今月も今日でおしまい,2020年も半分過ぎたことになります。
今月,私が把握した教員不祥事報道は44件です。少女に裸画像を送らせた事案。社会問題化していますが,とうとう教員の逮捕者が出てしまいました。今や東京をはじめ,多くの自治体において,裸画像を要求する行為そのものが禁じられています。
SNSで恋愛相談をし,160万円荒稼ぎし,公務員の兼業制限規定に触れた新潟の小学校教員。若手のようですが,これだけ稼げるってことは,さぞやり手だったのでしょう。
今は副業(パラレルキャリア)が推奨され,公務員も例外ではありません。公務員は任命権者の許可を得れば,兼業は許されます。大よそ,田舎で農業をやるとか,講演の講師や本の執筆といったものが多いのでしょうが,許容の幅をもっと広げてもよし。視野を広げることにもなります。社会体験研修とやらで,数か月の間,民間企業に(イヤイヤ)派遣されるよりも,ずっと効果ありでしょう。SNSの恋愛相談なんかは,トークスキルを磨くのにもってこいじゃないですか。
私は以前,教員研修の図式として,以下のように整理したことがあります。
https://twitter.com/tmaita77/status/898683884979666945
職務と直結しているか否か,上からの押し付けか自発的か,という2軸のクロスです。青色の四角形は,私が独断で目星をつけた量的比重の見積もりです。言わずもがな,マジョリティは,上から命令される,職務と直結した法定研修です。最近は視野を広げてもらおうと,教育委員会に命じられて,民間企業に派遣される社会体験研修も増えていると聞きます。
しかしですねえ。視野を広げるなら,左下の「職務とは無関係,自発的」の研修,すなわち遊び的なものも認めたらどうでしょう。SNSでの恋愛相談…。頻度や性格にもよりますが,概ね結構じゃありませんか。
明日から7月です。現在,年で最も仕事が混んだ繁忙期でして,朝から夕方まで食い扶持仕事の日が続いています。私は原則,午前中しかライスワークはしない主義ですが,それを崩さざるを得ない状況です。ツイッターの書き込み頻度が減り,ブログの更新も滞るかと思いますが,致し方ありません。
梅雨明けはもうちょい先のようですが,爽やかな夏空が広がるシーズンはすぐそこです。背景だけでも,それをイメージできるようにしましょう。
<2020年6月の教員不祥事報道>
・体罰で男性教諭処分 道教委(6/2,北海道新聞,北海道,高,男,58)
・LSD密輸で非常勤講師を逮捕(6/2,静岡放送,中高一貫,男,27)
・800人分の個人情報紛失 教諭減給処分(6/2,熊本放送,熊本,高,男)
・わいせつ行為の2教諭を免職 公表遅らせ生徒保護
(6/2,産経,神奈川,小・中,男)
・同僚女性を背後から抱き寄せ・・・セクハラ行為で男性教諭を懲戒処分
(6/3,FNN,鳥取,高,男,38)
・飲酒運転の非常勤講師 懲戒免職(6/4,NHK,鳥取,小,男,67)
・東日本大震災の遺族を脅迫 南国市の小学校教諭が逮捕
(6/5,FNN,高知,小,男,42)
・足を払って転倒させる、ゴムハンマーでたたく
(6/5,ABCテレビ,大阪,中男28,高男32)
・女性教諭「長女を介護」と休暇取得(6/7,読売,大阪,特,女,46)
・“住居侵入未遂”小学校教員の男を逮捕(6/7,RKB,福岡,小,男,38)
・SNSで知り合った少女に裸の画像送らせた疑い
(6/9,中国新聞,東京,中高一貫,男,35)
・特別支援学校講師酒気帯びで逮捕(6/9,NHK,福岡,特,男,65)
・高校教諭が合宿費一部着服の疑い(6/9,NHK,北海道,高,男,44)
・重傷ひき逃げ 茨木市の中学校教諭を逮捕(6/10,読売テレビ,大阪,中,男)
・書籍7冊を盗んだ疑いで宮城県の中学校講師を逮捕 大学生を自称
(6/10,読売,宮城,中,男,22)
・わいせつ行為の疑い 教諭逮捕(6/10,NHK,広島,小,男,37)
・女性教諭を処分…車で右折の際、2人乗りの直進バイクと衝突
(6/11,埼玉新聞,埼玉,高,女,33)
・落ちていた携帯電話持ち帰り自宅に放置、30代男性教諭を懲戒処分
(6/11,京都新聞,滋賀,特,男,30代)
・SNSで恋愛相談、160万円稼ぐ 小学教諭を減給処分
(6/12,朝日,新潟,小,男,20代)
・高校教諭を不適切行為で懲戒免職(6/12,NHK,秋田,高,男,50代)
・児童の個人情報入りUSB紛失 川崎市立小教諭 許可得ず持ち出し飲酒後寝落ち(6/13,神奈川新聞,神奈川,小,男,35)
・リベンジポルノ疑いで教諭を逮捕(6/14,NHK,広島,小,男,23)
・児童けが事故通報せず教諭を減給(6/154,NHK,長崎,小,男,35)
・中学教諭逮捕 スポーツ用品店で窃盗容疑
(6/15,日刊スポーツ,岐阜,中,男,35)
・少女にみだらな行為、容疑の中学教諭逮捕
(6/16,産経,栃木,中,男,29)
・10代女性に淫行疑い 中学教諭を逮捕 栃木県警
(6/17,下野新聞,栃木,中,男,29)
・県立学校教諭を減給の懲戒処分(6/17,NHK,鹿児島,男,41)
・元道立校副校長、抵抗できない女性にわいせつ行為
(6/18,読売,北海道,中等教育,男,54)
・文庫本万引疑いで中学教諭逮捕(6/23,産経,静岡,中,男,49)
・生徒会費やPTA会費を横領…兵庫県の臨時講師ら2人 を「懲戒免職」
(6/23,FNN,兵庫,高,男,42)
・女性教諭に戒告処分、徳島県内で重傷事故
(6/23,徳島新聞,徳島,中,女,40)
・女子中学生飛び降り教諭停職処分(6/23,NHK,兵庫,中,男,30)
・中学教諭 児童ポルノ容疑再逮捕(6/26,NHK,栃木,中,男,29)
