今年も,あとわずかになりました。大晦日だというのに昼は20度まで上がりましたが,夜は冷え込んできています(横須賀市)。生協で取り寄せた年越しそばをすすり,体を温めたところです。
書くことはあまりないですが,今年の総括です。2017年春にここに越してきてから,文筆を生業にしております。
毎年,教員採用試験の対策本を8冊書かせていただいています。今年は,メインの『教職教養らくらくマスター』の冒頭に,全自治体の出題頻度表を載せました。本書に載せている112テーマの内容が,過去5年間で何回出ているかです。教職教養の内容は広範ですが,ド真面目に全部をくまなく学習する必要はなし。自分が受ける自治体のデータをみて,効率のよい学習をできるようにしています。
『特別支援学校らくらくマスター』も,近年の典型過去問の分析をもとに,大幅リライトしました。受験生が頭を抱えるであろう,障害の医学的な事項について,公的資料をもとに分かりやすくまとめたつもりです。数少ない特別支援学校の参考書の中で,本書が一番売れていると聞きます。試験を受ける学生さんんみならず,現職教員の方,特別支援教育全般の理解を深めたい方に,お手に取っていただければと存じます。
連載は,3つを継続しております。①日本教育新聞,②ニューズウィーク日本版,③日本女性学習財団機関誌『ウィラーン』,です。
日本教育新聞は2014年春から続けており,同紙の長寿連載ということですっかり定着しているとのことです。最初は後ろの方だったのですが,今は2面に載せていただき,読者の目に触れやすくなっています。「480字+図表1つ」のミニコラムです。「毎週,よくネタが続きますね」と言われますが,ブログやツイログをちょっと漁れば,ネタなんていくらでも出てきます。今年もコンスタントに継続しました。
ニューズウィーク日本版も,2015年夏からのロングランとなっています。「1200字+図表2つ」の中コラム。以前は2週間に1回でしたが,今は毎週水曜日に記事を配信していただいております。知名度の高いウェブメディアで,多くの方の目に触れ,「NWの記事をみて…」と取材を申し込んでくる記者さんも多し。ありがたいことです。
月刊誌『ウィラーン』の連載は,昨年4月から続けております。当初は2018年度の1年間の約束でしたが,思いのほか好評?とのことで,今年度も継続させていただいております。「1500字+図表3つ」の中コラムで,ジェンダー統計を提示し,コメント・考察を添える形です。いかんせんジェンダーは専門外なんで,データの解釈に抜けが出ることが多いのですが,編集部の方々に助けていただいております。担当編集者氏は学者肌の人で,データの出典等も厳格にチェックしてくださいます。
これらに加え,今年10月からもう一つ連載を始めました。依頼ではなく,自主的に始めたものです。note「データえっせいα」です。ブログや上記3メディアの文章は短めのものですが,noteには原則「6000字+6図表」の長文を載せることとしました。今までの記事や図表を特定の主題の下に束ね,深みのある内容に仕立てています。300円の有料にさせていただいてますが,それに見合う,読み応えのあるコンテンツであると自負しております。月に1回記事を配信していきますので,本ブログ「データえっせい」ともども,よろしくお願いいたします。
毎年ながら,今年もトラブルに遭遇しました。2月に,タナカキミアキというユーチューバーの動画で図表3つを盗用され,派手なバトルを繰り広げました。経緯は本ブログにも書きましたが,中立的な第三者によるまとめがありますので,こちらをどうぞ。11月には,名寄市立大学の紀要論文で,ブログで出した県別大学進学率のデータが盗用されていることが発覚しました。研究者による不正の被害に遭ったのは2回目です。
後はそうですねえ,5月半ばの朝日新聞にて,ロスジェネについて取材を受けた記事が公開されたのも特記事項です。顔出しで自身の恥を晒したようなもんですが,当事者として言いたいことを言わせていただきました。
https://digital.asahi.com/articles/ASM4T747JM4TULZU017.html
********************
キメラゴンさんという,やり手の中学生が注目を集めています。noteの月収が300万円超。スゴイですね。ブログ,ユーチューブ,ウェブライター等の仕事も精力的にこなし,中学生にして月収7ケタだそうです。学校は週1くらいしか行ってないそうで,親御さんや教師の理解もあり,やりたいことに没頭しているとのこと。
「舞田さんは,YouTubeしないんですか」と言われることがあります。顔出しでトークは気が引けますが,PCの画面上で公的統計から図表を作る過程を動画にして配信するのはどうかな,と思ってはいます。
ではでは,皆様よいお年をお迎えくださいませ。来年も,よろしくお願い申し上げます。
2019年 大晦日
舞田 敏彦
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2019年12月30日月曜日
2019年12月の教員不祥事報道
師走も今日で30日です。明日は今年の総括をしますので,教員不祥事報道の整理を今日します。
今月,私が把握した教員不祥事報道は56件です。年末であるためか,多めです。注目は,給食の残飯31万円分を持ち帰っていた,大阪の定時制高校教諭の事案です。2014年から5年間にかけて,トータルでパン1000個ほど持ち帰ったのこと。自分の食費に充てたとか,転売したとかではなく,「廃棄が勿体なかった」という動機なり。
食品ロスが問題化している中,いいことではないかという声もありますが,法に照らすと窃盗罪に当たる可能性が高いようです。最近は衛生上の理由から,給食で残したパンを児童生徒が持ち帰るのも禁じられているようですね。
給食の残飯を有効利用したいなら,飼料や肥料に使うのが無難でしょう。大阪府も,今回の件を受け,こういう方針を示しています。
毎月,教員不祥事報道を収集していますが,最近は数が増えていて,若手の事案も多くなっているかなという印象です。人口の減少と,教員採用試験の難易度の低下により,教員のリクルート源も変わってきているのでしょうか。以前は,同世代の学力分布の「中の上」当たりだったのが,「中~中の下」あたりにスライドしてきていると。
https://twitter.com/tmaita77/status/1210553900027133952
「学力不足の教員」なんていう記事が大々的に報じられるのは,いつになるでしょう。オリンピックが終わったら再び不況になる予測もありますので,教員採用試験の難易度がまた上がるかもしれませんが。
2019年,令和の元年も明日でおしまいです。明日は,今年の総括記事とします。
<2019年12月の教員不祥事報道>
・奈良高校50代教諭、女子生徒の体触りながら部活動指導
(12/1,朝日,奈良,高,男,50代)
・受験生の親に推薦頼まれ、接待受けた疑い 高校教諭逮捕
(12/2,朝日,福岡,高,男,40)
・中学校長、修学旅行で女性教諭と昼に飲酒…「夕方までに抜ける」
(12/3,読売,福岡,中,男,58)
・小学校で教師が男児つかみ引き倒す…サッカー授業中に終了後もプレー続け女児の顔にボール当て立腹(12/3,石川テレビ,石川,小,男,30代)
・大津の小学校教諭、授業中に暴言(12/3,ロイター,滋賀,小,男,30代)
・自宅で女子生徒にキスなどわいせつ行為 仙台市立の高校教師(47)懲戒免職
(12/4,仙台放送,宮城,高,男,47)
・児童買春容疑で都立高教諭逮捕 座間署(12/5,毎日,東京,高,男,39)
・久留米市立中学校で男性教師が体罰、生徒を平手打ち
(12/6,九州朝日放送,福岡,中,男)
・弁明した生徒に「殺すぞ」 40代の男性教諭 グラウンドで複数回喫煙も
(12/6,神戸新聞,兵庫,中,男,40代)
・セクハラで中学教頭を免職(12/6,産経,福島,中,男,48)
・女子トイレに侵入の疑い 教諭を逮捕 埼玉 熊谷
(12/6,NHK,埼玉,小,男,24)
・教諭が大声、不登校に 支援学級の中2生徒
(12/7,毎日,大分,中,男,40代)
・元中学校講師が青少年健全育成条例違反
(12/9,日テレ,福島,中,男,29)
・「嫌がってるやん」自身の指導をとがめた男児に立腹、けが負わす
(12/10,神戸新聞,兵庫,小,男,50代)
・高校教諭が元教え子にわいせつか(12/10,NHK,神奈川,高,男,30)
・80歳男性をひき逃げ 中学校教師の男を逮捕
(12/11,カンテレ,兵庫,中,男,45)
・別室指導16時間は「ハラスメント」 高1飛び降り
(12/11,産経,兵庫,高,男)
・県教委 ゴミ不法投棄などで処分(12/11,NHK,熊本,小,男,59)
・教え子にわいせつ行為 小学校講師の男を逮捕
(12/12,産経,大阪,小,男,26)
・無免許運転 教頭を懲戒免職(12/13,NHK,宮崎,小,男,53)
・いじめ訴えた文書 教室に掲示(12/15,朝日,栃木,小,男,40代)
・中学教諭、教室で「みんな顔を伏せろ」 生徒の腹を殴る
(12/16,朝日,兵庫,中,男,30代)
・酒気帯び運転で教諭懲戒免職に(12/16,NHK,岩手,小,男,54)
・男子生徒に淫行の教員懲戒免職(12/17,NHK,埼玉,高,男,42)
・海外引率先で女子生徒盗撮 市立中教諭を懲戒免職
(12/17,時事ドットコム,栃木,中,男,27)
・生徒の首絞めた34歳の教諭を懲戒処分
(12/18,CBCテレビ,愛知,中,男,34)
・高齢男性はねられ死亡 教諭逮捕(12/18,NHK,北海道,小,男,52)
・“無理やりキス” 教員懲戒免職(12/18,NHK,北海道,高,男,50代)
・コンビニで下半身露出、男性教諭を懲戒免職
(12/18,TBS,栃木,中,男,27)
・友人女性宅に盗撮カメラ 横浜市立小教諭を懲戒免職
(12/19,テレビ神奈川,小,男,31)
・女子生徒に「抱きしめていいですか」…教諭に停職2か月
(12/20,北海道,高,男,53)
・男性教諭懲戒免職 みだらな行為(12/20,NHK,神奈川,小,男,20代)
・覚醒剤所持で逮捕の教師 "懲戒免職” 福岡県教委 「4年前から使用」
(12/20,テレビ西日本,福岡,中,男,55)
・酒気帯び運転疑い教諭を停職処分(12/20,NHK,和歌山,中,男,40)
・小学校長、女性教諭に無理やりキス 勉強会に呼び出して
(12/23,朝日,神奈川,小,男,57)
・野球部員に暴力で教諭に謹慎処分(12/23,NHK,静岡,高,男,26)
・同じ中学の50代と20代教諭 盗撮とわいせつ行為で懲戒免職 大分
(12/24,NHK,大分,盗撮:50代 わいせつ:20代)
・女子生徒に「セクハラ」「現金渡す」「個人情報漏えい」
