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2019年7月4日木曜日

同性愛への寛容度の年齢差

 同性愛指向の外国人を,日本政府が難民認定したそうです。母国に返すと,迫害される恐れがあるためとのこと。
https://digital.asahi.com/articles/ASM723SMMM72UTIL00Y.html

 意識や考え方というのは,社会によって大きく違います。社会学という学問が成り立つ所以ですが,とりわけ同性愛(homosexuality)に対する考え方には,大きな国際差があります。上記の外国人は,同性愛への見方が厳しい国から逃れてきた人です。

 各国の研究者が共同で実施する『世界価値観調査』では,同性愛をどれほど認められるかを,10段階で自己評定してもらっています。2010~14年に実施された第6回調査のデータによると,日本人の10段階評定の平均は5.14となっています。

 はて,この値は高いのか低いのか。調査対象国の中では,どの辺に位置づくのか。58か国の平均点を出し,高い順に並べると以下のようになります。


 8.18から1.13までの開きがあります。「同性愛,普通じゃん」という国もあれば,「絶対に許さない」という国もある。首位はスウェーデンで,2位はオランダ,3位はスペインとなっています。

 いずれも,同性婚が合法化されている国ですね。赤字は,同性婚が合法の国です。アメリカでも,2015年に同性婚を認める判決が出され,今では合法となっています。

 対して右下の国は,同性愛への見方が厳しい社会です。平均点が2.0にいかないのは,21か国あります。多くが中東やアフリカの諸国で,文化的・宗教的要因のためでしょう。同性愛には重い刑罰が科され,極刑に処される国もあるといいます。

 日本はというと,58か国中12位で,思ったより高い位置にあります。同性婚が合法の5か国より高いじゃないですか。ブラジルを凌駕するというのは驚きです。

 意識は進んでいるのに,何で同性婚が合法化されていないのか。うーん,政策を決める高齢者の頭が固いのですかねえ。実のところ日本は,意識の年齢差が大きな国です。上記の表は成人全体の寛容度の平均点ですが,年齢層別に出してみると,日本の20代は7.25,60歳以上は3.44となっています。倍以上の差です。

 年齢による意識の違いがこんなにも大きい国は珍しい。それを見て取れるグラフをお見せしましょう。57か国について,10歳刻みの年齢層ごとに寛容度の平均点を計算し,縦軸上の布置図にしたものです。


 57か国の分布幅の中で,日本がどの位置にあるかが分かります。年齢が上がるにつれ,きれいに右下がりに落ちていきます。順位でいうと,20代から5位,6位,11位,11位,16位,という具合です。

 対してアメリカは,年齢差はさほど大きくなくフラットです。というか,こういう国のほうがスタンダードです。

 最初の表でみた日本の高い位置は,若年層の押し上げによるようですね。20代の若者の意識は欧米と遜色ありません。いや,欧米よりも高いくらいです。しかし高齢層になると,一気にガク落ちすると。

 日本は短期間で激しい社会変動を経てきたので,同性愛に限らず,諸々の意識や価値観の世代差が大きくなっています。それはそれでいいのですが,厄介なのは,為政者に世代的な偏りがあることです。政治家の大半が高齢者なのは,誰だって知っています。上記のグラフをみると,その損失が大きいことが分かり残念です。

 議場に若者が増えれば,社会は大きく変わるような気がします。もうすぐ参院選ですが,意中の候補者がいない場合は,何も考えずに若い人に入れるのもいいでしょう。私はいつも,そうしています。棄権するよりは,為政者の歪んだ構成を正すのに票を使ったほうがいいからです。

 日本の選挙は長年の地盤がモノをいい,新参者は不利になる傾向があります。投票率の低下が進んでいますが,棄権票の一定割合を女性や若手の候補者に上乗せするというのはどうでしょう。為政者の構成を正す必要があることには,コンセンサスができています。そのために民意を使うのは,的外れなことではありますまい。この点については,日本女性学習財団の機関紙『ウィラーン』の7月号でも申しました。
http://www.jawe2011.jp/welearn-publish/2808
 
 最初の表をみると,同性婚が合法化されている国(赤色)の多くが,世界で重要な役割を果たしている国です。日本も同性婚を合法化しないと,これらの国から人材を迎えることができず,経済的にもマイナスの結果になるという警告もあります。

 今回のデータから,その素地は十分にできていることがうかがわれます。これを政策や法律の形に具現化するのは,政治の役割です。若い有権者のみなさん,自分たちの意向を代弁してくれる同世代の人を議場に送りましょう。送られてきた選挙票をゴミ箱に捨てたりしないように。