・(6/26,NHK,福岡,特,男,65)
・ガソリンスタンドで釣り銭9000円を盗む
(6/26,カンテレ,和歌山,小,男,20代)
・臨時講師の男を脅迫の罪で起訴(6/26,NHK,高知,小,男,42)
・「魔が差した」バス隣席の女性にわいせつ
(6/27,神奈川新聞,神奈川,小,男,40代)
・小学校教諭が飲酒運転「電柱に衝突」 出勤予定も欠勤に
(6/28,福井新聞,福井,小,男,40代)
・鹿島市の小学校教諭 懲戒免職(6/29,NHK,佐賀,小,男,58)
・県 高校の教諭 職員を戒告処分(6/29,NHK,大分,高,女,47)
・盗撮カメラ設置か条例初適用逮捕(6/30,NHK,秋田,幼,男,24)
・23歳の中学校教員、駐車場で女子中生にキスし胸触り逮捕
(6/30,神戸新聞,兵庫,中,男,23)
・釣銭の5000円盗む 小学校の男性教諭懲戒処分
(6/30,NNN,富山,小,男,30)
・職場の宴会後、同僚女性の手を握りキス迫る 50代の男性栄養教諭
(6/30,神戸新聞,兵庫,男,50代)
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2020年6月30日火曜日
2020年6月24日水曜日
教室の「密」の国際比較
コロナ渦も一段落?し,学校が再開されています。油断禁物ということで,分散登校させたり,傘をさして登下校させたりと,自治体は「密」を避けるための工夫を色々凝らしています。傘をさすのは熱中症防止にもなり,好いアイディアだと思います。
むろん,教室内でも「密」を避けないといけません。そのために分散登校しているものの,1学級あたりの子どもがあまりに多いとなると,その効果も薄いものとなります。これは,教育行政の姿勢に関わることです。
昔は,40人学級,50人学級というのはザラでした。1955(昭和30)年の1学級あたりの児童・生徒数を出すと,公立小学校は43.8人,公立中学校は46.4人です(『文部科学統計要覧』2019年版)。これが時代と共にどんどん少なくなり,2016年では公立小が27.2人,公立中が32.2人となっています(OECD「Education at a Glance 2019」)。
すごい変わりようですね。「教員数や学級数を増やし,少人数教育を!」という声を上げると,「昔に比したらだいぶよくなっている」と,年輩の人から一蹴されることが多し。教育行政の上層部は,こういう人ばかりなんで始末に負えません。
しかしタテの時系列比較ではなく,ヨコの国際比較だとどうでしょう。日本の2016年の数値は上記の通りですが,OECD加盟国の中に位置づけるとどうか。下表は,小・中のデータが分かる31か国を高い順に配列したものです。
日本は小学校が3位,中学校は1位ですね。国際的にみると,大規模学級の国のようです。コロナと関連付けて言うと,教室の「密」の度合いが高いようです。
むろん,教室の面積も考慮しないといけませんが,日本の住居を「ウサギ小屋」とバカにする国が多いので,学校の教室もゆとりあるサイズにしているのではないでしょうか。日本と比して,教室が著しく小さいなんてことはないでしょう。
でも,考えてみると不思議ですよね。日本は少子化が進み,子どもが少ない社会です。2015年の子ども人口(15歳未満)比率は13.0%と,OECD加盟国では最低です。子どもは減っているものの,学校の施設はそのままなんで,空き教室も増えているはず。どうして? 異国の人にすれば,こんな疑問もわくでしょう。
公立小学校の1学級あたりの児童数(上表)を,各国の子ども人口比率と絡めると以下のようになります。
右上には,子どもが多く,1教室の子どもも多い国があります。これは分かりやすい。対極の左下には,子どもが少なく,教室の子どもも少ない国があります。これも道理です。しかし日本は傾向から外れていて,子どもが少ない社会であるにもかかわらず,1つの教室に押し込められる子どもも多くなっています。
教員や学級を増やさない,つまりは教育にカネをかけてないってことでしょうね。それは,公的教育費の対GDP比が毎年最低であることに裏付けられています。いじめのような問題も,こうした教室の「密」に由来する部分もあるのではないでしょうか。
教育行政のお偉方は,昔の超過密学級の記憶が頭に残っていて,「今の状況は全然マシ」と思っているのかもしれませんが,国際的にみたら大規模学級の部類であることが,データでお分かりかと思います。これを改善することは,子どもの命を守る上でも必要なこと。今の状況の診断基準は,遠い過去の記憶ではなく,今現在の国際標準に置くべきです。
ただ,国内の地域差もあります。公立小学校の児童数別の学級数から,1学級の児童数の中央値(median)を都道府県別に計算し,高い順に並べると以下のごとし。2019年5月時点のデータです。
全国値は,先ほどの国際統計と同じく27人ほどですが,県別にみると東京の30人から高知の17人まで大きな開きがあります。
東京は少子化など「どこ吹く風」。子どもが増えていますので,1学級の児童数も相対的に多くなっています。一方,地方は比較的ゆとりがあるようです。
コロナを経て,地方への移住志向が高まっているといいますが,「密」を避け,子どもに手厚い少人数教育を受けさせるというのもいいのではないでしょうか。仕事もリモートでできるのなら,人口密度の高い東京にいる必要はなしです。
私は大学を辞めた(クビになった)のを機に,2017年春に横須賀に移り住みました。横須賀といっても,三浦半島の南西のはずれで,人口密度は低し。外を出歩く分には,マスクなんてする必要なしです。この選択に間違いはなかったと思っています。
