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2017年5月14日日曜日

20代前半の正社員の年収中央値

 沖縄が本土に復帰したのは1972年。今年で復帰45年になるわけですが,様々な面で本土との格差が大きいのはよく知られています。

 復帰45年という節目を迎えるにあたって,沖縄タイムスが行った調査によると,本土との格差を感じている県民が多し。どういう面の格差を問題視するかは世代差があり,年輩層は基地問題ですが,若年層は「所得」の格差を一番の問題と挙げているそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170513-00097113-okinawat-oki

 沖縄の所得水準が低いのはよく知られていますが,若年層に限るとそれはいっそう際立つでしょう。正社員でも平均年収が200万いかないと聞きますが,本当でしょうか。

 昨日,2012年の『就業構造基本調査』から,20代前半の正規職員の平均年収を都道府県別に計算してみました。その結果によると沖縄は190.5万円で,確かに200万円を下っています。全国的な感覚でいうと,いわゆる「ワーキング・プア」に入るレベルです。

 全国値は255.5万円,マックスの東京は280.6万円。なるほど,本土との開きは凄まじいものがあります。沖縄の若者が,本土との所得格差を問題視するのは当然といえましょう。

 このデータは,昨日ツイッターで発信しましたが,見てくださる方が多いようです。しかるに,平均値ではなく中央値で見たほうがいいのではないか,というご意見を多くいただいています。

 平均値と中央値。どちらもデータの傾向を端的に表す代表値ですが,平均値は一部の極端な値に引きずられる難点があります。年収の平均値(average)は,一部のスタープレイヤーによって釣り上げられている可能性が大です。

 そこで,データを高い順に並べたとき,ちょうど真ん中の中央値(median)で見たほうがよい,というご指摘ですが,ごもっともです。ではご要望にお応えし,20代前半正社員の年収の中央値を都道府県別に出してみましょう。

 『就業構造基本調査』には,年収の度数分布表が掲載されています。全国の20代前半正規職員のそれは以下のようになっています。年収が判明する218万6500人の分布です。本調査でいう年収とは,税金等が引かれる前の税込年収であり,手取り年収ではありません。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm


 200万円台前半が3割と,最も多くなっています。大学を卒業したばかりの年齢層ですから,こんなものでしょうか。

 この分布から,年収の平均値ではなく中央値を求めたいのですが,ちょうど真ん中に来る年収額はいくらでしょうか。右端の累積相対度数から,200~249万のどこかということは分かります。

 按分比例を考えを使って,ちょうど真ん中(累積相対度数=50%ジャスト)の値を見積もってみましょう。以下の2ステップです。
https://twitter.com/yjtmr/status/863739727102394369

 ① (50.0-22.6)/(53.3-22.6) = 0.892
 ② 200.0万円+(50.0万円×0.892) = 244.6万円

 全国の20代前半の正社員219万人を,年収が高い順に並べた場合,ちょうど真ん中に来る人の年収は244.6万円と推測されます。平均値(255.5万円)よりも低いですね。上述のように,平均値は一部のスターによって釣り上げられているためです。

 同じやり方にて,47都道府県別の年収中央値を出してみました。高い順に並べたランキング表を掲げます。


 どの県も,昨日ツイッターで発信した平均値より低くなっています。問題の沖縄はというと185.9万円,月収にすると15.5万円です。これは税込み額ですので,各種の保険を引かれた手取り年収はもっと少ないことになります。これはキツイ。物価の安さを勘案してもです。

 しかし沖縄だけでなく,全国的に低いですねえ。正社員でこれです。就職しても親元に居座り続けるパラサイト・シングルが増えているといいますが,致し方ないような気がします。若者の自立困難の原因を,「甘え」というような彼らのメンタリティに帰すのは間違いでしょう。実家を出て,一人暮らしするのも容易ではない。

 しからば,どういうことになるか。分かり切っているのは,未婚化の進行です。それと,新世帯を構えるのに必要な家電品の消費も冷え込むことから,景気も悪くなります。ある人がツイッターで言っていましたが,消費意欲旺盛な若者の給与を上げたら,さぞ景気は上向きになるのではないでしょうか。タンスにしまい込むだけの老人にお金を渡すより,ずっとプラスになるような気も…。

 若者を冷遇するのは,社会にとってもマイナスです。給与のテコ入れは難しいでしょうが,さしあたり,若者を対象とした,公営借家の供給増や家賃補助等の住宅支援を強化すべきでしょう。支出の大きな部分を占める住居費にテコ入れする。これだけでも,事態はかなり変わろうというものです。

 私はこれまで,若者の貧困の可視化として平均年収ばかりを出してきましたが,中央値もいいですね。ツイッターで意見を下さった方に,感謝申します。