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2015年1月8日木曜日

勉強の得意度と自尊心の関連

 日本の子どもは自尊心(self-esteem)が低いといわれますが,その傾向は学年を上がるにつれ強くなります。

 前回の記事で使った,国立青少年教育機構『青少年の体験活動等に関する調査』(2012年度)によると,「今の自分が好きである」という項目に「とてもそう思う」と答えた者の割合は,小4で30.7%,小5で24.1%,小6で20.9%,中2で8.9%,高2で7.3%というように,どんどん下落してきます。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/84/

 小学校と中学校の段差が大きいようですが,高校受験を見据えたテストの連続で,周囲と比した自分の相対位置を思い知らされることが多くなるためでしょう。よって自尊心の程度が,勉強のでき具合に規定される度合いが高まってくるとみられます。

 私は上記調査のローデータを使って,この2つの関連を調べました。発達段階によって関連の仕方がどう違うかもみるため,小4と高2のクロス表をつくりました。下に掲げるのは,何の加工も施していない実数の原表です。


 「勉強の得意度×自尊心の程度」のクロス表です。赤字はタテ方向の最頻値ですが,勉強の得意度が下がるにつれ,下の方に落ちてきます。勉強がとても得意なA群では「自分がとても好き」が最も多いのですが,勉強が全く得意でないD群では「自分が全く好きでない」者が最多であると。高校2年生では,この傾向がより顕著です。

 上表のデータを視覚化してみましょう。群ごとの自尊心の分布をタテの帯グラフにしようと思いますが,ヨコ幅を使って各群の量も表現してみます。


 勉強が不得意な群ほど自尊心が下がる傾向がみられますが,学年を上がるにつれ,A~Dの相対量が変わることにも要注意。高校2年生になると,勉強がとても得意なA群はわずかになりますが,量的に少ないこの群の自尊心が飛びぬけて高くなります。自尊心の占有化とでも形容し得る現象です。

 わが国では,青年期の入口に差し掛かると,ごく一部の勉強が得意な層だけが高い自尊心を保持し,他の大多数の層がそれを剥奪される傾向がみられます。大学進学規範が強い日本の特徴であるように思えますが,他国でも上記のような図柄になるのでしょうか。

 自尊心の基盤というのは,加齢とともに多様化していくのが望ましいのですが,今の日本社会では,それが勉強の得意・不得意に一元化(収束)される傾向にあります。青年期とは,興味・関心・適性が多様化し始める時期と考えると,上図に描かれている様は,一種の病態を表現しているともいえるでしょう。

 入学者を選抜する試験では相対評価も止むを得ませんが,日々の学校生活では,できない子を「無理やり」作り出す相対評価だけでなく,あくまで目標への到達度を重視する絶対評価,さらには当人の以前の状態と比した個人内評価なども,もっとと入れられるべきではないでしょうか。*近年では,こういう方針が推奨されています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292163.htm

 これから先,ただでさえ減っていく子ども人口を,学校教育の中で人為的に潰していくような事態は,何としても避けねばなりません。