むろん,教室内でも「密」を避けないといけません。そのために分散登校しているものの,1学級あたりの子どもがあまりに多いとなると,その効果も薄いものとなります。これは,教育行政の姿勢に関わることです。
昔は,40人学級,50人学級というのはザラでした。1955(昭和30)年の1学級あたりの児童・生徒数を出すと,公立小学校は43.8人,公立中学校は46.4人です(『文部科学統計要覧』2019年版)。これが時代と共にどんどん少なくなり,2016年では公立小が27.2人,公立中が32.2人となっています(OECD「Education at a Glance 2019」)。
すごい変わりようですね。「教員数や学級数を増やし,少人数教育を!」という声を上げると,「昔に比したらだいぶよくなっている」と,年輩の人から一蹴されることが多し。教育行政の上層部は,こういう人ばかりなんで始末に負えません。
しかしタテの時系列比較ではなく,ヨコの国際比較だとどうでしょう。日本の2016年の数値は上記の通りですが,OECD加盟国の中に位置づけるとどうか。下表は,小・中のデータが分かる31か国を高い順に配列したものです。
日本は小学校が3位,中学校は1位ですね。国際的にみると,大規模学級の国のようです。コロナと関連付けて言うと,教室の「密」の度合いが高いようです。
むろん,教室の面積も考慮しないといけませんが,日本の住居を「ウサギ小屋」とバカにする国が多いので,学校の教室もゆとりあるサイズにしているのではないでしょうか。日本と比して,教室が著しく小さいなんてことはないでしょう。
でも,考えてみると不思議ですよね。日本は少子化が進み,子どもが少ない社会です。2015年の子ども人口(15歳未満)比率は13.0%と,OECD加盟国では最低です。子どもは減っているものの,学校の施設はそのままなんで,空き教室も増えているはず。どうして? 異国の人にすれば,こんな疑問もわくでしょう。
公立小学校の1学級あたりの児童数(上表)を,各国の子ども人口比率と絡めると以下のようになります。
右上には,子どもが多く,1教室の子どもも多い国があります。これは分かりやすい。対極の左下には,子どもが少なく,教室の子どもも少ない国があります。これも道理です。しかし日本は傾向から外れていて,子どもが少ない社会であるにもかかわらず,1つの教室に押し込められる子どもも多くなっています。
教員や学級を増やさない,つまりは教育にカネをかけてないってことでしょうね。それは,公的教育費の対GDP比が毎年最低であることに裏付けられています。いじめのような問題も,こうした教室の「密」に由来する部分もあるのではないでしょうか。
教育行政のお偉方は,昔の超過密学級の記憶が頭に残っていて,「今の状況は全然マシ」と思っているのかもしれませんが,国際的にみたら大規模学級の部類であることが,データでお分かりかと思います。これを改善することは,子どもの命を守る上でも必要なこと。今の状況の診断基準は,遠い過去の記憶ではなく,今現在の国際標準に置くべきです。
ただ,国内の地域差もあります。公立小学校の児童数別の学級数から,1学級の児童数の中央値(median)を都道府県別に計算し,高い順に並べると以下のごとし。2019年5月時点のデータです。
全国値は,先ほどの国際統計と同じく27人ほどですが,県別にみると東京の30人から高知の17人まで大きな開きがあります。
東京は少子化など「どこ吹く風」。子どもが増えていますので,1学級の児童数も相対的に多くなっています。一方,地方は比較的ゆとりがあるようです。
コロナを経て,地方への移住志向が高まっているといいますが,「密」を避け,子どもに手厚い少人数教育を受けさせるというのもいいのではないでしょうか。仕事もリモートでできるのなら,人口密度の高い東京にいる必要はなしです。
私は大学を辞めた(クビになった)のを機に,2017年春に横須賀に移り住みました。横須賀といっても,三浦半島の南西のはずれで,人口密度は低し。外を出歩く分には,マスクなんてする必要なしです。この選択に間違いはなかったと思っています。
2020年6月15日月曜日
誰がキャリアガイダンスをするか
近年,学校ではキャリア教育が重視されています。2000年代になり,フリーター,ニートなど,若者の就労不全兆候が問題化したためです。玄田有史教授の『ニート』(幻冬舎)が出たのは2004年のこと。
2011年には中央教育審議会が「今後のキャリア教育・職業教育の在り方について」と題する答申を出しています。キャリア教育の概念,生徒に身に付けさせたい資質・能力等について言及されています。今の教員採用試験でも頻出ですので,受験者は見ておきましょう。
キャリア教育とは,簡単にいえば,職業的自立に必要な能力や態度を育むことです。将来への見通しを持たせること,社会にはどういう役割(職業)があるかを知り,自分はその中のどれを担うかをイメージさせ,それに向けて仕向けていくことが中心となります。中学や高校卒業時の進路決定をサポートする進路指導も,これに含まれます。
日本ではこの仕事を学校の教員が担っているイメージがあり,データでみてもそうです。しかし諸外国は違っていて,キャリアガイダンスを行う専門のカウンセラーがいるみたいです。
OECDの「PISA 2018」の結果報告レポート第2巻に,キャリアカウンセラーが雇われている,ないしは定期的に訪れる学校に通っている15歳生徒のパーセンテージが出ています(333ページ,Table Ⅱ.B1.6.9)。欧米主要国の数値をみると,アメリカは82.3%,イギリスは80.3%,ドイツは81.9%,フランスは56.1%,スウェーデンは98.4%,となっています。
