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2016年1月30日土曜日

子どもの孤食率

 共働き世帯や一人親世帯が増えていますが,それに伴う問題として,子どもの孤食がよく指摘されます。字のごとく,一人でご飯を食べることです。私などは年中孤食ですが,人格形成の途上にある子どもにとって,孤食ばかりというのは好ましくありません。

 机の上にワンコインが置かれ,「これで何か買って食べなさい」では,菓子パンやファーストフードなどに依存しがちになり,栄養も偏ることになります。子どもの肥満と貧困は関連しているのですが,こういう事情もあるのかもしれません。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=7243

 そこで最近では,各地で「子ども食堂」の実践がなされています。一人でご飯を食べざるを得ない子どもを集めて,みんなで楽しく食べる。栄養バランスを考えた,手作りの料理が出されます。今後,ますます増えてくる地域密着人口(退職高齢者など)の力も借りて,こうした実践が広まってほしいものです。
http://matome.naver.jp/odai/2145403240516519101

 さて,孤食をする子どもはどれくらいいるのでしょう。実践の方途を考える前に,まず実態を把握することが望ましいのですが,こういうデータはあまり見かけません。私は,総務省『社会生活基本調査』(2011年)のデータを加工して,率を試算してみました。それをご覧に入れようと思います。

 上記調査では,15分刻みの時間帯別の行動を調査しています。また,当該の行動を誰とやったかも記録してもらっています。私は,「食事」をした者の率と,「一人で食事」をした者の率に注目しました。

 小学生(10歳以上)でいうと,平日の朝7:00~7:15の時間帯に食事をした者は38.28%,一人で食事をした者は1.82%となっています。よって,この時間帯の孤食率は後者を前者で除して,4.75%と算出されます。小学生の朝食の孤食率は,こんなものでしょうか。

 もう少し,観察対象の時間帯を広げましょう。朝食は6:30~7:30,昼食は12:15~13:15,夕食は18:30~19:30の各1時間をみてみます。

 下表は,平日の小学生について,朝・昼・夕の時間帯別の欠食率を出したものです。下記サイトの表13より数値を採取してつくりました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001040661&cycode=0


 孤食率は,朝が最も高いのですね。親が帰ってこない夕食かと思いきや,そうではありませんでした。朝も,親が早く出てしまうのでしょうか。それとも,朝は家族みんなバタバタしていて,一緒に食卓を囲んでいないとか。

 昼は給食がありますので,孤食率は低くなっています。でも給食を実施していない学校もありますので,そういう学校では昼の孤食もあり得るでしょう。夕の孤食は,朝ほどではありませんが,ちょっと多くなります。

 4つの時間帯の孤食率の平均を出すと,朝が5.3%,昼が0.9%,夜が1.6%です。これをもって,平日の小学生の欠食率とみなしましょう。

 これは小学生のデータですが,他の学校段階の数値も出してみました。下図は,同じやり方で計算した,3食の孤食率をグラフにしたものです。


 発達段階を上がるほど,孤食率は高くなります。大学生では朝・夕の孤食率が2割を超えてますが,一人暮らしが多くなるので,そうなるでしょう。高校生の朝の孤食率は12.3%。電車の中でカロリーメイトをぱくついている生徒を見かけますが,これもその中に含まれるでしょう。

 夕食の欠食率は,小学生で1.6%,中学生で3.7%です。これを,2015年5月時点の全児童・生徒数に乗じると,夕飯を一人で食べる小学生は10.5万人,中学生は12.8万人,合わせて23.3万人と見積もられます。私が住んでいる多摩市の人口より多し。「子ども食堂」の類の救いを求めている子どもは,全国にかなりいると思われます。

 これは全国の試算値ですが,気になるのは地域差。おそらく,核家族の共働き世帯や一人親世帯が多い都市部では,この値は高いことでしょう。文科省の『全国学力・学習状況調査』の質問紙調査にて,孤食の状況も尋ねてほしいものです。東京のような大都市では,市区別のデータもほしい。こういう情報があることで,限りある資源をどこに注入すべきかも見えてくるでしょう。