冷夏が終わり,うだるような暑さになっています。避暑地に逃れたいところですが,勤め人はそう簡単にはいきません。
しかし交通網の発達により,地方と都市はより短時間で結ばれるようになっています。7月25日の毎日新聞に「人気の新幹線通勤 1時間ほどで軽井沢や佐久平から首都圏」という記事が出ています。
https://mainichi.jp/articles/20190725/k00/00m/040/297000c
よく耳にするようになった新幹線通勤ってやつですね。費用は会社が補助してくれるので,経済的負担は重くありません,往復2時間,自分の時間が持てるのもいい。100%座れますので,読書もよし仕事もよし。首都圏の通勤(痛勤)電車の場合,こうはいきません。上記の記事に出てくる男性サラリーマンは,「新幹線通勤はメリットしかない」と言い切っています。
新幹線通勤をしている人はどれほどいるか。こんな統計はありませんが,『国勢調査』のデータから見当をつけることはできます。就業者の常住地と従業地のクロスをするのです。2015年のデータによると,常住地が長野県軽井沢町で,従業地が東京都という就業者は304人となっています。
新幹線かどうかは分かりませんが,軽井沢から都内に通勤している人は304人であると。5年前の2010年データでは288人で,ちょっと増えています。北陸新幹線開業の効果でしょうか。
これは長野県軽井沢町のケースですが,他の地域からはどうでしょう。市町村レベルだとデータが膨大になりますので,大雑把ですが都道府県単位でみてみます。46の道府県に住む就業者で,東京都内に通勤している人の数を出してみました。
ほう,東京から遠く離れた地方県からの通勤者もいるのですね。私の郷里の鹿児島からも374人おり,5年前に比して増えています。飛行機で1時間半ほど,空港から鹿児島市内まで1時間ほどですので,不可能ではないです。週に2日くらいなら,余裕でしょう。
新幹線効果ゆえか,北陸3県の増加率は高いですね。当然,飛行機もアリ。ZOZOの田端信太郎氏のご実家は小松空港の近くで,「7時半くらいまでご飯食べても,飛行機に乗れば,10時の都心の会議に間に合う」と言われていました。
https://twitter.com/tmaita77/status/1155107878946009088
上記の表の人たちは,どういう人たちか。おそらくは,週に2日ほど都内のオフィスに出勤するだけで事足る,会社役員や高度専門職ではないかと思われます。福島,栃木,群馬,新潟,北陸・中部の諸県では,新幹線通勤をしているリーマンが多そうです。
ちなみに職業とのクロスをとることもできます。2015年だと,石川県からの都内通勤者は603人(上表)。この603人の職業分布をみると,以下のようになります。
3割が管理職ないしは専門職ですが,事務職や販売職が半分近くです。会社勤めをする普通のサラリーマンかと思いますが,先ほどの毎日新聞に出てくる人のように,毎日新幹線通勤している人も含まれるでしょう。
あるいは,基本はテレワークで,週に何日か東京のオフィスに出社するだけの人もいそうです。実家で親の介護をしながら,同じような働き方をしている人もね。
新幹線通勤から話を始めましたが,地方から東京都内への通勤者は増えています。全国的にです。高速交通網の発達はもちろん,テレワーク,老親の介護といった人間模様も投影されているようで興味深い。
情報技術が進化した今,オフィスに出勤するのは週に2~3日でもよくなりそうです。となると,サラリーマンの居住地の地方分散が進みそうです。介護離職の歯止めにもいい。
多くの自治体が人口を呼び寄せようと躍起になってますが,遠距離通勤の補助なんてのも,重要なポイントになりそうです。静岡県のどっかの自治体が,都内への新幹線通勤の費用補助を目玉に,移住者を募っていたような気がします。
2020年の『国勢調査』では,どういう数値になっているか。増えているのは間違いないでしょう。