高いですね。スウェーデンでは,ほぼ全ての学校にカウンセラーがいるようです。では日本の値は…。下表は,調査対象の79か国・地域を高い順に並べたものです。
日本は4.4%で,キャリアカウンセラーがいる学校に通っている生徒は22人に1人しかいません。「PISA 2018」の対象は15歳ですが,日本は高校1年生なんで,高校の実情とみることができます。
79か国・地域の中では最下位です。われわれにすれば,キャリアカウンセラーなどは聞き慣れない言葉ですが,諸外国ではこのスタッフが学校に常駐し,専門的な知見からガイダンスをするのが普通のようです。逆にこう問われるでしょう。「経済先進国の日本では,若き生徒のキャリアガイダンスを誰がしているのか?」と。
先ほどチラッと書きましたが,答えは教員です。上記の資料に,教員がキャリアガイダンスの責任を負う学校に通っている生徒の率も出ています。この指標を,キャリアカウンセラーがいる学校の生徒の率(上表)と絡めると,「!」という傾向が出てきます,
日本は,ほぼ100%の学校において,教員がキャリアカウンセリングをしており,専門のカウンセラーがいる学校はわずかです。右下は教員,左上は専門人材がキャリアガイダンスを行う国と読めますが,日本は前者の極地であることが知られます。
日本の経営慣行に詳しい外国の研究者は,「やはり日本はマルチタスクなんだなあ」という感想を抱くでしょうか。仕事の境界(範囲)が不明確で,専門性に基づく分業がない。教員は何でも丸抱え。そりゃあ,勤務時間が世界一になるはずだと。
「日本の教員は優秀で真面目だから」と思われるかもしれませんが,生徒のキャリアガイダンスの担い手として適任かどうかは,また別の問題です。本務の片手間にできる業務ではなく,それなりの専門性も求められます。机上の知識・理論だけではなく,民間会社に勤めた経験もモノをいいますが,日本の教員の民間企業経験者比率はほぼゼロです。
学校しか知らぬ人に,産業界のことを,実際の経験から醸し出される「ぬくもり」をもって,生徒に伝えることができるか。こういう疑問を持つ人は多いはず。
経験に勝るものはなしってことで,学習指導要領では,キャリア教育に際して現場での実習を行うことが推奨されています。しかし生徒を外に送り出すだけではなく,学校内に外部の専門人材を呼び寄せることも求められます。
年に数回の講話という形式的なものではなく,生徒とひざを突き合わせて,世の中にはどういう仕事があるか,産業界の実情はどういうものかを語り,生徒の進路選択を支援できる専門スタッフとして,学校に迎え入れることはできないものか。副業(パラレルキャリア)が推奨されている今,なり手はいると思われます。教員の過重労働緩和にもなり得ます。
生徒にとっても教員にとってもメリットありです。上記のグラフをみれば分かるように,諸外国では当たり前になされていること。特異なのは日本のほうで,異国の人にすれば驚きを禁じ得ないでしょう。
テストの点数をみて,「どの学校に行くか」を指南するガイダンス(進路指導)はもうおしまいです。将来何になりたいか,社会とどうかかわり関わりたいのかを考えさせる,キャリアガイダンスが求められるのであって,それには専門人材のチカラを借りることも不可欠です。
心理相談にのるスクールカウンセラーが常駐する学校が増えていますが,将来への手引をするキャリカウンセラーも学校に出入りして欲しいと思います。
2011年には中央教育審議会が「今後のキャリア教育・職業教育の在り方について」と題する答申を出しています。キャリア教育の概念,生徒に身に付けさせたい資質・能力等について言及されています。今の教員採用試験でも頻出ですので,受験者は見ておきましょう。
キャリア教育とは,簡単にいえば,職業的自立に必要な能力や態度を育むことです。将来への見通しを持たせること,社会にはどういう役割(職業)があるかを知り,自分はその中のどれを担うかをイメージさせ,それに向けて仕向けていくことが中心となります。中学や高校卒業時の進路決定をサポートする進路指導も,これに含まれます。
日本ではこの仕事を学校の教員が担っているイメージがあり,データでみてもそうです。しかし諸外国は違っていて,キャリアガイダンスを行う専門のカウンセラーがいるみたいです。
OECDの「PISA 2018」の結果報告レポート第2巻に,キャリアカウンセラーが雇われている,ないしは定期的に訪れる学校に通っている15歳生徒のパーセンテージが出ています(333ページ,Table Ⅱ.B1.6.9)。欧米主要国の数値をみると,アメリカは82.3%,イギリスは80.3%,ドイツは81.9%,フランスは56.1%,スウェーデンは98.4%,となっています。
高いですね。スウェーデンでは,ほぼ全ての学校にカウンセラーがいるようです。では日本の値は…。下表は,調査対象の79か国・地域を高い順に並べたものです。
日本は4.4%で,キャリアカウンセラーがいる学校に通っている生徒は22人に1人しかいません。「PISA 2018」の対象は15歳ですが,日本は高校1年生なんで,高校の実情とみることができます。
79か国・地域の中では最下位です。われわれにすれば,キャリアカウンセラーなどは聞き慣れない言葉ですが,諸外国ではこのスタッフが学校に常駐し,専門的な知見からガイダンスをするのが普通のようです。逆にこう問われるでしょう。「経済先進国の日本では,若き生徒のキャリアガイダンスを誰がしているのか?」と。
先ほどチラッと書きましたが,答えは教員です。上記の資料に,教員がキャリアガイダンスの責任を負う学校に通っている生徒の率も出ています。この指標を,キャリアカウンセラーがいる学校の生徒の率(上表)と絡めると,「!」という傾向が出てきます,
