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2014年1月21日火曜日

年収の官民差

 イカのスルメはしゃぶるほど味が出るといいますが,総務省の『就業構造基本調査』も然り。公表されている統計表の一覧をみるたびに,「こんなことまで分かるのか」と驚かされることがしばしばです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 本調査の結果集計では,有業者の年収分布が,従業上の地位別・産業別に明らかにされています。私は,この統計表を使って,有業者全体と公務員の年収分布を比較してみました。

 年収の官民比較です。公務員の優位性はよく知られていますが,その程度を数字で表してみるとどうなのか。個人的な興味を抱いた次第です。ちなみに,本調査でいう年収とは,「賃金,給料,手間賃,諸手当,ボーナスなど過去1年間に得た税込みの給与総額」です(用語解説)。

 性別と正規・非正規の影響を除くため,男性の正規職員の年収分布を比べてみます。最新の2012年調査のデータをもとに,有業者全体と公務員の年収分布曲線を描くと,下図のようになります。年収が不明の者は分母から除外しています。


 予想通り,公務員の優位性が明らかです。全体のピークは300万円台ですが,公務員は500万円台なり。全体的にみても,公務員は高いほうに多く分布しています。ただ,年収1,000万以上の富裕層は全体のほうが多くなっています。民間の飛び抜けた富裕層でしょう。

 上記の分布から,年収の平均値(average)を出してみましょう。階級値の考え方に依拠して,100万円台の階級は中間の150万円,200万円台は250万円というように,一律にみなします。上限のない1,500万以上の階級は,一律2,000万円ということにします。

 この仮定によると,全産業の男性正規職員の平均年収は501万円,公務員のそれは604万円と算出されます。その差は1.2倍。全国値でみると,まあこんなものでしょうか。

 しかるに,この倍率は県によって大きく違うと思われます。私の郷里の鹿児島では,「公務員はいいよね」とよくいわれます。それもそのはず。民間の給与水準が低いので。地元の新聞で,県内の官民差は1.5倍などという記事を見かけたことがありますが,本当かしらん。

 私は,上記と同じデータを47都道府県分そろえて,先ほどと同じやり方で,全体と公務員の平均年収を計算しました。下表は,その一覧です。都道府県別の年収の官民差をご覧ください。


 男性正規職員でみて,年収の官民差が最も大きいのは秋田です。全体が397万円に対し,公務員は565万円。その差は1.42倍にもなります。前に,公立学校教員の給与の対民間比を出したことがありますが,そこでもこの県がトップでしたな。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/03/2010.html

 赤色は倍率が1.4以上ですが,秋田のほか,鳥取,長崎,宮崎,そして沖縄が該当します。年収の官民差が1.4倍を越える県です。郷里の鹿児島は1.37倍。1.5倍というのはオーバーですが,官民差が大きい部類に入ります。

 一方,都市部では倍率は低いですね。首都圏の1都3県は軒並み1.1倍程度です。大都市では,民間の給与水準が高いことによります。

 右端の官民差を表す倍率を地図化してみましょう。1.25未満,1.25以上1.30未満,1.30以上1.35未満,1.35以上という4階級を設けて,各県をグラデーションで塗り分けてみました。


 色が濃い県は,年収の官民差が大きい県ですが,やはり地方で多いですね。首都圏や近畿圏のような都市部は白色です。

 今回のデータは興味本位で作成したものであり,何かの主張をするがためにつくったものではありませんが,自治体オンブズマンなどの活動で,この手のデータに関心をお持ちの方もおられると存じます。そういう方々の参考になれば幸いです。

 今回みたのは男性の正規職員の年収ですが,一口に公務員といっても,属性によって多様です。女性や非正規にも目配りしたらどうでしょう。「官製ワーキングプア」という言葉があるように,非正規公務員の悲惨さはよく報じられるところです。

 次回は,公務員の年収構造を,性別・雇用形態別に俯瞰することのできる図をご覧に入れようと思います。