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2020年2月28日金曜日

一斉休校で困る子ども

 コロナウィルス感染を防ぐため,全国の小・中・高校を一斉休校するよう,政府からお達しが出されるようです。

 感染者が確認された自治体では,既に一斉休校に踏み切った所もあるようですが,全国一律に休校を促すとなると,そのインパクトは大きい。共働きやシングルの親御さんは青ざめています。子どもをどこに預ければいいのかと。

 留守番は不可能,ないしは心もとない10歳未満の子どものうち,両親とも働いている世帯,親が働いている一人親世帯の子は結構います。やや古いですが,2015年の『国勢調査』から,その数を拾ってみると以下のようになります。


 共働きの核家族世帯の子は415.1万人,親就労の母子世帯の子は36.5万人,父子世帯の子は2.7万人ほどです。これらを合算すると454万人,一斉休校で影響を被る子どもは結構な数に上ります。10歳未満の子どもの44.3%,半数近くに該当します。

 保育園や幼稚園は休園になりませんが,小・中・高校生の子がいるスタッフが出勤困難になり,園の運営に支障が出ることも考えられます。就学前の乳幼児にも影響が及ぶとみてよいでしょう。

 北海道の帯広の病院では,道内の臨時休校により子がいるスタッフが出勤できず,診療を縮小せざるを得ない状況になっています。社会はつながっているのです。思考停止の一斉休校は社会のシステム,とりわけ医療や福祉を崩壊させてしまう可能性が大です。

 さすがに「行き過ぎ」に気づいたのか,今日の昼の報道によると,一斉休校はあくまで要請で,するかしないかの判断は,各自治体の教育委員会の判断に委ねられるとのこと。

 思慮のある判断をしてほしいと思いますが,そのためのデータを紹介しようと思います。一斉休校で困る子どものパーセンテージです。上記のデータによると,共働きの核家族世帯,ないしは親就労の一人親世帯で暮らす10歳未満の子は454万人で,同年齢人口に占める割合は44.3%と出ました。このパーセンテージを都道府県別に出すと,以下のようになります。


 一斉休校で影響を受けると思われる子どもの率です。全国値は44.3%ですが,県別にみると58.7%から39.2%までの開きがあります。

 宮城県と福島県で低いですが,これは2015年のデータなので,2011年の大震災の影響があるのかもしれません(共働きができないでいる世帯が多い…)。山形県は,三世代世帯が多いからでしょう。東京都や神奈川県といった都市部は,主婦世帯が相対的に多いためとみられます(保育所不足のゆえ)。

 対極の左上をみると,首位は宮崎県の58.7%,2位は高知県の56.7%,3位はわが郷里の鹿児島県で56.1%です。これらの県では,一斉休校による影響が甚大になりそうです。高齢化が進んだ県ですので,小・中・高校生の親御さんの中には,医療・福祉施設で働いている人も多いでしょう。舵を切る方向を誤ると,最悪,死人が出る事態も想定されます。

 政令市のデータも計算しましたので,参考までに載せておきましょう。赤字は,都内23区の自治体です。


 トップは,鹿児島市ですね。私は肌感覚で知っていますが,共働きの世帯が非常に多し。医療・福祉,また保育の現場で働いている,子持ちのママ・パパは数多くいます。浅はかな一斉休校で,これらの労働力が自宅に釘付けとなったら,恐ろしいことになるでしょう。

 感染症は怖いですが,全国津々浦々で感染が確認されているわけではなく,コロナによる子どもの死者は皆無という統計もあります。冷静にデータをみて,とるべき政策を決定してほしいと願います。ここで示した,共働きの核家族世帯・シングル世帯の子どもの率も,参考にはなるでしょう。

 無分別な一斉休校は感染防止というメリットをもたらしつつも,子持ちの労働力を自宅に縛り付け,結果として社会の崩壊をもたらすデメリットも持っています。私が目にしたデータで言えるのは,前者より後者がずっと大きいのではないか,ということです。

 何もかも取りやめればいい,ということではありますまい。まずもって取りやめる(規制す)べきは,つばを交換しているようなものと言われる満員電車通勤です。そして整備すべきは,迅速・手軽な検査体制です。