日本は,ほぼ100%の学校において,教員がキャリアカウンセリングをしており,専門のカウンセラーがいる学校はわずかです。右下は教員,左上は専門人材がキャリアガイダンスを行う国と読めますが,日本は前者の極地であることが知られます。
日本の経営慣行に詳しい外国の研究者は,「やはり日本はマルチタスクなんだなあ」という感想を抱くでしょうか。仕事の境界(範囲)が不明確で,専門性に基づく分業がない。教員は何でも丸抱え。そりゃあ,勤務時間が世界一になるはずだと。
「日本の教員は優秀で真面目だから」と思われるかもしれませんが,生徒のキャリアガイダンスの担い手として適任かどうかは,また別の問題です。本務の片手間にできる業務ではなく,それなりの専門性も求められます。机上の知識・理論だけではなく,民間会社に勤めた経験もモノをいいますが,日本の教員の民間企業経験者比率はほぼゼロです。
学校しか知らぬ人に,産業界のことを,実際の経験から醸し出される「ぬくもり」をもって,生徒に伝えることができるか。こういう疑問を持つ人は多いはず。
経験に勝るものはなしってことで,学習指導要領では,キャリア教育に際して現場での実習を行うことが推奨されています。しかし生徒を外に送り出すだけではなく,学校内に外部の専門人材を呼び寄せることも求められます。
年に数回の講話という形式的なものではなく,生徒とひざを突き合わせて,世の中にはどういう仕事があるか,産業界の実情はどういうものかを語り,生徒の進路選択を支援できる専門スタッフとして,学校に迎え入れることはできないものか。副業(パラレルキャリア)が推奨されている今,なり手はいると思われます。教員の過重労働緩和にもなり得ます。
生徒にとっても教員にとってもメリットありです。上記のグラフをみれば分かるように,諸外国では当たり前になされていること。特異なのは日本のほうで,異国の人にすれば驚きを禁じ得ないでしょう。
テストの点数をみて,「どの学校に行くか」を指南するガイダンス(進路指導)はもうおしまいです。将来何になりたいか,社会とどうかかわり関わりたいのかを考えさせる,キャリアガイダンスが求められるのであって,それには専門人材のチカラを借りることも不可欠です。
心理相談にのるスクールカウンセラーが常駐する学校が増えていますが,将来への手引をするキャリカウンセラーも学校に出入りして欲しいと思います。
2020年6月10日水曜日
若年女性の転出率
私は朝7時前に起き,ラジオ体操をして,主要紙サイトのニュース記事のチェックをします。興味を持ったものは,ツイッターでシェアします。これぞ,現代型の新聞切り抜きです。後々,ツイログで呼び出すのも簡単。
今朝,シェアした記事の一つに,日経サイトの「東北,若い女性の転出鮮明に 賃金低いと転出率高く」があります。有料記事ですが,私は無料会員登録してますので,月10本まで読めます。興味をもったので,「続きを読む」をクリックしてみました。ファインディングは以下の2点。
①:15~29歳女性の転出率を県別に出すと,東北の諸県で高い。
②:女性の賃金が低い県ほど,若年女性の転出率が高い傾向。
②については,鮮やかな散布図も示されています。一目見て,こんなに明瞭な傾向が出るのかと驚きました。記事で言われているように,高い稼ぎを求めた合理的な行動と言えるでしょうが,ここまで強い相関があるとは…。ぱっと見,相関係数の絶対値は0.9を超えていそうです。
ただ,若年女性の転出率の定義をみると,転出者全体に占める15~29歳女性の割合とあります。うーん,これをもって転出率といっていいものか。正確には転出者の若年女性割合でしょう。転出の指標としていいものか,という疑問もわきます。住民の中で若い女性がどれほどいるかにも左右されるでしょうし。
転出率というからには,若年女性全体のうち,1年間の間に転出した女性は何%か,という数値にすべきかと思います。字の通り,転出者の出現率です。私はこの意味の転出率を使い,日経記事の分析の追試をしてみました。
最新の2019年の転出者数は,総務省『住民基本台帳人口移動報告』に出ています。分母には,同年1月1日時点の人口を充てます。こちらは,同省の『住民基本台帳に基づく人口』に載っています。青森県の例だと,2019年中に本県から転出した15~29歳女性は5673人で,同年1月1日時点の同年齢女性(7万6697人)の7.40%に当たります。年始の人口ベースの転出率は,7.4%と出ました。
この値は,若年女性の転出率といえます。47都道府県の値を高い順に並べると以下のごとし。前後しますが,日本人のデータで,外国人は含みません。
上位には地方県が多く,日経記事の通り,東北の4県も名を連ねています。ただ,京都や東京といった大都市も平均以上の水準で,「都市-地方」という一軸で解釈するのは難しいようです。
女性の賃金水準との相関はどうでしょう。日経記事では,ものすごく明瞭な傾向が描かれていましたが,それを再現できるかどうか。2019年の『賃金構造基本統計』に,女性一般労働者の平均月収が県別に出ています。同年6月の平均月収(諸手当込)です。
これをみると,東北県の女性の給与は低く,高い稼ぎを求めて県外に出る,という行動も分からなくはないです。はて,47都道府県全体の傾向ではどうか。横軸に女性の月収,縦軸に若年女性の転出率(上表)をとった座標上に,各県のドットを置きます。
傾向としてはマイナスの相関です。女性の稼ぎが少ない県ほど,若い女性の転出率が高い傾向はありますね。左上には,日経記事の図と同じく,東北の県があります。
ただ攪乱事例も多く,47都道府県全体としては,それほど強い相関とは言えません。相関係数の絶対値は0.4程度です。東京や神奈川は,大都市で給与も高いのですが,転出率も高し。郷里にUターンする人などがいるためでしょう。
