前回は,若年女性の育児離職率を県別に出したのですが,その値は低いものではないことを知りました(とくに都市部)。
そうである以上,幼子がいるかどうかで,女性のすがたはさぞ異なることでしょう。今回は,その様相を可視化した図をご覧に入れようと思います。
私は,25~34歳の女性について,以下の3群の労働力状態を明らかにしました。資料は,2010年の『国勢調査報告』です。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
①:未婚女性
②:有配偶女性(幼子なし)
③:有配偶女性(幼子あり)
ここでいう幼子とは,6歳に満たない子をいいます。②は,有配偶女性全体から③を差し引いて出しました。下図は,この3群の労働力状態を視覚化したものです。労働力状態が不詳の者は含まれていないことを申し添えます。
この図では,各群の量がヨコの幅によって表現されています。結婚しているが幼子がいないという者は,量的には少ないようです。未婚者が最多であるのは,近年の未婚化の表れでしょう。
さて図をみると,結婚→出産を経るにつれて,正規就業率がガクン,ガクンと落ちてきます。代わって,専業主婦の量が段階的に増えてくる傾向です。6歳未満の幼子がいる女性でいうと,全体の半分以上が専業主婦であることが知られます。
子どもができたので育児に専念しようという自発的な意向もあるでしょうが,本当は仕事は続けたいが地域に保育所がないのでやむなく,という非自発的な事情も大きいと思われます。全国の至る所で保育所増設運動が起きていることを思うと,こちらの面のほうが強いのではないでしょうか。
このことは,保育所がたくさんある地域とそうでない地域を比べてみるとよく分かります。3月27日の記事では,保育所の多寡を表す保育所供給率を県別に計算したのですが,最低は神奈川,最高は福井です。この2県では,保育所供給量に5倍近くもの差があります。
私は,この両県について,上図と同じ図をつくってみました。①は未婚女性,②は幼子がいない有配偶女性,③は幼子がいる有配偶女性,です。
結婚,出産というイベントを経るにつれて,正規就業が減り専業主婦が増える傾向は同じですが,その度合いがかなり違っています。幼子を抱える女性の専業主婦率は,神奈川では65.6%にもなりますが,福井では37.6%です。
このような差がもっぱら保育所の多寡によるとは限りませんが,それが大きな要因となっていることは確かでしょう。近年,神奈川ではかなり待機児童が減少したそうですが,より近況でみれば,上図の模様も違っているかもしれません。
http://www.asahi.com/and_M/living/suumo/TKY201303260073.html
ところで,結婚・出産した女性の多くが職を離れる社会って,世界的にみて他にあるのかなあ,という疑問を持ちます。『世界価値観調査』(WVS)の属性統計を活用することで,今回の図に近いものを,国別に作成することができるかもしれません。
北欧のスウェーデンとかは,どんな模様かしらん。作図することができたら,この場に展示しようと思います。