(12/24,関西テレビ,兵庫,特,男,50代)
・中学教頭、非常勤講師から9万円「借金」 発覚後半年、全額返さず
(12/24,毎日,大阪,中,男,40代)
・女子児童につきまとい 教諭免職(12/24,NHK,群馬,小,男,47)
・千原台陸上部監督体罰で懲戒処分(12/24,NHK,熊本,高,男,37)
・男子生徒に向け部員にボールを投げさせる けが負わせたとして顧問を処分
(12/25,共同通信,茨城,高,男41,35)
・小学校教諭がわいせつ行為で免職(12/25,NHK,大阪,小,男,37)
・給食の残りのパン、牛乳31万円分を持ち帰る
(12/25,産経,大阪,高,男,60代)
・「むしゃくしゃしてやった」タクシー運転手を殴る 高校講師の女(51)
(12/25,仙台放送,宮城,高,女,51)
・無免許に暴言や体罰…岐阜県内の公立中高の教諭と講師の4人に懲戒処分(12/25,CBCテレビ,岐阜,無免許:中男29 暴言:高男48 体罰:高男60×2)
・生徒51人の個人情報入りUSB紛失 茨城の特別支援学校
(12/26,産経,茨城,特,女,40代)
・女児の髪つかみ、けが負わす 小学校校長を停職3カ月
(12/26,毎日,沖縄,小,男,60)
・5年間無免許運転の中学校の男性講師らを減給処分
(12/26,CBCテレビ,岐阜,中,29)
・たばこで中抜け、9年で3442回 高校教諭を減給処分
(12/27,朝日,大阪,高,男,60)
・女子生徒にわいせつ 県立高20代教諭懲戒免職
(12/27,北日本新聞,富山,高,男,20代)
・24歳小学女性教諭が同僚から9万円窃盗容疑
(12/27,毎日,栃木,小,女,24)
・児童に暴言など 小学校教諭2人を懲戒処分
(12/27,日テレ,福岡,小,暴言:男47,体罰:女57)
・廃棄予定書籍、ネットで販売 小学校教頭を停職
(12/27,毎日,神奈川,小,男,54)
・通勤で無免許運転、免許写し偽造…元小学校教頭を在宅起訴
(12/28,千葉日報,千葉,小,男,53)
・女性教諭「頭に血が上った」…椅子の座り方指導中、男児の太ももたたく
(12/29,読売,福岡,小,女,57)
今月,私が把握した教員不祥事報道は56件です。年末であるためか,多めです。注目は,給食の残飯31万円分を持ち帰っていた,大阪の定時制高校教諭の事案です。2014年から5年間にかけて,トータルでパン1000個ほど持ち帰ったのこと。自分の食費に充てたとか,転売したとかではなく,「廃棄が勿体なかった」という動機なり。
食品ロスが問題化している中,いいことではないかという声もありますが,法に照らすと窃盗罪に当たる可能性が高いようです。最近は衛生上の理由から,給食で残したパンを児童生徒が持ち帰るのも禁じられているようですね。
給食の残飯を有効利用したいなら,飼料や肥料に使うのが無難でしょう。大阪府も,今回の件を受け,こういう方針を示しています。
毎月,教員不祥事報道を収集していますが,最近は数が増えていて,若手の事案も多くなっているかなという印象です。人口の減少と,教員採用試験の難易度の低下により,教員のリクルート源も変わってきているのでしょうか。以前は,同世代の学力分布の「中の上」当たりだったのが,「中~中の下」あたりにスライドしてきていると。
https://twitter.com/tmaita77/status/1210553900027133952
「学力不足の教員」なんていう記事が大々的に報じられるのは,いつになるでしょう。オリンピックが終わったら再び不況になる予測もありますので,教員採用試験の難易度がまた上がるかもしれませんが。
2019年,令和の元年も明日でおしまいです。明日は,今年の総括記事とします。
<2019年12月の教員不祥事報道>
・奈良高校50代教諭、女子生徒の体触りながら部活動指導
(12/1,朝日,奈良,高,男,50代)
・受験生の親に推薦頼まれ、接待受けた疑い 高校教諭逮捕
(12/2,朝日,福岡,高,男,40)
・中学校長、修学旅行で女性教諭と昼に飲酒…「夕方までに抜ける」
(12/3,読売,福岡,中,男,58)
・小学校で教師が男児つかみ引き倒す…サッカー授業中に終了後もプレー続け女児の顔にボール当て立腹(12/3,石川テレビ,石川,小,男,30代)
・大津の小学校教諭、授業中に暴言(12/3,ロイター,滋賀,小,男,30代)
・自宅で女子生徒にキスなどわいせつ行為 仙台市立の高校教師(47)懲戒免職
(12/4,仙台放送,宮城,高,男,47)
・児童買春容疑で都立高教諭逮捕 座間署(12/5,毎日,東京,高,男,39)
・久留米市立中学校で男性教師が体罰、生徒を平手打ち
(12/6,九州朝日放送,福岡,中,男)
・弁明した生徒に「殺すぞ」 40代の男性教諭 グラウンドで複数回喫煙も
(12/6,神戸新聞,兵庫,中,男,40代)
・セクハラで中学教頭を免職(12/6,産経,福島,中,男,48)
・女子トイレに侵入の疑い 教諭を逮捕 埼玉 熊谷
(12/6,NHK,埼玉,小,男,24)
・教諭が大声、不登校に 支援学級の中2生徒
(12/7,毎日,大分,中,男,40代)
・元中学校講師が青少年健全育成条例違反
(12/9,日テレ,福島,中,男,29)
・「嫌がってるやん」自身の指導をとがめた男児に立腹、けが負わす
(12/10,神戸新聞,兵庫,小,男,50代)
・高校教諭が元教え子にわいせつか(12/10,NHK,神奈川,高,男,30)
・80歳男性をひき逃げ 中学校教師の男を逮捕
(12/11,カンテレ,兵庫,中,男,45)
・別室指導16時間は「ハラスメント」 高1飛び降り
(12/11,産経,兵庫,高,男)
・県教委 ゴミ不法投棄などで処分(12/11,NHK,熊本,小,男,59)
・教え子にわいせつ行為 小学校講師の男を逮捕
(12/12,産経,大阪,小,男,26)
・無免許運転 教頭を懲戒免職(12/13,NHK,宮崎,小,男,53)
・いじめ訴えた文書 教室に掲示(12/15,朝日,栃木,小,男,40代)
・中学教諭、教室で「みんな顔を伏せろ」 生徒の腹を殴る
(12/16,朝日,兵庫,中,男,30代)
・酒気帯び運転で教諭懲戒免職に(12/16,NHK,岩手,小,男,54)
・男子生徒に淫行の教員懲戒免職(12/17,NHK,埼玉,高,男,42)
・海外引率先で女子生徒盗撮 市立中教諭を懲戒免職
(12/17,時事ドットコム,栃木,中,男,27)
・生徒の首絞めた34歳の教諭を懲戒処分
(12/18,CBCテレビ,愛知,中,男,34)
・高齢男性はねられ死亡 教諭逮捕(12/18,NHK,北海道,小,男,52)
・“無理やりキス” 教員懲戒免職(12/18,NHK,北海道,高,男,50代)
・コンビニで下半身露出、男性教諭を懲戒免職
(12/18,TBS,栃木,中,男,27)
・友人女性宅に盗撮カメラ 横浜市立小教諭を懲戒免職
(12/19,テレビ神奈川,小,男,31)
・女子生徒に「抱きしめていいですか」…教諭に停職2か月
(12/20,北海道,高,男,53)
・男性教諭懲戒免職 みだらな行為(12/20,NHK,神奈川,小,男,20代)
・覚醒剤所持で逮捕の教師 "懲戒免職” 福岡県教委 「4年前から使用」
(12/20,テレビ西日本,福岡,中,男,55)
・酒気帯び運転疑い教諭を停職処分(12/20,NHK,和歌山,中,男,40)
・小学校長、女性教諭に無理やりキス 勉強会に呼び出して
(12/23,朝日,神奈川,小,男,57)
・野球部員に暴力で教諭に謹慎処分(12/23,NHK,静岡,高,男,26)
・同じ中学の50代と20代教諭 盗撮とわいせつ行為で懲戒免職 大分
(12/24,NHK,大分,盗撮:50代 わいせつ:20代)
・女子生徒に「セクハラ」「現金渡す」「個人情報漏えい」
(12/24,関西テレビ,兵庫,特,男,50代)
・中学教頭、非常勤講師から9万円「借金」 発覚後半年、全額返さず
(12/24,毎日,大阪,中,男,40代)
・女子児童につきまとい 教諭免職(12/24,NHK,群馬,小,男,47)
・千原台陸上部監督体罰で懲戒処分(12/24,NHK,熊本,高,男,37)
・男子生徒に向け部員にボールを投げさせる けが負わせたとして顧問を処分
(12/25,共同通信,茨城,高,男41,35)
・小学校教諭がわいせつ行為で免職(12/25,NHK,大阪,小,男,37)
・給食の残りのパン、牛乳31万円分を持ち帰る
(12/25,産経,大阪,高,男,60代)
・「むしゃくしゃしてやった」タクシー運転手を殴る 高校講師の女(51)
(12/25,仙台放送,宮城,高,女,51)
・無免許に暴言や体罰…岐阜県内の公立中高の教諭と講師の4人に懲戒処分(12/25,CBCテレビ,岐阜,無免許:中男29 暴言:高男48 体罰:高男60×2)
・生徒51人の個人情報入りUSB紛失 茨城の特別支援学校
(12/26,産経,茨城,特,女,40代)
・女児の髪つかみ、けが負わす 小学校校長を停職3カ月
(12/26,毎日,沖縄,小,男,60)
・5年間無免許運転の中学校の男性講師らを減給処分
(12/26,CBCテレビ,岐阜,中,29)
・たばこで中抜け、9年で3442回 高校教諭を減給処分
(12/27,朝日,大阪,高,男,60)
・女子生徒にわいせつ 県立高20代教諭懲戒免職
(12/27,北日本新聞,富山,高,男,20代)
・24歳小学女性教諭が同僚から9万円窃盗容疑
(12/27,毎日,栃木,小,女,24)
・児童に暴言など 小学校教諭2人を懲戒処分
(12/27,日テレ,福岡,小,暴言:男47,体罰:女57)
・廃棄予定書籍、ネットで販売 小学校教頭を停職
(12/27,毎日,神奈川,小,男,54)
・通勤で無免許運転、免許写し偽造…元小学校教頭を在宅起訴
(12/28,千葉日報,千葉,小,男,53)
・女性教諭「頭に血が上った」…椅子の座り方指導中、男児の太ももたたく
(12/29,読売,福岡,小,女,57)
2019年12月26日木曜日
出生数86万人の衝撃
2019年,令和の元年も間もなく終わろうとしています。勤め人の方は,今日が仕事納めでしょうか。
さて,今年の年間出生数は90万人を割り,86万4000人になることが確実になりました。新聞で大きく報じられましたので,ご存知の方は多いでしょう。少子化は,予想を上回るスピードで進んでいます。
一方。高齢化で死ぬ人は増えますので,国内の人口はどんどん減っていきます。自然減(死亡数-出生数)は,この1年間で50万人を超えたとのこと。史上初です。毎年,人口50万超の大都市がごっそり消えていく時代の始まりです。
出生数のこれまでと今後を,グラフで可視化してみましょうか。出生数の長期推移は,厚労省の『人口動態統計』にて分かります。まずは,以下のグラフの左側を見てください。
