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2013年6月23日日曜日

無職中年パラサイトシングル

 昨日の『NEWSポストセブン』に「子供が働かなくても一生食べていけるプラン作成をFPが提唱」と題する記事が載っています。
http://www.news-postseven.com/archives/20130622_194810.html

 いつまでも働こうとせず,親のスネをかじり続ける・・・。こういう子を持つ親御さんの関心事は,以前は「どうしたら仕事をさせられるか」でしたが,最近では「自分が死んだ後,ひとりになった子供はどうやって生きていくのか」ということに変わっているのだそうです。

 なるほど。子が若いうちは「働け,働け」と尻を蹴っていたのでしょうが,30や40を過ぎた段階になると,「この子は一人になったら一体どうするのだろう」という悩みが頭をもたげてくるのは当然のことです。

 これから先,保有資産や年金等のデータをもとに「子供が働かなくても一生食べていけるプラン」の作成を請け負う,FP(ファイナンシャルプランナー)への需要が高まることもあり得ますね。

 それはさておき,このように先行きが懸念される人間は,統計でみてどれくらいいるのでしょう。ここにて私は,「未婚」「無業」「親同居」という3拍子がそろった中年層の数を明らかにしてみようと思います。簡単に表現すると,無職中年パラサイトシングルです。

 2010年の総務省『国勢調査』によると,30~40代の中年層はおよそ3,490万人です。このうち,親同居の未婚者は575万人。これがいわゆるパラサイトシングルですが,このうち「非就業」というカテゴリーに収められているのは117万人となっています。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm

 2010年10月時点の無職中年パラサイトシングルは117万人。私が住んでいる多摩市の人口の約8倍です。結構な数になりますね。30~40代人口に対する相対量は3.3%であり,30人に1人というところです。

 この117万人の性別内訳は,男性が71万人,女性が46万人です。私は女性が多くを占めるのではと思っていましたが,実態はその逆です。ベースあたりの出現率にすると男性は4.0%,女性は2.7%であり,差が出ています。

  これは全国値ですが,「自分の県は?」という関心もあろうかと思います。30~40代の人口と無職パラサイトシングル数を都道府県別に収集し,割り算をして出現率を計算してみました。下表は,その一覧です。出現率の順位も添えています。


  ほう。最高の青森と最低の滋賀では,出現率に倍近くの差が観察されます。青森では20人に1人ですが,滋賀では38人に1人です。2位は沖縄,3位は岩手,4位は奈良,5位は秋田・・・。地方県で率が高い傾向にありそうです。

 表は資料としてみていただくこととして,表中の出現率を可視化してみましょう。0.5%の区分で各県を塗り分けた地図をつくってみました。


  北東北,南近畿,および四国が濃い色で染まっています。一方,東京や神奈川のような大都市,そして愛知のような地方中枢県は白色です。地域における就業機会の多寡といった要因も関与していると思われます。

 無職中年パラサイトシングル現象は,個々人の怠けだけに帰される単純な問題ではなく,社会的な側面も併せもっていることに注意したほうがよいでしょう。

 ともあれ,今のわが国には,何から何まで親に依存している(せざるを得ない)中年層が100万人以上存在することを知りました。同世代の30人に1人,多い地域では20人に1人。むろん,この中には逆に親の面倒をみている者もいるでしょうが,未婚・親同居・無業の中年層がこれほどいるとは,私にとっては驚きでした。

 ちなみに,2005年の『国勢調査』から分かる,無職中年パラサイトシングル数は100万人ほどです。2010年の数は117万人ですから,この5年間で1.17倍に増えたことになります。予想ですが,今後も増えていくのではないでしょうか。10年後,20年後はどういう事態になっていることか。ちょっと怖い思いがします。

 問題への対処にあたっては,この現象が社会現象としての側面を持っていることにかんがみ,それをもたらす社会的条件を明らかにして,それを取っ払うことが肝要であると思います。地域別・属性別の計量分析は,そうしたアプローチをとるための礎石に位置づくものです。それを可能ならしめる,統計資料の整備がより進展することを願います。