前に「安いニッポン」という記事を書いた気がしますが,今回は「暑いニッポン」です。今の季節の日本を形容するには,この表現がふさわしい。
今年は梅雨明けが遅かったですが,雨三昧の日々が終わるや,酷暑の日が続いております。今日も35度超え。コロナも怖いですが,熱中症はもっと怖い。死者数でいえば,圧倒的に後者が多し。「熱中症死者100人」がツイッターでトレンド入りしてます。
うち8割が屋内でエアコンをつけてない状態だったそうです。エアコンがあるのにつけないのか,それともないのか定かでないですが,エアコンはつけるべし。冷房嫌いでつけないという人には啓発をし,経済的理由で持てないという人には支援をすべきでしょう。ちきりんさんも言われてますが,「冷房をつけよ」という自粛警察の活動は大歓迎です。
いったい,この暑さは何なんでしょう。気温のデータを確かめたいと思い,気象庁のホームページに当たってみました。いやあ,すごいですね。過去100年あまりの地点別・月別・日別のデータを呼び出すことができます。http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/index.php
年で一番暑い8月の気温がどう変わったか。東京の日ごとの平均気温・最高気温・最低気温をグラフにしてみましょう。1920年と2019年を左右に並べます。100年間の変化の可視化です。
それぞれの日の最高気温と最低気温の幅を,高低線の落差で表してます。オレンジのドットは,当該の日の平均気温です。
ツイッターでも流しましたが,100年間の変化が一目瞭然です。ぱっと見,チャートが上にシフトしているのが分かります。1世紀前の大正時代では,真夏といえど最高気温が30度を超える日は半分にも達しません。しかし今ではほとんどの日が30度超えで,35度を超える日も8日あります。真夏日のラインが,昔は30度だったのですが,今では35度であると。100年間で5度変わったわけです。
暑くなっているのが,データではっきりと見て取れます。自分を苦しめているものが何かを「見える化」されるのはスカッとするのか,上記のグラフはツイッターでかなり見られています。
8月の31日間の最高気温の分布も出してみましょう。1920年と2019年の間に,中間の1970年も入れ,半世紀刻みのデータにします。
1920年では29度台の日が12日と最も多かったですが,1970年には32度台が最も多く,2019年では35度以上が最多です。分布の山が29度台,32度台,35度以上と,きれいにシフトしてきています。
以上は東京のデータですが,地域差もあります。暑さの地域比較も興味深い。8月の31日間の最高気温の平均値でもって,各地域の暑さの指標としましょう。東京の場合,2019年8月の31日間の最高気温の平均値は32.8度です。
これを県別に出し,高低で塗り分けたマップの今昔比較をすると「!」となります。県庁所在地の8月の平均値の地図化です。
左は1980年,右は2019年の地図ですが,日本列島の猛暑化が進んでいるのが分かります。1980年では30度を超える県が4つだけでしたが,最近はほぼ全国が30度超え(色付き)で,32の都府県で32度を超えてます。
インパクトがありますねえ。私が子どもの頃とは違います。今となっては,学校の教室にエアコンは必須。かつ,真夏の屋外でのスポ根指導などは命に関わることです。私は小学校の頃,炎天下の体育の授業で気分が悪くなり,保健室に行ったことがあります(当時は熱中症ではなく日射病と言ってました)。「あれくらいの暑さでだらしない」と嫌味を言われましたが,今では無理は厳禁です。一昨年でしたか,大阪の小学校の屋外活動で,熱中症で小学生男児が命を落とす事故も起きています。
最近では暑さ指数(WGBT)という指標が開発されていて,これが31度を越えたら「運動は原則禁止」です。中高の保健体育の教員採用試験でよく出ますので,受験者は覚えておきましょう。
最後に,上記のマップの元データを掲げておきます。暑いのはどの県か,という関心もあるでしょうしね。下の表は,8月の31日間の最高気温の平均値が高い順に,47都道府県を並べたものです。上記と同じく,1980年と2019年の対比にしてます。色付けも,上記マップと同じです。
どの県でも,真夏の最高気温が上昇しています。東京は,1980年は26.6度でしたが,2019年は32.8度,40年間で6.2度アップしています。全県中の順位は34位から12位に上がっています。
私の郷里の鹿児島は,31.1度から32.1度と,そんなに上がっていません。順位はかなり下がっています。南端の沖縄は,1位から35位に下落です。2019年では,沖縄より東京のほうがずっと暑いのですね。沖縄は東京の避暑地。巷でささやかれていることが,データで実証です。
1980年では,暑さは大よそ地理的位置と関連してました(南ほど暑い)。しかし現在はどうではなく,都市部ほど暑い傾向にあるように見えます。ヒートアイランド現象ってやつでしょうか。エアコンの室外機など,都市では人工排熱も多いですしね。
上記のデータも,地方への人口移動を促すのによさそうです。「密」&「暑い」都会を離れ,地方に移住すべし。
以上,真夏の暑さの時代比較,地域比較をやってみました。日本は昔に比して暑くなっていること,地域差の構造が変わってきていること。これらがファインディングスです。