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2015年10月1日木曜日

首都圏私立大学574学部の初年次退学率分布

 読売新聞教育ネットワーク『大学の実力2016』が中央公論新社より発刊されています。大学・学部別にさまざまな情報が掲載されており,これから大学選びをする受験生のバイブルとなっていることでしょう。
http://www.chuko.co.jp/tanko/2015/09/004767.html

 生徒は,自分が志望する大学・学部のTP比や退学率などを知ることができるのですが,入学後1年以内の退学率が「3.0%」とあっても,「それって高いの,低いの?」という疑問が出てくるはずです。

 まあ,他大学の数値をザーと見れば大体の見当はつきますが,各大学・学部の数値を評価する(位置づける)ための,全体分布図を作ることは無駄ではありますまい。前々回は非常勤教員率でしたが,今回は,入学後1年以内の退学率(初年次退学率)の分布図を作ってみようと思います。

 初年次退学率とは,2014年4月入学者のうち,翌年3月までの間に退学した者が何%かです。上記資料に,計算済みの数値が各大学の学部別に掲載されています。首都圏の私立大学の学部のデータを入力し,5%刻みの度数分布にしてみます。

 なお単純分布を描くだけでは芸がないので,偏差値によって分布がどう違うかも出してみましょう。一口に大学生といっても,入試難易度によって意識や行動が大きく異なることは,誰もが知っていること。学研教育出版の『大学受験案内2016年度用』を使って,各学部の入試偏差値を調査しました。
http://hon.gakken.jp/book/1130421200

 首都圏(1都3県)の私立大学の学部のうち,初年次退学率と偏差値の両方が判明したのは,574学部です。これらの学部を分析対象とします。以下に掲げるのは,度数分布表です。


 ランクを問わない全体の分布(右端)をみると,初年次退学率が0.5%以上1.0未満の学部が最も多くなっています。全体の17.6%がこの階級に属しています。

 しかし偏差値によって分布は違っており,ランクが下がるほど,黄色マークの最頻階級(Mode)が下のほう,つまり退学率が高いゾーンにずれてきます。分布の幅も広くなってきます。偏差値30台の学部では,初年次退学率が10%を超える学部もあります。10人に1人が,入学後1年を待たずして去るわけです。本命を狙う「仮面浪人」の学生が多いのかもしれませんけど。

 上表の分布を簡易な平均値にすると,574学部全体では2.3%です。偏差値群別にみると,偏差値30台の学部の初年次退学率平均は4.2%,40台は2.2%,50台は1.5%,60以上は1.0%となっています。ほう,ランクと退学率の間には明瞭な相関関係がありますね。

 最後に,574学部の初年次退学率分布をヒストグラムにしておきましょう。各階級のバーを偏差値の色で塗り分けてみます。


 受験生のみなさん,自分が志望する学部の初年次退学率を,この全体図の中で評価してみてください。ランクとの関連も読み取ってください。

 偏差値と退学率の関連については前にも書いたことがあり,これについて私が申したいことも書いています。だいぶ前の記事ですが,URLを記しておきます。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/01/blog-post_18.html