保育士不足を解消するため,幼稚園や小学校の教員免許をもって,保育士資格に代替する案が公表されています。
http://www.asahi.com/articles/ASHCJ4WQVHCJUTFL006.html
幼稚園教諭は3~5歳児,小学校教諭は5歳児の保育を担い,養護教諭は対象の定めはないそうです。
なんとも苦肉の策ですが,はたして人材の移動は起きるか。ある方がツイッターで,「給料が高いほうから低いほうに移るわけねえだろ」とつぶやいていましたが,確かにそんな感じです。水は「高きから低き」に流れますが,労働力の移動はその逆であるのが常。
保育士,幼稚園教員,小学校教員の月収分布を比べてみましょう。前2者のデータは,9月28日の日経デュアル記事で出しています。厚労省『賃金構造基本統計』から計算した,2014年6月の月収分布です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
残りの小学校教員のデータは,2013年の文科省『学校教員統計』から出してみました。2013年6月の本務教員の月収分布です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm
厚労省と文科省の資料では,月収の区分が違っていますので,20万未満,20万円台,30万円台,40万円以上の4カテゴリーに簡略化しました。下図は,その構成比の帯グラフです。
ご覧のように,保育士の年収が最も低くなっています。月収20万未満の比率は,保育士で55.3%,幼稚園教員で39.2%,小学校教員で6.2%です。
はたして,水が「高きから低き」に流れるがごとく,人材もこの方向に動くかどうか・・・。有識者もこういう懸念を持っているようで,「緊急対策もいいが,保育士確保や離職防止のためには,一義的には処遇改善を目指すべきだ」という声が上がっています(上記の朝日新聞記事より)。
いっそ,保育士の待遇改善のための公的な基金(fund)を設けたらどうでしょう。非利用者から反発があるでしょうが,保育サービスを充実できるか否かは,少子化の解決,ひいては社会の維持存続にかかわる重大事です。子どもがいない人だって,いずれは下の世代にお世話になるのですから。
資源の傾斜配分には慎重でなければいけませんが,保育や介護の領域には,まずもってそれが向けられるべきでしょう。政策に早計は禁物ですが,時には思い切った決断も必要になります。政府には今,それが求められていると思います。