloads.php

 上記記事では,以下の7項目への生徒の反応を合成して,彼らが受けている国語の授業の進歩性を計測する尺度(measure)を構成したのでした。ここでいう生徒とは,15歳の高校1年生です。


 いずれも,考える力のような,生徒の諸能力を開発を目指す開発主義教授に関わる項目と読めます。したがって,これらを合成して一つの尺度を構成するというやり方は間違ってはいなかったと思います。その結果,わが国の「特異」すぎる位置が明らかになったことでもありますし・・・。

 しかるに,7項目それぞれに対する反応はどうか,という関心もあるかと思います。とある方から,この点に関するデータを示していただけないか,というメールをいただきました。今回は,そうした要望にお答えしようと思います。

 先の記事では,開発主義教授の性格が最も強い国は東欧のハンガリーであり,その対極に日本が位置していることを知りました。7つの項目への反応が,この2国でどう違うのかをみてみましょう。

 さあ,どれからみたものか。私は高校生の頃,結構文学少年?で,国語の先生にどういう作家を読んだらいいのか尋ねたことがあるのですが,「教科書に載ってる作品だけ読みゃいいんだよ」と一蹴され,興ざめしたことがあります。そこで,まず④への反応分布から比べてみようと思います。無回答,無効回答を除外した分布図を掲げます。カッコ内の数字はサンプル数です。


 
 ほう。両国では,生徒の反応が大違いです。前者では8割が肯定していますが,わが国の肯定率は2割弱です。かつての私のような経験を味わっている生徒さんもいるのだろうなあ。「んなの,受験にカンケーねえだろ!」みたいな・・・。

 先の記事の統計図において,日本とハンガリーは対極的な位置にあるのですが,それは,こういう部分の違いによるのでしょうね。ですが,他の項目においては,もっと大きな反応の差が見受けられるかもしれません。

 上図のような帯グラフをあと6つ描くというのは煩雑ですし芸がないので,表現方法の工夫をします。横軸に強い否定の回答(ほとんどない),縦軸に強い肯定の回答(いつもそうだ)の比率をとった座標上に2国を位置づけ,線でつないでみました。


 矢印の始点(しっぽ)はハンガリー,終点はわが国の位置を表します。左上にあるほど肯定率が高く,右下にあるほど否定の率が高いことを示唆します。当然ですが,すべての項目において,ハンガリーが左上,日本が右下にあります。

 ですが,両国の位置間の距離はまちまちです。お分かりかと思いますが,矢印が長いほど,反応の違いが大きい項目であると解されます。どうやら,の項目への反応で差が出ているようです。文章の意味を深めさせる,本や作家をすすめる,物語と実生活を関連づける,というようなものです。

 なるほど。わが国では,こういう部分が弱いのですね。要改善点であるといえましょう。④についてはとくに。子どもの読書活動推進の取組がなされている状況でもありますし。
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/dokusyo/

 さて,読書の秋になりました。私は最近,青春モノのライト・ノーベルにハマっています。越谷オサムさんの作品を読みあさっています。この人の作品は,読後感がとてもいいのです。メイド喫茶のバイトで津軽三味線をひく女子高生が主人公の『いとみち』の続編,『いとみち・二の糸』(新潮社)が発刊されたとのこと。週末の九州行きの車中のお供は,これでキマリです。
http://www.shinchosha.co.jp/book/472304/