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2015年4月23日木曜日

青年期の人口移動の世代変化

 前々回の記事では,私の世代を例にして,各年齢時の居住地分布がどう変化しているかを明らかにしました。そこで分かったのは,地方県では,18歳時に流出した人口が成人後にあまり帰っていない,ということです。

 私の郷里の鹿児島でいうと,14歳時(90年)の人口を100とした指数は,19歳時(95年)が73,24歳時(00年)が74,29歳時(05年)が74,34歳時(10年)も同じく74です。やはり,一度出て行った流出組はなかなか帰ってこないのだな,と思いました。私もそのうちの一人ですが。

 これは私の世代(76年生まれ)の例ですが,他の世代はどうなのでしょう。一回り下の86年生まれ世代について,同じデータをつくってみました。14歳人口(00年)と24歳人口(10年)の対比です。24歳といえば,大学を卒業して就職する時期ですが,この世代ではどれほど帰ってきているのでしょう。


 上は76年生まれ,下は86年生まれ世代の増加率表です。東京と鹿児島のデータですが,下の世代のほうが,東京の増加率,鹿児島の減少率が高くなっています。鹿児島の減少率は,私の世代では26.4%でしたが,86年生まれ世代では31.3%です。一方,東京の増加率は47.4%から71.8%とかなり増えています。

 2都県のケースですが,都市定住の増加,Uターンの減少という傾向が観察されます。「地方創生」を掲げ,都市から地方への人口移動(還流)を促している政府にとっては,何とも具合が悪い・・・。

 他の道府県の数値もみてみましょう。また最近の傾向をより広い文脈で吟味するため,上の世代のデータもつくってみました。1946年生まれ,56年生まれ,66年生まれ,76年生まれ,86年生まれの5世代について,14歳から24歳にかけての人口移動率を県別に計算してみました。一番上の46年生まれ世代の場合,14歳時人口(60年)と24歳時人口(70年)を照合した次第です。


 上の世代ほど,青年期の人口移動が激しいですね。46年生まれ世代の場合,時代は高度経済成長期の最中。14歳(60年)から24歳(70年)にかけて,東京や神奈川では同世代人口が8割も膨れ上がっています。一方,地方からの流出はすさまじく,わが郷里・鹿児島は,同世代人口が6割も減じています。東京,大阪,名古屋などの大都市に向けて,西鹿児島駅(通称・西駅)から集団就職列車が頻繁に走っていた頃です。

 そうした青年期の「大移動」は,世代を下るにつれ緩和されてきます。しかし,76年生まれから86年生まれになると,移動のレベルが再び増します。東京や神奈川のような都市部では,14歳から24歳にかけての増加率が増し,多くの地方県では逆に減少率が増えているのです。最初にみた東京と鹿児島のケースは,イレギュラーではないようです。

 これは,都市から地方へのUターンの減少,出て行った者が帰らない(帰れない)傾向が強まっていることの表れともいえます。ネット通販の普及により,小売商店街が打撃を受けるなど,地方の疲弊が進んでいるといいますが,「帰っても仕事がない」状況が強まっているのでしょうか。

 モレッティは「年収は住むところで決まる」(プレジデント社)において,成功したいのなら,一級の知やアイディアに接することのできるイノベーション都市に居住すべしという趣旨のことを述べていますが,それを実践している若者が増えているのか・・・。

 いずれにせよ,「地方創生」を掲げる政府にとって,今回のデータはあまり気持ちのいいものではないでしょう。今年(2015年)は「国勢調査」の実施年ですが,1991年生まれ世代(05→15年)の増加率はどうなっているか。注目されるところです。「さとり世代」,「マイルド・ヤンキー」,「地元族」とかいう言葉で特徴づけられる世代ですが,案外,地元定住やUターンが増えているかもしれません。希望的観測を記しておきます。

 最後に,上表の世代間の推移をグラフにしておきましょう。東京と鹿児島について,青年期にかけての人口増加率の世代変化を,折れ線グラフにしてみました。最近になって,東京が上向き,鹿児島が下向きになっているのがポイントです。


 ただ,九州の大分のように,青年期の減少率が一貫して減少傾向の県もあります。立命館アジア太平洋大学の開学により,海外からの留学生が増えているためかもしれませんが,注目されるケースです。グラフにすれば,他にもいろいろなタイプが出てくるでしょう。ご自身の県の推移を視覚化してみてください。

 以上は青年期の変化ですが,引退期の変化も見ものです。55歳時点と65歳時点の人口を対比してみたら,どういう傾向になるでしょう。引退期の人口還流は強まっているのかどうか。それぞれのライフステージごとの様相を,都道府県別に明らかにするのも面白そうです。

 人間のライフコースの複雑な現実は,こういう地道な実証作業の積み重ねで解きほぐされると考えています。今年の調査統計法で,学生さんと協力して挑みたい課題の一つです。