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2014年2月18日火曜日

生活保護受給者の自殺率(2010年)

 最近はネット上にて,政府の各種審議会の内部資料もみれるようになっています。厚労省・社会保障審議会の生活保護基準部会の資料を眺めていたところ,生活保護受給者の自殺者数が載っているものを見つけました。下記サイトの参考資料2です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ifbg.html

 これを生活保護受給者の数で除せば,生活保護受給者の自殺率が算出されます。ベースの受給者数は,厚労省の『被保護者調査』にて知ることが可能です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/74-16.html

 私は,2010年の分子と分母の数を採取して,生活保護受給者の自殺率を計算してみました。前者は2010年中の自殺者数,後者は同年7月末時点の受給者数です。年齢層別に出してみましたので,その結果をご覧いただきましょう。


 人口全体では,自殺率は高齢層ほど高くなるのですが,生活保護受給者に限定すると,若年層ほど高く,ピークは30代です。「働き盛りのいい若いモンが保護なんて受けやがって・・・」。こんなバッシングにさらされ,行政による就労指導もひときわ厳しいことと思います。分かるような気がします。

 それと,10万人あたり138.2人という自殺率の絶対水準の高さにも驚かされますね。これは当然,全人口でみた場合の率よりもはるかに高いものです。

 ここにて,保護受給者と人口全体の自殺率を年齢層別に出し,照合してみましょう。人口全体の自殺率は,上記の社会保障審議会資料に載っている2010年中の自殺者数を,同年10月時点の推計人口で除して出しました。下の図は,生活保護受給者と人口全体の自殺率の年齢曲線です。


 若年の生活保護受給者の自殺率が際立って高いのが一目瞭然です。30代の受給者の自殺率は全体の5.5倍にもなります。同年齢層全体と比した相対水準の高さにも唖然とさせられます。

 考えてみれば,若年の生活保護受給者は,重度の精神疾患で働けないなど,かなり「セレクト」された人たちです。ある精神科医の方がツイッターで教えて下さったところによると,30代の生保受給者の多くは精神疾患を患っているとのこと。

 これに追い打ちをかけるかのごとく,世間からのバッシングの風当たりは強く(怠け者!),行政の就労指導も厳しいときています(必要なのは配慮であるのに)。若年の生活保護受給者の自殺率が異常に高いというのも,分かろうというものです。

 生活保護は,憲法にて規定されている生存権を保障するための制度ですが,若年層にとっては,上手く機能していないのではないでしょうか。「働かざる者食うべからず」,年齢による役割規範の強い日本ならではの特徴だと思いますが,どうでしょう。

 これから先,若者は量的にますます少なくなり,彼らに対する負荷(圧力)が大きくなってくることは,昨年の10月27日の記事でみたところです。「若いのが生活保護を受けるなんてとんでもない。ブラックでも何でもいいから働け」。こんな声が強まるような気がします。そうなったとき,上図の曲線の傾斜がもっときつくなるのではないか。

 少子高齢化が確実に進行するわが国にあっては,年齢による偏狂な役割規範を克服することが求められるでしょう。性による役割観念(ジェンダー)の撤廃には関心が向けられていますが,もう一つの属性である「年齢」のほうにも,もっと目を向けようではありませんか。