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2017年2月21日火曜日

人はどの県に移るか

 地方創生の推進と相まって,「移住先に選ばれる県はどこか?」という類の記事をちらほら見かけます。ふるさと回帰支援センターの調査によると,2016年の移住希望先1位は山梨県,2位は長野県だそうです。
http://news.livedoor.com/article/detail/12700774/

 なるほど,住みよい県のランキングでも上位によく挙がる県ですので,さもありなんです。しかるに,口先の意見ではなく,実際に人がどう動いているかの統計を観察するのもいいでしょう。

 どれほど地域が人を呼び込んでいるかを測る人口移動の指標として,転入超過率がよく使われます。ある年の転入者数から転出者数を差し引いた数(転入超過数)を,当該年の初頭の人口で除した値です。

 2016年の東京の30代(日本人)を例に,この指標を計算してみましょう。同年中の転入者は9万1,512人,転出者は9万1,198人ですので,分子の転入超過数は314人となります。これを,同年1月1日の30代人口(196万5,158人)で除して,転入超過率は0.016%となる次第です。資料は,総務省『住民基本台帳人口移動報告』。
http://www.stat.go.jp/data/idou/index2.htm

 社会増によって,東京では30代人口が0.016%増えた,ということです。言わずもがな,「転入<転出」,つまり出て行っている人のほうが多い場合は,転入超過率はマイナスとなります。

 このやり方で,都道府県別・年齢層別の転入超過率を計算してみました。各ステージごとに,どの県に人が移っているかが分かります。下に掲げるのは,値が高い順に47都道府県を並べたランキング表です。


 20代は都市部で高いのは分かり切っていますので,30代以降のデータにしていますが,どうでしょう。

 トップは軒並み九州の県になっています。30代は沖縄,40代は福岡,50代は鹿児島,60歳以上の高齢層は沖縄,という具合です。

 赤色の上位5位をみても,西日本の県がほとんどです。首都の東京は,50代以降になると,入ってくる人より出ていく人のほうが多くなります。IターンやUターンによるものです。

 壮年期以降は,人は「西」に動く。こんなテーゼを立てられそうですね。若年期の人口移動の裏返しかもしれませんが,そればかりではありますまい。とくに,沖縄の実情に興味を持ちますねえ。確かこの県は,非正規雇用から正規雇用への移動チャンスが全国一じゃなかったかな。
https://twitter.com/tmaita77/status/592494430168297473

 若者の起業チャンスが「西南」に多いことは,前に明らかにしたことがあります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/10/blog-post_13.html

 ライフステージごとの地域移動のデータはあまり見かけませんので,参考資料として提示しておきましょう。