正確な意味での転出率では,日経記事に載っている,芸術的ともいえる鮮やかな傾向の再現は叶いませんでした。「賃金低いと転出率高く」という主張には,ちと留保が要るようです。
まあ個人単位でいえば,高い給与を求めて地域移動(mobility)するのは合理的なことです。東北県においては,若年女性の給与アップ,男性とのジェンダー差の是正等,行う余地があるとは言えるでしょう。若い女性を地元につなぎ止め,出生数を増やすにも必要なこと。
記事の末尾に出ていた,仙台市の社長さんの話も気になりました。時短の2人より,フルタイムで働ける1人を好んで雇う傾向があるとのこと。これでは,幼子がいる女性やシングルマザーの正社員雇用は進みにくい。
随所で言っていますが,21世紀は20世紀と違い,パート労働の時代であると思っています。AIもどんどん進化していますしね。労働時間が短くなった分,給与が減るというなら,ベーシックインカム(BI)で補填すればいい。AIとBIで社会は変わるのです。余談ですが,オランダでは,中学校教員の半分以上がパート勤務です。人口も高齢化も進む中,一人当たりの労働時間を短くし,ワークシェアリングを進めないと社会は立ちいきません。
東北の県だけの話ではありますまい。女性が働きやすい環境を整えることは,どの県においても「待ったなし」です。
**********
以上,日経記事の分析の追試でした。公的統計を使った分析記事をみると,結果が再現できるかを追試してみたくなります。科学の大前提は,誰がやっても同じ結果になるという再現可能性です。
普通の人は面倒がって,こんな作業をしたがらないものですが,それが苦にならない人もいます。一定の学を修めた人です。カネになる仕事にありつけず,困っている人も多いのですが(無職博士),ニュースのファクトチェックの仕事を与えるといいのではないか,という意見もあります。
「コンビニ店員やガードマンとして働いている人文系の大学院出身者に2万円を支払い,ザッとチェックしてもらって意見出しをしてもらうだけで」,メディアの質は大幅に改善される。*「人文系ワープア博士を救うには」文春オンライン,2019年4月15日
ネットメディアの隆盛もあり,いい加減なフェイクニュースも増えてますからね。職がない知的人材を生かす用途はありそうです。私も,こういう「ファクトチェック」の仕事で食い扶持を得ている人間の一人です。
今朝,シェアした記事の一つに,日経サイトの「東北,若い女性の転出鮮明に 賃金低いと転出率高く」があります。有料記事ですが,私は無料会員登録してますので,月10本まで読めます。興味をもったので,「続きを読む」をクリックしてみました。ファインディングは以下の2点。
①:15~29歳女性の転出率を県別に出すと,東北の諸県で高い。
②:女性の賃金が低い県ほど,若年女性の転出率が高い傾向。
②については,鮮やかな散布図も示されています。一目見て,こんなに明瞭な傾向が出るのかと驚きました。記事で言われているように,高い稼ぎを求めた合理的な行動と言えるでしょうが,ここまで強い相関があるとは…。ぱっと見,相関係数の絶対値は0.9を超えていそうです。
ただ,若年女性の転出率の定義をみると,転出者全体に占める15~29歳女性の割合とあります。うーん,これをもって転出率といっていいものか。正確には転出者の若年女性割合でしょう。転出の指標としていいものか,という疑問もわきます。住民の中で若い女性がどれほどいるかにも左右されるでしょうし。
転出率というからには,若年女性全体のうち,1年間の間に転出した女性は何%か,という数値にすべきかと思います。字の通り,転出者の出現率です。私はこの意味の転出率を使い,日経記事の分析の追試をしてみました。
最新の2019年の転出者数は,総務省『住民基本台帳人口移動報告』に出ています。分母には,同年1月1日時点の人口を充てます。こちらは,同省の『住民基本台帳に基づく人口』に載っています。青森県の例だと,2019年中に本県から転出した15~29歳女性は5673人で,同年1月1日時点の同年齢女性(7万6697人)の7.40%に当たります。年始の人口ベースの転出率は,7.4%と出ました。
この値は,若年女性の転出率といえます。47都道府県の値を高い順に並べると以下のごとし。前後しますが,日本人のデータで,外国人は含みません。
上位には地方県が多く,日経記事の通り,東北の4県も名を連ねています。ただ,京都や東京といった大都市も平均以上の水準で,「都市-地方」という一軸で解釈するのは難しいようです。
女性の賃金水準との相関はどうでしょう。日経記事では,ものすごく明瞭な傾向が描かれていましたが,それを再現できるかどうか。2019年の『賃金構造基本統計』に,女性一般労働者の平均月収が県別に出ています。同年6月の平均月収(諸手当込)です。
これをみると,東北県の女性の給与は低く,高い稼ぎを求めて県外に出る,という行動も分からなくはないです。はて,47都道府県全体の傾向ではどうか。横軸に女性の月収,縦軸に若年女性の転出率(上表)をとった座標上に,各県のドットを置きます。
傾向としてはマイナスの相関です。女性の稼ぎが少ない県ほど,若い女性の転出率が高い傾向はありますね。左上には,日経記事の図と同じく,東北の県があります。
ただ攪乱事例も多く,47都道府県全体としては,それほど強い相関とは言えません。相関係数の絶対値は0.4程度です。東京や神奈川は,大都市で給与も高いのですが,転出率も高し。郷里にUターンする人などがいるためでしょう。