戦後初期から現在までの年間出生数ですが,直線的に減ってきているのではありません。終戦直後の第1次ベビーブーム,その子世代の第2次BBの山があります。日本で最も出生数が多かったのは1947(昭和22)年で,270万人もの赤ちゃんの産声が上がっていました。2019年の86万人の3倍以上です。私は第2次BBのちょっと後の1976年生まれですが,この年の出生数も183万人で,今よりもずっと多し。
出生数のカーブをみると,第1次と第2次に続く第3次BBの山があってもよさそうですが,それはできていません。自然に考えると,90年代後半から今世紀初頭にかけて第3次の山ができるのが期待されるのですが,さにあらず。
平成不況が深刻化し,若者の自立が困難になったためでしょう。学校卒業後も実家に居座り,基礎的生活条件を親に依存し続けるパラサイト・シングルについて,山田昌弘教授が本を出されたのは1999年のことです。私が大学を出た年ですが,当時の就職の厳しさは肌身で知っています。
当時の政府はというと「痛みを伴う改革」なるフレーズを掲げ,新自由主義路線をひた走り,若者支援などは微塵も考えられていませんでした。第3次BBの山ができなかったのは,しごく当然のこと。人数的に多い団塊ジュニア世代が子を産めなかったのはイタイ。この世代も45歳に達し,出産年齢を越えようとしています。
団塊ジュニアのすぐ下である,われわれロスジェネも間もなく出産年齢を越えます。今年になって,ロスジェネへの支援が本格的に始まりました。有難いことですが,遅きに失している感も否めません。もっと早くやってくれていれば,少子化もここまで加速度的に進まなかったでしょう。
次に,グラフの右側をご覧ください。90年代半ばから2050年までのスパンをすえ,3本の曲線が描かれています。出生数の実測値と,社人研による出生数推計値です。
よく言われることですが,推計値というのは甘いものですね。推計よりもずっと速い速度で,少子化は進行しています。今年(2019年)の出生数の推計値は,1997年推計では104万人,2017年推計では92万人であるのに対し,現実の出生数は上述のように86万人です。まあ,あくまで中位推計で,悲観的な下位推計値よりはマシなんですが。
赤色の実測値は,今後どう推移するか。最近は右下がりの勾配が急ですが,2025年頃から減少が緩やかになると見込まれます。しかしそれでも,2040年頃には60万人を割っちゃいそうです。
しかし,2018年から19年の1年間で,出生数が92万人から86万人と,6万人も減ったのは驚きです。政府関係者は暢気なもんで,「改元を待って結婚したカップルが多かったからではないか」などとニヤケ顔で言っています。
https://twitter.com/katepanda2/status/1209509333693657088
出生数減を改元のせいにするとは,まあ呆れたもんです。政府は,やるべきことをしているのか。逆累進の強い消費税を10%に上げ,金持ちにも貧乏人にも負担を強いる形で財源を増やしたわけですが,その用途を誤ってはいないか…。
為政者の反省を促すため,今から3つの図表を出します。まずは,結婚期の男性の稼ぎです。地域差があるので,47都道府県別の中央値を見ていただきます。
20代後半男性のフツーの稼ぎです。全国値は325万円で,マックスの東京は377万円。都市部はそこそこ多いように見えますが,地方は悲惨で,私の郷里の鹿児島は263万円となっています。
未婚女性の多くが結婚相手の男性に年収400万超を期待する,という調査データがあったと思いますが,そういう男性に出会うのは,東京でも容易ではありません。鹿児島では,300万円稼ぐ男性に会えたら御の字です。婚活業界の方はよくご存知でしょうが,こういうギャップが未婚化を促進している現実があります。
夫婦二馬力の共稼ぎをすればいいではないか,と言われるかもしれませんが,子を産んだ女性が(フルタイムの)就業を続けるのはなかなか難しい。政府は10月から保育所・幼稚園の費用を無償にしましたが,入園希望者が激増する一方で,受け入れの枠は増えてないので,競争が激化し待機児童問題が深刻化するだけの結果になってます。
なぜ受け入れの枠が増えないか(増やせないか)。必要な資本である「土地・建物・ヒト」のうち,確保に難儀しているのはヒトです。保育士は相変わらずの超薄給で,なり手が集まりません。幼稚園教員も酷い。
上記のグラフによると,保育士と幼稚園教員は,半分が月収20万未満の超薄給となっています。小学校以降との落差があまりにも大きい。年齢構成や資格要件の差を考慮しても,理不尽です。就学前教育・保育に携わる人材が,冷遇され過ぎています。
これでは人が集まらず,受け入れの枠が増やせるはずはありますまい。増税で得られた財源は,保育士や幼稚園教員の待遇改善に使うべし。費用を無償にしたところで,恩恵を得るのは,運よく入れた少数の世帯だけです。それよりも人材を集め,受け入れの枠を増やしたほうが,二馬力で稼げる家庭を増やし,多くの人にベネフィットが及ぶことになります。人手不足に悩む社会にとっても好都合です。
あと一つは,教育全般に使う金を増やすこと。公的教育費支出の対GDP比は,日本はいつもOECD加盟国では最下位です。
夫婦が出産を控える最大の理由は「教育費が高いから」というのは,分かり切っていること。私立高校の無償化や,高等教育の無償化等,進展の兆しが出てきていますが,これをもっと押しすすめるべし(質の悪いFランには退場してもらいつつ)。
子どもを産んでくれたら,当人が一人立ちするまで毎月5万円支給する。ブロガーの永江一石さんがこんな提案をしていますが,こういうのもいいでしょう。子ども(後続世代)は,社会の維持存続に不可欠であり,上の世代は誰であれ,やがては彼らの世話になります。後続世代を育てるための資金を,社会全体で分担する(=税金で賄う)のは理に適っています。
https://www.landerblue.co.jp/48333/
私は前から,富裕層に負担の傾斜をつけた「次世代育成税」を導入すべきだと思っています。こういう用途ならお金を出してもいい。こう考えるお金持ちは多いはず。
財政の素人の私が,思い付きをグダグダ書きましたが,国として「打つ手」はまだまだあるはず。出生数激減を改元のせいにしている場合ではありません。ここで出した3つの図表を国会の壁にはり,血税の用途について真剣に議論していただきたいと思います。
さて,今年の年間出生数は90万人を割り,86万4000人になることが確実になりました。新聞で大きく報じられましたので,ご存知の方は多いでしょう。少子化は,予想を上回るスピードで進んでいます。
一方。高齢化で死ぬ人は増えますので,国内の人口はどんどん減っていきます。自然減(死亡数-出生数)は,この1年間で50万人を超えたとのこと。史上初です。毎年,人口50万超の大都市がごっそり消えていく時代の始まりです。
出生数のこれまでと今後を,グラフで可視化してみましょうか。出生数の長期推移は,厚労省の『人口動態統計』にて分かります。まずは,以下のグラフの左側を見てください。
戦後初期から現在までの年間出生数ですが,直線的に減ってきているのではありません。終戦直後の第1次ベビーブーム,その子世代の第2次BBの山があります。日本で最も出生数が多かったのは1947(昭和22)年で,270万人もの赤ちゃんの産声が上がっていました。2019年の86万人の3倍以上です。私は第2次BBのちょっと後の1976年生まれですが,この年の出生数も183万人で,今よりもずっと多し。
出生数のカーブをみると,第1次と第2次に続く第3次BBの山があってもよさそうですが,それはできていません。自然に考えると,90年代後半から今世紀初頭にかけて第3次の山ができるのが期待されるのですが,さにあらず。
平成不況が深刻化し,若者の自立が困難になったためでしょう。学校卒業後も実家に居座り,基礎的生活条件を親に依存し続けるパラサイト・シングルについて,山田昌弘教授が本を出されたのは1999年のことです。私が大学を出た年ですが,当時の就職の厳しさは肌身で知っています。
当時の政府はというと「痛みを伴う改革」なるフレーズを掲げ,新自由主義路線をひた走り,若者支援などは微塵も考えられていませんでした。第3次BBの山ができなかったのは,しごく当然のこと。人数的に多い団塊ジュニア世代が子を産めなかったのはイタイ。この世代も45歳に達し,出産年齢を越えようとしています。
団塊ジュニアのすぐ下である,われわれロスジェネも間もなく出産年齢を越えます。今年になって,ロスジェネへの支援が本格的に始まりました。有難いことですが,遅きに失している感も否めません。もっと早くやってくれていれば,少子化もここまで加速度的に進まなかったでしょう。
次に,グラフの右側をご覧ください。90年代半ばから2050年までのスパンをすえ,3本の曲線が描かれています。出生数の実測値と,社人研による出生数推計値です。
よく言われることですが,推計値というのは甘いものですね。推計よりもずっと速い速度で,少子化は進行しています。今年(2019年)の出生数の推計値は,1997年推計では104万人,2017年推計では92万人であるのに対し,現実の出生数は上述のように86万人です。まあ,あくまで中位推計で,悲観的な下位推計値よりはマシなんですが。
赤色の実測値は,今後どう推移するか。最近は右下がりの勾配が急ですが,2025年頃から減少が緩やかになると見込まれます。しかしそれでも,2040年頃には60万人を割っちゃいそうです。
しかし,2018年から19年の1年間で,出生数が92万人から86万人と,6万人も減ったのは驚きです。政府関係者は暢気なもんで,「改元を待って結婚したカップルが多かったからではないか」などとニヤケ顔で言っています。
https://twitter.com/katepanda2/status/1209509333693657088
出生数減を改元のせいにするとは,まあ呆れたもんです。政府は,やるべきことをしているのか。逆累進の強い消費税を10%に上げ,金持ちにも貧乏人にも負担を強いる形で財源を増やしたわけですが,その用途を誤ってはいないか…。
為政者の反省を促すため,今から3つの図表を出します。まずは,結婚期の男性の稼ぎです。地域差があるので,47都道府県別の中央値を見ていただきます。
20代後半男性のフツーの稼ぎです。全国値は325万円で,マックスの東京は377万円。都市部はそこそこ多いように見えますが,地方は悲惨で,私の郷里の鹿児島は263万円となっています。
未婚女性の多くが結婚相手の男性に年収400万超を期待する,という調査データがあったと思いますが,そういう男性に出会うのは,東京でも容易ではありません。鹿児島では,300万円稼ぐ男性に会えたら御の字です。婚活業界の方はよくご存知でしょうが,こういうギャップが未婚化を促進している現実があります。
