子どもの教育費負担など,いろいろな重荷がのしかかるアラフォー年代ですが,一昔前に比して収入が大きく減っていることは,このブログでも繰り返し明らかにしてきました。
その一方で,昨今の人手不足もあり,労働時間は増えていると聞きます。バリバリの働き盛りですので,頼られることも多いでしょう。労働時間が増えているにもかかわらず,収入は減っている。だとしたら,やるせないです。
労働条件というのは,一般に労働時間と収入の2要素で評価されますが,この2つから時間給が割り出されます。1時間あたりの稼ぎがナンボかです。労働時間を考慮した稼ぎというのは,まだ出してませんでしたので,今回はそれをやってみましょう。
資料は,厚労省の『賃金構造基本統計』です。この資料から,年齢階層別の労働時間と収入を知ることができます。40代前半の男性労働者(短時間労働者を除く一般労働者)について,以下の4つの数値を採取します。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
a)月の所定内労働時間
b)月の超過労働時間
c)決まって支給される月収額
d)年間賞与その他特別給与額
cは残業代も含みます。cの12倍にdを足すことで,年収額が出てきます。月の労働時間(a+b)を12倍すれば,年間の労働時間になります。目的の時間給は,前者を後者で割ればいいわけです。
では,実際の数値を引いて計算しましょう。最新の2017年と,前世紀末の1999年のデータを比較してみます。願わくはもっと前に遡りたいのですが,上記の資料はネットでは99年からしか見れません。
この20年あまりで,アラフォー男性の月の労働時間は179時間から184時間に増えています。増分は,残業(b)によるものです。昨今の人手不足の影響も感じられますね。その一方で,はじき出された年収を見ると648万円から598万円と,50万円も減じています。前より多く働いているのに稼ぎは減っている。上で述べたことが,データで露わになってしまいました。
この結果,1時間あたりの収入(時間給)も,3018円から2709円にダウンしています。働く時間と得られるお金の2要素による,労働条件悪化の可視化です。
これは全国の数値ですが,47都道府県別のデータも出すことができます。労働時間,年収,この2つの割り算から出てくる時間給の一覧表を掲げます。計算に使った素材は上記と同じです。
どうでしょう。多くの県でアラフォー男性の労働時間は増え,収入は減っています。年収が550万円を超える数値には青色のマークをしましたが,その数が減っています。私が住んでいる神奈川は年収の減少幅が最も大きく,106万円の減です。
その結果,労働時間あたりの稼ぎも多くの県でダウンしています。黄色マークは2500円以上の県ですが,1999年では34県だったのが,2017年では17県と半減しています。埼玉,神奈川,山梨はアラフォー男子の時間給が500円以上低下。労働時間の増加,収入の減少が他県に比して大きいためです。
ツイッターで発信しましたが,右端の時間給の地図をここに再掲しておきましょう。上表の黄色マークの県に色を付けたマップです。アラフォーの列島貧困化をご覧ください。
https://twitter.com/tmaita77/status/1009257245496918016
このように働き盛りの労働者が疲弊する一方で,企業の内部留保は過去最高を更新していると聞きます。富の再配分の必要を強く感じずにはいられません。
この年代は家庭を持ち,財やサービスをバリバリ消費してくれる顧客の存在でもあります。この人たちを痛めつけることは消費の冷え込みをもたらし,結局は自分たちに返ってくるでしょう。また子育ての最中でもあり,子どもへの教育投資がままならなくなり,未来を支える良質な労働力が育たず,社会全体にとってもマイナスになるのは疑い得ません。
さらに今のアラフォーは,学校卒業時に就職氷河期だった「ロスジェネ」という悪条件も背負っています。キャリアを順調に積めず,非正規・低所得の状態に留め置かれている人が数多し。外国人労働力の受け入れ拡大が決まりましたが,この世代のパワーにも注目してほしいものです。団塊ジュニアのちょっと下の世代で,他世代に比して量的規模も大きくなっています。
この世代の子ども(ロスジェネ・ジュニア)も,そろそろ高校進学,大学進学のステージに達してきます。親世代の疲弊(格差)が大きいことから,家庭環境とリンクした教育機会の格差も拡大する懸念が持たれます。今回可視化した現実は,後続世代にも影を落とすものです。