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2021年5月23日日曜日

大卒者の出身県定着率

  大学進学率は時代と共に高まり,今では同世代を半分(50%)を超えます。地域格差は大きいものの,地方でも進学率は高まってきています。47都道府県の大学進学率は本ブログで毎年出しています。2020年版は,コチラの記事をご覧ください。

 さて,地方の親の関心事は,都会の大学に出したわが子が帰ってきてくれるかです。行政にしても,東京や大阪の有力大学に進学した生徒が,将来地元に帰ってきて,地域の発展に尽くしてくれるかは,大いに関心があるところでしょう。

 私は鹿児島県の出身で,高3のクラスの半分以上が県外の大学に進学したと記憶してますが,どれくらい戻ってきているのでしょう。私みたいに帰ってない者もいれば,今や県庁の管理職になって,郷土にバリバリ尽くしている人もいます。たとえば,バスケ部のキャプテンだったUくん・・・。

 2017年の総務省『就業構造基本調査』によると,同年10月時点において,鹿児島県に住んでいる大学・大学院卒の40代前半男性は1万5700人です(★コチラの統計表)。

 2017年の40~44歳というと,私の世代ですが,1992~96年に大学に進学にした世代です。鹿児島県の高校出身の大学入学者(男子)は,1992年春が4270人,93年春が4519人,94年春が4219人,95年春が4375人,96年春が4467人となっています。(文科省『学校基本調査』)。5年間の合算は2万1850人ですね。上の世代の入学者(浪人経由者)も含んでますが,当該世代からも同数の浪人経由者が出ると仮定しましょう。

 この世代の鹿児島出身男子からは,高卒時に2万1850人(a)の大学進学者が出ているのですが,40代前半になった2017年時点で,同県に住んでいる大卒男性は1万5700人(b)です。2つの数値に隔たりがあるのは,都会の大学に進学したが戻っていない,ないしは地元の大学(鹿児島大など)を出た後,他県に就職したという人がいるためです。

 大卒者のどれほどが地元に定着しているか? この度合いは,上記のbをaで割って出すことができます。%にすると71.9%ですね。当該世代の大卒者の自県定着率と呼んでおきましょう。鹿児島県の私の世代の男子だと,こんな感じです。

 東京だと,92~96年の都内高校出身の男子大学入学者は19万4655人,2017年の都内在住の40~44歳男性の大学・大学院卒者は29万9400人です。他県から都内の大学に進学してくること,他県からの大卒者が就職時にどっと流れ込んでくることから,大卒者の量はうんと膨れ上がります。

 私は同じやり方で,各県出身の大卒者の自県定着率を計算してみました。47都道府県について,私の世代の男子と女子の数値をはじき出しました。結果の一覧は以下です。


 2017年の40~44歳,すなわち私の世代の試算値です。高卒時(1992~96年)の各県出身の大学進学者数と対比して出した結果です。

 都市部では膨らんで,地方では萎むというのが道理です。しかしその程度は,県によってまちまちです。大卒者の自県定着率が60%未満の数値に,青色のマークをしました。定着率が最も低いのは,男性は長崎の50.8%,女性は秋田で49.9%ですね。

 都会の大学に行った人が戻ってこない,自県の大卒者が県外就職してしまう。このどっちが大きいのかは分かりませぬが,自県出身の大卒者の半分ほどしか県内にとどまっていないというのは,才能の流出が大きいのだなと思わされます。大卒者の受け皿がない,という事情があってもです。

 性差をみると,「男性<女性」の県が多くなっています。女性の場合,自県大学進学率,自県内就職率が高いためでしょう。しかしその反対の県もあり,私の郷里の鹿児島をみると,男性が71.9%,女性が55.2%と,「男性>女性」の度合いが最も大きくなっています。大卒者の自県定着率,男性と女性の差が大きいのですねえ。

 都会の大学を出た女子は帰ってきづらいのか,県内の大学を出た女子が出て行ってしまうのか。大卒の女性への眼差しについて,ニューズウィーク日本版に試論を載せましたので,リンクをはっておきましょう。

 各県出身の大卒者のどれほどが,40代になって自県に住んでいるか。試算値の提示です。