夫婦二馬力の共稼ぎをすればいいではないか,と言われるかもしれませんが,子を産んだ女性が(フルタイムの)就業を続けるのはなかなか難しい。政府は10月から保育所・幼稚園の費用を無償にしましたが,入園希望者が激増する一方で,受け入れの枠は増えてないので,競争が激化し待機児童問題が深刻化するだけの結果になってます。
なぜ受け入れの枠が増えないか(増やせないか)。必要な資本である「土地・建物・ヒト」のうち,確保に難儀しているのはヒトです。保育士は相変わらずの超薄給で,なり手が集まりません。幼稚園教員も酷い。
上記のグラフによると,保育士と幼稚園教員は,半分が月収20万未満の超薄給となっています。小学校以降との落差があまりにも大きい。年齢構成や資格要件の差を考慮しても,理不尽です。就学前教育・保育に携わる人材が,冷遇され過ぎています。
これでは人が集まらず,受け入れの枠が増やせるはずはありますまい。増税で得られた財源は,保育士や幼稚園教員の待遇改善に使うべし。費用を無償にしたところで,恩恵を得るのは,運よく入れた少数の世帯だけです。それよりも人材を集め,受け入れの枠を増やしたほうが,二馬力で稼げる家庭を増やし,多くの人にベネフィットが及ぶことになります。人手不足に悩む社会にとっても好都合です。
あと一つは,教育全般に使う金を増やすこと。公的教育費支出の対GDP比は,日本はいつもOECD加盟国では最下位です。
夫婦が出産を控える最大の理由は「教育費が高いから」というのは,分かり切っていること。私立高校の無償化や,高等教育の無償化等,進展の兆しが出てきていますが,これをもっと押しすすめるべし(質の悪いFランには退場してもらいつつ)。
子どもを産んでくれたら,当人が一人立ちするまで毎月5万円支給する。ブロガーの永江一石さんがこんな提案をしていますが,こういうのもいいでしょう。子ども(後続世代)は,社会の維持存続に不可欠であり,上の世代は誰であれ,やがては彼らの世話になります。後続世代を育てるための資金を,社会全体で分担する(=税金で賄う)のは理に適っています。
https://www.landerblue.co.jp/48333/
私は前から,富裕層に負担の傾斜をつけた「次世代育成税」を導入すべきだと思っています。こういう用途ならお金を出してもいい。こう考えるお金持ちは多いはず。
財政の素人の私が,思い付きをグダグダ書きましたが,国として「打つ手」はまだまだあるはず。出生数激減を改元のせいにしている場合ではありません。ここで出した3つの図表を国会の壁にはり,血税の用途について真剣に議論していただきたいと思います。
2019年12月20日金曜日
50代も子育て期
晩婚化・晩産化が進んでいます。
私が前にご一緒していた編集者氏(女性)は,40歳を過ぎてから出産されたと仰っていました。ってことは,60歳まで子育てが続くことになります。当人が大学院に行きたいなどと言い出したら,これは大変。定年後も,かなりの費用負担を覚悟しないといけません。これから定年は延長,ないしは無くなることも見込まれますが。
こういう人は,どれくらいいるんでしょう。厚労省『人口動態統計』によると,2018年中に生まれた子どもは91万8400人ですが,このうちの5万2917人(5.8%)が,40歳以上の母親から生まれた子となっています。さすがに少数派ですが,35歳以上だと28.8%,30歳以上だと65.3%と多数派に転じます。
今となっては30歳以上での出産がマジョリティです。2018年では,子を産んだ母親の年齢の中央値は32.1歳となります。私は母が36歳で産んだ子ですが,1976年当時では立派な晩産の部類でも,今はそうでもありません。
こうなると,子育て期は後ろへとずれ込むことになります。最近では,50代でも小・中学生の子育て中というママさんも少なくはいなず。各年齢の既婚女性の何%が子育て中か? 「同居している未成年の子どもがいるか」という問いへの回答から見当をつけられます。
下のグラフは,同居している未成年の子がいると答えた人の割合です。各年齢時点の数値をつないだカーブを,1985年と2015年で比べています。基幹統計の『国勢調査』から作成しました。
どうでしょう。ピークをみると1985年では35歳でしたが,2015年では39歳となっています。この30年間で,子育て中のママさん率のカーブが右にシフトしており,子育て期が中高年期までずれ込んでいるのが知られます。
50歳の既婚女性を取り出すと,未成年の子と同居している人の率(子育て中率)は,1985年ではわずか7.6%でしたが,2015年では52.0%と半数を超えています。一昔前は50代にもなれば子は独立し,親は一息つけていたのですが,現在はそうではありません。50代も,立派な子育て期です。
同居している未成年の子の人数分布も分かります。幅を広げ,50代の既婚女性(1985年は723万人,2015年は674万人)を取り出し,分布を整理すると以下のようになります。
1985年では,50代の既婚女性のうち子育て中の人は2.5%しかいませんでしたが,2015年では21.7%います。50代でも,5人に1人が子育て中であると。2人以上育てている人も,ネグリジブルスモールではありません。
2015年の50代既婚女性の子育て中率は21.7%と出ましたが,これは全国の数値であって,地域差もあります。同じ値を47都道府県別に計算し,高い順に並べた表を見ていただきましょう。
最も高いのは東京で28.7%となっています。50代の既婚女性のうち,子育ての最中にある人はおよそ3割です。上位には都市的な県が多いですが,晩婚化・晩坂が地方に比して進んでいるからでしょう。
地方で低いのは,進学や就職で,18歳にして家を出ている子が多いからかもしれません。戸籍は移してないケースは多いのですが。
淡々とデータを示しましたが,子育て期は時代と共に後ろにずれこんでおり,今では50代のステージも子育て期の色合いが強し。これがどういうインパクトを持つかは,3つの側面に分けられると思います。
まずは,親の負担に関わること。50代といえば,親の介護ものしかかってきます。自身の体力も衰えてくる時期に,「育児+介護」のダブルケアを課される人(とくに女性)が増えてくると。これは脅威です。
上記の地域データから,こういうケースは都市部に多くなるとみられますが,両親を地方において上京してきている人も多いでしょうから,遠隔介護も増えてくるでしょう。子どもが独立した後なら,定期的に介護帰省することもできるでしょうが,子育て中となるとそうはいかない。前から言われていますが,地方においては,老親の見守り(世話)代行というサービスへの需要が増すかもしれません。
2つ目は,教育費に関わること。大学進学該当年齢の子の親の年齢は45~54歳とされてきましたが,これが一段ズレて50代後半,場合によっては60歳を越えちゃうかもしれません。今は,子どもの大学進学期が,親の年収ピークの記事とうまく重なってますが,これからは齟齬が出てきます。年収が下り坂にさしかかった50代後半,下手したら定年後にもつれ込むこともあり得ますね。
これを機に,大学の学費の家計依存構造を見直すべきでしょう。高等教育の費用を家計に負担させるやり方は,年齢と共に給与が上がる年功賃金を前提にしていますが,これが崩れつつあるのも,よく指摘されること。卒業後に,本人の所得に応じて学費を払わせる,授業料の後払い制が導入されてもいいでしょう。負担の主体を,親から本人にシフトするわけです。
最後の3つ目は,子どもの社会化に関わること。子どもにすれば,父母や祖父母という親族関係において,体の弱ったお年寄りに接する機会が増すことになります。父母が祖父母を介護する姿を目の当たりにすことも増えます。
10代の後半にして,父母ないしは祖父母の世話をするヤングケアラーも多くなるかもしれません。度が過ぎると学業に支障が出ることになりますので,ヘルパーの費用補助等の支援も求められるでしょう。
子育て期が後ろにシフトしていることは,教育にも少なからぬインパクトをもたらすとみられます。
2019年12月12日木曜日
パソコン使用率の国際比較
ウィンドウズ7のサポート期間がもうすぐ終わります。私は,ノートPCは7なんですが,買い替える必要があるようです。私はいつもデスクトップを使っており,ノートは滅多に使わないので,富士通のワケあり品でもいいかなと思っています。
私の場合,PCは必須で,これがないと仕事もできませんが,PCの所持率(使用率)は若い層ほど下がり,青少年では惨憺たる数字になっています。先日,OECDが結果を公表した「PISA 2018」では,15歳の生徒にPCの使用状況を問い,①「自宅にあり,自分も使う」,②「自宅にあるが使わない」,③「自宅にない」から選ばせています。
日本の①の回答比率を拾うと,デスクトップPCが37%,ノートPCが35%です。デスクトップのほうが高いのは意外ですが,家族で共用しているのでしょう。アメリカの数値は順に57%,73%となっています。ICT先進国のデンマークは40%,94%で,ほぼ全ての生徒がノートPCを使うと答えています。大半が自分専用でしょうね。
日本の15歳のPC使用率(自宅)は,デスクが37%,ノートが35%と出ましたが,対象国全体ではどの辺なんでしょう。学校での使用率も訊いていますので,こちらも見てみます。下表は,50か国の使用率一覧です。下記サイトのリモート集計で出しましたので,粗い整数値になっていることをご容赦ください。
https://pisadataexplorer.oecd.org/ide/idepisa/
ぱっと見,日本の生徒のPC使用率は,国際的にみて低いことが知られます。ノートの使用率は自宅・学校とも最下位で,発展途上国にも劣ります。
学校での使用率も高くないですね。教育のICT化の後進国と度々言われますが,最新の国際調査のデータからも,それが露骨に分かっちゃいます。教育のICT化とは,授業でICT機器を使い,教授活動を効率ならしめることだけからなるのではありません。庶務連絡や提出物のやり取り等をネット経由でするなど,校務のICT化をも包摂します。これが進むなら,教員の過重労働もだいぶ緩和されるはずなんですが…。
デンマークなど,教育のICT化が進んだ国では,生徒や親にとってはPCは必須でしょう。これがないと宿題も出せませんし,庶務連絡もチェックできません。デンマークの生徒のほぼ全員が,自宅で(専用の)ノートPCを使うというのは,分かる気がします。
上記の国別データは資料としてみていただければと思いますが,グラフで視覚化もしておきましょう。日本の自宅でのPC使用率がどういう位置になるかを,見える化しましょうか。横軸にデスク,縦軸にノートの使用率をとった座標上に,50か国を配置します。
