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2014年5月13日火曜日

ニッポンの飢餓経験者

 近年,飽食の国といわれる日本でも「餓死」の問題がクローズアップされきています。2007年,北九州市で50代の男性が餓死する事件がありましたが,「おにぎり食べたい…」という書き置きが衝撃を呼びました。

 この男性は,餓死する3か月前に,生活保護を打ち切られたとのこと。健康不良で働けないにもかかわらず,辞退届を出すことを役所から強制されたそうです。

 格差社会化が進行し,各種の「縁」も希薄になり,かつ行政のセーフティネットも十分に機能していない。こういう状況のなか,あり余るほど食べ物はあっても,全ての人にそれが行き届かない。こういう事態になっています。

 餓死に至るまでの人間は統計量でみればごく少数ですが,その予備軍は結構いるのではないでしょうか。データで検討してみましょう。

 最新の『世界価値観調査』(2010~14年)では,「貴方ないしは貴方の家族は,この1年間にかけて,十分な食料がない状態で過ごしたことがどれほどあるか」と尋ねています。「しばしば」,「時々」「たまに」,「全くない」の4段階で答える形式です。対象は15歳以上の男女。

 日本の場合,有効回答を寄せた2,386人のうち,「しばしば(often)」と答えたのは47人となっています。比率にすると2.0%,さすがに少ないですね。アフリカのルワンダでは,この値は14.5%にもなります。

 しかし,量的に少ないとはいえ,「しばしば」と答えた47人がどういう人なのかが気になります。この47人のプロフィール表をつくってみました。年齢が若い順に並べています。


 性別は男女半々,年齢別では高齢層が多くなっています。最終学歴をみると,大学や専門学校などの高等教育卒は4人しかいません。その分,高卒や中卒が多し。人口全体に比して,低学歴層の比重が高くなっています。

 配偶関係は飛ばして,従業上の地位をみると,生産年齢層では「フルタイム就業者」が結構います。フルタイムで働いても,最低限の生活レベルの収入すら得られない…。今問題になっている「ブラック起業」の影を感じます。

 さて,最新の『世界価値観調査』から分かる,日本の飢餓経験者は47人であり,15歳以上の回答者に占める比率は2.0%です。総務省『人口推計年報』から分かる,2014年4月時点の日本の15歳以上人口は1億1,081万人。この数に,先ほどの2.0%を乗じると222万人となります。

 222万人。飽食の国・日本において,飢餓状態を頻繁に経験している人間の数の推計値です。新潟県の人口にほぼ匹敵します。結構な数です。格差社会化,孤族化が進行し,行政のセーフティネットの機能不全状態が継続するならば,このうちの少なからぬ部分が餓死に傾くことでしょう。

 「飽食」と「餓死」。いかにも相容れない2つの要素が同居しているのが,現代の日本社会です。