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2019年9月27日金曜日

都内23区の出生率の変化

 ちょっと涼しくなってきました。おかげで,金曜の夕方にソレイユの丘の温浴施設,週末のお昼に長井水産という「お楽しみ」が復活できそうです。

 少子化が加速度的に進んでいますが,首都の東京,それも都心部ではそんなもの「どこ吹く風」。子どもが増え続け,地元の学校は悲鳴を上げています。タワマン効果もあってか,子育てファミリーがどっと流れ込んでいるからです。

 これは社会増ですが,自然増もあるみたいです。出生率(人口千人あたりの出生数)をみると,湾岸の中央区では,2002年では8.5であったのが,2017年では13.1に増えています。15年間で4.6ポイントの増加です(東京都の統計資料)。

 隣接する千代田区と港区も,同じ期間にかけて出生率の伸び幅が大きくなっています。都内23区では出生率が上がってる区が多いですが,減っている区もあり。一覧表にしてみると気になる傾向が出てきますので,ご覧に入れましょう。


 2002年と2017年の比較ですが,まず目につくのは,上位の顔ぶれの変化です。赤字は上位3位ですが,2002年では城東エリアの区が高かったのが,2017年では都心の3区に様変わりしています。中央区,港区,千代田区です。

 先に記したように,これらの区では出生率の伸びが大きいからです。対して城東エリアの区は出生率が下降し,23区の中での順位も陥落しています。足立区は,2002年の2位から17年の22位へと大下落です。

 一昔前は地価が安いエリアで出生率が高かったのですが,最近はその逆になりつつあります。地域単位のデータですが,出生率と経済力がリンクする傾向すら出てきています。

 上表の3つの数値をグラフにしてみましょう。(1)2017年の出生率,(2)過去15年間の出生率の伸び幅,(3)住民の経済力です。(1)を横軸,(2)を縦軸にとった座標上に23区を配置し,各区のドットの大きさで(3)を表現します。


 右上には,都心の3区があります。最近の出生率が高く,過去からの伸び幅も大きい区です。対極の左下には城東の3区が位置しています。出生率が下がり,23区内の順位が下位に落ちている区です。

 23区はおおよそ右上がりの線上に位置するみたいですが,その位置を規定する要因として,住民の経済力があるみたいです。ドットの大きさからそれが知られます。最初の表から,2017年の出生率と,2016年の住民1人あたりの税負担額の相関係数を出すと+0.7208にもなります。

 飛躍を承知で言うと,結婚・出産は富裕層の特権となりつつあるのでしょうか。藤田孝典さんの名著『貧困世代』(講談社現代新書)の帯に,「結婚・出産なんてぜいたくだ!」と書いてあったのを思い出します。

 ここで取り上げた出生率は,人口ベースの粗出生率であって,都心のエリアには子育てファミリーがたくさんいるからだ,という疑問があるかもしれません。では,出産年齢の有配偶女性をベースにした出生率を出してみましょうか。

 基幹統計の『国勢調査』から,25~44歳の有配偶女性の数を取り出し,各区の年間出生数をこれで割ってみます。『国勢調査』の実施年に合わせ,2000年と2015年の区別の出生率を計算してみました。以下に掲げるのは,出生率の順位が高い区に色をつけたマップです。


 結婚している出産年齢の女性をベースにした出生率ですが,このように精緻化した出生率でみても,地域差の構造が様変わりしています。今世紀の初頭では城東の区で高かったのが,最近では都心エリアで高くなっていると。

 同じように結婚している出産年齢の女性であっても,子を産もうという意向が地域によって違うようです。そういう差はいつの時代でもあるのですが,最近の特徴は,地域住民の経済力とリンクする傾向が強くなっていること。ある方がツイッターで言われてましたが,不妊治療にも費用が掛かる…。

 都内23区という局地の地域データの傾向なんですが,出産と経済力の関連の強まりを演繹するのは乱暴でしょうか。日本は教育費が高く,夫婦が出産をためらう最大の理由は「教育費がかかるから」というのは,各種の調査で明らかにされていること。

 そういえば前に,ニューズウィーク記事にて,日本は,男性の経済力と子持ち率の関連が最も強い社会であるのを示したのでした。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/01/post-9286.php

 来年実施される2020年の『国勢調査』のデータではどうなっているか。濃い色が,ますます一部のエリアに凝縮されてないことを祈ります。

 子育て費用の軽減として,来月から認可保育所の無償化が始まりますが,予想される効果はいかほどか。保育士の超薄給はそのままで,保育士不足は手付かずですので,入れる枠は変わりません。無償にしても入れなければどうしようもない。入れた人と落ちた人の落差も大きくなります。

 重点をおくべきは費用軽減よりも,受け入れの枠を増すこと。保育士の待遇改善はその中核に位置します。費用負担の経年をしつつ,夫婦二馬力で稼げる環境を醸成すること。今,データを出してみたのですが,ママのフルタイム就業率と出生率って,プラスの相関なんですよね。「働く女性が増えると出生率が下がる」なんて,どの口が言った?
https://twitter.com/tmaita77/status/1177462811825324032

 増税で得られた財源の使いみちを,誤らないようにしたいものです。