ツイッターでも発信しましたが,強烈ですね。日本は,途上国以下の水準にあります。今朝の日経新聞で,日本の労働者の給与が安くなっていることに触れ,世界でデジタル革命が進むなか,日本は取り残されていく恐れがある,という趣旨の記事が出てましたが,既に取り残されている感があります。
スマホの使用率に限れば,日本の生徒も高いでしょう。というか,多くの生徒が「スマホで十分,PCなんて必要ない」と考えているかもしれません。SNSで仲間と交信し,イベント情報やニュース等をチェックするならスマホで十分,どうして机に向かって座ってPCなんて開く必要があるのか,と。
うーん,情報を受動的に消費するだけならスマホで十分なのですが,情報を加工したり,創作物を生み出したりするとなると,PCが要ると思うのですよね。ある方がツイッターで,日本では「RT文化」が蔓延っているのではないか,と言われています。少数の人の意見(創作物)を,多数の人が無批判にシェア(追随)する,という文化です。若者の多くは,後者なのかもしれません。ボケーとタイムラインを眺めて,RTボタンをタップするだけ…。こんなことを続けていたら,頭はトウフになってしまいます。
情報の消費者(追随者)ではなく,情報の生産者になるべし。言わずもがな,これからの社会で勝ち組となるのは後者です。現状を見る限り,日本の若年層でこれをやっているのはわずかしかいません。ちょっと頑張るだけで,他を抜きんでることができます。今がチャンス,若者よ,奮起されよ。この点については,前に日経DUAL記事でも書きました。
まあ日本でも生活様式のICT化が進んでいるのは確かで,以前に比したら子どものPC使用率も上がっているのではないか,と思われるかもしれません。しかしデータをみると,そうじゃないのですよね。日本の15歳生徒のPC使用率を,2009年と2018年で比べると以下のようになります。
デスク,ノートとも,「自宅にあり,自分も使う」の回答比率が下がっているではないですか。一方,「自宅にあるが,自分は使わない」の比重が増しています。
これはどういうことか。職場の必要に迫られて親はPCを買って使っているが,子どもは使っていない,ということか。学校は旧態依然の「紙文化」のままだし,子どもはPC使う必要に迫られませんしね。上記のデータは,社会のICT化の趨勢から,学校だけが取り残されていることを示唆しているのかもしれません。デューイの「学校は陸の孤島である」という言い回しが思い出されます。
この9年間で世の中のICT化が大きく進んだはずなのに,日本の15歳のPC使用率は低下傾向。何とも奇妙ですが,こういう国って他にあるのでしょうか。他国の時系列データも出してみました。紹介するのは,33か国の自宅でのノートPC使用率の変化です。2009~18年の伸び幅が大きい順に各国を並べています。
2009年時点で使用率が低かった国では,大きく伸びています。中国のマカオでは,19%から71%に激増です。この大国の勢いを感じます。韓国も23%から63%にアップ。北欧の諸国は2009年時点でだいぶ高い水準でしたので,伸び幅は小さくなっています。上述しましたが,デンマークの2018年の使用率は94%です。
33か国中32か国で使用率が伸びているのですが,下がっている国が一つだけあります。日本です。48%から35%へと13ポイントダウン。2009年時点では中国や韓国,発展途上国よりも高かったのですが,2018年では追い抜かれてどん尻になっています。
国際的な潮流に逆行しているのは,日本だけ。これは怖いことだと思います。世界規模デジタル革命が起き,イノベーションを競うようになる中,日本だけが取り残されるようになります。手のひらサイズのスマホをいじくるだけで,満足させている場合ではありますまい。子どもをして,ICTを積極的な用途で使うことに仕向けるべきです。
そのための一歩は,PCに触れさせること。PCを必須ならしめる環境を用意することでしょう。まずは学校の校務を徹底的にIT化し,PCがなければ庶務連絡も分からず,提出物のやり取りもできない。こういう環境を意図的に作り出すことです。
子ども1人にPC1台という方針が示されていますが,そんなふうにバラまきをしたところで,用途がなければ,子どもはそれに自ら触れることはしません。財源は学校のICT化に費やすべきで,PCは各家庭で用意いただく。困窮家庭の場合は,就学援助の範疇で支給(貸与)する。
荒療治かもしれませんが,それが必要なほど日本が危機的な傾向にあることは,今回のデータからお分かりになるかと存じます。
私の場合,PCは必須で,これがないと仕事もできませんが,PCの所持率(使用率)は若い層ほど下がり,青少年では惨憺たる数字になっています。先日,OECDが結果を公表した「PISA 2018」では,15歳の生徒にPCの使用状況を問い,①「自宅にあり,自分も使う」,②「自宅にあるが使わない」,③「自宅にない」から選ばせています。
日本の①の回答比率を拾うと,デスクトップPCが37%,ノートPCが35%です。デスクトップのほうが高いのは意外ですが,家族で共用しているのでしょう。アメリカの数値は順に57%,73%となっています。ICT先進国のデンマークは40%,94%で,ほぼ全ての生徒がノートPCを使うと答えています。大半が自分専用でしょうね。
日本の15歳のPC使用率(自宅)は,デスクが37%,ノートが35%と出ましたが,対象国全体ではどの辺なんでしょう。学校での使用率も訊いていますので,こちらも見てみます。下表は,50か国の使用率一覧です。下記サイトのリモート集計で出しましたので,粗い整数値になっていることをご容赦ください。
https://pisadataexplorer.oecd.org/ide/idepisa/
ぱっと見,日本の生徒のPC使用率は,国際的にみて低いことが知られます。ノートの使用率は自宅・学校とも最下位で,発展途上国にも劣ります。
学校での使用率も高くないですね。教育のICT化の後進国と度々言われますが,最新の国際調査のデータからも,それが露骨に分かっちゃいます。教育のICT化とは,授業でICT機器を使い,教授活動を効率ならしめることだけからなるのではありません。庶務連絡や提出物のやり取り等をネット経由でするなど,校務のICT化をも包摂します。これが進むなら,教員の過重労働もだいぶ緩和されるはずなんですが…。
デンマークなど,教育のICT化が進んだ国では,生徒や親にとってはPCは必須でしょう。これがないと宿題も出せませんし,庶務連絡もチェックできません。デンマークの生徒のほぼ全員が,自宅で(専用の)ノートPCを使うというのは,分かる気がします。
上記の国別データは資料としてみていただければと思いますが,グラフで視覚化もしておきましょう。日本の自宅でのPC使用率がどういう位置になるかを,見える化しましょうか。横軸にデスク,縦軸にノートの使用率をとった座標上に,50か国を配置します。
ツイッターでも発信しましたが,強烈ですね。日本は,途上国以下の水準にあります。今朝の日経新聞で,日本の労働者の給与が安くなっていることに触れ,世界でデジタル革命が進むなか,日本は取り残されていく恐れがある,という趣旨の記事が出てましたが,既に取り残されている感があります。
スマホの使用率に限れば,日本の生徒も高いでしょう。というか,多くの生徒が「スマホで十分,PCなんて必要ない」と考えているかもしれません。SNSで仲間と交信し,イベント情報やニュース等をチェックするならスマホで十分,どうして机に向かって座ってPCなんて開く必要があるのか,と。
うーん,情報を受動的に消費するだけならスマホで十分なのですが,情報を加工したり,創作物を生み出したりするとなると,PCが要ると思うのですよね。ある方がツイッターで,日本では「RT文化」が蔓延っているのではないか,と言われています。少数の人の意見(創作物)を,多数の人が無批判にシェア(追随)する,という文化です。若者の多くは,後者なのかもしれません。ボケーとタイムラインを眺めて,RTボタンをタップするだけ…。こんなことを続けていたら,頭はトウフになってしまいます。
情報の消費者(追随者)ではなく,情報の生産者になるべし。言わずもがな,これからの社会で勝ち組となるのは後者です。現状を見る限り,日本の若年層でこれをやっているのはわずかしかいません。ちょっと頑張るだけで,他を抜きんでることができます。今がチャンス,若者よ,奮起されよ。この点については,前に日経DUAL記事でも書きました。
まあ日本でも生活様式のICT化が進んでいるのは確かで,以前に比したら子どものPC使用率も上がっているのではないか,と思われるかもしれません。しかしデータをみると,そうじゃないのですよね。日本の15歳生徒のPC使用率を,2009年と2018年で比べると以下のようになります。
デスク,ノートとも,「自宅にあり,自分も使う」の回答比率が下がっているではないですか。一方,「自宅にあるが,自分は使わない」の比重が増しています。
これはどういうことか。職場の必要に迫られて親はPCを買って使っているが,子どもは使っていない,ということか。学校は旧態依然の「紙文化」のままだし,子どもはPC使う必要に迫られませんしね。上記のデータは,社会のICT化の趨勢から,学校だけが取り残されていることを示唆しているのかもしれません。デューイの「学校は陸の孤島である」という言い回しが思い出されます。
この9年間で世の中のICT化が大きく進んだはずなのに,日本の15歳のPC使用率は低下傾向。何とも奇妙ですが,こういう国って他にあるのでしょうか。他国の時系列データも出してみました。紹介するのは,33か国の自宅でのノートPC使用率の変化です。2009~18年の伸び幅が大きい順に各国を並べています。
2009年時点で使用率が低かった国では,大きく伸びています。中国のマカオでは,19%から71%に激増です。この大国の勢いを感じます。韓国も23%から63%にアップ。北欧の諸国は2009年時点でだいぶ高い水準でしたので,伸び幅は小さくなっています。上述しましたが,デンマークの2018年の使用率は94%です。
33か国中32か国で使用率が伸びているのですが,下がっている国が一つだけあります。日本です。48%から35%へと13ポイントダウン。2009年時点では中国や韓国,発展途上国よりも高かったのですが,2018年では追い抜かれてどん尻になっています。
国際的な潮流に逆行しているのは,日本だけ。これは怖いことだと思います。世界規模デジタル革命が起き,イノベーションを競うようになる中,日本だけが取り残されるようになります。手のひらサイズのスマホをいじくるだけで,満足させている場合ではありますまい。子どもをして,ICTを積極的な用途で使うことに仕向けるべきです。
そのための一歩は,PCに触れさせること。PCを必須ならしめる環境を用意することでしょう。まずは学校の校務を徹底的にIT化し,PCがなければ庶務連絡も分からず,提出物のやり取りもできない。こういう環境を意図的に作り出すことです。
