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2014年11月4日火曜日

大学進学率の都道府県差の変動

 昨年9月12日の記事では,都道府県別の大学進学率を計算したのですが,大学進学率の地域格差は以前に比して開いてきているのでしょうか。90年代以降の状況変化をざっくりと出してみましたので,今回はそれをご報告します。

 大学進学率とは,同世代のうちどれほどが4年制大学に進学したかという指標です。具体的にいうと,18歳人口のうちの何%が4大に進学したかです。

 文科省統計からこの指標を算出する場合,当該年春の大学入学者数を,同時点の推定18歳人口で除すことになります。分母は,3年前の中学校・中等教育学校前期課程卒業者数で代替します。お馴染みの『学校基本調査』によると,2014年春の大学入学者は60万8,232人,3年前の2010年春の中学校・中等教育学校前期課程卒業者は118万838人です。よって今年の大学進学率は51.5%となります。同世代の2人に1人が大学に進学するとは,こういうことです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

 分子には過年度卒業者(浪人)も含まれますが,当該年の18歳人口からも浪人を経由して大学に進学する者が同程度いるものと仮定し,両者が相殺するものとみなします。したがって,ここでいう大学進学率とは,浪人込みの数値です。

 私はこのやり方にて,1990年,1995年,2000年,2005年,2010年,2014年の都道府県別の大学進学率を明らかにしました。1990年,2000年,2014年について,上位10と下位10の顔ぶれをご覧いただきましょう。


 上位県には東京をはじめとした都市県が多く,下位県には地方県が名を連ねています。言わずもがな,大学進学率は都市性と強く相関しています。都市部のほうが所得水準が高い,大学が数多くある,大学進学の価値を認める高学歴の親も多い・・・。いろいろな要因がありますが,今回の関心は要因分析ではないので,それは置いておきます。

 ここでみたいのは,大学進学率の都道府県差が拡大しているか否かです。まず両端の差(レインヂ)をとると,1990年は33.5-15.4=18.1,1990年は30.5,2014年は38.1となり,差が開いていることが知られます。これは両端ですが,全県の分散の度合いを表す標準偏差(S.D)も,1990年が4.23,2000年が6.80,2014年が7.90というように,こちらも上昇してきています。

 あと一点,上表にある上位10県と下位10県の平均推移も出してみると,以下のようになります。

 ・上位10県  28.8%(1990年) → 45.6%(2000年) → 57.3%(2014年)
 ・下位10県  17.3%(1990年) → 27.7%(2000年) → 36.9%(2014年)

 上位群のほうが,この四半世紀の伸び幅が大きくなっています。いくつかの観点を据えましたが,90年代以降,大学進学機会の地域格差が拡大していることが明らかです。

 状況の変化を表すグラフも掲げておきましょう。大学進学率の全国値,47都道府県の最高値・最低値,上位10県・下位10県の平均値の位置変化です。


 ①高低線の幅が広くなってきていること,②下位群よりも上位群の伸び幅が大きいこと,の2点に注目してください。

 エレンコ・モレッティ著『年収は住むところで決まる』には,富のみならず教育の地域的集積も進むというようなことが書いてありましたが,わが国でも,そうした事態が進行していることをうかがわせるデータです。

 個人間の教育達成の格差と同時に,地域間のそれにも目を向ける必要があります。モレッティのいう「乗数効果」により,居住地の差は個人レベルの階層差を回収する力をも持っています。大学進学に即していうと,低い階層の子弟であっても,高い階層の出身者が多い地域に住んでいるならば,そうでない場合よりも,大学進学アスピレーションは高くなるでしょう。また,居住地に大学があるかないかという要因も大です。

 ところで,もう一つ気になるのは,地方から都市の大学に進学した者のどれほどがUターンするかです。わが国の大学は都市部に偏在していますので,地方県にあっては,大学進学者の多くは県外進学を余儀なくされるわけですが,そうした流出組がどれほど地元に還流するのか。それがあまりに少ない場合,地方から都市へと知的資源が吸い上げられていることになり,住民の学歴構成に象徴されるような,教育の地域格差がますます拡大することになります。

 『学校基本調査』の大卒者の進路統計にて,就職先の地域別(県別)の集計があれば,この点を吟味できるのですが,残念ながらそれは叶わないようです。高卒者の場合,就職先の県別の集計ああるのに,大卒者ではそれがないのはなぜでしょう。当局には,ぜひとも出していただきたいデータです。