国際教員調査(TALIS 2013)の分析第2報です。今回は,対象となった中学校教員の女性比率の国際比較をしようと思います。中等段階以降の教員の女性比は,日本は低いといわれますが,最新の国際データにおける位置はどうなのでしょう。
http://www.nier.go.jp/kenkyukikaku/talis/
上記サイトにアップされている日本版報告書にあたって,一般教員(校長は除く)と校長の女性比率を国ごとに集めました。横軸に一般教員,縦軸に校長の女性比率をとったマトリクス上に,34の社会を位置づけると下図のようになります。
日本の女性比は,一般教員が39.0%,校長に至ってはわずか6.0%ですが,双方とも最下位です。図の中での外れっぷりも際立っています。巷でよく言われることは,まざまざと可視化されていますね。
しかし私が驚くのは,多くの国で中学校教員の女性比が高いことです。参加国平均でみると,一般教員が68.1%,校長でも49.4%と半分近くです。図の右上にあるラトビアでは,中学校教員の大半が女性であることが知られます。教員は女性の仕事と考えられているのでしょうか。これはこれで,逆の意味で偏っているといえますが。
まあでも,日本の校長の女性比6.0%という現状は,明らかに国際標準から逸脱しています。管理職は激務ですが,家事や介護の負担と両立できないという事情もあるのではないでしょうか。とくに女性の場合。
上記の図は,前にツイッターでも発信しましたが,あと一つ,理数教科担当教員の女性比の国際比較図もお見せしましょう。昨日,TALIS2013のローデータを武蔵野大学でダウンロードしてきたのですが,これを使うことで,教科別の女性比率を出すことも可能です。
調査実施年(2013年)中に,数学と理科を担当したという教員を取り出して,その中で女性が何%占めるかを計算してみました。日本でいうと,数学教員の女性比は29.9%,理科教員は23.5%です。われわれの感覚からすると「こんなもんだろう」ですが,この値は他国と比べるとすこぶる低くなっています。
先ほどの図と同様,ここでも日本の外れっぷりが明らかです。他の先進国では,中学校の理数教員の半分以上が女性なんですなあ。
わが国で「リケジョ」が少ないことの遠因は,こういうところにあったりして…。ロールモデルの欠如ってやつです。多感な思春期の女子生徒にとって,白衣の女性教員の姿って,インパクトがあるんじゃないかなあ。
国際比較というのは,実に面白い。「こんなもんっしょ」と日頃信じて疑わない事象が,国際的な視座から相対化されます。今後も継続していきたい作業です。
今日は雨ですが,梅雨明けはもうすぐ。皆様,よい週末をお過ごしください。