子ども1人にPC1台という方針が示されていますが,そんなふうにバラまきをしたところで,用途がなければ,子どもはそれに自ら触れることはしません。財源は学校のICT化に費やすべきで,PCは各家庭で用意いただく。困窮家庭の場合は,就学援助の範疇で支給(貸与)する。
荒療治かもしれませんが,それが必要なほど日本が危機的な傾向にあることは,今回のデータからお分かりになるかと存じます。
2019年12月10日火曜日
既婚女性の子ども数は減っていない
今年(2019年)の出生数が90万人を割り,86万人ほどになる見通しです。昨年は91万8400人でしたから,たった1年間で6万人近く減ることになります。
これは少子化ですが,高齢化で死ぬ人も増えますので,人口の減少は加速度的に進むことになります。2020年代以降,人口が毎年50万人,2040年代以降は毎年100万人のペースで人口が減ることが見込まれます。1日あたり1370人,2740人の人がいなくなっていく。テロ並みの脅威です。
https://twitter.com/tmaita77/status/1203983801929453569
少子化の要因は,①結婚する女性が減っていること(未婚化)と,②既婚女性が産む子どもが減っていること(少産化),という2つのフェーズに分けることができます。どちらも進んでいると思われていますが,②については違うのだそうです。
ソロ社会研究者の荒川和久氏がデータを示されています。荒川氏は「少子化は,お母さんが産む子どもの数が減ったからではない」と題する記事にて,既婚女性の子ども数の分布を,1985年と2015年で対比しています。
https://comemo.nikkei.com/n/n857d9b6f6b61
『国勢調査』にて,既婚女性が同居している児童数分布の統計表があるのですが,このデータが使われています。ほう,こんな表があるとは知りませんでした。荒川氏は,15~44歳の既婚女性を取り出していますが,私は25~44歳の既婚女性を抽出し,同居している児童数(=子ども数)の分布を,1985年と2015年で対比してみました。
両年とも,子どもが2人というお母さんが最も多くなっています。1985年では全体の40.4%,2015年では37.4%を占めます。右欄の%の分布をみると,この30年間で大きな変化はないですね。既婚女性の子ども数(結婚した女性が産む子どもの数)はほとんど変わっていないようです。
変わったのは,お母さんの絶対数です。左欄の人数の合計をみると,1985年では1595万人だったのが,2015年では1001万人と,およそ3分の2に減っています。昔に比して出産年齢の若い女性の絶対数が減り,加えて未婚率も上昇しているのですから,当然のことですね。
荒川氏は,少子化ではなく「少母化」が問題なんだと主張されています。
さて,上記の分布から既婚女性の子ども数の中央値(median)を出すと,1985年が2.08人,2015年が2.03人となります。ほとんど変化なしです。この値を都道府県別に計算してみると,驚くなかれ,増えている県もあります。
既婚女性の子ども数の中央値です。この30年間の変化をみると,減っている県が多いですが,増えている県が19県あります。黄色マークです。子どもの絶対数が減っているのは明らかなんですが,既婚女性に限るとこうなんですねえ。
以前に比して,既婚者は同世代の中でセレクションされた層になっていて,出産を前提にできる層(経済力のある層)しか結婚しなくなっている,という見方もできるかとは思います。
既婚女性の出産数は減っていない。少子化の真因は,人口減少・未婚化による「少母化」のようです。これは如何ともし難い。人数的に多い団塊ジュニア世代の女性ももうすぐ50代になり,出産年齢を外れます。若い女性の絶対数もどんどん減りますので,逆立ちしても,一国の出生数を増やすことは不可能です。
事態をいくぶんか食い止める方法は,「少母化」のもう一つの要因である未婚化を抑えること。これは広く認識されており,だいぶ前から各地で婚活支援の取組が盛んですが,なかなか効果を上げられないでいます。
実をいうと,若者の間では結婚はオワコンという向きも強まっているのですよね。前にニューズウィーク記事で書きましたが,「旦那は要らんが子どもは欲しい」と考える若い女性,結構いるのです。20代女性のおよそ3割が該当します。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/post-12915.php
これらの女性が出産に踏み切れたら,状況はかなり改善されるでしょう。それは夢物語かもしれませんが,事実婚,同性婚,未婚…どういうライフスタイルを選ぼうが,子どもを産み育てられる社会の実現が求められるのは間違いありません。国際的にみて,日本はその実現度合いが最も低い部類でしょう。未婚のシングルマザーの寡婦控除を認めようという議論の際,政府関係者が「未婚者を寡婦に加えると,結婚して出産するという伝統的家族観が揺らいでしまう」などと発言するのですから。
そういうしょーもない伝統的家族観が,少子化を進行させてしまっていることに気づいたほいがいい。
今回のデータから,伝統的家族観に沿った暮らし(法律婚)をしている夫婦に限ると,出産数は減ってないことが分かります。法律婚をしているのは,25~44歳女性の62%ですが(2015年,『国勢調査』),残りの38%の人たちも出産・子育てを考えられるような社会にすべし。未婚の母への支援が以前よりも進んでいるのは,それに向けた具体的な動きとして評価できます。
これは少子化ですが,高齢化で死ぬ人も増えますので,人口の減少は加速度的に進むことになります。2020年代以降,人口が毎年50万人,2040年代以降は毎年100万人のペースで人口が減ることが見込まれます。1日あたり1370人,2740人の人がいなくなっていく。テロ並みの脅威です。
https://twitter.com/tmaita77/status/1203983801929453569
少子化の要因は,①結婚する女性が減っていること(未婚化)と,②既婚女性が産む子どもが減っていること(少産化),という2つのフェーズに分けることができます。どちらも進んでいると思われていますが,②については違うのだそうです。
ソロ社会研究者の荒川和久氏がデータを示されています。荒川氏は「少子化は,お母さんが産む子どもの数が減ったからではない」と題する記事にて,既婚女性の子ども数の分布を,1985年と2015年で対比しています。
https://comemo.nikkei.com/n/n857d9b6f6b61
『国勢調査』にて,既婚女性が同居している児童数分布の統計表があるのですが,このデータが使われています。ほう,こんな表があるとは知りませんでした。荒川氏は,15~44歳の既婚女性を取り出していますが,私は25~44歳の既婚女性を抽出し,同居している児童数(=子ども数)の分布を,1985年と2015年で対比してみました。
両年とも,子どもが2人というお母さんが最も多くなっています。1985年では全体の40.4%,2015年では37.4%を占めます。右欄の%の分布をみると,この30年間で大きな変化はないですね。既婚女性の子ども数(結婚した女性が産む子どもの数)はほとんど変わっていないようです。
変わったのは,お母さんの絶対数です。左欄の人数の合計をみると,1985年では1595万人だったのが,2015年では1001万人と,およそ3分の2に減っています。昔に比して出産年齢の若い女性の絶対数が減り,加えて未婚率も上昇しているのですから,当然のことですね。
荒川氏は,少子化ではなく「少母化」が問題なんだと主張されています。
さて,上記の分布から既婚女性の子ども数の中央値(median)を出すと,1985年が2.08人,2015年が2.03人となります。ほとんど変化なしです。この値を都道府県別に計算してみると,驚くなかれ,増えている県もあります。
既婚女性の子ども数の中央値です。この30年間の変化をみると,減っている県が多いですが,増えている県が19県あります。黄色マークです。子どもの絶対数が減っているのは明らかなんですが,既婚女性に限るとこうなんですねえ。
以前に比して,既婚者は同世代の中でセレクションされた層になっていて,出産を前提にできる層(経済力のある層)しか結婚しなくなっている,という見方もできるかとは思います。
既婚女性の出産数は減っていない。少子化の真因は,人口減少・未婚化による「少母化」のようです。これは如何ともし難い。人数的に多い団塊ジュニア世代の女性ももうすぐ50代になり,出産年齢を外れます。若い女性の絶対数もどんどん減りますので,逆立ちしても,一国の出生数を増やすことは不可能です。
事態をいくぶんか食い止める方法は,「少母化」のもう一つの要因である未婚化を抑えること。これは広く認識されており,だいぶ前から各地で婚活支援の取組が盛んですが,なかなか効果を上げられないでいます。
実をいうと,若者の間では結婚はオワコンという向きも強まっているのですよね。前にニューズウィーク記事で書きましたが,「旦那は要らんが子どもは欲しい」と考える若い女性,結構いるのです。20代女性のおよそ3割が該当します。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/post-12915.php
これらの女性が出産に踏み切れたら,状況はかなり改善されるでしょう。それは夢物語かもしれませんが,事実婚,同性婚,未婚…どういうライフスタイルを選ぼうが,子どもを産み育てられる社会の実現が求められるのは間違いありません。国際的にみて,日本はその実現度合いが最も低い部類でしょう。未婚のシングルマザーの寡婦控除を認めようという議論の際,政府関係者が「未婚者を寡婦に加えると,結婚して出産するという伝統的家族観が揺らいでしまう」などと発言するのですから。
そういうしょーもない伝統的家族観が,少子化を進行させてしまっていることに気づいたほいがいい。
今回のデータから,伝統的家族観に沿った暮らし(法律婚)をしている夫婦に限ると,出産数は減ってないことが分かります。法律婚をしているのは,25~44歳女性の62%ですが(2015年,『国勢調査』),残りの38%の人たちも出産・子育てを考えられるような社会にすべし。未婚の母への支援が以前よりも進んでいるのは,それに向けた具体的な動きとして評価できます。
2019年12月6日金曜日
普通に働いて得られる所得
師走になり,寒くなってきました。今日の横須賀は曇天で,寒風が吹き荒んでいます。