正確な意味での転出率では,日経記事に載っている,芸術的ともいえる鮮やかな傾向の再現は叶いませんでした。「賃金低いと転出率高く」という主張には,ちと留保が要るようです。
まあ個人単位でいえば,高い給与を求めて地域移動(mobility)するのは合理的なことです。東北県においては,若年女性の給与アップ,男性とのジェンダー差の是正等,行う余地があるとは言えるでしょう。若い女性を地元につなぎ止め,出生数を増やすにも必要なこと。
記事の末尾に出ていた,仙台市の社長さんの話も気になりました。時短の2人より,フルタイムで働ける1人を好んで雇う傾向があるとのこと。これでは,幼子がいる女性やシングルマザーの正社員雇用は進みにくい。
随所で言っていますが,21世紀は20世紀と違い,パート労働の時代であると思っています。AIもどんどん進化していますしね。労働時間が短くなった分,給与が減るというなら,ベーシックインカム(BI)で補填すればいい。AIとBIで社会は変わるのです。余談ですが,オランダでは,中学校教員の半分以上がパート勤務です。人口も高齢化も進む中,一人当たりの労働時間を短くし,ワークシェアリングを進めないと社会は立ちいきません。
東北の県だけの話ではありますまい。女性が働きやすい環境を整えることは,どの県においても「待ったなし」です。
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以上,日経記事の分析の追試でした。公的統計を使った分析記事をみると,結果が再現できるかを追試してみたくなります。科学の大前提は,誰がやっても同じ結果になるという再現可能性です。
普通の人は面倒がって,こんな作業をしたがらないものですが,それが苦にならない人もいます。一定の学を修めた人です。カネになる仕事にありつけず,困っている人も多いのですが(無職博士),ニュースのファクトチェックの仕事を与えるといいのではないか,という意見もあります。
「コンビニ店員やガードマンとして働いている人文系の大学院出身者に2万円を支払い,ザッとチェックしてもらって意見出しをしてもらうだけで」,メディアの質は大幅に改善される。*「人文系ワープア博士を救うには」文春オンライン,2019年4月15日
ネットメディアの隆盛もあり,いい加減なフェイクニュースも増えてますからね。職がない知的人材を生かす用途はありそうです。私も,こういう「ファクトチェック」の仕事で食い扶持を得ている人間の一人です。
2020年6月2日火曜日
これから教職教養の勉強を始める人へ
緊急事態宣言が解除され,徐々に生活が普通に戻りつつあります。街もにぎわってきました。
公務員試験や教員採用試験は日程延期の自治体が多いみたいですが,東京都の教員試験は例年とあまり変わりなく,筆記の一次試験は7月12日に実施されます。余談ですが,私のバースデーです。
あと一か月ちょいですが,これから勉強を始めるという「困ったちゃん」もいることでしょう。今からやる場合,もう賭けに出るしかありません。その方法を指南いたします。まず,実務教育出版から出ている,以下の2冊をお買い求めください。3000円もいきません。
『教職教養らくらくマスター』(2021年度)
『教職教養の過去問224』(2021年度)
らくらくマスターは要点を抽出した本ですが,手に取ってみると,結構ボリュームがあることに気付くはず。これを今から全部覚えることは不可能です。そこで,データのチカラを借ります。冒頭に,以下のような出題頻度表が出ています。
本書にはトータルで112のテーマ(原則,見開き2ページ)が盛られていますが,過去5年間の試験で,各テーマの内容が何回出ているかをカウントしたものです。5年間で5回の必出は赤,5年間で4回の頻出はグレーのマークをしています。
東京都の必須と頻出のテーマは,以下のようになっています。
東京では,教員の服務②と心理学史が毎年出るようですね。教員の服務が重視されているのは,近年,教員の不祥事が続発しているからでしょう。
服務は内容が多いので①と②に分けてます。①は職務上の3つの義務,②は身分上の5つの義務ですが,後者が毎年出題されています。公務員としてしてはいけないこと,ないしは制限されていることです。生徒へのわいせつ行為は,地公法が禁じる信用失墜行為の典型。アルバイト(営利事業従事)は,任命権者の許可を得るという条件で許されています。政治的行為は,一般の公務員は自分の自治体の外でなら許されますが,教育公務員は全国どこででも禁止です。
心理学史は,文章を提示して,誰について述べたものかを問う形式に尽きます。主著や学説のキーワードを知っていれば対応できます。『らくらくマスター』の該当テーマに掲げられている,人物一覧表を見ておけば十分です。赤シートでの暗記学習を反復しましょう。
あとは,学習指導要領,憲法,教員研修,発達心理学などが頻出のようです(5年間で4回)。該当テーマに出ている文章,条文の重要箇所を赤シートを使って覚えられたい。
東京都の受験者は,上記の表に示した15のテーマに絞って学習をしてください。これなら,1か月あれば可能です。繰り返しますが,今からだともう山を張るしかありません。
これで出題確率の高い内容を押さえられますが,知識のインプットでは不十分で,実際の問題形式にも慣れないといけません。そこで,2冊目の『教職教養の過去問224』の出番です。上記の15テーマの過去問を解くのです。
らくらくマスターとテーマ構成が対応してますので,該当の過去問も探しやすいはず。教員の服務の過去問は,266~271ページに載っています。
全国の過去問を機械的に載せるのではなく,広範な知識を吸収できる良問を精選しています。問題の隣のページに解説を掲げ,学習がしやすいように配慮もしています。解説も詳細にし,それぞれの選択肢について,どこが誤りなのかを丁寧に説明しています。
