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2017年11月29日水曜日

「**子」という名前

 2017年に生まれた子どもの名前で最も多いのは,男子は「悠真」,女子は「結菜」だそうです。
http://www.asahi.com/articles/ASKCX446SKCXUTFK00H.html

 元資料は,明治安田生命の「生まれ年別・名前ランキング」です。スゴイことに,戦前期から毎年,男女の名前のベスト10を知ることができます。
http://www.meijiyasuda.co.jp/enjoy/ranking/index.html

 戦前から戦後,そして現在にかけて社会は大きく変わりましたが,親が子どもにつけるな名前にも変化が見られます。よく言われるのは,女の子に「**子」という名前をつける親が減っていることです。

 私の母(故)が生まれた1940年,私が生まれた1976年,そして2016年について,女の赤ちゃんにつけられた名前のベスト10を整理すると,以下のようになります。


 「**子」という名前には,ピンクのマークをしています。1940年では,上位10は軒並み「**子」です。

 2位に「和子」があがっていますが,戦争中のデータをみると,ほとんどの年で首位は「和子」となっています。庶民の心の内では,平和への希求があったのでしょうか。

 しかし高度経済成長を経た76年になると,「**子」は上位10の中で半分以下に減ります。2016年現在では,5位の「莉子」だけです。

 これはラフな3時点のピンポイント推移ですが,変化を仔細に跡付けてみましょうか。1920~2016年の各年について,女子の上位10の名前のうち「**子」にマークをつけた図を作ってみました。ヒマ人っすね…。


 1950年代までは,ピンクのマークで染まっています(1920年の9位は「キヨ」)。しかし60年代からぼちぼち「真由美」などの名前がランクインし,60年代後半から「**美」といった名前の比重が増してきます。

 80年代後半以降は,「**子」はほとんどなくなります。最近において点在しているマークは,「莉子」です。

 1年刻みで丁寧に変化を辿ると,変化の過渡期は60年代後半から80年代前半であったことが知られます。私は,こうした過渡期のど真ん中の時期(76年)に生まれたのだなあ。

 もちろん今でも,「**子」という名をつける親はいます。2年前に電車で小学生の遠足集団と乗り合わせたとき,「和子」や「智子」といった(古風な)ネームをちらほら見かけました。

 そうそう。「**子」という名の女子は頭がいい,という調査結果があるそうですが,まあこれは,良家(高学歴)の親に古風な考えの人が多いからかな…。

 興味本位でしょーもない作業をしましたが,名前という切り口でも,社会の変化を見て取れるのは面白いですね。ちなみに男子は,今は多くが漢字2字ですが,1950年代までは,上位10は軒並み漢字1字です(「清」「茂」「博」など)。

 1文字の名前の出現度など,観点を変えれば,また違った変化の様を取り出せるでしょう。学生さんなら,どういう作品を作るかな。半ば「お遊び」ですが,調査統計法の作業課題としていいんじゃないかと思います。