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2013年8月21日水曜日

仕事をする自信がない

 人口は,就業という観点からすると,有業者と無業者に大別されます。後者の無業者は,就業意欲の有無において,就業希望者と就業非希望者に分かたれます。

 ここまでの内訳は,新聞や白書等でしばしば報じられるのですが,私は,就業非希望者の理由構成に関心を持ちます。まあ,通学や育児・家事が大半でしょうが,総務省『就業構造基本調査』をみると,他にも細かい理由カテゴリーが設けられているようです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 最新の2012年調査によると,同年10月時点の20~40代人口は4,812万人。この働き盛りの年齢層の内訳を解剖すると,下表のようになります。就業非希望者については,就業を希望しない理由ごとの数を示しています。


 当然ですが,この年齢層では働いている者がほとんどで,全体の8割を占めています。残りの2割が無業者ですが,無業者の中でも,就業を希望しない者よりは,それを希望する者のほうが多いようです。足繁くハロワ等に通っておられる方でしょう。

 ここまでで全体の91.4%が占められ,残りの8.6%が就業を希望しない無業者です。理由ごとの数をみると,通学や育児というものが多くなっています。学生や専業主婦でしょう。その次に多いのが「特に理由なし」ですが,これは純粋ニートに相当するのではないかしらん。

 この部分に焦点を合わせるのは別の機会にして,今回注目したいのは,「仕事をする自信がない」という理由による就業非希望者です。最近,自分のスキルや人づきあいへの不安から,就労に踏み出せない者が増えているといわれます。この理由カテゴリーによる就業非希望者数をもとに,実態をみてみましょう。

 上表によると,「仕事をする自信がない」という理由による,20~40代の就業非希望者は約11万人。ベース人口1万人あたりの数にすると,23.0人となります。

 5年前の2007年調査では,この数は8万9千人ほどであり,1万人あたりの出現率は17.9でした。ほう。絶対数,出現率とも増加をみています。働き盛りの層において,「仕事をする自信がない」という者が増えていることが知られます。私もそのうちの一人かも。

 以上は,20~40代と広く括った場合ですが,より細かい属性ごとの傾向も出してみましょう。性別・年齢層別に,「仕事をする自信がない」就業非希望者の出現率を計算してみました。同じく,ベース人口1万人あたりの数です。


 男性の40代後半を除く全ての層において,出現率が高まっています。増加倍率が最高なのは,男性は40代前半,女性は30代前半です。バリバリの働き盛りですね。

 ところで,年齢による変化は性によって違っており,男性は若年層ほど高く,女性はその逆になっています。女性は,育児の手間が少なくなり,そろそろ(再び)働こうかという段になって大きな不安が押し寄せる,ということでしょうか。就業未経験,ないしは就業中断に由来するものです。

 そういうイベントのない男性では,就業への不安は,20代の入職期に集中しています。この点は,学校から社会への移行期にまつわる問題の一面と捉えることができるでしょう。ブラック企業で酷い目に遭い,そうしたトラウマから「仕事をする自信がない」とふさぎ込んでしまう若者が増えている,という解釈も可能かと思います。

 入職・再就職の双方の過程において,働くことへの不安の量が増えていることが分かりました。これは,大学等の中等後教育機関における職業教育の問題,再就職への橋渡しに関わる条件整備の不足の問題,就業者にトラウマを与えるようなブラック企業,さらには若者の対人関怠避など,多様な問題要素を含んでいるでしょう。

 「仕事をする自信がない」 という不安の内実がもっと具体的に分かれば,と思います。上でちょっと書いたように,スキルへの不安なのか,組織で対人関係を持つことに対する不安なのか・・・。どの面が大きいかによって,問題への対処の在り方も変わってきます。私としては,後者の部分が結構大きいように思えるのですが。職業教育の未熟・不足という問題だけに集約されるべきではないでしょう。

  最初の表でみたように,就業非希望の理由は,他にもいろいろあります。興味を持ったものについて,より仔細なデータをつくってみるのも面白いかと存じます。次回は,「特に理由なし」という就業非希望者(≒純粋ニート)に着目してみようかと。こちらは数が多いので,都道府県別の数値も出せそうです。