インフルエンザの流行も懸念されます。私は10月半ばに行った健診で,「40歳を過ぎたらインフルエンザの予防接種したほうがいいですよ」と言われ,3200円払って注射を受けました。高校を卒業して以来なんで,四半世紀ぶりです。これで罹患を免れる保証はないですが,重症化する確率はかなり下がるとのことです。
はとバスが停車中のハイヤーに乗り上げ,ハイヤーの運転手が死亡する事故が起きました。バスの運転手はインフルエンザで高熱の状態だったとのこと。会社員なんで予防接種は受けていたのでしょうが,過労で体の免疫が低下し,罹患してしまったのでしょうか。
仕事に殺されることがないようにしたいものです。労基法で規定されている,週間の労働時間は40時間。1日8時間,週5日がスタンダードです。こういう普通の働き方で,普通の暮らしが得られる社会になってほしい。今年の参院選で,ある候補者がこの点を訴えていましたが,全く同意です。
現実はどうなんでしょう。毎度使っている『就業構造基本調査』では,「年間日数 × 週間就業時間 × 所得のクロス表」が出ています。そうですねえ。年間就業日数が200~249日,週間就業時間が43~45時間の労働者を,フツーの働き方をしている人とみなし,所得の分布をとってみましょうか。最新の2017年調査のデータを呼び出すと,以下のようになります。
週5日,1日8時間のフツーの働き方をしている労働者(340万人ほど)の所得分布です。中層が膨らんだノーマルカーブになっています。最も多いのは300万円台で,中央値(累積%=50)は400万円台の階級に含まれることが分かります。
按分比例で割り出すと,中央値(median)は405万円です。うん,まあ普通の暮らしはできるレベルといえそうです。労働の世界が病んでいるといわれる日本ですが,捨てたもんじゃありません。これは税引き前の所得なんで,手取りにしたらもっと少なくはなりますが。
しかし,違和感を覚える人もいるはずです。週5日,1日8時間のフルタイム労働をしているが,これの半分くらいしかもらってない! こう叫びたくなる人もいるでしょう。ボーナスなんてない非正規雇用,最低賃金の概念がないフリーランスの人たちなどです。
従業地位別の分布も出せます。普通に働く労働者から,正規雇用者,非正規雇用者,フリーランスの3つのグループを取り出し,年間所得の分布をとってみましょう。フリーランスは,雇人のない業主を指します。%の母数は,正規雇用が269.1万人,非正規雇用が47.5万人,フリーランスが8.3万人ほどです。
うーん,同じように普通の働き方をしていても,従業地位によって稼ぎの分布がかなり違っています。最頻階級は正社員は300万円台ですが,非正規雇用とフリーランスは200万円台前半です。
累積%にして中央値が含まれる階級の目星をつけ,按分比例でそれを割り出すと,正規雇用が447万円,非正規雇用が230万円,フリーランスが234万円となります。労働時間が同じであっても,正社員と非正規・フリーの間では,稼ぎに倍近くの差があるのですね。
最初の表は,人数的に多い正社員の傾向を反映しているようです。とはいえ,非正規やフリーの人も結構おり,今後,ますます増えることが見込まれます。現状では,こういう人たちが普通の働き方をしても,普通の暮らしをするに足る稼ぎを得るのは難しいようです。週5日,1日8時間労働しても,非正規の3割,フリーの4割が所得200万未満のワーキングプアであるのもイタイ。
性別と年齢を組み入れてみると,普通の労働で普通の暮らしができる層が限られていることが,もっとリアルに分かります。正規雇用者と非正規雇用者については,性別と年齢もかけ合わせることができます。男性正規,男性非正規,女性正規,女性非正規という4つのグループを設定し,所得の分布が年齢に応じてどう変わるかをグラフにすると,以下のようになります。見やすさを考慮し,所得階級は4つに簡略化しました。
普通の暮らしに足るのは,緑色と赤色のゾーンかと思いますが,この2つが幅を利かせているのは正社員だけのようです。非正規雇用では300万円に満たない人が大半で,女性非正規にあっては200万未満のプアが多くなっています。普通にフルタイム労働をしてコレです。
最初の労働者全体の所得分布をみれば,「普通の労働で普通の暮らしが得られる」社会になっているようにも思えますが,従業地位・性別・年齢で労働者を分解してみると,一部の層に限られていることが分かります。
4グループの年齢層別の中央値の折れ線を描いて,おしまいにしましょう。
普通の暮らし,そこそこの暮らしができる所得のラインを引きましたが,これを超えるのは,働き盛りの正社員に限られることを見取ってください。
くどいようですが,これは普通の働き方をしている労働者に限ったデータです。にもかかわらず,正規か非正規か,男性か女性かでこんなにも差が出るのは明らかにおかしい。異国の人からすれば,差別以外の何物でもない,という感想しか抱かないでしょう。そもそも「セイキ,ヒセイキ」という区分は何なのかと。
海外ではどうなのか。正規と非正規の格差の国際比較をやってほしい,というリクエストをよく受けますが,諸外国では「正規/非正規」なんていう区分はありません。労働時間に依拠して,フルタイム,パートという区分けがあるだけです。
上記のグラフから,男性の正社員に富が偏していることも読み取れます。性役割分業,メンバーシップ雇用が長らく続いてきたことの結果です。しかし男女共同参画の時代になり,企業も正社員を抱える体力がなくなり,おまけに人口の高齢化も進行しています。今述べた2つの慣行は,確実に崩れつつあります。
これから増えるのは,女性の労働者,パートの労働者,組織に属さないフリーの労働者です。しかし今回のデータではっきりと分かるように,これらの人たちは「普通の労働=普通の暮らし」から遠く隔たっています。
富と先端技術を有する日本において,1日8時間の労働で普通の暮らしが得られる社会を実現できないはずはありますまい。それを妨げているのは,労働生産性の低さと富の偏りです。前者はAIやICT,後者は同一労働同一賃金の徹底で克服できるはず。
「働き方改革」が昨今のキーワードですが,令和の時代で自ずと進行するのは「働き方の多様化」です。どういう働き方をしようが,普通に働けば普通に暮らせる社会の実現が望まれるのです。
インフルエンザの流行も懸念されます。私は10月半ばに行った健診で,「40歳を過ぎたらインフルエンザの予防接種したほうがいいですよ」と言われ,3200円払って注射を受けました。高校を卒業して以来なんで,四半世紀ぶりです。これで罹患を免れる保証はないですが,重症化する確率はかなり下がるとのことです。
はとバスが停車中のハイヤーに乗り上げ,ハイヤーの運転手が死亡する事故が起きました。バスの運転手はインフルエンザで高熱の状態だったとのこと。会社員なんで予防接種は受けていたのでしょうが,過労で体の免疫が低下し,罹患してしまったのでしょうか。
仕事に殺されることがないようにしたいものです。労基法で規定されている,週間の労働時間は40時間。1日8時間,週5日がスタンダードです。こういう普通の働き方で,普通の暮らしが得られる社会になってほしい。今年の参院選で,ある候補者がこの点を訴えていましたが,全く同意です。
現実はどうなんでしょう。毎度使っている『就業構造基本調査』では,「年間日数 × 週間就業時間 × 所得のクロス表」が出ています。そうですねえ。年間就業日数が200~249日,週間就業時間が43~45時間の労働者を,フツーの働き方をしている人とみなし,所得の分布をとってみましょうか。最新の2017年調査のデータを呼び出すと,以下のようになります。
週5日,1日8時間のフツーの働き方をしている労働者(340万人ほど)の所得分布です。中層が膨らんだノーマルカーブになっています。最も多いのは300万円台で,中央値(累積%=50)は400万円台の階級に含まれることが分かります。
按分比例で割り出すと,中央値(median)は405万円です。うん,まあ普通の暮らしはできるレベルといえそうです。労働の世界が病んでいるといわれる日本ですが,捨てたもんじゃありません。これは税引き前の所得なんで,手取りにしたらもっと少なくはなりますが。
しかし,違和感を覚える人もいるはずです。週5日,1日8時間のフルタイム労働をしているが,これの半分くらいしかもらってない! こう叫びたくなる人もいるでしょう。ボーナスなんてない非正規雇用,最低賃金の概念がないフリーランスの人たちなどです。
従業地位別の分布も出せます。普通に働く労働者から,正規雇用者,非正規雇用者,フリーランスの3つのグループを取り出し,年間所得の分布をとってみましょう。フリーランスは,雇人のない業主を指します。%の母数は,正規雇用が269.1万人,非正規雇用が47.5万人,フリーランスが8.3万人ほどです。
うーん,同じように普通の働き方をしていても,従業地位によって稼ぎの分布がかなり違っています。最頻階級は正社員は300万円台ですが,非正規雇用とフリーランスは200万円台前半です。
累積%にして中央値が含まれる階級の目星をつけ,按分比例でそれを割り出すと,正規雇用が447万円,非正規雇用が230万円,フリーランスが234万円となります。労働時間が同じであっても,正社員と非正規・フリーの間では,稼ぎに倍近くの差があるのですね。
最初の表は,人数的に多い正社員の傾向を反映しているようです。とはいえ,非正規やフリーの人も結構おり,今後,ますます増えることが見込まれます。現状では,こういう人たちが普通の働き方をしても,普通の暮らしをするに足る稼ぎを得るのは難しいようです。週5日,1日8時間労働しても,非正規の3割,フリーの4割が所得200万未満のワーキングプアであるのもイタイ。
性別と年齢を組み入れてみると,普通の労働で普通の暮らしができる層が限られていることが,もっとリアルに分かります。正規雇用者と非正規雇用者については,性別と年齢もかけ合わせることができます。男性正規,男性非正規,女性正規,女性非正規という4つのグループを設定し,所得の分布が年齢に応じてどう変わるかをグラフにすると,以下のようになります。見やすさを考慮し,所得階級は4つに簡略化しました。
普通の暮らしに足るのは,緑色と赤色のゾーンかと思いますが,この2つが幅を利かせているのは正社員だけのようです。非正規雇用では300万円に満たない人が大半で,女性非正規にあっては200万未満のプアが多くなっています。普通にフルタイム労働をしてコレです。
最初の労働者全体の所得分布をみれば,「普通の労働で普通の暮らしが得られる」社会になっているようにも思えますが,従業地位・性別・年齢で労働者を分解してみると,一部の層に限られていることが分かります。
4グループの年齢層別の中央値の折れ線を描いて,おしまいにしましょう。
普通の暮らし,そこそこの暮らしができる所得のラインを引きましたが,これを超えるのは,働き盛りの正社員に限られることを見取ってください。
