https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181116-00010000-kantele-l27
若者の問題と捉えられがちですが,事態が治癒することなく年を重ね,気が付いたら40歳を超えてしまっていた,ということでしょう。どうやって暮らしているのかといったら,衣食住を一切,親に依存していると。
親にすれば,「私がいなくなったら,この子はどうなるのか」という懸念が頭から離れません。自分で稼ぐ術を知らないし,家を譲り渡すにしても,莫大な相続税を払わないといけません。今つかっている心地よいぬるま湯は,直ちに水風呂(氷風呂)になってしまいます。
最近,「8050問題」がいわれています。80代の親と同居する50代の未婚の子ども。中高年になっても,生活の基礎条件を老親に頼り続ける人の問題だそうです。
さて,ひきこもり状態の人の数を統計で把握するのは難しいですが,何をやっているのか分からない人の数を拾い出すことはできます。学校にも行かず,仕事(職探し)もせず,職業訓練も受けていない。いわゆる,ニート(NEET)の人たちです。
『国勢調査』の労働力統計では,人口は労働力人口と非労働力人口に分かれます。前者は就業意欲のある人で,①就業者と職探しをしている②完全失業者に分かれます。後者は就業意欲のない人で,③通学者,④家事従事者,⑤その他,という3カテゴリーからなります。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200521&result_page=1
注目したいのは,最後の⑤です。就業意欲のない非労働力人口のうち,学生でも主婦(夫)でもない人です。留学準備に勤しんでいる人や病気療養中の人も含まれますけど,統計上は,このカテゴリーに該当する人の数が,ニートの近似数とみなされます。
配偶関係とのクロスもして,未婚のニートを取り出すのがよいでしょう。結婚も仕事も職探しもせず,自宅に籠っている人の姿がイメージされます。
私の年齢層(40代前半)でいうと,未婚ニートは2005年では7万5078人でしたが,2015年では13万772人に増えています。10年間で1.7倍の増加です。人数的に多い団塊ジュニアがこのステージに達した影響もあるでしょうが,人口当たりの率も増えています。
以下の表は,未婚ニートの実数と人口当たりの率を年齢層別に整理したものです。率を計算するのに使った分母人口は,労働力状態と配偶関係の双方が判明する人口に限っていることを申し添えます。最近では官庁統計といえど,不詳(回答拒否)が多くなっているためです。
生産年齢層の統計ですが,どの層でも,この10年間にかけて未婚ニートが増えています。先述のように,私の年齢層では1.7倍の増加です。
人口変化を考慮した出現率でみても,上昇していますね。40~44歳では,0.96%から1.47%に増えています。この年代の上昇幅が最も大きいのですが,新卒時に不遇にさらされたロスジェネの影響もあるかと思います。
2015年の20~50代の未婚ニートは86万700人ですが,そのうちの47万6021人(55.3%)は40歳以上です。なるほど,冒頭の記事でいわれている「ひきこもりの半数が40歳以上」という説と合致しますね。
これは全国のデータですが,地域差もあります。上記と同じデータを47都道府県別に作ることもできます。この10年間の未婚ニートの増加率が最も高い,40~44歳(アラフォー)に焦点を当てましょう。人口当たりの未婚ニート率を県別に出し,高い順に並べたランキングにしてみました。
全国的に,アラフォーの未婚ニート率が上がっています。2005年では1.0%を超える県は25県でしたが,2015年では全県がこのラインを超え,24県が1.5%超です。
傾向としては,西日本の諸県で高くなっています。不遜な言い方ですが,沖縄は安定の高さですね。2005年が1.98%,2015年では2.08%です。最近の本県の40代前半では,アラフォーの48人に1人が未婚ニートであると。「なんくるないさ~(何とかなるさ)」という,楽観気質ってやつでしょうか。
全国的に暗雲がたちこめており,「家族も仕事も持たぬ,中年未婚ニートの老後の悲惨」を嘆くのは簡単ですが,ツボはそこだけではないと思います。10月18日の記事で,中年層のチャンスの開放度を都道府県別に計算しましたが,トップは沖縄でした。事業を興すチャンス,フリーで稼ぐチャンス,学び直しのチャンス…。全国で最も開けているのは,沖縄県です。
2015年の本県では,40代前半の未婚ニート率は2.08%(全国値は1.47%)ですが,48人に1人(68人に1人)が「ぶっとんだ生き方」をしてもいいのではないか。社会を変えるカリスマは,いつの時代でも「ぶっとんだ」生き方をしている人から出てきます。
AIの台頭により,仕事は「遊び」的な要素が強まる,ないしは労働そのものから人間は解放されるようになります。そんな時代にあって,100人中100人が会社勤めをする社会のほうが異常です。
むろん,「ぶっとんだ」人たちを社会に参画させる実践も求められます。外国人労働者の受け入れ拡充が決まりましたが,不遇の状態にあるロスジェネの活用(正社員化)は意図されているのかどうか…。
就業を促すにしても,従来流のやり方は危険です。わが国では,若年の生活保護受給者に就労指導が入る際,いきなり8時間のフルタイム(正規)就業を求められますが,これなどは,週幾日かの短時間就業は,各種の社会保障を受けるに値しないと考えられていることの証左です。このことが,日本には「過労死するほど仕事があり,自殺するほど仕事がない」という奇異な状況をもたらしています。
このような極端な考え方を幾分なりとも是正することで,ニートの量はかなり減じるのではないでしょうか。それは,仕事に打ち込む「職業人」としての顔と同時に,社会的な関心をも持つ「社会人」としての顔も併せ持った人間が増える過程でもあります。