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2014年11月13日木曜日

年収は「住むところ」で決まる(続)

 昨日のプレジデント・オンラインにて,拙稿が公開されました。「東京の清掃員は沖縄の営業マンより年収が高い?」という記事です。編集者さんが考えてくださったタイトルですが,さすがに上手いですねえ。
http://president.jp/articles/-/13843

 エンリコ・モレッテイ著『年収は住むところで決まる』に触発され,男性正規職員の平均年収を都道府県別に計算したのですが,東京のブルーカラーは,沖縄のグレーカラーよりも高いことが分かりました。年収の規定要因としては,性別,学歴,職業といった個人の属性が問題にされることが多いのですが,居住地による差も大きいことが知られます。

 さて,上記の記事で出したのは,ホワイトカラー,グレーカラー,ブルーカラーという大雑把な職業分類ごとの平均年収であり,「東京の清掃員は沖縄の営業マンより年収が高い」という命題を厳密に検証するには至っていません。ここでは,より細かい職業カテゴリーの平均年収を都道府県別に明らかにしてみようと思います。

 資料は,2012年の総務省『就業構造基本調査』です。この資料には,有業者の職業別の年収分布が都道府県ごとに掲載されています。私はこれを使って,10の職業カテゴリーの平均年収を出してみました。性別と雇用形態の影響を除くため,男性正規職員(正社員)のデータを用いています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 原資料に載っている度数分布表から平均を出すやり方については,お手数ですが,上記のプレジデント記事をご参照ください。下表は,算出された平均年収の一覧表です。黄色は47都道府県中の最高値,青色は最低値を意味します。


 東京の運搬・清掃職と,沖縄の販売職を比較すると,前者が429万円,後者が349万円です(赤字)。編集者さん考案の命題「東京の清掃員は沖縄の営業マンより年収が高い」は,細かい職業分類の年収統計から正しいことが実証されました。

 ちなみに,10の職業の年収を東京と沖縄で比べると,下図のようになります。


 点線は,東京の運搬・清掃職の平均年収ですが,沖縄でこのラインを上回るのはホワイトカラーの3職だけです。

 これは両端の比較であり,この2都県では物価の水準が大きく異なることも考慮しないといけませんが,居住地の影響,侮りがたしですね。上記の表をみるならば,年収の職業差が居住地域によって回収されているケースはいくらでもみられます。

 昨年の9月12日の記事では,大学進学率の都道府県格差を明らかにしたのですが,今回のようなデータをみると,さもありなんです。親世代の年収に大きな地域差がある一方で,大学の学費はどの県でもさして変わらないですし。個人レベルの階層格差と同時に,地域格差という視点も重視すべきでしょう。

 「年収は住むところで決まる」。わが国においても,妥当性を持ちそうな命題です。