くどいようですが,これは普通の働き方をしている労働者に限ったデータです。にもかかわらず,正規か非正規か,男性か女性かでこんなにも差が出るのは明らかにおかしい。異国の人からすれば,差別以外の何物でもない,という感想しか抱かないでしょう。そもそも「セイキ,ヒセイキ」という区分は何なのかと。
海外ではどうなのか。正規と非正規の格差の国際比較をやってほしい,というリクエストをよく受けますが,諸外国では「正規/非正規」なんていう区分はありません。労働時間に依拠して,フルタイム,パートという区分けがあるだけです。
上記のグラフから,男性の正社員に富が偏していることも読み取れます。性役割分業,メンバーシップ雇用が長らく続いてきたことの結果です。しかし男女共同参画の時代になり,企業も正社員を抱える体力がなくなり,おまけに人口の高齢化も進行しています。今述べた2つの慣行は,確実に崩れつつあります。
これから増えるのは,女性の労働者,パートの労働者,組織に属さないフリーの労働者です。しかし今回のデータではっきりと分かるように,これらの人たちは「普通の労働=普通の暮らし」から遠く隔たっています。
富と先端技術を有する日本において,1日8時間の労働で普通の暮らしが得られる社会を実現できないはずはありますまい。それを妨げているのは,労働生産性の低さと富の偏りです。前者はAIやICT,後者は同一労働同一賃金の徹底で克服できるはず。
「働き方改革」が昨今のキーワードですが,令和の時代で自ずと進行するのは「働き方の多様化」です。どういう働き方をしようが,普通に働けば普通に暮らせる社会の実現が望まれるのです。
2019年12月1日日曜日
社会階層とアルバイト
修学旅行の費用が高騰しています。2016年の文科省『子供の学習費調査』によると,高2生徒の保護者が支出した平均額は私立で11.2万円,公立でも8.2万円になります。
私立で高いのは想像がつきますが,公立でも8万円超えとは驚きです。1994年,私が高校生だった頃は5.4万円でした。バブルの余韻漂う当時に比して,家計は厳しくなっていますが,修学旅行の費用は上がっていると。行先に,海外を選ぶ学校が増えているためでしょう。
経済的理由で修学旅行に行けない生徒もおり,親や教師にすれば実に忍びない。ちなみに修学旅行というのは,息抜きや思い出作りのための娯楽ではありません。正規カリキュラムの特別活動の範疇に属する,れっきとした授業です。社会科の授業内容を織りまぜる学校もあります。
経済的理由で修学旅行の機会を奪われるというのは,広くとれば,教育を受ける権利の侵害ともいえるでしょう。
しかるに高校生ともなれば,10万円弱の費用くらい,アルバイトをして自分で稼いだらどうか,という意見もあります。社会勉強も兼ねてです。生徒や保護者に対し,堂々とそれを言う高校もあるようです。
https://dot.asahi.com/aera/2019112700030.html
突飛な提案に聞こえますが,諸外国ではよく聞く話ですよね。アメリカでは,家が裕福であっても,バイトをして,遊ぶ金や大学進学の費用を自分で稼いでいる生徒が結構います。親にすれば,わが子に社会経験を積ませるという目論見もあるようです。
OECDの「PISA 2015」によると,アメリカの15歳生徒のアルバイト実施率は30.4%で,日本の8.1%よりもずっと高くなっています。調査対象の57か国・地域を高い順に並べると以下のごとし。「PISA 2015 Results STUDENTS’ WELL-BEING」という資料に載っているデータです。
首位は北アフリカのチュニジアで,日本でいう高1生徒の47.2%,半分近くがバイトをしています。上位をみると,発展途上国が多くなっています。これは予想通りです。
先進国でも,バイト率が高い国があります。ニュージーランドは36%,福祉先進国のデンマークは33%,アメリカは30%です。英独仏も,日本よりはだいぶ高くなっています。
日本の8.1%は下から2番目ですね。最下位は韓国の5.9%。受験競争が激しい国で,経済的に逼迫でもしてない限り,バイトをする生徒は少ないのでしょう。それを禁止する学校も多し。
「経済的に逼迫」と書きましたが,日本のデータでみると,社会階層が下の生徒ほど,バイトの実施率は高い傾向にあります。上記の「PISA 2015 Results STUDENTS’ WELL-BEING」では,社会階層のスコアに依拠して,15歳生徒を4つのグループに分け,アルバイトの実施率を出しています(462ページ,表Ⅲ-12-7)。日本のデータでいうと,一番下のグループ(以下,下層)は13.7%,一番上のグループ(以下,上層)は3.9%です。
まあ,分かりやすい結果ですよね。家庭に余裕がない生徒ほど,働かざるを得ない。しかしイギリスのデータだと,下層の生徒が22.1%,上層の生徒が21.4%で,階層差がほとんどありません。イギリスの富裕層は,日本の貧困層よりもバイト率が高いのも興味深し。
先ほど書いたように,切羽詰まった経済的理由とは性質が違う,社会勉強の類のバイトが多いと思われます。イギリスだけでなく,欧米諸国の多くはこんな感じです。下図は,8か国の下層と上層の生徒のバイト率を図示したグラフです。
日本は「下層>上層」で,経済的理由でのバイトが多くを占めるとみられます。しかし欧米諸国ではバイト率の階層差は小さく,イギリスとスウェーデンはほぼナシです。ノルウェーでは,貧困層より富裕層の生徒のほうがバイトしています。
繰り返しますが,バイトの意味合いが違うのでしょう。「社会勉強を兼ね,修学旅行の費用を自分で稼がせてください」。教師のこうした提言に戸惑う生徒や保護者もいるでしょうが,異国ではすんなり受け入れられるはず。
高校学習指導要領では,専門学科においては,就業体験をもって実習に替えることができるという規定があります。普通科でも就業体験を重視することになってますが,目的の明確な一定期間のバイトをもって,単位認定することはできないか。
選挙権が18歳に下げられ,成人年齢も20歳から18歳に下げられることが決まっています。高校生活において,社会との接点を増やしてもいいのではないか。むろん,学業に支障が及ぶまでの児童労働は,社会の力で撲滅されねばなりません。しかし貧困対策の文脈を強調するあまり,「働くこと=可哀想」というイメージを定着させてはなりますまい。
私立で高いのは想像がつきますが,公立でも8万円超えとは驚きです。1994年,私が高校生だった頃は5.4万円でした。バブルの余韻漂う当時に比して,家計は厳しくなっていますが,修学旅行の費用は上がっていると。行先に,海外を選ぶ学校が増えているためでしょう。
経済的理由で修学旅行に行けない生徒もおり,親や教師にすれば実に忍びない。ちなみに修学旅行というのは,息抜きや思い出作りのための娯楽ではありません。正規カリキュラムの特別活動の範疇に属する,れっきとした授業です。社会科の授業内容を織りまぜる学校もあります。
経済的理由で修学旅行の機会を奪われるというのは,広くとれば,教育を受ける権利の侵害ともいえるでしょう。
しかるに高校生ともなれば,10万円弱の費用くらい,アルバイトをして自分で稼いだらどうか,という意見もあります。社会勉強も兼ねてです。生徒や保護者に対し,堂々とそれを言う高校もあるようです。
https://dot.asahi.com/aera/2019112700030.html
突飛な提案に聞こえますが,諸外国ではよく聞く話ですよね。アメリカでは,家が裕福であっても,バイトをして,遊ぶ金や大学進学の費用を自分で稼いでいる生徒が結構います。親にすれば,わが子に社会経験を積ませるという目論見もあるようです。
OECDの「PISA 2015」によると,アメリカの15歳生徒のアルバイト実施率は30.4%で,日本の8.1%よりもずっと高くなっています。調査対象の57か国・地域を高い順に並べると以下のごとし。「PISA 2015 Results STUDENTS’ WELL-BEING」という資料に載っているデータです。
首位は北アフリカのチュニジアで,日本でいう高1生徒の47.2%,半分近くがバイトをしています。上位をみると,発展途上国が多くなっています。これは予想通りです。
先進国でも,バイト率が高い国があります。ニュージーランドは36%,福祉先進国のデンマークは33%,アメリカは30%です。英独仏も,日本よりはだいぶ高くなっています。
日本の8.1%は下から2番目ですね。最下位は韓国の5.9%。受験競争が激しい国で,経済的に逼迫でもしてない限り,バイトをする生徒は少ないのでしょう。それを禁止する学校も多し。
「経済的に逼迫」と書きましたが,日本のデータでみると,社会階層が下の生徒ほど,バイトの実施率は高い傾向にあります。上記の「PISA 2015 Results STUDENTS’ WELL-BEING」では,社会階層のスコアに依拠して,15歳生徒を4つのグループに分け,アルバイトの実施率を出しています(462ページ,表Ⅲ-12-7)。日本のデータでいうと,一番下のグループ(以下,下層)は13.7%,一番上のグループ(以下,上層)は3.9%です。
まあ,分かりやすい結果ですよね。家庭に余裕がない生徒ほど,働かざるを得ない。しかしイギリスのデータだと,下層の生徒が22.1%,上層の生徒が21.4%で,階層差がほとんどありません。イギリスの富裕層は,日本の貧困層よりもバイト率が高いのも興味深し。
先ほど書いたように,切羽詰まった経済的理由とは性質が違う,社会勉強の類のバイトが多いと思われます。イギリスだけでなく,欧米諸国の多くはこんな感じです。下図は,8か国の下層と上層の生徒のバイト率を図示したグラフです。
日本は「下層>上層」で,経済的理由でのバイトが多くを占めるとみられます。しかし欧米諸国ではバイト率の階層差は小さく,イギリスとスウェーデンはほぼナシです。ノルウェーでは,貧困層より富裕層の生徒のほうがバイトしています。
繰り返しますが,バイトの意味合いが違うのでしょう。「社会勉強を兼ね,修学旅行の費用を自分で稼がせてください」。教師のこうした提言に戸惑う生徒や保護者もいるでしょうが,異国ではすんなり受け入れられるはず。
高校学習指導要領では,専門学科においては,就業体験をもって実習に替えることができるという規定があります。普通科でも就業体験を重視することになってますが,目的の明確な一定期間のバイトをもって,単位認定することはできないか。
選挙権が18歳に下げられ,成人年齢も20歳から18歳に下げられることが決まっています。高校生活において,社会との接点を増やしてもいいのではないか。むろん,学業に支障が及ぶまでの児童労働は,社会の力で撲滅されねばなりません。しかし貧困対策の文脈を強調するあまり,「働くこと=可哀想」というイメージを定着させてはなりますまい。