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2014年4月13日日曜日

ケータイ・スマホと非行の関連

 新年度が始まりましたが,いかがお過ごしでしょうか。デパート内のドコモショップをのぞくと,ケータイ(スマホ)を選んでいる親子連れが目立ちます。真新しい制服を着た中高生が多いようですが,入学祝でしょうか。

 文科省の『全国学力・学習状況調査』では,対象の公立中学校3年生に対し「ケータイやスマホで通話やメールをしているか」と尋ねています。最新の2013年度の結果によると,37.9%の生徒が「ほぼ毎日している」と答えています。およそ4割。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html

 県別の集計も出ていますので,数値を採集して地図をつくってみました。公立中学校3年生の「毎日ケータイ・スマホ」マップです。


 マックスの神奈川では,中学校3年生の47.8%,ほぼ半数が毎日ケータイ・スマホをしているようです。最低の佐賀は20.7%。予想はしていましたが,地域によってずいぶん違うものです。

 色が濃いのは首都圏と近畿圏ですね。同じ中学校3年生でも,都市部ほどケータイ・スマホへの利用度(依存度)が高いようです。この点も肌感覚に合っていますね。

 さて,中学生の「毎日ケータイ・スマホ」率にクリアーな地域差が出たのですが,このことが,各県の生徒の育ちにどう影響しているか。こういう問題を追及したくなります。逸脱行動の代表格である非行の頻度との相関をとってみましょう。

 私は,中学生の非行者出現率を計算しました。2012年中に刑法犯で検挙された中学生の数を,同年5月時点の中学生数で除した値です。分子は警察庁『犯罪統計書』,分母は文科省『学校基本調査』から得ました。分子には,14歳未満の触法少年は含めていないことを申し添えます。

 横軸に公立中学校3年生の「毎日ケータイ・スマホ」率,縦軸に中学生の非行者出現率をとった座標上に,47の県をプロットすると下図のようになります。ケータイ・スマホと非行の相関図です。


 攪乱はありますが,ケータイ・スマホへの依存度が高い件ほど,非行率が高い傾向が見て取れます。相関係数は+0.530であり,1%水準で有意です。

 これは都市化度を介した疑似相関かもしれませんが,人口集中地区居住率と非行率の相関は+0.459であり,ケータイ・スマホ利用度のほうが非行と強く相関しています。他の共通の背後要因も考慮する必要がありますが,ケータイ・スマホと非行の間には因果関連的な部分もあるのではないでしょうか。

 まず想起されるのは,ケータイやスマホが有害情報との接触ツールになることですが,自我が未熟な中学生の場合,このことが非行へとつながる可能性も高いことでしょう。ちなみに,有害情報をブロックする「フィルタリング」の利用率は最近低下しているとのこと。この点も懸念材料です。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2601L_W4A320C1CC1000/

 この4月にケータイやスマホを子に買い与えたご家庭も多いと思いますが,利用のルールづくりなどを徹底したいものです。また,返信しないといけないという強迫感から,四六時中「LINE」の画面と睨めっこという生徒もいると聞きますが,こういう生活の歪み・乱れが起きないよう,注意を払う必要もあります。

 ケータイはいつでもどこででも情報を収集し,発信できる偉大な文明機器です。しかるに目を凝らしてみると,それをうまく活用して生活をよりよくしていく者と,それに振り回されて生活を堕落させていく者の2種類います。

 自我が固まっていない青少年の場合,後者に傾きがちですので,大人による意図的な方向付け(指導)が欠かせません。私も,上記の2タイプの後者に堕しつつあるので気をつけようと思っています。もっとも私の場合,自己指導するしかないのですが。