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2013年4月1日月曜日

公立小学校6年生の勉強時間地図

 文科省が毎年実施している『全国学力・学習状況調査』は,教科の学力を測るテストと,対象の児童・生徒に対する質問紙調査からなっています。後者は,日頃の生活習慣等について問うものです。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html

 そこに盛られている設問の一つに,「学校の授業時間以外に,普段(月~金曜日),1日あたりどれくらいの時間,勉強をしますか」というものがあります。私は,この設問への回答を分析することで,公立小学校6年生の平均勉強時間を都道府県別に出してみました。県別のデータというのはあまり見かけないので,参考になろうかと存じます。

 用いるのは,少し古いですが2010年度調査のデータです。大都市・東京の公立小学校6年生の回答分布は,以下のように報告されています。

 3時間以上(210分) ・・・ 21.2%
 2時間以上3時間未満(150分) ・・・ 14.0%
 1時間以上2時間未満(90分) ・・・ 26.1%
 30分以上1時間未満(45分) ・・・ 23.3%
 30分未満(15分) ・・・ 11.7%
 全くしない(0分) ・・・ 3.7%

 この分布を使って,平日1日あたりの平均勉強時間を計算してみましょう。階級値の考え方に依拠して,各階級に含まれる児童の勉強時間を,一律に中間の値とみなします。たとえば,30分以上1時間未満の者は,一律に中間の「45分」と仮定するわけです。こう考えると,平均勉強時間は次のようにして算出されます。

 [(210分×21.2人)+(150分×14.0人)+・・・(0分×3.7人)]/100.0人 ≒ 101.3分

 101分=1時間41分ですか。大都市・東京の小6児童の結果ですが,こんなものでしょうか。では,他県の数値も同じようにして出してみましょう。下図は,結果を地図で表現したものです。47都道府県を5分刻みで塗り分けてみました。


 濃い青色は,平日1日あたりの平均勉強時間が90分(1時間半)を超える県ですが,この色の分布に注意すると,首都圏や近畿圏といった都市部において,小6児童の勉強時間が長いことが知られます。塾通いが多いことの影響もあるかと思います。

 さて,同じ小6児童でも,平日にどれほど勉強しているかは地域によって異なるようですが,この多寡が学力とどう関連しているかに興味を持たれることでしょう。私は,公立小学校6年生の4科目(国語A,国語B,算数A,算数B)の平均正答率との相関係数を出してみましたが,無相関でした。

 なるほど。学力上位常連の秋田や福井が,上の地図では薄い色になっていますものね。それに,勉強時間が長い都市部に学力が高い県が多いかというと,そういうことはありません。

 期待に反した?結果が出たのですが,各県の子どもの学力水準と関連する要因って何なのでしょう。すぐに答えが出せる問題ではありませんが,子どもの生活という,トータルな視点から一考してみましょう。

 先ほど,秋田と福井という2つの県の名前を出しましたが,学力上位常連のこの2県において,小学生がどういう暮らしをしているかを覗いてみます。用いるのは,2011年の総務省『社会生活基本調査』のデータです。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm

 下表は,同年10月中旬の調査実施日(平日)における,両県の小学生の平均行動時間を示したものです。全カテゴリーの総和は1,440分(24時間)となります。比較対象として,東京の小学生の数値も掲げました。


 学業時間(学校での授業時間含む)は,東京のほうが長くなっています。代わって秋田と福井では,くつろぎ,趣味,スポーツといった行動の平均時間が相対的に長いのです。ガツガツやらせるよりも,生活にハリを持たせることが重要ということでしょうか。

 ちなみに,県レベルの統計でみた場合,子どもの通塾率と学力はの相関関係にあります。学力と正の相関関係にあるのは,朝食摂取率のような,生活リズムの安定に関わる指標です。この点については,2011年6月12日の記事をご覧ください。

 受験一辺倒の学力ではなく,近年,文科省が重視している「確かな学力」(知識や技能はもちろんのこと,これに加えて,学ぶ意欲や自分で課題を見付け,自ら学び,主体的に判断し,行動し,よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの)を育成するには,基本的な「生」をバランスよく営むことが大切なのではないでしょうか。

 今日から新年度です。お子さんを学校に上げた親御さんの中には,がっつり勉強させようと構えている方もおられると思いますが,そう気負うことはありますまい。配慮する必要があるのは,「寝る,食べる,遊ぶ,学ぶ,交流する・・・」といった,生活の基本要素の均衡が崩れないようにすることだと思います。何のことはありません。ただ「フツー」に暮らさせる。それだけのことです。