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2014年6月24日火曜日

大学生のマジメ化・ウチ化

 今の学生さんは,よく勉強するなあと思います。私が学生だった90年代後半頃と比べれば,それはもう見上げたものです。

 飲み会をやっても,「実験のレポートがある」とか「小テストの勉強がある」とか言って,一次会だけで帰る人が多いんですって。私が教えている学生さんの談ですが,「ホントかよ」と思ってしまいます。

 まあ,学生の勉強時間が増えていることは,各種の調査で明らかにされていますが,官庁統計からも可視化することができます。総務省『社会生活基本調査』のデータを使って,平日1日あたりの平均学業時間を出してみました。

 ここでいう学業時間とは,学校の授業時間も含む勉強時間のことです。塾や家庭教師による学習時間も含みます(用語解説)。


 大学生の勉強時間が小中高生より少ないことはさておいて,この10年間で増えていますね。2001年の225分から2011年の273分へと,48分増加しています。短大・高専生は,102分の増加です。

 この期間中,学生に勉強させよう,学生を鍛え上げようという方針が打ち出されていますが(2008年12月,中教審答申),その効果の表れでしょうか。たとえば,1単位の取得に45時間の学習が必要という大学設置基準の規定を徹底することが提言されていますが,その場合,半期の授業2単位を取得するのに90時間勉強しないといけなくなります。授業時間込みですが,「うへえ」ですね。

 ところで,勉強時間の増加と引き換えというか,大学生の生活はいささか貧しくなってきています。金銭的な意味での貧しさではありません。行動のバリエーションに欠けた,ハリのない生活という意味合いです。

 大学生の主な生活行動の実施率を,2001年と2011年とで比較してみました。調査対象の平日に,当該の行動を行った者の比率です。睡眠や食事などの必需行動は省いています。


 どの行動の実施率も減っています。赤字は5ポイント以上の減少ですが,テレビや新聞等のマスコミ接触率の低下は著しいですね。2011年では,調査日の平日に,対象の学生の半分以上がテレビや新聞を全く見なかったようです。

 これが若者の「テレビ離れ」ってやつでしょうか。今ではネットで,ニュースや漫画などの動画が観れますから,そちらに乗り換えたということでしょう。

 交際・付き合いやお出かけ(移動)実施率の減少幅も大きいですね。冒頭で紹介した飲み会の話と関連しますが,学生の「ウチ化」傾向をちと感じます。

 以上は大学生だけを切り取ったデータですが,全体の文脈の中に位置づけてみると,この年代の変化の大きさがクリアーに分かります。下の図は,交際・付き合いの実施率の年齢曲線です。


 交際・付き合いの実施率は年齢を問わず減少していますが,20代前半の若年層において減少幅が最大になっています。いみじくも大学生の年齢層です。若き青年層の「ウチ化」傾向。最初の図でみた学業時間の増加(マジメ化)と表裏である可能性も否定できますまい。

 大学生は青年期の時期に相当しますが,この時期の課題は,さまざまな試行錯誤をして,自己アイデンティティを確立することです(エリクソン)。自分は何者か,社会において何ができるかを明確にすること。

 そのために労働などの役割が免除され,自由な時間もたっぷり付与されている。それが青年期,すなわち学生時代です。今回のデータは,この貴重な青年期が「灰色」化しつつある現況を物語っているようにも思えます。

 求められるのは,大学生の「生徒化」だけではないでしょう。昨日,大学生の「生徒化」現象について批判的に考察した論稿を見つけました。読んでみようと思います。