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2011年7月8日金曜日

国民の学歴構成の変化

 7月2日の記事では,このほど公表された2010年の『国勢調査』の抽出速報結果をもとに,国民全体に占める高学歴者(大学・大学院卒業者)の比率を明らかにしました。半世紀前の1960年と比べると,国民の高学歴化が著しく進んでいることが分かりました。

 ところで,他の学歴のウェイトはどうなのか,という関心も持たれます。今回は,国民の学歴の構成がどうなっているのかをご覧に入れようと思います。統計の出所は,下記サイトの表12「在学か否かの別・最終卒業学校の種類(6区分)」です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001032402&cycode=0


 まずは,時系列的な変化をみてみましょう。上図によると,半世紀前の1960年では,国民の6割が,小学校ないしは中学校といった初等教育の卒業者でした。大学や大学院といった高等教育機関を出ているのは,たったの2.5%です。また,学校に通ったことがないという,未就学者も2.2%います。

 しかし,その後の高度経済成長という時代状況もあってか,国民の学歴構成はドラスティックに変わります。青色の初等教育卒業者の比重がぐんぐん減り,代わって,中等教育や高等教育卒業の学歴を有する者が多くなってきます。1990年では,中等教育卒業者(高校・旧制中学校卒業者)がマジョリティーになり,現在でも,最も多くを占めています。

 ところで,同じく1990年以降,最終学歴ないしは在学か否かが不明という,学歴不詳者が多くなっていることが気にかかります(黒色)。2010年では,全体の1割を占めています。3月2日の記事にて,各種の社会調査への有効回答率が下がってきていることを述べましたが,学歴という突っ込んだ事項を答えることへの拒否反応の表れでしょうか。国レベルの最大規模の社会調査である『国勢調査』についても,難局に直面していることがうかがわれます。

 次に,年齢層別の学歴構成もみてみましょう。学歴構成で塗り分けた人口ピラミッドを,1960年と2010年とで比較してみます。下図をみてください。各年齢層の棒グラフの長さは,15歳以上の国民全体に占める比率(%)です。各年齢層の量的規模も押さえるため,このようにしています。


 まず,人口ピラミッドの形状が,昔は純粋なピラミッド型であったのが,現在では壺型になっていることは,周知のところです。しかし,こうした外的な形状のみならず,各年齢層の学歴の組成も変わってきています。1960年では,初等教育卒業の青色が多くを占めていますが,2010年では,青色は,50代半ば以上の高齢層の部分に少し広がっているだけです。中年層や若年層では,中等教育ないしは高等教育まで終えた者の比重が高くなっています。

 なお,2010年では,先ほど話題に出た「学歴不詳者」が,すべての年齢層で目立っています。不詳者の比率が最も高いのは20代後半で,全体の15.6%を占めています。このうちの多くが,学歴を問う設問への回答を拒否した者ではないかと推測されます。

 学歴で塗り分けた人口ピラミッドを観察して思うのは,学歴構成には,世代の差が大きいなあ,ということです。1960年ではもちろん,2010年でも,大学や大学院まで出た者は,高齢層ではあまり多くありません。若年層と高齢層のギャップは,昔よりも現在において大きいのではないでしょうか。

 若いころ,何らかの事情により,高等教育まで進めなかった高齢者の中には,これから学び直しを図りたい,という欲求をお持ちの方もおられると思います。大学は,さしたる目的を持たない18歳人口を引っ張り込むことだけに躍起になるのではなく,こうしたシニア層の需要に応える努力も怠るべきではないでしょう。今後,量的に増えていくのは後者のほうです。このことは,教育機会の平等化という,生涯学習の重要理念の一つにも通じます。よろしければ,6月16日の記事も併せて参照いただけますと幸いです。