東京都の受験者は,上記の15テーマについて,『らくらくマスター』での知識吸収と,『よく出る過去問』での問題演習をやっておけば,にわか勉強としてはパーフェクトです。残された1か月ちょいの時間を最も有効に使う手段は,コレです。
時間に余裕があったら,5年間に3回出されたテーマも押さえるとなおよし。必出・頻出のテーマを潰し,余力があれば,ちょっと学習の射程を広げると。
他の自治体受験者の方も,『らくらくマスター』冒頭の出題頻度表をみれば,最も効率的なにわか勉強の戦略を立てることが可能です。すがるべきは,仏壇の仏様でも,先輩の体験談でもありません。過去の経験的事実(データ)です。
必修の教職教養はむろん,自分の教科(小学校は全科)もやらないといけない。どうしよう,どうしようとあたふたしてないで,上記の『らくらくマスター』と『教職教養の過去問』をポチってください。教職教養については,ここでお教えした戦略で,負担をかなり緩和することができます。
本当は,年始あたりから勉強をはじめ,教員として身に付けるべき素養(教職教養)の全体像を押さえるのがいいのですが,それをしなかったことを今から悔いても仕方ありません。受験生諸氏の健闘をお祈りします。
公務員試験や教員採用試験は日程延期の自治体が多いみたいですが,東京都の教員試験は例年とあまり変わりなく,筆記の一次試験は7月12日に実施されます。余談ですが,私のバースデーです。
あと一か月ちょいですが,これから勉強を始めるという「困ったちゃん」もいることでしょう。今からやる場合,もう賭けに出るしかありません。その方法を指南いたします。まず,実務教育出版から出ている,以下の2冊をお買い求めください。3000円もいきません。
『教職教養らくらくマスター』(2021年度)
『教職教養の過去問224』(2021年度)
らくらくマスターは要点を抽出した本ですが,手に取ってみると,結構ボリュームがあることに気付くはず。これを今から全部覚えることは不可能です。そこで,データのチカラを借ります。冒頭に,以下のような出題頻度表が出ています。
本書にはトータルで112のテーマ(原則,見開き2ページ)が盛られていますが,過去5年間の試験で,各テーマの内容が何回出ているかをカウントしたものです。5年間で5回の必出は赤,5年間で4回の頻出はグレーのマークをしています。
東京都の必須と頻出のテーマは,以下のようになっています。
東京では,教員の服務②と心理学史が毎年出るようですね。教員の服務が重視されているのは,近年,教員の不祥事が続発しているからでしょう。
服務は内容が多いので①と②に分けてます。①は職務上の3つの義務,②は身分上の5つの義務ですが,後者が毎年出題されています。公務員としてしてはいけないこと,ないしは制限されていることです。生徒へのわいせつ行為は,地公法が禁じる信用失墜行為の典型。アルバイト(営利事業従事)は,任命権者の許可を得るという条件で許されています。政治的行為は,一般の公務員は自分の自治体の外でなら許されますが,教育公務員は全国どこででも禁止です。
心理学史は,文章を提示して,誰について述べたものかを問う形式に尽きます。主著や学説のキーワードを知っていれば対応できます。『らくらくマスター』の該当テーマに掲げられている,人物一覧表を見ておけば十分です。赤シートでの暗記学習を反復しましょう。
あとは,学習指導要領,憲法,教員研修,発達心理学などが頻出のようです(5年間で4回)。該当テーマに出ている文章,条文の重要箇所を赤シートを使って覚えられたい。
東京都の受験者は,上記の表に示した15のテーマに絞って学習をしてください。これなら,1か月あれば可能です。繰り返しますが,今からだともう山を張るしかありません。
これで出題確率の高い内容を押さえられますが,知識のインプットでは不十分で,実際の問題形式にも慣れないといけません。そこで,2冊目の『教職教養の過去問224』の出番です。上記の15テーマの過去問を解くのです。
らくらくマスターとテーマ構成が対応してますので,該当の過去問も探しやすいはず。教員の服務の過去問は,266~271ページに載っています。
全国の過去問を機械的に載せるのではなく,広範な知識を吸収できる良問を精選しています。問題の隣のページに解説を掲げ,学習がしやすいように配慮もしています。解説も詳細にし,それぞれの選択肢について,どこが誤りなのかを丁寧に説明しています。
東京都の受験者は,上記の15テーマについて,『らくらくマスター』での知識吸収と,『よく出る過去問』での問題演習をやっておけば,にわか勉強としてはパーフェクトです。残された1か月ちょいの時間を最も有効に使う手段は,コレです。
時間に余裕があったら,5年間に3回出されたテーマも押さえるとなおよし。必出・頻出のテーマを潰し,余力があれば,ちょっと学習の射程を広げると。
他の自治体受験者の方も,『らくらくマスター』冒頭の出題頻度表をみれば,最も効率的なにわか勉強の戦略を立てることが可能です。すがるべきは,仏壇の仏様でも,先輩の体験談でもありません。過去の経験的事実(データ)です。
必修の教職教養はむろん,自分の教科(小学校は全科)もやらないといけない。どうしよう,どうしようとあたふたしてないで,上記の『らくらくマスター』と『教職教養の過去問』をポチってください。教職教養については,ここでお教えした戦略で,負担をかなり緩和することができます。
本当は,年始あたりから勉強をはじめ,教員として身に付けるべき素養(教職教養)の全体像を押さえるのがいいのですが,それをしなかったことを今から悔いても仕方ありません。受験生諸氏の健闘をお祈りします。